朝起きて、私はふと思った。
そう言えば、私自身の技術ってどれくらいなんだろう、と。
それを朝箒さんたちに話すと首を傾げられた。
「どういうことだ?」
いやね、《聖杯》のお陰で随分楽しくやらせてもらってるけど、実際の私のIS操縦技術ってどれくらいなのかなって思って。
「機体の性能に助けられているということか?」
うん。ボーデヴィッヒさんの言うとおり、《聖杯》じゃないIS使ったらどうなるのかなって思って。
「じゃあ、試してみればいいんじゃないかな?」
それは無理。
「どうしてですの?」
他のに乗ろうとすると、《聖杯》が拗ねちゃうから乗れないの。ギリギリの妥協点が他の武装をつけることだから。
「そうだったんだ……。じゃあ、武装とか性能を制限してやってみたら?」
あ、そっか。それならいい? ……不満だけど、許してくれる? ん、ありがと。じゃ、放課後クリスカ達と一緒にやってみよっか。
「あら、私たちとでは駄目なのですか?」
だって、今日は織斑君との一緒の訓練でしょ?
「うっ」
「はぅっ」
「くっ」
「あははは……」
それに、一応ロシアの代表候補生だし、元候補生の二人の意見も聞いておきたいしね。私の方は気にしなくていいよ。……うん、二人からも了解貰えたし。
「ふむ、では後で結果は聞かせろよ?」
了解だよ。今日は私が頑張る番だね。よろしく《聖杯》。
ということで放課後。昼休みに二人には直接お願いして改めて了承を貰った。一応キアラにも伝えたら、後でデータが欲しいといわれた。まぁ、ログを渡すのでそれでいいだろう。
「お、来たか」
「ハクノ!」
どうやら私が最後だったらしい。ごめんね、突然お願いしちゃって。
「んーん。わたしはいっしょにいれてうれしいもん!」
「それに最近はあまり一緒に訓練もしていなかったしな。休日も箒たちといるようだしな」
ジト目で睨まれたのでお手上げです。
「まぁいい。今日はこうして面白そうなことを出来るしな。それで、私たちは何をすればいいんだ?」
二人には軽く私のサポートをして欲しいの。ラファールくらいの性能に調節したときどのくらい動けるか試したくて。その時は《聖杯》搭載の基本装備しか使わないつもりだから、どうなるか見てて欲しいの・
「分かった。では、まずは軌道からだな。一応言っておくが、いつものように無茶は絶対にするなよ。あれは《聖杯》の性能を駆使して初めて出来る芸当だからな」
うっ、了解です。とりあえずまずは基本的な飛行で我慢します。
《聖杯》を身に纏い飛び上がると、それだけでもいつもとは違い、少し身体が重い。
やっぱり動きにくいけど……うん、何とかなりそうかな?
「よし、軽く周回しよう。私たちの間を飛べ」
「こっちこっち!」
いつもよりゆっくりと二人の間に向かう。そして二人に挟まれながら飛行訓練。やはり慣れないからか少しふらふらだったため、イーニァに手を引っ張ってもらったりした。イーニァ何だか嬉しそう。
「えへへ。だっていつもとぎゃくなんだもん。とってもたのしいの」
そうだね。私も楽しいの。いつもみたいにビュンビュン飛び回るのも好きだけど、こうやって、一つ一つ確かめながら飛ぶのもいいね。たまにやっていこっかな。
「そのときはわたしもいっしょ!」
もちろんだとも。クリスカももちろん一緒ね。
「当たり前だ。お前一人では、何をしでかすか分かったものではないからな」
うん、だから一緒にお願い。
「わ、分かっている」
そっか。じゃ、そろそろ武装も試してみたいな。クリスカ、お願いできる?
「了解した。だが、軽くだぞ?」
はーい。とはいっても、ロマン武器だらけだからなぁ。ワイヤーがどれクレイ動かせるか試してみていい?
