新キャラはあとThe Euro Front三人娘だけです。
Another side マーティカ
「さてと、練習といきたいところだけど、流石に今はお腹いっぱいでしょう? 少し休憩にしましょうか」
「あ、あぁ」
二人が出て行き、ハクノと一緒にいたメイド、確かミラだったか。彼女と二人になった。ヴィオリニスタとは違い、随分と優しいようだ。
「あら、私の顔に何かついてる?」
無意識にジッと見つめていたらしい。
「いや、何でもない」
「そう? ならいいけど。取り敢えずお茶は……止めときましょうか。取り敢えず、リラックス出来るアロマでも焚いてあげる。夕飯は用意しておいてあげるから、落ち着いたら食べなさい」
「あ、あぁ……。お茶を淹れる練習はしないのか?」
「もう散々したのでしょう? 一日で上達なんて出来ないし、これからやっても大して変わらないわ。それより、さっき白野様が言っていたでしょう? 淹れる相手のことを考えろって」
相手のことを考える……。
「どうすればいいのだ?」
それが一番よく分からない。今まで私が考えてきたことは、相手をいかに始末出来るかどうかだ。全くの反対のことだ。
「話には聞いていたけど、筋金入りね」
「聞いていたのか? 私が亡国機業の一員だったことを」
「もちろんよ。これでも《カリス社》の一員。それに、キアラ様が不在の時は色々な仕事を任されているのよ。第一、白野様が関わっている以上、私たちが知らないはずがないでしょう? ん、まだまだね」
ミラは私が淹れたお茶を飲みながら言った。まぁ、それもそうか。
「それに、白野様のメイドは一癖も二癖もある人間だしね。ヴィーラだって元々は《永久凍土》と呼ばれてたし、他の子達もあなたのように秘密結社のエージェントや産業スパイだった子達も多いわ。皆キアラ様が連れてきたのだけれどね」
「それは本当にメイド、なのか?」
それはもうただの戦闘集団では……。
「えぇ。私たち全員白野様に全てを捧げているメイドよ。もちろん、クリスカやイーニァもね」
あの二人が……。私と同じ、戦いのために作られた存在だというのにも関わらず。
「また、分からないって顔してるわね」
どうやらお見通しのようだった。そうだ、私には分からない。
「あ、面白いことを思いついたわ。ふふふ、キアラ様に相談しなくちゃ」
……イヤな予感がする。
Another side out
昨日はヴィーラさんと一緒にお休みして、今朝はミラさんに起こされた。おはよう、ミラさん。
「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
もうグッスリ。
「それは良かったです。今日の食後のお茶はマーティカが淹れてくれますわ。彼女、張り切っていましたから、楽しみにしていて下さいね」
うん。そういえば、クリスカ達は?
「二人は学園に帰りましたわ。少し言付けを頼みましたので」
言付け? まぁ、後で二人に聞けばいいか。
いつもの如く絶品の朝ご飯をいただいた後、今日のちょっとしたイベント。マーティカ、初めてのお茶淹れ。マーティカ、お願い。
「あ、あぁ……」
少し緊張しながらポットからカップにお茶を淹れるマーティカ。心なしか、ヴィーラさんも緊張している。何だかお母さんみたい。
「ど、どうぞ」
うん、ありがとう。……いい香り。では。
「…………。……どうだ?」
……うん。まだまだかな。ちょっと渋みが出ちゃってるや。
「……そうか。ヴィオリニスタ、悪いが」
ううん、今日の朝のお茶係はマーティカなんだから。もう一杯頂戴?
「だが、私のお茶では美味しくないから……」
そんなことないよ。このお茶はとっても美味しい。
「だが、渋みが」
まぁ、それは要練習だね。でも、マーティカは私の為に淹れてくれたんでしょ? だから、とっても美味しいの。だから、もう一杯頂戴。私の可愛いメイドさん?
