未来予知できるようになったけど未来はないみたいです 作:sinちゃん
初めはデジャブだとか、変な白昼夢のようなものだと思った。
部屋でコーラを飲みながら、いつものダンジョン配信を見ていた際、くらっとめまいのようなものが起きたのが、予知の始まりだった。
中級者向けのダンジョン、3人パーティの前衛、支援、魔術師の揃ったバランスのいいテンプレートそのままの配信者だった。
その配信を見ながら、見たのは魔術師の人が罠にかかって、周りの伏兵がいきなり現れて、結果を言うのなら、全滅をした場面をまた、この目でしっかりと見たのだ。
正確に言うなら、その配信を見ている未来の俺の目から、過去の、今の俺の目にその情報が流れ込んできた。
めまいから戻ってくると、今は前衛の大人のヤンチャそうな男の子が弓を持った眼鏡の男と会話をしている。
(い、いまのは、なんだったんだ……?叫び声をあげて、食われてなかったか?何かの気のせいか?)
今見ているパーティは生きていて、元気にモンスターを狩っている。
ダンジョンが現れて二十年、数が減り、モンスターが人類を殺せないほど減少してから、十年経って、高難度ではないダンジョンは人々の新たな消費コンテンツの一部になっている。その最前線とも言える新進気鋭のパーティだった。
現実味のない話だった、そこにいるわけでもないが、死体の姿がはっきり記憶に残っているのに、今笑っている姿を見て、気分が悪くなった。
そして、およそ4時間後、見た光景の通りに、そのパーティは壊滅した。
(ん、あー寝てたか。)
机の上のパソコンに寝癖のついた頭が映る。左目だけアメジストのような色の、幼い時とは少し変わってしまったはずだが、よく女の子のようだと揶揄された自分の顔だった。
結局この未来を見る目は、詳細はわからなかった。わかるのは、見た人物の死ぬ姿がわかる、と言うことと、発動条件はわからない、と言うこと。
パソコンを立ち上げて、いつもの生配信のページに飛ぶ。見る専門だけど、いくつものページに顔を出していて、割と常連として覚えられている。
ネットで調べてみても、未だダンジョンの神秘に存在しているではないか、未来とか見えたら儲けれそー、真面目にあったら後悔しなさそうだから欲しい、などの信頼性ゼロの情報しかなかった。
流石にダンジョンから取れる、今までの化学では肯定しにくい神秘と言われる存在でも、これまでに見つかったケースはない。単純にそれがダンジョン省に報告されていないだけなのか、それともこの二十年見つかっていないのかはわからないが、とにかく下手なところに見つかってはまずいのはわかっている。
肉体の変質した、いわゆるダンジョンで能力を得た人間を研究、解剖し、倫理に外れた行為は、今でも秘密裏に残っていると言われている。
今最前線で、配信をすることは稀にしかないトップのパーティたちの国からの援助のうちに、ダンジョン以外での自由を約束させ、監視のような健康診断をさせているのも、ある種安全にデータを取るためだと言われている。
(とはいえ、この社会に不適合なニートを解剖できるのなら、しかも未来視の能力を持っている人間を野放しにはしないだろうな……というか実際、しなかったし)
配信をしている人のコメント欄には、幾つもの声援、羨望、指示、支援金、いずれにしても、明るく振る舞うその姿を、きっと希望を見出すのだろう。
そして、いつものように、同時に左目に映った死ぬ現場、今回はローパーのような触手に腹部か、胸部ごと貫かれて終わりだった。武器を絶対に手放さないように。と適当にコメントを打って、すぐに別の人の配信に行く。
これで救われる命があればな、とは思ったが、案外自分はクズのようだと認識できたのは人の死にコメントするようになって、早い段階だった。コメントの発言なんて不確かなものを、配信している人が鵜呑みにする方が間違いだ。
未来が見えても、その判断が間違っていたなら何の救いにもならないんだから。