「分かった。どんどん打ち込んでこい」
いつもは感覚でやってるけど、今回は完全マニュアル制御だ。まずは一本ずつっと。あわわ。
「ふふっ、狙いがばらばらだぞ。もっと動きに集中しろ。並列して物事を捉えてみろ」
分かってはいるけど、難しい。《聖杯》がお手伝いしたくてウズウズしているけど、今日は駄目。ワイヤーとしてじゃなくって、私の身体の一部分として。延長線上として。私の一部なら、自由自在に動かせる。
「そうだ、まずはそれでいい。自分の手を動かすようにして動かすんだ」
クリスカに言われて通りに、自分の手を動かすようにしてワイヤーを操る。《聖杯》と一緒に動かしているときの感覚を思い出しながら、ワイヤーを動かしていく。
動きに慣れていくに連れ、ワイヤーの本数を増やしていく。四本、六本、八本と二本ずつ増やしていくが、だんだんと難しくなっていくと同時に、不思議と《聖杯》との一体感が増していくような気がする。
一端休憩と言うことで、三人で例のジュースを飲む。
「それにしても、白野の成長速度には驚きだ。いきなり十本まで伸ばせるとは思わなかったぞ」
「うん。うごきがどんどんするどくなってた」
イーニァにもそう言って貰えたのは良かった。イーニァは攻撃の技術に関してはクリスカよりも上だ。
「それよりどうする? もう少し動いていくか?」
うん。今度はイーニァと一緒にやりたいかも。次は動きながら。
「うん! じゃあいこっ!」
一瞬で飛び上がるイーニァに、周りの子達が驚愕していた。それだけ素早い展開と、美しいまでの機体制御だったのだ。夕日を反射して赤光を反射して輝く銀色の機体《ジュラーヴリク》は、見惚れるほどに美しい。
「はくの? はやくいこうよ」
うん。じゃあよろしくねイーニァ。
「うん!」
ふひー。
一足先にイーニァとお風呂に入り、ポカポカの状態で食堂に向かう。旅館じゃないけど、浴衣の上に一枚羽織った服装。《カリス社》印の非売品。三人お揃いです。
席を探していると、何やら重い空気の女の子。箒さんである。
箒さん、今日はどうだったー?
「あ、白野、と、クリスカとイーニァか。お揃いなのだな」
うん。お風呂に入ってきたからね。箒さんは? 織斑君達とは一緒じゃないの?
「あぁ。少し私用があってな。皆とは別れた。良ければ一緒にどうだ?」
じゃあ失礼するね。で、今日の特訓はどうだったの?
「今日は五分だったな。最近絢爛舞踏のコツが分かってきたから、随分と動きやすくなった」
むむっ、これは私もうかうかしてられない。フルパワーで来られたら、《聖杯》でも大変だからね。
「あぁ。また手合わせしよう。今度は簡単には負けないぞ? もちろんクリスカたちも」
「うん! まけないんだから!」
「受けてたとう。なんせ、将来の同僚になるんだからな」
どうやら二人も乗り気のようで。私をおいてくなー。
「もちろんだ。今の一番の目標はお前なのだからな」
おぉぅ……情熱的。照れちゃうぜ。
「全く……馬鹿なことを言うものでない。では先に失礼するぞ」
じゃーねー。
箒さんと別れた後、私たちも改めて大浴場に向かう。なんだかんだ言って大きなお風呂は気持ちいのである。
はい、背中流すよー。ざばー。
「きゃー!」
はい、もういっちょー。
「わー!」
はい、次はクリスカの背中ね。
「わ、私は自分で洗える!」
はいはい。後ろ向いて。
「はくののせなかは、わたしがあらってあげるー」
三人で並んで背中の流し合いっこである。なんだか楽しい。
「あー、岸波さん楽そうなことしてるー」
そんなことをしていたら、周りからも注目された。ふふん、いいだろ。
ちょっとした優越感に浸りながら湯船につかる。
「そういえば、今度のタッグマッチ、白野は誰と組むのだ?」
うーん、まだ決めてないけど、せっかくだから、専用機持ちじゃない人と組もうかなって思ってる。
「えー、わたしとはくまないの?」
イーニァたちとも一緒にやりたかったけど、せっかくだから。前に組んだイルフリーデさんたちと組んでみようかなって思ってるの。ジークリンデさんに聞いたら是非にって言われたしね。
「ドイツの英雄だな。だが、それも面白そうだ。オファーはしたのか?」
ううん。せっかくだから今からしに行こうか。
「わたしたちもいっしょにいってもいい?」
うん。じゃあ早くあがろうか。
お風呂から出て、お茶のセットを持ってイルフリーデさんの部屋に向かう。イルフリーデさん、いる?
