灰の男と赤紫の少女   作:鉄血

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第十一話

「トター、少しいい?」

 

「どうした?ミト」

 

唐突なミトの呼び止めにトターは足を止める。

振り返る彼にミトは少し言いづらそうな雰囲気を出しながらも、その口を開いた。

 

「トター。私、《裁縫スキル》を取ろうと思うの」

 

「良いんじゃないか」

 

「それで、トターはどう・・・えっ?」

 

トターの即答にミトは思わず彼の顔を二度見してしまった。

 

「いいの?」

 

「良いも悪いもないだろう。そもそもの話、この世界はゲームだ。今はデスゲームと化してこそいるが、ゲーム世界である事には違いない。この世界でどのようにして生きるのか、どのようにして楽しみを見つけるのかはミト、お前の好きなようにすればいい」

 

そう答える彼にミトは笑った。

 

「そうね。確かにゲームだものね。このゲームがデスゲームになってからずっと生き残ることで精いっぱいだった」

 

自分のことを一番分かっていなかったのは自分だった。

そういう所を彼は良く見ている。

 

「ありがとう、トター」

 

「礼は不要だ」

 

トターは素っ気無くそう返事をしつつも、その事について追求してきた。

 

「とはいえ、攻略はどうするつもりだ。まさか最前線から身を引くつもりか?」

 

「それも考えた。けど、それだと私がトターに恩を返せなくなるから却下」

 

「ならば並行すると?それはそれでお前が辛くなるだけだぞ」

 

「・・・分かってるわよ」

 

だからこそ考えているのだ。

頭を悩ませる私にトターは一度溜め息をつき、口を開いた。

 

「ならば攻略の休みの日を決めよう。週三日。うち二日は完全な休みにする。その間はミトの好きなようにすると良い」

 

「もう一日は?」

 

「《裁縫スキル》を習得するのだろう?ならば一人でするよりも先生となる人物が今のミトには必要だ」

 

「先生?」

 

裁縫スキルを上げるような物好きなどそうそう───

 

「あ、もしかして・・・」

 

一人、思い当たる人物がいた。

 

「アシュレイさん?」

 

「思い出したか」

 

私の口から出た人物の名前にトターは頷いた。

 

「彼女ならミトの良い先生になるだろう。残りのその一日は彼女のもとで裁縫スキルを磨くといい」

 

確かにそれは良い考えではある。

 

「でもその一日、トターはどうするのよ?まさか一人で攻略でもするつもり?」

 

「いや・・・俺も新しいスキルを取るかどうか考えでいる。そのスキルの育成の為にな」

 

「新しいスキル?どんなスキルを取るつもりなのかしら?」

 

「《鍛冶》だ」

 

「鍛冶スキル?」

 

武器や金属防具は全て鍛冶スキルを上げる事によって作ることが出来る。確かに自分の武器を自分で作りたいという人もいるにはいるが・・・

 

「トター・・・あなた鍛冶師にでもなるの?」

 

「いや、そういう訳ではない」

 

そう言う彼に私は疑い深く見つめるが、トターは目を逸らして私の視線から逃れようとする。

 

「まあ、いいわ」

 

そんな彼に私の方から折れ、ため息をつく。そしてミトはトターに言った。

 

「それもゲーム(・・・)の醍醐味だものね?」

 

「・・・ああ、そうだな」

 

そう笑みを浮かべて言う私に、トターは短くそう答えた。

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