二人と別れて、人気の無い角に隠れる。……キアラ、隠蔽工作と後始末よろしくね?
『はい、万事滞りなく。お好きなようになさってくださいな』
ん、よろしく。じゃあ、いこっか《聖杯》?
人目につかないように、《聖杯》で雲の上に飛び上がる。単なる空中散歩も素敵だが、それならば一人より二人。ご一緒してくれるかな、マーティカさん?
「……なぜ、私のことを知っている?」
スコールさんに聞いていますから。それに、これからクリスカとイーニァの晴れ舞台だから。邪魔はさせたくないからね。
「そうか、スコールが。……では、私を捕らえるか?」
そうだね。他の子ならともかく、あなたのことは絶対にとらえましょう。だって、私の大切な妹さんですし。
「妹? 私とお前とには血縁関係はないが?」
ううん。マーティカさんは私の大切なメイドさんの妹さん。だったら、その子達の面倒を見るのは私の役目。だからね、少し強引に捕まえちゃいますね?
「ワイヤーか。だが、百本程度では捕らえきれないぞ?」
だったら百八十本の自由自在の動きで捕まえましょう。だって、やんちゃな妹の世話をするのはおねーちゃんの役目だから。
「ならば捕らえて見せろ、ロシアの英雄よ!」
キアラの報告では、彼女が操るのは《ビェールクト》。究極の近接格闘を目指した機体のはずだ。ならば、私も受けて立とう。この《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》で。
「その焔の剣か。だが、相手にとって不足無しだ!」
ふふっ、ラトロワさん達に比べたらまだまだだよ。ほら、ワザと見せた隙に突っ込んだらだめ。ほら、せっかくの高周波ブレードなんだから、まずは当てないと。
「舐めていると、足下をすくわれるぞ?」
大丈夫。だって、妹への躾ですもの。ほら、おねーちゃんの胸に飛び込んできなさい。
「っく! 舐めるなぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
でも、まずはお・し・お・き・☆
「なっ!? ぐぅっ!」
ワイヤーで作った拳骨で、マーティカさんのことをぶん殴る。死角からぶん殴ったので、マーティカさんは思いっきり急所に攻撃を喰らってしまい、気絶してしまった。そのままお姫様抱っこでキャッチ。さてと、スコールさん。妹は帰してもらいますよ? あと、「ウチの」機体も。
『……いいでしょう。あなたたちには手は出しません』
ありがとうございます。ふふふ、でも、随分とおイタをしてくれたみたいで。マーティカさんの件に免じてキアラも止めておきますけどね。オルコットさんもレベルアップしたみたいですし。
『えぇ。それに関しては感謝します。この借りはまたいずれ』
はい。ではまた。
スコールさんとの通信を切って、外に待機してもらっていたメイドさんにマーティカさんを預ける。今夜会社に行きますから、それまでよろしくお願いします。
「はい。お任せ下さいませ」
さてと、新しい妹のことは、取り敢えずこれで大丈夫。他のこともキアラがいれば大丈夫だろう。いろいろあったみたいだし、クリスカ達を慰めに行かないとね。
こっそりアリーナに戻って、混乱に乗じてピットに戻る。中ではクリスカとイーニァの他に、キアラも来ていた。二人とも怪我はない?
「ハクノ! どこに行ってたんだ!」
「けがはしてない!?」
うん大丈夫だよ。ちょっとした特別任務で出てたの。キアラ、あの子は会社に送ってもらったから。これから私も行くけど大丈夫?
「はい。外出届けは出してありますから大丈夫ですよ。クリスカさんもイーニァさんも調書を取り終えたらいけますので、それまでお待ち下さいな」
じゃあ私は食堂で待ってようかな。やはり騒ぎがあったためか、結構な人数がお茶を飲みながら話し合っている。私はお茶と一緒にケーキを頼んで、窓際の席でちょっと早いおやつタイム。うまー。
「あ、白野」
あら、簪さん。大変だったみたいだね。事情聴取は終わったの?
「うん。私はアリーナで警備を担当してたから。織斑君とかは随分長引いてるみたいだけど」
そっか。簪さんもお茶?