『はーい。ちょっと待って下さい』
はろろー。イルフリーデさん、お邪魔してもいい?
「白野!? え、えぇ。どうぞ、入って」
イルフリーデさんのお部屋にお邪魔すると、ちょうどよくヘルガさんとルナさんもいた。
「おや、どうしたんだ?」
ちょっとお誘いを。まぁ、イルフリーデさんに用があるの。
「私に? 何?」
今度のタッグマッチのペアの申し込み。イルフリーデさん、まだフリーかな?
「へ? …………えぇぇ!?」
おぉぅ、耳が。それで、お返事は?
「も、ももももちろんオーケーよ!!!」
よし、パートナーゲット。
「むぅ、ズルいですわイルフリーデ。私だって、白野さんと一緒に組みたいです」
「私もだ。白野、私では駄目なのか?」
二人とも組んでみたいけど、私と一番相性いいのがイルフリーデさんだと思うから。それに、一回組んだのも何かの縁だしね。
「よろしくね、白野。足を引っ張らないように頑張るわ」
イルフリーデさんは操縦がとても上手だから、頼りにしてるよ。もちろん、二人にだって負けないんだから。
「わたしたちもまけないよ!」
イーニァもやる気満々のようだ。まぁ、今日はラブコールしに来ただけだから、これで失礼するね。これからもよろしく、イルフリーデさん。
イルフリーデさんの部屋から出て、今度はクリスカたちの部屋に行くことにした。イーニァのスペースはともかく、クリスカの場所は相変わらず殺風景だ。女の子としてどうなのだろうか。
「そう言われてもな。興味がないものは仕方が無いだろう」
じゃあ、こんど買い物に行こうか。唯依姫先輩とか誘って。オンナゴゴロが分かるメンツと一緒にね。
「女心が分かるメンツ? なんだそれは?」
唯依姫先輩とか、虚さんとか。今回は年上メンツを呼ぼっか。ユイさんとかも呼んでみよっかな。
「……何だか不安だ」
クリスカは何やら言っているが、もう決定事項だ。まずは唯依姫先輩たちの予定を聞いて、予定を摺り合わせないと。
じゃあ、今日はこれで。おやすみ。
「うん、おやすみー」
自分の部屋に戻ってから、早速ユイさんに電話する。ちょっと時間は遅いから心配だったけど、ユイさんは電話に出てくれた。
『こんばんは白野ちゃん。どうしたのこんな時間に』
こんばんは。実はショッピングのお誘いに。まだユイさんにしか連絡していないんですけど、予定とかどうかなって思いまして。
『えぇ、喜んで。でも、今はちょっと仕事が忙しいから、少し時間が空いてしまうのだけれど大丈夫かしら』
予定を聞けば、ちょうどタッグマッチトーナメントの後だった。うん、丁度いい。
『分かったわ。楽しみにしてるわね』
ユイさんの他にも、あっと驚くメンツを揃えるために、色々な人に連絡をする。いずれの人たちも多忙な人たちだったけれど、何とか都合がつくとのこと。
ふふふふふ、これでオンナゴゴロをつけさせてやんよ。
「ん~? はくのん、どうしたの~?」
いつもに増して目がとろーんとしているのほほんさん。かわゆい。キミはヘタな女子よりわかってそうだから、今回はお留守番。
「ん~? まぁいいや~。おやすみ~」
首を傾げていたが、眠気が勝ったのか、そのままベッドにポスンと横になり、すぐにスピスピ可愛らしい寝息が聞こえてくる。最近は夜も涼しくなってきたので、風邪をひかないようしっかりと布団を掛けてあげる。
さて、明日からは本格的にイルフリーデさんとのコンビ練習である。特製ドリンクはあるといっても、寝不足はお肌の敵。今日は大人しく寝ることにしよう。