この二人は可愛い
妹コンビとのお茶会の次の日。今日は気になる相手を悩殺しちゃえ作戦。お買い物である。男の子は立ち入り禁止である。
キアラに聞いた一押しのお店があるから、そこに行ってみようか。
「ふむ、岸波先生のオススメか。…………」
「少し、怖い気がする」
まぁ、今日はちゃんとしたお店みたいだよ。美味しいレストランもあるみたいだし、予約済みだから、楽しみにしててね。
「だが、その、私はそういうファッションには自信が無いのだが……」
「私も」
ふふふ、大丈夫です。ちゃんとアドバイザーも呼んでるから。素敵なオネエサンだから期待して下さい。
「なら、期待させてもらおう。っと、そろそろ来るな」
モノレールと電車を乗り継いで。やってきたのは虎ノ門。ホテルや色々なショップがある。女子高生には少し敷居が高い気もするが、そこは私も企業所属のIS操縦者。お金は一杯あるのです。基本的に寮暮らしだと、使い道がご飯とお菓子くらいしかないのだ。なので、残ったお金は、可愛い子を着飾るために使うのである。うん、実に合理的だ。
「……いや、プレゼントしてくれるのは嬉しいのだが……、合理的か?」
いいのいいの。箒さんには水着も買ってもらったし、簪さんは初めてのお買い物記念に。じゃ、まずはユイさんと合流しないと。駅前にいるって言ってたけど……。
「白野ちゃん、こっちよ」
あ、ユイさん。おぉぅ、今日もセクシー。周囲の視線を独り占めですね!
「ふふふ、白野ちゃんには負けるわ。それと、あなたたちが箒さんと簪さんね。白野ちゃんから話は聞いているわ。私はユイ・ジュイティエフ。よろしくね」
「は、はいっ。私は篠ノ之箒です」
「更識簪です。よろしくお願いします」
二人もユイさんの美しさに惚れ惚れ状態。ふふふ、私自慢お姉さんですから。
「あら、そう言って貰えて嬉しいわ。じゃあ、行きましょうか。それにしても、《Fate》を選ぶなんて、センスがいいわね」
キアラの紹介です。そんなにいいところなんですか?
「ええ。ロシアに本店があるブティックよ。あぁ、確か、《カリス社》の制服もここのデザインのはずよ」
やっぱりあった《カリス社》との繫がり。じゃあ、メイド服とかも……。
「流石にないとは思うけどね。可愛らしい服もあるから、楽しみだわ」
私もです。じゃあ、行こっか。
ということで、到着しました《Fate》。文字通り運命を感じてならないのはなぜだろう。
「……私たちは場違いではないか?」
確かにセレブっぽい人が多い。メインターゲットは、ユイさんとかヴィーラさんみたいな人なのだろう。
「大丈夫よ。言ったでしょ? 本社は『ロシア』にあるって」
…………。……連絡って行ってたんですか?
「そうみたいよ。だって、パリ店のグランクチュリエが来てるもの。流石ね、白野ちゃん?」
ありがたいんだけど、なんだか色々麻痺しそうっす。
「お待ちしておりました、白野様。私、《Fate》パリ支店のアンヌ・アンコヤブルと申します。さ、皆様もこちらへ」
アンヌさんに案内されたのは、三階にあるオシャレなお部屋。大きな鏡が何枚もあり、飾ってあるドレスもオシャレ。これもアンヌさんがデザインしたんですか?
「はい。昨年のパリ・コレで発表したものです。実は、白野様の為にデザインしたものなんですよ?」
おぉぅ、お腹いっぱいです。こんな綺麗なドレス……着たいです……。
「では洋服を選んだ後に。皆様にも用意してあるので楽しみにしていて下さいね?」
まさかのファッションショー再び。でも、アンヌさんがいてくれれば、織斑君も会長さんもイチコロだ。
「男性を堕とす服ですか。勿論用意してあります。どうぞ、こちらです」
ズラッと出てくる職員さん。って、あなたたちメイド’sの人たちですよね?
「キアラ様に連絡をいただきましたので、特別に来させていただきました。さ、箒様はこちらへ」
「簪様もこちらへ」
メイドさんに連れられて、それぞれカーテンの向こうに消えていく。私は……アンヌさん?
「はい。さ、まずはこちらですわ」
……まずは?
そして一時間後。
――ぐったり。
いや、たくさん素敵な服を着られて楽しかったんだけど、流石に二十着は疲れます。
「ふふふ、つい楽しくなってしまいましたわ」
「だが、どれも似合っているぞ。可愛らしい格好も似合っているじゃないか」
「白野、可愛い」
ありがと。あ、イーニァ達にもプレゼントしたいんだけど、ありますかね?