「うん。今日は疲れたから。糖分補給」
ふふふ、じゃあ今度整備室にお菓子を差し入れしてあげる。ほら、一緒に食べよ。
「うん」
そうだ。簪さん。私たちのレースどうだった?
「本当に凄かった。篁先輩も白野も、全速力で駆け抜けてて、見ててワクワクした」
それは何より。じゃあ、会長さんのはどうだった?
「むぅ……」
ほらほら、むくれないむくれない。お姉ちゃんとかじゃなくて、同じいちIS操縦者として、どう思った?
「うん……やっぱり凄い。白野とかサラ先輩とかとは違って一点特化じゃなかったけど、機動技術も戦闘技術も他の選手とは一線を画してた。やっぱり、私の目標」
それを聞いたら会長さん、狂喜乱舞すると思うよ。直接言ってあげたら?
「や、やめて。お姉ちゃんは内緒」
ふふふ、了解だよ。でも、簪さんも少しずつ素直にならなくちゃね。姉妹そっくりなんだから。
「お姉ちゃんと?」
うん。会長さん、簪さんのこととなると三十分は活動停止するんだもん。で、大体虚さんにどつかれる。
「ふふっ、だらしないんだね」
そ。結構だらしないんだから、会長さんは。それに、虚さんには頭が上がらないみたいだし、織斑君タイプだし。
「織斑君タイプ?」
とっても弄りやすい。
「あぁ……、そういうことなんだ」
そ。そういうこと。さてと、そろそろクリスカ達のも終わる頃かな。お先に失礼するね。
「うん。あ、白野」
なぁに?
「優勝おめでとう。本当にかっこよかったよ」
ありがと、簪さん。
部屋に戻ってお出かけの準備をしていると、ノックをされた。クリスカ、終わったの?
「あぁ。私たちはすぐでも出られるが、どうする?」
私も出られるよ。車を回してもらってるから、行こっか。
ということで、三人でメイドさんが運転する車に乗る。《カリス社》に入る。案内された部屋に入ると、ヴィーラさんに出迎えられた。
「お待ちしておりました白野様」
お疲れ様ヴィーラさん。マーティカさんはどんな感じ?
「マーティカ様はまだお休みです。どうなさいますか?」
ちょっと覗いていこうかな。クリスカたちはどうする? 無理にとは言わないけど……。
「……私も行く」
「わたしたちは、ハクノについてくってきめたもん」
そっか。じゃあ一緒に行こうね。
そういって、隣の部屋に入ると、中にはミラさんとベッドで眠るマーティカさんがいた。ふふふ、やっぱりクリスカにそっくり。本当に姉妹なんだね。
「あぁ。お前に打ち明けるまでは怖くて仕方が無かったが……、今は大丈夫だ」
「んっ……ここは……?」
あ、目が覚めた? ここは《カリス社》だよ。ちょっと秘密裏に連行しました。
「そうか……私は負けたんだったな」
ちょっと不意打ちだったけどね。頭は痛くない?
「少し痛むくらいだ。そうか……負けたのか」
一応スコールさんには断ってるから、マーティカさんは《カリス社》所属になるね。何か、得意なこととかある?
「……私は戦闘訓練しか受けていない」
なら、メイドさんだね。ヴィーラさん。職業訓練とかできる?
「はい。もちろんです」
ヴィーラさんの目がキラリと光った。やる気だ。
「わ、私はやらないぞ?」
駄目です。幸い、明日と明後日は休みだから私も一緒に付き合います。サイズはクリスカと一緒だから、服とかは大丈夫かな。
「はい。マーティカのサイズでしたら、予備がございます。明日からすぐにでもできますわ」
じゃあ、明日は「マーティカ、メイドになる」だね。私、ワクワクしてきたよ。
「……これは決定事項なのか?」
「諦めろ。まぁ、訓練だと思えばいいだろう」
クリスカもマーティカさんと話せているようだし、万々歳だ。あとは、マーティカさんがメイドになれば大団円だ。
明日からがんばろー。
「オー!」
「どうしてこうなったんだろうか……」
次回、マーティカ、メイドになる(序)
ユーロフトント組をどうだそうか悩み中。
これ以上専用機持ちを増やすとやりにくいので、ドイツ三人娘的なポジションで出します、多分。
ちなみに感想で書かれてびっくりしてました