だから、救えなかったところを見ないようにコメントして消える、ざっくりと生配信のコメントに予知の内容を書いて、そして明日同じ名前がなければ、それまで。ある程度配信を回って、コメントだけ残しておくいつものルーティーンだ。
救えなかったとしても、救えたとしても、いずれ人は死んでしまうと言うのは、分かりきったことだったから。
そのあといつもの一日をネットゲームで怠惰に過ごして、次の日だった。
朝、安否確認用のベット横の鏡で自分を見て、なぜかダンジョン用の武器を持った自分が、接近してきたリザードマンの刃で貫かれ、さらに食い込んだ刃を抉りながら振り抜く、生きるために殺す目を見た。
(ええ……また行くのかよ……)
その後トイレで普通に吐いた。
状況はわかっている、時々いるのだ、どうやっても命が助からなくて、けどもう一人いれば死にはしない状況が、生配信で見えた時だ。
その時だけ、安いお金をつけて、何度か引き返す提案をして、しかし進んでしまう人間に対しては、自分もダンジョンに向かうことを決意するのだ。
「はーい、じゃこれから、ボスに挑んでいくよ!見逃しは御法度だよ!」
明るい声が石積みの迷宮に響く。
徘徊型のフィールドボスと言われるモンスターに出会えたのは幸運だった。普段から配信の準備に使ってる中古のダンジョンデバイスをすぐ起動して、配信をしながら幾つもの罠を仕掛けてきた。
ギルド訓練所から優れた罠設置能力と、単純な逃げ足を駆使して銅級から銀級に上がるのは時間の問題と太鼓判を押された程だ。
(見たことがないモンスターに、それを華麗に仕留める美少女、そしてギルドにその報告をすると銅級から銀級に、これは注目度がさらに上がっちゃうなー……!いいぞぉ!)
名前はマタギ、本名を特定されないように、ギルドという探索者応援設備では偽名を使うことがある程度一般となっている。時折本名で登録する人がいるが、出会い系か何かと勘違いしてるのかな?と思っている。
モンスターに気が付かれないように、入り組んだ迷路に囲むように罠を設置して、数十分、観察をしていたが、動きがない。
この辺りにはリザードマンしかいないとされていた場所だからか、鱗の生えた、通常の3倍ほどの大きさの、ぶくぶくと太ったリザードマンに見える。
「よーし、やるぞぅ。やるぞぉ……いい?いくよ?」
>気をつけてー
>予備の矢持った?
>なんだろうなあのモンスター
>逃げ道わかるか?
>いけるいける
>見てるぞー!
>がんばれー!
コメントも応援してくれてる。ここまでの準備をしたのは階層のボス以来、赤字覚悟の準備で特攻を仕掛ける。
これはいい見せ場になる、カッコつけよう。
「じゃ、いくよ」
いつもの仕事人らしさを全面に、頭の中も罠の配置と相手のことだけに集中する。
放つのは、毒をたっぷり塗っている矢。携帯性に優れたダンジョンから出た弓で放つ鏃は、ここらの敵の鱗は粉々になる。
どじゅ、と肉に埋まる音がここまで聞こえた。
それと同時に、目が合った、死んだような、焦点のあってない虚な目をしている。
「っ…こい!」
走り出すまでは、この毒の矢で攻撃をする。いい当たり方をしたが、命の危機を感じた徘徊型リザードマン、さっき決めた通称ファットマンは想定通りあまり効いてはなさそうだ。
本命は毒だ。シマサソリからとれた毒だ、これの効果がありそうなら、後の罠でより簡単に仕留められるのだが、大抵ボスっぽいやつは耐性がある。期待薄めで。
>いつもの
>クロスボウかっこいい
>痛くなさそう
>痛いぞ
>経験者兄貴、モンスターの話です
>まあ罠が本命や
そしてさらに時間をかけて、半分の罠まで誘導した時だった、接近してダガーで腕の皮膚を裂き、体の後ろに隠した罠を発動させる。必死で走りわからなかったが、今近づいてみると、何度か隙を見計らい攻撃した傷だらけのその体が、なぜだか溶けているように見えた。
「ふふーん、楽勝そうかな」
>これは強い毒
>これ毒?