「……あぁ。……今度はもっと美味しいお茶を淹れてやる」
うん。楽しみにしてるね。
ちょっぴり渋い紅茶を飲みながら、ヴィーラさんとミラさんと、それからマーティカと。三人のメイドさんと一緒にお話をする。ミラさんがお仕事ということで出て行ってから、私たち三人は研究室に向かった。
「今日はマーティカのISを見せてもらいます。《ビェールクト》をここに」
「あぁ」
マーティカはイヌワシのペンダントを研究員の人に渡した。そう言えば、《ビェールクト》の待機状態のペンダント、格好いいよね。
「少々安直な気もするがな」
聞けばビェールクトとはイヌワシのことのようで。まんまだった。《ビェールクト》は近接戦闘が得意なんだよね?
「あぁ。それと機動制御性能も高い。中々使いやすい機体だ」
「たしかにスペックを見てもバランスの良いISですわ。篁様の《武御雷》のように極限まで高められてはませんが、その分動かしやすいものとなっています」
あ、《武御雷》って、そんなに難しいものなんだ。
「はい。《武御雷》は徹底的に速度と加速を追及したISとなっています。それだけで言えば、篠ノ之様の《紅椿》にも負けていないほどです。それ故に、機動制御については、完全マニュアル制御なので、動かすことが非常に難しい機体なのです」
そんな機体で、あんな動きをしていた唯依姫先輩って。
「では次は実際に動いてみなさい。白野様、申し訳ありませんが、マーティカと一緒にISに乗ってくださいませんか?」
もちろんです。さ、マーティカ。一緒に行こ!
「わ、分かったから引っ張るな!」
「あらあら、うふふ」
この間とは違って、今日はバトルではないのでとても楽しみだ。
今回のテストはスペック調査だったようで、飛び回ったり、軽い戦いだけで終わり。お昼前には終わったので、たまにはということで外に食べに行くことにした。マーティカとヴィーラさんはメイド服のままだったので、さぞかし目立つかと思いきや、普段からメイドさん達が出歩いているようでさほど目立たなかった。まぁ、二人とも超美人だったので、それはそれで目立ったのだけど。
で。
「……これはどうやって使うのだ?」
今日は和食ランチ。マーティカはお箸に苦戦している。えっとね、これはこう持って使うの。
「こうか? あっ!? うぅぅ……」
ふふふ。これも要練習だね。ヴィーラさん、よろしくお願いします。
「はい。マーティカ、午後はテーブルマナーを一通り教えます」
「勘弁してくれ……」
頑張ってね、マーティカ?
午後は私一人。ミラさんもお仕事中なので、《カリス社》では初めての一人での探検。その結果、迷子になりました。
うーん……ここはどこだろうか? とりあえず、エレベーターでもあればいいんだけど、それすらもない。まさか階段が途中で途切れているとは思わなかった。
「おや、君は」
初めてのフロアで首を傾げていると、やけに凜々しい声がかけられた。振り返れば、《カリス社》名物の超美人の女の人。やっぱり《カリス社》には美人の人しかいないらしい。えっと、あなたは?
「おっと、すまない。私はスィーリア・クマーニ・エイントリー。《カリス社》の開発部門に所属しているものだ。そういう君は岸波白野くんだな? お初にお目にかかる」
あ、はい。おぉぅ、かっこいい。
「ふふふ、ありがとう。それで、こんなところでどうしたんだ?」
あ、その、ちょっと迷子になってしまって。さまよってました。
「そうだったのか。まぁ、このフロアは作りが複雑になっているからな。良ければ外まで案内しよう」
でもお仕事とかは?
「今日は午前だけだったから気にしないでいい。さ、こっちだ」
スィーリアさんに案内されて、ようやく外に出られた。せっかくと言うことで、午後はスィーリアさんと一緒にショッピングをすることになった。でも、まさかスィーリアさんがIS学園の生徒会長だったとは。
「あの頃は個性的なメンバーが多くてな。中々に面白かった。あぁ、更識もいたぞ」
会長さんもいたのか。帰ったら聞いてみよ。スィーリア先輩は普段どんなことをしてるんですか?
「今はキアラ先生が開発したもののテストをしている。色々な装備を試せるから中々に面白い。まぁ、これからは……これは本決定になったらにしようか」
素敵な微笑みにごまかされた。むむむ。
「そんな顔をするな。大丈夫だ、すぐに分かるさ。ほら、この服なんか似合うぞ」
むぅ……可愛いのでごまかされてあげます。ごそごそ……スィーリアさん、どうですか?