「はい。一緒にご用意しておきます」
ありがとうございます。じゃあ、一休みしたらドレスショーしましょうか。
「うっ……その、本当にするのか?」
モチ。
「ではご用意して参ります」
「どうぞ皆様こちらへ。お茶の準備が出来ています」
取り敢えず準備はアンヌさんに任せて、私たちはティータイム。んー、やっぱりメイドさんが淹れてくれるお茶には敵わないなぁ。
「ふふ、ありがとうございます。スコーンも用意してありますよ」
「ありがとうございます。あぁ……やっぱり美味しいですわ。流石です」
「恐縮でございますユイ様。皆様もどうぞ」
何というか、ユイさんとメイドさんの組み合わせがハマりすぎです。あ、でもこのスコーンも美味しー。
「本当に美味しいです。焼きたてですか?」
「はい。先程こちらのオーブンをお借りして焼かせていただきました」
「……美味しい」
あ、簪さんホッペに。……パクリ。
「うぅ……そういうのは恥ずかしい」
ふふふ、ほら、こっちも美味しいよ。
いちゃいちゃしながらお茶をしていると、アンヌさんからお呼びがかかる。準備終わったんですか?
「はい。皆様こちらへ。白野様はこちらへどうぞ」
また再びお着替えタイム。今度はドレスなのでみんなに手伝ってもらいながら着る。おぉぅ、凄い綺麗なドレス。
「凄くお綺麗です、白野様!」
ありがとうメイドさん。どうですか、アンヌさん?
「とてもお似合いですわ。本当にお綺麗です」
ふふふ、嬉しいな。ありがとう、アンヌさん。
「こちらこそ、着ていただけて幸せです。さ、他の皆様もお待ちです。どうぞ、こちらへ」
ふふふ、ありがとうございます。メイドさん、エスコートお願いできますか?
「は、はい! で、ではお手を」
お願いします。
メイドさんに手を引かれ、みんなが待つホールに向かう。そこにはドレスで着飾った箒さんと簪さん、そしてユイさんもドレスを着ていた。みんな綺麗です。
「そう言う白野ちゃんだって綺麗よ。流石ね。アンヌさんのドレスに負けてないなんて」
完璧に着こなしているあなたが何を言いますか。綺麗ですよ、ユイさん。それに、箒さんも。真っ赤なドレス、とっても綺麗だよ。流石、《紅椿》の操縦者。
「そ、それは関係ないだろう! うぅぅ……」
それに、簪さんもとっても可愛いよ。
「……似合うかな?」
もちろん。……ちょっと一枚失礼。・・送信っと。んで、着信拒否っと。
「い、今誰に送ったの?」
ん? キアラに。キアラだったら喜ぶかなって。
「うぅぅぅ……やめて、恥ずかしい」
ふふふ、ごめんなさい。でも、本当に可愛いよ。そうだ、みんなで写真撮りましょうよ。
「それでしたら、皆様、下にいらして下さい。そちらでお写真を撮りましょう」
移動した先には立派な撮影スタジオ。撮影スタッフも美人である。
「さ、皆様笑顔ですよ」
にぱー。ほら、箒さんも簪さんも。
「わ、分かったからくすぐるな!」
ほらほら、はい、チーズ。
「では、すぐに現像いたします。そろそろお昼ですし、昼食などいかがでしょうか?」
確かにお腹も空いてきた。予約の時間もそろそろだし、そうします。
「私もご一緒していいのかしら?」
もちろんです。あ、でも、ユイさん行ったことあるかも。
「一度だけね。その時はディナーだったけど」
もしかして、彼氏とですか? ですか?
「残念ながら、同僚とね。女性の。それに、白野ちゃん以上のいい男に会えるとは思えないわ」
よせやい、照れる。というか、私、女の子。
「ふふふ。でも、あなた以上の人がいないのは本当よ。だって、白野ちゃん、下手な男よりも男前なんだもの」
……。これは喜んでいいのかどうなのやら。ともかく、みんな好きなの選んで下さいな。
「では……このパスタのセットを」
「私は……ハンバーグランチ」
ユイさんもどうぞ。ささやかですが、今日来てくれたお礼です。
「じゃあ、ピザのセットをもらおうかしら。皆で食べましょう」
運ばれてきた料理はどれも見事の一言。うまうま。
「あら、ほっぺにソースがついてるわよ。もう、簪さんのこと言えないわよ」
むぐぐ。ありがとう、ユイさん。
「どういたしまして」
むぐっ……。あ、簪さん、美味しい?
「うん。おいし……」
気に入ってくれて良かった。そうだ、箒さんって剣道部なんだよね? 最近は織斑君も剣道場に行ってるの?
「いや、最近は先輩とばかり手合わせしているな。なかなか一本を取れなくてな。情けない話だが、とても楽しいんだ」
あれ、箒さんって
全国で優勝したんだよね?