>とか言ってる割に息切れしてますね
>えっっっ
「垢BANするぞ」
>ひい
>お、おやめください
奮発した落とし穴の罠にはまり、小休憩、水を飲み、コメントを見る。
見えなくなったはずのそれが、蒸気を出しながら床の穴からなぜか口を開け首を伸ばしているのが視界の端に見えた。
「え……?」
>やばいこれは
>連絡
>逃げろ
物理的に、さっきの姿とは違う。
顔の表情は殺意に満ちていて、最初はリザードマンだと思っていた体型は骨格ごと変化しており、その姿は最前線で発見されている竜に似ていた。
「まさか……やばっ」
口から吐き出されるのは竜のブレス。
疲れた自分の体と、走馬灯が走っていく。
しかし、ブレスの範囲から出られない。
そして、黒い斬撃が口ごと竜の頭部を切断した。
「だ、だれ……?」
>なんだ?
>おお
>助かったー
>ナイスすぎ!
>これ誰だ、親戚?
>マジでいたんだな、黒い子
武器は黒色の不思議な形の剣。銃が引っ付いているような形をしていて、今切ったばかりの燃えた粘液を振り払っている。片手で持っているのが不自然なぐらいに、その人は小柄に見えた。
黒いフードに、黒いズボンに黒いマスク。前髪で片目しか見えないけど、カラコンをしているのか綺麗な紫色、けどなんだかハイライトがないように見える。
普通ダンジョンでは支給された皮とかで作られた服をしているが、ここまで普段着で隠しているのは初めて見た。
支給されている服は、防御性能が上がって、壊れにくい。けど、嵩張るし、重くなるという理由であまり着ないことも、そんなことを考えるくらいには、混乱していた。
「助かった……?ありが」
「まだ」
その声に反応したのか、落とし穴から、肉の擦れ合う音がして、さっきと同じ首がさらに2つこちらをしっかりと見つめている。落とし穴にはまったように見えたのは、向こうの罠だった。
「ヒッ」
「僕に任せて早く、逃げて」
短く、そして構えて言ったその声は、決死の覚悟だったのだろうか、走って逃げて、振り返っていないことを確認した。
2級のモンスター、ヒュドラだった、普段の4級や5級とは違う、最前線で一度有名なパーティの壊滅的な被害を出したと言われていた、3つ首のモンスター。ここは銀級に上がる人がよく来るぐらいの中級用のダンジョンのはずなのに、一体なんでそんなモンスターがいたのかはわからない。
安全を確保して、慌ててギルドに連絡をする。そして、手に持った弓を見て、怖かったことを思い出して、逃げ出したことを思い出して、けど今戦っているのは、自分より小さい子だった。
>これは黒い子でも助からんか……
>黒い子って?
>ああ
>kwsk
>死に近い職だと改めて感じるな……
>そんなことよりもどうにかできんか?
>今向かってる
行くのか、行かないのか、行って得られるのは、名誉、富、あるいは死。
行かないで得られるのは、安全だ。
迷う必要はなかった、そもそも逃げてきた場所は、私がこっそり作った武器貯蔵場所なのだから。
「……ふぃー」
いやー久しぶりにしゃべるの緊張したー。
未来視で見てびっくりしたのがこの竜、焼け爛れて決死の覚悟でギロチンの罠を落としてもまだ生きてるとか、ニワトリかな?
