Another side イルフリーデ
織斑先生の合図と共に、会場は濃い蒸気に包まれた。
『これは!?』
『目くらましか!』
いや、違う。白野さんが《水玉(アクヴァマリン)》を超高温の《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》で切り裂いたことで、普通よりも濃い蒸気が、セシリアさんのレーザー兵器の妨げになる。証拠に、セシリアさんのレーザー兵器の照準が定まらなくなっている。視界自体はISのセンサーがあるので支援するのには問題ない。だが、ヘルガ達近接戦闘をする者達は違う。やはりズレが生まれるのだろう。とてもやりにくそうだ。
『くっ。だから実弾兵器を積めと言っていたですのに! ヘルガさん! この蒸気が晴れるまで持ちこたえて下さいまし!』
『難しいが……やってみせよう!』
視界が悪い中、ヘルガは打鉄の刀を巧みに操り、何度も何度も白野さんと互角に切り結んでいた。それこそ、私の砲撃も物ともせず。
だからといって、へこたれてなんかいられない。白野さんに言われた、蒸気が晴れた瞬間のチャンスを逃さぬよう気を張り巡らせる。
そして蒸気が晴れ、視界が鮮明になった瞬間。白野さんは炎の壁《聖剣集う絢爛の城(ソード・キャメロット)》を二人の周りに打ち立てる。その瞬間がチャンスとなる。私はワザと弱められていた炎の壁を突き破り、セシリアさんの懐に潜り込む。
『なっ!?』
気付いたときにはもう遅い。私の《盾殺し(シールド・ピアーズ)》は完全に《ブルーティアーズ》に接しているのだから。
――チェックメイトだ。
引き金を引き、低く鈍い音が目の前で響き、蒼い雫は湿った地面に降り注いだ。
Another side out
『セシリア! くっ!』
イルフリーデさんは上手くやってくれたようだ。《聖剣集う絢爛の城(ソード・キャメロット)》を二箇所ではったから、流石の《聖杯》もエネルギーギリギリだ。
だから、勝負をつけるよ、ヘルガさん。
『あぁ。せっかく憧れの英雄と打ち合えるんだ。これほど楽しいことはない!』
あら、クールな顔して熱血的。
なら、皇帝さんの衣装でお相手しましょう。セイバー、衣装借りるね?
『うむ! 余の勝負服だ。後で写真を送るんだぞ』
……まぁ、映像は撮ってあるんだろうし。じゃ、お着替えターイム。
光に包まれて、次の瞬間にはセイバーの赤い舞踏服に包まれる。……履いてるよ?
『それは……ISなのか?』
うん。基本的には《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》だけだし、備え付けのはないからね。
『ルナが見たら狂喜乱舞するな。だが、それが白野の本気の一端というならば、胸を貸していただこう』
うん。じゃあ、いくよ。私たちの戦いを魅せてあげる。一瞬だから見逃さないようにね?
セイバー、一緒に行くよ?
『うむ! 余と一緒に口上を言うのだぞ!』
……ちょっと恥ずかしいけど、分かったよ。一緒に舞台に乗るんだしね。
『そうだ。では行くぞ?』
えと……
この一輪を手向けとしよう…
舞い散るが華、斬り裂くは星! これぞ至高の美……
しかして讃えよ! ドムス・アウレアと!!
『しばし私情を語ろう
……告白するぞっ――余は奏者が、
大好きだっ!!」
え、そっち!?
『ぐあぁぁ!!』
あー、もう……。妙に締まらないじゃない。
『何を言うか! 余の溢れる奏者への愛を民衆に知らしめねばならぬだろう。それに、余の姿で、余の舞踏服を纏ってくれたのだ。張り切らないでどうするのだ!』
あぁもぅ……。分かった分かった。取り敢えず、戻すよ?
『あ、待て奏sy』
取り敢えず舞踏服から《聖杯》に戻す。イルフリーデさんも疲れてはいるようだが、無事のようだ。一番痛そうなのはセシリアさん。まぁ、あの一撃を受けていれば当然か。大丈夫、セシリアさん?
「えぇ。全くもう……あんな手で来るなんて思いませんでしたわ」
あはは、ゴメンね。お詫びに抱っこして連れて行ってあげる。
「貴女という人は……分かりましたわ。お願いいたしますわ、英雄さん?」
了解いたしましたお姫様。
取り敢えずセシリアさんと一緒に織斑先生の所に行くと、盛大にため息をつかれた。失礼な。
「……まぁいい。取り敢えず、四人は下がっていろ。次はデュノアのペアと鳳のペアだ。急げ」
がんばってねー。あ、イルフリーデさんとヘルガさん。お疲れ様。
「はい。白野さんも凄かったです!」
「手も足も出なかった。最後の一撃なんて美しいと感じてしまったほどだ」
えへへ、ありがと。でも、私だってラファール相手にあそこまで手こずるとは思わなかったよ。ひとえに中の人の腕のお陰。今度一緒に訓練しようね。イルフリーデさんも誘ってるの。
「喜んで参加させてもらおう。ふふっ、楽しみだ」
あ、もちろんルナさんも一緒にね。あとでジークリンデさんにも教えてあげよっと。
「へ? ジークリンデさんにですか?」
うん。貴女のお弟子さんと仲良くなりましたよって。
「お友達っ!? 私たちが?」
うん。一度一緒に戦ったらお友達。駄目?
「ふふふっ。あぁ、私たちは親友だよ。よろしく、白野」
「あっ、ヘルガだけズルいわっ! 私だって白野さん……いえ、白野のお友達なんだから!」
というわけで、ドイツ娘さんたちとお友達になったのでした。あ、じゃあ織斑先生にバレないうちに三人で写真撮ってジークリンデさんに送ろっか。
「ふふふ、ルナには悪いけど、一足先に撮っちゃいましょうか」
じゃあ、私の隣に来て? あ、セシリアさんは私に抱っこされたままでね?
「へっ!? ……空気を読んで黙っていましたのに。三人とも、聞いているだけで頬が赤くなってしまいましたわ」
其れはご愛敬ということで。じゃあ、撮るよー。笑顔でー。
――カシャリ。
うん、みんな良い笑顔。じゃあ早速送るね。
「ジークリンデさんも驚きそうね」
「あぁ。後でルナも一緒に撮ってやらないとな」
それは授業が終わってからだね。セシリアさんもそろそろ大丈夫?
「えぇ。というか、ずっと抱っこしていなくても良かったですのよ?」
それは勝者の特権ということで。じゃあ、私たちも観客席に行こっか。
「あぁ。ルナ達も次くらいだろうしな」
クリスカ達もそろそろかな。簪さんのも見ないと。んで、会長さんに自慢する。
「相変わらずですわねぇ……」
だって楽しいんだもん。ま、そんなことは置いといて。早く行かないと、ボーデヴィッヒさんとルナさんの勝負見逃しちゃうよ。
「そうだな。もし見てなかったというのがバレてしまっては延々と説教されてしまうからな」
ヘルガさんの言葉に、イルフリーデさんがブルリと震え上がる。え、ルナさんって怒ると怖いタイプ?
「……思い出してだけでも恐ろしいわ。急ぎましょう!」
おぉぅ、引っ張らんといてーな。
その後、何とかルナさん達の試合の最後の部分を見ることに成功したのだけれど、一人だけのけ者にして写真を取ったということで、イルフリーデさんとヘルガさんはお説教されていた。
私? 私はボーデヴィッヒさんと鳳さんに正座させられました。解せぬ。