「……(ぽー)」
スィーリアさん?
「あ、あぁ。可愛いぞ?」
? ありがとうございます。じゃあ、買っちゃお。あ、こっちのヌイグルミのお店入ってみましょ? おぉ、モフモフ。
「モフモフ……」
ス、スィーリアさん?
「モフモフ、クマ、可愛いな……」
……ほらー、おっきなクマさんですよー。フカフカモフモフだよー。
「おぉっ!! はっ!? ……コホン。な、なかなか可愛らしいな。君の部屋に置いてみたらどうだ?」
いや、その……そ、そうですね。でも、今日はお近づきの印にお一つプレゼントしますよ? この子でもいいですけど。
「えっ!? い、いや、だが、高価なものだし、それに、後輩である白野に買ってもらうのは」
そんなにデレデレされても。ほら、このお馬さんなんか凄いスベスベですよ? ほら、ギュってしてみて下さい。
「おぉ……確かにこの子はスベスベだ」
じゃあ、この子を買ってあげますね。あと、このクマさんも買ってあげますね。
二つのヌイグルミを包んでもらって、スィーリアさんにプレゼントする。
「ありがとう。絶対に大事にする」
愛おしげにヌイグルミを抱きしめるスィーリアさんは反則的に可愛い。お店の女性達の視線を独り占めである。
「白野、良ければ私からも何かプレゼントさせてくれ」
スィーリアさんが? じゃあ、何かスィーリアさんのお気に入りのものが欲しいです。
「私のか? そうだな……、では食器を贈ろう。白野はお茶が好きだと聞いているからな」
それは嬉しいですけど、それこそ高価なものですし。
「それこそ気にしないでくれ。こんなにも素敵なものをくれたお礼だ。さ、行こう。このフロアにあるからな」
スィーリアさんに連れられて、オシャレなお店に入る。食器がたくさん置いてある。
「いらっしゃいませエイントリー様。本日は何をお探しですかな?」
お店に入るやいなや、お髭が立派なおじさまがやってきた。お知り合い?
「このお店は私の実家が出資していてな。この方は昔からお世話になっていた人なんだ」
ほへー。でも、どれも素敵な食器ですね。あ、これなんてとっても素敵。
「ありがとうございます岸波様」
「今日は白野にカップをプレゼントをと思ってな。私のお気に入りということで今日は来させてもらった」
「それはそれは。光栄でございます。それでしたらオススメのものがございます。ただいまお持ちして参りますので、それまで我が店自慢の作品をご覧下さいませ」
ふふふ、楽しみですね。
「あぁ。爺が一押しというのだから、間違いはないぞ。お、これなんかいいな」
待っている間、スィーリアさんと一緒に食器を眺めていたが、これがまたとっても楽しい。一つ一つ丁寧に説明してくれるので、とても楽しいのだ。しかも、顔と顔の距離が近いので、結構ドキドキする。
「お待たせいたしました。さぁ、こちらにどうぞ」
案内されたソファに座って、爺やさんが持ってきてくれたカップを見せてもらう。青い肌に金色のラインが入ったティーカップ。
「これは、いやはや……素晴らしいな。このようなものを作るとは。改めて尊敬します」
「それを聞けば職人達も喜ぶでしょう。このカップはエイントリー様をモチーフにさせていただいたものなのです」
「私をか?」
なるほど。確かにこの金糸なんか、スィーリアさんの髪にそっくりだ。それに、全体的に高貴な感じがしますし。
「何だか、そう言われると恥ずかしいな。だが……確かにいいカップだな。……ふむ。では、これを贈らせてもらおう。すまないが、二つもらおうか」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
二つ?
「あぁ。私も気に入ってしまったからな。ウチに招待したときはこのカップで出迎えさせてもらうよ」
ふふっ、じゃあ、私のお部屋に来たときは、私もこれでお出迎えします。お揃いですね?