しかもブレスも暑いし、相手の目を見ながらならその目に映る自分で死ぬ時がわかるから簡単に避けれるけど、それでも多少情報量で頭が痛くなる。後気分も悪くなる。さっき食べたラーメン出てきそう。
「っと」
かなり機敏に動いているのを見ると、さっきまでの姿は蛹のような、進化の途中だったのかもしれない。尻尾の攻撃を避けて、さっきまでなかった後ろ足が生えているのも見えた。
フードの内側にも、この大きめの剣も、全て反射で自分の姿を確認できるようにしているから、死にはしない。というかこの未来視割と死に繋がる情報は、前もってわかる気がする。
暗闇になっても自分のことなら死にそうならなんとなくわかるのでは?怖いからやらないけど。
「困ったな、パワーが足りない」
あいにーどもあぱわー
鱗は破壊できるが、切断まで持っていくと喰らいつかれる。そんなこんなで、路線変更でとっとと逃げることにした。
基本的にモンスターは地面から突然生まれて、そして生き物は食べる。疲れたら寝る。そういうふうになっている。よく知らないが、人間もモンスターも区別はないみたいだ。
だから見えないところに行けばいい。
人のいない方に逃げればいいのだ。
まるで自分の生き方の集大成だな。
「いくぞーヒドラー」
あ、ヒュドラの死に方が変わった。
大量の矢が突き刺さってる。驚きだが、さっき逃げた子が戻ってきてやってる。罠を利用して、物量作戦というか、多分僕が前衛をして後方からやったのだろうな。
じゃ、それでいいか。
「やっぱ悪いけど死んでもらうね」
ほんと、悪いけどね。
武器は新型と言える大型クロスボウ、本来軽量化して罠に嵌めるスタイルとは似合わないが、ダンジョンの中にあらかじめ罠の近くに置いておく。確実に当てるための行動不能の罠。
恐怖して混乱して、逃げ出したけど、そもそも危険なのは承知の上。
私は金のために配信して、自由のためにこうやってダンジョンに来ているんだ。
今更トカゲの一匹程度にびびってられない。
>超ビビっておられてましたが
>かっこいい
>かっこいい
>うーん、守銭奴
>でも実は妹のためなんだよね……
>可愛い
>尊い
>死ななくてよかった
「いやーほんとに、生きてるから仕返しができるってものよね。あと妹のためじゃないから。自分の将来のお金にするだけだから」
余裕をもっているように見えるのは、自分の心を奮い立たせるためだ。
やっと見えた。ヒュドラの首と、それに異常なほど近づいて血まみれになっている、あの子の姿。広めの空間になっていて、周りには段差と吹き抜け。
リロード済みの大型クロスボウを少し高めの段差から構える。
「どいてー!撃つよー!」
聞こえたようで、振り向く。
首元に飛び、一閃、さらにヒュドラの足を潜りながら切ってこちらに向かってくれている。
すごく身体能力が高い。あの大きさの剣を持ってこのスピードで動けるのは金級に近いのではないだろうか。
ヒュドラと目が合い、撃つ。
モンスター由来の素材を使った武器は、モンスターによく効く、というのもあって今度は肉を抉りながら貫く。普段飛び道具には高価で使われないが、もう赤字なのは確定しているし、命には変えられないのだ。
そして連射。
「うわー!!何千円だこれーー!!!くっそ喰らえー!!!!」
>ぎゃー今までの稼ぎがー!!
>これこっわ
>今日のパチンコ代くらい簡単に飛んでる
>それもこっわ
さっきの子が来たようだ、立ち直り早くね?僕が初めて命の危機に直面した時はもっと酷かったけどなー。
しかもめっちゃゴツいクロスボウ持ってるし、死ぬ未来もいつものあれしか見えない。
かなり援護してくれているので、やることがない、こっち来てーとか言ってるし近くに行く。
正直ここまで配信者さんと近くに話に行ったのは初めてで緊張している。
あまり特定の人が好きとか、ファンをしているわけではないけど、会話できるかな……不安だ、ていうか男の僕が配信で映っても大丈夫かな、一応命の恩人なんだけど、いやもう命の危機ではないんだけど。
「さっきありがとー!おかげでこれ持って来れたんだー!」
おお、挨拶だ……?
やばい、なんか返さないと、配信者と話すの?震えるわ……手が。
「いい、けど殺さないでね」
「え、あのトカゲ?」
「私を(ウィットに富んだジョークのつもり)」
「……はは、絶対そんなことしないよ」
よし、ナイスなコミュニケーションだ。全然表情筋が変わらないし、目に光がない割にまだまだいけるジャン僕。
これで配信に気さくなお兄さんが映っているという印象になったはず。顔バレしないようにマスクしてるけど、これほどの会話ができるなら僕も配信してみようかな。まあ知るはずのない情報知っているって時点で狙われそうだからしないけど。
「そうそう私配信やってます、マタギって呼んでねー!さっきはほんと情けないとこ見せてごめん!君の名前は?」
ヤッベ新たな質問きた。うーん、な、名前。こういうのは本名はダメなんだよね、えでもどうしようギルドに登録してないんだよね。ただの配信見てる一般人なんだよね。ないよ名前。
「名前はない」
「っそ、そっか、ごめん!」
こ、っこれはひどい勘違いになるー!まずいそんな厨二病みたいなことにはなりたくない!なんでもいいから偽名だ!