「先輩の家は代々続く剣の御家でな。元々将軍家の護衛をしていた家で、維新の後は皇族の護衛もしていたほどらしい」
へぇ、凄い先輩なんだね。あの、語尾が疑問形の部長さん?
「いや、部長ではないんだ。二年一組の篁唯依先輩だ。確か、彼女も日本の国家代表候補生だったはずだが。格闘部門ではなく、白野と同じ機動部門のようだがな」
ありゃ? 意外な共通点。簪さんは知ってるの?
「うん。たまにだけど、相談にも乗ってもらってた。厳しいけど、とっても優しい先輩」
へー、一回会ってみたいなぁ。ねぇ、箒さん。今度剣道場にお邪魔してもいい? なんならマネージャーをやってもいいし。
「私の一存では決められないが、聞いてみよう。返事をもらったら連絡する」
やっほう。剣道美少女(仮)と会える! 箒さんと篁さんとのツーショットはわくわくだ。
「さ、そろそろ戻りましょうか。あまり待たせてしまっても失礼だしね」
ですね。ということで《Fate》に戻ると、やけにニコニコした店員さんたちに向かえられた。
「お待ちしておりました。洋服は全て包んであります。ドレスと一緒にお送りしておきます」
へ? まぁ、払えないこともないけど……。
「お代はキアラ様からいただいております。勿論皆様の分も」
んー、でも今日は私が払いたいな。せっかくのプレゼントなんだしね。だから、今日は私が払います。残っちゃったお金は……また今度来たときに、新しい服をデザインして下さい。もちろん、アンヌさんの最高の服を。まぁ、キアラのお金だけど。あ、出来たら、ISスーツとかもデザインして貰えると嬉しいです。
「……分かりました。そのご依頼お受けいたします。一緒に、IS学園の制服もデザインさせていただきますわ。何かリクエストはありますか?」
制服かぁ……。あ、じゃあ、モンスターの。えーと、こんなかんじでー……。
「和服にブルゾンですか? ……分かりました。これをベースにデザインいたします。期間は……そうですね、キャノンボールファストが終わったあとにお届けできるかと」
そんなに早くですか? ふふふ、じゃあ、トロフィーとして楽しみにしてますね。
「はい。グランクチュリエの名にかけて、最高のものをお送りいたします。少々お待ち下さいませ、白野様」
恭しく頭を下げてくれたアンヌさんに見送られて、私たちはお店を後にした。いやー、でもいい買い物したわー。
「その、私としては嬉しいんだが、ドレスまで買ってくれなくても良かったんだぞ? ドレスなんて着る機会もないし……」
「私も……」
いやいや、女の子たるもの、勝負服を持っていなくっちゃ。
「そういう白野は持っているのか?」
……キアラとヴィーラさんがいる会社だぜ? メイド服から修道服、全国の学生服まで網羅していますとも。ドレスは衣装部屋一杯にあります。
「そ、それは……。あ、ユイさんもそういう服は持っているんですか?」
「え? えぇ、会社のパーティーとかもあるから、その時は着飾らなくちゃいけないからね」
ユイさんのドレス姿、見てみたいなぁ。っと、駅に着いたね。
「そうね。じゃあ、今日は楽しかったわ。また一緒にお買い物しましょう。今度は私のオススメの所を案内するわ」
「はい、是非」
「楽しみにしてます」
じゃあ、またメールしますね。じゃあ、また。
ユイさんと別れて、IS学園に帰る。三時頃に学園に到着したので、私の部屋でお茶を飲む。のほほんさんはどこにいったんだろう? お菓子がそのままだから、すぐに戻ってくると思ったんだけど、戻ってこない。
「まぁ、本音も予定があるのだろう。それにしても、もう届いているとは驚きだな」
寮に入ったときに受け取った荷物は、先程買った洋服達。アンヌさんの抜け目なさに驚きつつ、洋服をクローゼットに入れていく。一気にクローゼットが一杯になった。
「でも、白野、本当に衣装持ちだったんだね」
ん? これでも減らしてもらったんだよ。ヴィーラさん、これに関しては渦ってくれなくて……、説得が大変だったなぁ。
「そ、そうか……。何というか、意外だな。そういう姿はあまり想像できないが」
案外可愛らしい人なんだけどね。そうだ、篁先輩について教えて?
「篁先輩か? 凄くいい先輩だ。厳しいところもあるが、相手のことを想って言ってくれているということが分かる。それに、仕草の一つ一つが綺麗でな。あこがれの先輩といったところか」
ほほう。これは会うのがますます楽しみになってきましたね。唯依さんじゃユイさんとかぶっちゃうから……唯依姫先輩だね、うん。
悩んだのですが、唯依姫を登場させることにしました。
たぶん、一夏・会長枠。唯依姫は弄ってこそ輝くと思うので。