「あぁ。喜んでもらえたならこちらも嬉しい。大切に使ってあげてくれ」
はい。スィーリアさんだと思って大切にしますね。
「バカ者。そんな言い方をするな。恥ずかしいだろう」
へへへ、ごめんなさい。っと、メールだ。ありゃ。
「どうした?」
キアラからの呼び出しです。今日はこっちに来てたんだ。
「キアラ先生か。私も一緒に行ってもいいかな? 少し気になるところがあるのでな」
もちろん。一緒に行きましょ。
スィーリアさんと一緒に研究室に行くと、そこには呼び出したキアラはもちろん、ヴィーラさんやミラさん、マーティカもいた。みなさんお揃いで。
「あら、スィーリアさんともご一緒でしたか。あぁ、スィーリアさん。先程いただいたメールの件は了解いたしました。後は私の方でやっておきますので、あなた様は先日お伝えしたとおりにお願いいたします」
「はい。では、そのようにします」
何事? ねぇねぇキアラ。どんなようだったの?
「あぁ、そうでした。白野さんに贈り物ですわ。どうぞ」
そう言って渡されたのは一着の服。何だろうと思って広げてみると、白を基調とした着物だった。あ、これってアンヌさんにお願いしてた……。
「はい。アンヌ様は直接渡したかったようですけど、ショーの準備が忙しいようで。また後日新しいデザインの制服を贈って下さるようですよ」
わーひ。ちょっと着てみていいですか?
「もちろんでございますよ」
「白野様、お手伝いいたします」
ヴィーラさんに着付け方を教えてもらいながら、新制服を着た。おぉぅ、凄く動きやすい。どうかな、ヴィーラさん?
「とてもお似合いですわ。あとはこちらを」
最後に、真っ赤なショールをかけて、と。みんな、似合う?
「はいっ、とてもよくお似合いですわ」
「あぁ。可愛いぞ、白野」
皆さんには好評のようだ。週明けからこれ着ていこっと。
「アンヌ様も喜びますわ。パシャリ、と」
うえーい。あとでアンヌさんにもお礼しなくちゃ。
「帰りはお送りいたします。車の準備は出来ておりますが、いかがなさいますか?」
うん。お願いします。服は……明日お披露目にしたいから、着替えていこっと。
制服を着替えてから、入り口に向かう。見送りに来てくれたのはミラさん、マーティカ、スィーリアさんにキアラ。しかし、本当に美人揃いだ。
「いつでもお越し下さいね。私たちメイド一同、腕によりをかけたお料理を用意してお待ちしております」
「私も……いや、何でもない。今日は楽しかったぞ」
? どうしてスィーリア先輩はたまに言葉を濁すのだろうか。マーティカも、練習頑張ってね?
「あぁ。やるだけやってみよう。…………」
どしたの?
「その……сестра хакно」
んゃ? ロシア語は分からない。なんて言ったの?
「な、なんでもないっ!」
「あらあら」
何やらヴィーラさんがクスクスと笑っていたので、悪口ではないようだが。あとで教えてね?
「し、知るかっ」
あら、可愛い。じゃ、ヴィーラさん、行きましょうか。
「はい。では参りましょうか」
車でIS学園に送ってもらい、帰ってきたことを織斑先生に報告する。二日ぶりです。
「全く、レースの後は早々に逃げおって。学園にお前宛の電話が殺到していたのだぞ」
まぁ、それは《カリス社》にお任せしているので。お疲れ様です。
「まぁ、それも私たちの仕事なのだがな。すまんな、つい愚痴を言ってしまった。行っていいぞ」
部屋に戻ると、のほほんさんと簪さんが二人でアニメを見ていた。
「あ、白野」
「はくのん、おかえり~」
ただいま。私も一緒に見てもいい?
「うんっ、もちろん」
ということで、この日の午後は簪さんセレクションのヒーローアニメを見て、オールナイト上映会となったのでした。
次回、お披露目。
原作線に入ります。
スィーリア先輩が言葉を濁していたのは7巻終了後に分かるかと。
イーニァ視点も書きたいけど、オール平仮名になるから書けない。内心は漢字も使おうか。