「い、いや、呼ばれる名前ならある……厄災の姫と呼ばれている(ネトゲで)」
「や、厄災の姫……それって」
ヒュドラが動かないと思えば、遠距離のブレスを思いついたようだ。クロスボウの手が止まった瞬間を狙って、綺麗にマタギさんを抉るコースのようだ。飛びついて一緒に転がり避ける。
若干フードの部分が溶けた気がするが、やばい昨日ネトゲのコスプレしたままだったツノが見えてしまった。恥ずかしすぎでは?
「まさかほんとに……」
「来る」
ただ命の危機がずっと見えてるので、そうも言ってられない。お返しとばかりに弾丸のようなブレスが連射されてくる。未来視があるので自分が死にやすければその分未来視ができて回避しやすいので、防御力とか逆に邪魔なんですよねこれが、だからこんな気軽にダンジョンに来れてる。普通の人がダンジョン攻略してるのは尊敬だ、死にに行くようなのは論外だが。
「大丈夫だよ、あなたはここで死ぬだけだから」
全力で走って脆くなった体を一閃するだけで、限界を超えていたヒュドラは動かなくなった。未来視の通りに、最後に見えるのは大量の矢と、マタギさんの姿だ。
さて、一件落着ですね。いやー疲れました。帰ってニートやーろお。
「あ、あの、一緒に来ませんか?」
マタギさんが勇気を出したかのように、聞いてくる。
予想外だけど、あれか、コメントがコラボか何かだと思って楽しんでるわけだな、まあ確かにそれなりに見てくれはいいし、目もオッドアイだしな……。でもごめん、話題がなくなって気まずくなるのはもう見えてる。未来視がなくとも見えてる。
「むりだと思う」
「そ、そうですよね……これから、どこに行くんですか?」
すごい口調変わってしまった……距離、感じるんですよね。
どうしようかな、家に帰るだけなんだけど、どうにか笑顔にしておきたい。そう、配信で曇ったままなのは悲しいのだ。
誰が見たいのだ、気まずい人間のやり取りを、誰が見たいのだ、かくれんぼ途中で帰っていったことに気づいた子たちを。そう、僕は寂しい顔が苦手だ。つまりジョークが有効なわけですね。
「この世界を救いに(大変面白いホラばなし)」
「……は、はい」
「嘘だよ(ほんとに嘘)」
「っ、信じますよ」
「ふふ、面白い人ですね」
「ほ、ほんとですよ!ほんとに、命の恩人に嘘つきませんから!」
よし。変なやつ作戦成功である。
「目的は達成した、それじゃ」
よし、じゃ別の道行くか。配信者と一緒にいられるか!緊張していらないこと連発して炎上するのがオチだわ!
