とまぁ、誰もいない屋上から超高速で飛び立ったが、どうやらスクランブル発進した舞台はないようだ。流石は世界最凶の天災。じゃあ、モード・ランサーでトップスピードだ。
国境を越えても、誰にも邪魔されず、大西洋の端っこの小さな島にたどり着く。というか、目の前にあるのに、レーダーに引っかからない。ついでに言うなら、周りの海流がひどすぎる。衛星のカメラで見てみたら、見事に何もない。隠蔽工作レベルすげぇ。
着陸すると、至る所から機関銃が乱射された。全部はじく。めっちゃ怖い。
取り敢えず隠し扉から入ってしばらく歩くとラボに到着した。篠ノ之博士、あの機関銃、めっちゃ怖かったです。
「あーそう言えばシステム切ってなかったっけ。でも、大丈夫だったからいーじゃん。早くIS見せて」
舞弥、じゃない、まぁいいや。はいどうぞ。
「おー、これかぁ。……悔しいけど、アイツも非常識だね。《紅椿》にも匹敵するよ。これ、中枢システム以外に武装はないよね? どうやって剣とか出したの?」
どうって……想像して。
「……まぁ、ワンオフだからとも言ってたからね。取り敢えず繫いでおくから、色々な武装を展開してよ」
腕章を返されたので、すぐに展開する。基本はセイバーなので《原初の火(アェストゥス・エウトゥス)》を取り出す。
「それが基本なんだね。じゃあ、他のになってよ」
じゃあ、次はランサー。ゲイ・ボルグを出す。
「うーん……他は?」
じゃあアーチャー。《干将(かんしょう)・莫耶(ばくや)》です。これが基本かな? あとはキャスターとか。尻尾が九本あるので4304万6721倍のスペック。《水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)》。武器じゃないけど。
「……一気にエネルギーが上がったね。もういいよ。とりあえず解除して」
シュパンと解除。どうでしたどうでした?
「うん。これ、完璧に第四世代型ISだね。しかも、完成型」
完成型? 未完成もあるの?
「というか、《聖杯》が理想型かな。《紅椿》にも展開装甲を積んでるけど、あくまで装甲。《聖杯》みたいにいくつものタイプの機能を積んでるわけじゃないの。《紅椿》は攻撃・防御・機動として使えるけど、《聖杯》はいくつものパターンの動きが出来る。全く違うスペック動きが出来るんだ。そうだね、展開機体といったところかな。箒ちゃんじゃまだ使いこなせないからね。展開「装甲」に留めておいたの」
へー。お前凄い奴だったのか。
「ま、さっきも言ったけど、はくのんしか使いこなせないだろうけど。英霊だっけ? 剣士とか弓兵は全く分からないけど、アイルランドの大英雄なんて、それこそ伝説でしか知らないし。そもそも、伝説の武器を見たことがあるなんてありえない。だからね、教えて? あなたは何者?」
流石は篠ノ之博士。ゲイ・ボルグを見ただけで、私と《聖杯》の異常性に気付いたようだ。まぁ、この人に隠す意味もない。キアラにも許可はもらっているし。それに、篠ノ之博士でも分からないことがあるというのは面白い。私は、自身の境遇を全て篠ノ之博士に話した。
ムーンセルでの聖杯戦争。そして、サクラ迷宮と殺生院キアラの話などをしていたら、いつの間にか日を跨いでいた。時間を忘れてしまった。
私の話を聞き終えた篠ノ之博士は、クックックと笑い出す。
「ねぇ、本気で言ってる? 科学者である私に、そんなオカルト、いや、与太話を私が信じると思う?」
うーん。
「どうしたの? 言い返せない? じゃあそれまでの存在だね。せっかくだから、この世界から消滅させてあげようか?」
いや、それはごめんですけど。そうじゃなくて、篠ノ之博士って、科学者だけど理想家というか、革命家というか……。
「何が言いたいの?」
だって、ISって宇宙活動用のパワードスーツなんですよね。そんなオカルトちっくというか、空想具現化する人が、興味ないわけないかなって。
「それが空想なの?」
あ、でも、今は現実になったんですよね。ちょっと宇宙行ってみようかな。篠ノ之博士、フォローよろ。
Another side 束
岸波……、いやはくのんは、私の返事を聞かずに飛び立ってしまった。……私の話を聞かない奴なんて、久しぶりだ。
このまま放っておいてもいいが、この場所がバレるのも面倒だ。対した労でもないし、全衛星のカメラをハックし、はくのんの姿を世界から消す。当の本人は私のことを信頼しているのかどうなのか、何も警戒せずに大気圏を突破している。
でも、私が理想家か。空想家とでも言いたいのだろうか。現実に生きていない理想家。他のヤツに言われたら、次の日には表に出られないようにしてやるが、不思議とそんな気にはならない。そんな風に考えているとも知らずに、はくのんは宇宙に漂うデブリを喜びながら消滅させている。あれは荷電粒子砲よりも高威力だ。
「……聞いてたんでしょ、岸波キアラ」
先ほど気付いた回線。本来なら繫がるはずのない所につながっている回線に声をかけると、待っていましたと言わんとばかりに、応答してきた。
『あら、気付かれてしまいましたか』
「何を白々しい。あの子がいなくなった途端に気配を出したクセに」
岸波キアラはモニターを出してきた。どうやら保健室で通信しているようだ。
『あら? 白野さんのことは『アイツ』ではないのですね』
……本当にこいつは何者なのだろうか。私が唯一勝てないと感じた悪魔のような女だ。冷や汗が止まらない。
『ともあれ、白野さんが楽しそうで何よりですわ。それに、このように活動するISを見るのは嬉しくなりますわ』
……悔しいが、確かにそうだ。つまらないことにIS利用されている中、私が願った通りに使われているのは、確かに嬉しい。
『ともかく、白野さんが仰っていることは本当です。この世界の常識では図れぬ知識、興味は沸きませんか?』
私でも知らない知識。人の感情とか心とか、そういう存在ではなく、純粋な、私の知らない「知識」。……この女の言葉に乗るのは癪だけど。それでも、私の心臓の高鳴りは止まらない。
ふふふ。はくのん、私はあなたを絶対に話さないよ?
だから、そろそろ帰ってきなさい。
Side out