「え、そっちは崖」
あ、完全に踏み外した。
落下している最中振り向いた彼女の目を見て、目の奥の自分を見て安心した。今日は死ぬことないわ。
「大丈夫、じゃあまた」
吹き抜けの崖を落ちて、落下吸収用のスライムに着地した。ラッキー。
このダンジョンの人類最終到達地点を大きく超えた666階。
「おおーこんな深いんだなこれ」
で、なんかあからさまに水晶の中で眠ってる女の子がいた。可愛い。
自分も女装というわけではないが、単純にユニセックスの衣装が似合うから着ているだけで、さっきの女の子のように女子らしい姿は目の保養になる。この子も可愛い。僕も可愛い。
いいな、くぁわいいというのは幸せになれるものだ。
「なんかお主思考が変じゃの……」
んあー!?(驚き)
の、のじゃろり……しかも、生きてる。驚かせやがって。
目が開いて、こちらを見てくる水晶の女の子。なぜか白衣を着ている、白っぽい髪の毛をしている。
「おどろいた」
「わしはお主が男であるということに驚いたのじゃ」
「おおー……」
「その悩みを解決するために、今考えていることを当ててやろう、ほんとに思考が読めるのか、水晶漬けの女の子か……、じゃろう?」
「おみごと」
「ふふん、しかし、何か見えぬものがあるのぉ……これはわしも初めてじゃ。興味が湧いたから、ついていこうかのー?」
わかった。テンプレの流れだな、よくあるダンジョンの奥で最強の存在と出会うやつ。そしてそれが師匠だったり相棒だったり恋人だったりになるやつだわ。
「ふっふっふ、そういうのが今流行っておるのか…よかろう、では、お望み通りついていくとしよう、関係性はまあ、気分次第じゃがな」
「おお…」
「妾の名は、ダンジョンコア。この迷宮が作られた原因そのもの。元人間じゃ」
んー、んんー。……これ知っていいやつか?ダメじゃない?
「迷宮というのはお主も知っての通り、世界に訪れるであろう危機に際して発動するプロジェクト、レベルアップシステムによって運営されておる。」
「もういい、わかった」
「わかってないのはお見通しじゃ!今の状況はあまりダンジョンを有効活用できておらんようじゃな、嘆かわしい。……ふっふっふ、今なら世界を丸ごと取れそうじゃな」
おもわず手元の剣を見る、見える未来はいつもの数十年後その危機とやらで死ぬ未来のみ。どうやら今殺すような意思はないようだ。
「ほう、未来とな……?まさかその様な能力まで発現するとはな……さらに気に入った。ここまで来た褒美に、この我自身が付いていってやろう。ふっふっふ逸材じゃのぅ」
「必要ない」
いやだ、家でダラダラニートしとくんだ。命の危機は見過ごせないけど労働は反対なんだ。
「逆じゃよ、ニートする資金に悩んでおるのじゃろう?わしのダンジョンの知識を広めるだけでがっぽりじゃよ……ふっふっふ」
「同行を許可する」
金、やはり金である。このニートには夢がある、働かずに食う。何よりもそれがいい。
がっぽりというのはどの器でがっぽりだろうか、できればそろそろ食事をしたい。配信のお金を投げたのが今月のトドメだった。
「お主どんだけ切り詰めとるんじゃ……?はいしん?まあ、うん、なんでもいいか。では、幽霊状態で取り憑くとするのじゃ」
「えっ」
「コアがなくなるとダンジョン崩壊するんじゃし、まあ取り憑かれても周りには見えんから安心してくれ。知識もある、場所を取らない。合理的じゃな。」
そういうわけで長年謎だったダンジョンのクリスタルがテレポートできると判明したところで、自分の部屋に直行して就寝した。
くぅー疲れました。これにて試合終了です。美容の大敵なんで早く寝ます。
「えちょっと待て、ぎるどとやらに情報の共有をじゃな、ってもう寝ておる……」
>あれ、ほんとなのかな
>嘘と言い切れないよなー
>災厄の姫、そう呼ばれたギルドの記録が残ってたんだろ?
>当時の年齢とほぼ一緒だぞ?
>データほぼないじゃん
>合法ロリか……
>ダンジョンのモンスターも歳取らねーじゃん、モンスターだよ
>可愛いかった。もちろん君も
>人類の敵か否か
「命の恩人だから、それに、あんな目をしてて、怖がってたんだよ」
モンスターにではなく、こちらに話しかける時、見えたのだ、手が震えているのが。
しっかりと目を見ていても、どことなく怯えているその感じが、人間と同じに見えた。
「それでも、助けてくれたんだよ」
それは間違いなくて、なら私も間違えない。
何が敵なのかを。
初めまして、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
終わりませんけど。
もしも気の迷いで評価とか、推薦とか、感想とか、お気に入りとか、していただければ私のやる気がバカほど上がって屋根の上から戻ってこなくなるので、おすすめです。
好きなキャラはブルアカのホシノです。