灰の男と赤紫の少女   作:鉄血

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第四話

ゲーム開始一ヶ月で二千人が死んだ。

 

外部からの問題解決は、結局なにももたらされなかった。

私はこのデスゲームが始まってからある程度覚悟していたからこそ、受け入れることが出来た。

この世界から本当に出られないとようやく理解した時のプレイヤーたちのパニックは狂乱。その一言に尽きたという。

無事に現実に帰ったという話もメッセージが届くことすらなかったのだ。かつてのアスナがそうだったように彼等の気持ちは痛いほどよく解る。

《牢獄》と化したこの世界でアバターの死亡はすなわち生身のプレイヤーたる自分自身の死を意味する。そんな状況で、危険極まるモンスターやトラップがひしめくダンジョンに潜ろうという人間がそうそういるはずがない。

そんな中、私は今の相棒(・・・・)と共に迷宮の奥底にいた。

 

「はああああッ!」

 

この一層の迷宮区で一般的に見る亜人型モンスター《ルインコボルド・トルーパー》の首に目掛けてミトはソードスキルを叩き込む。

両手大鎌カテゴリで最初に習得出来る単発水平攻撃《シン》によるモーション・アシストと力任せに振られた大鎌はコボルドの頭を撥ね飛ばし、その身体は一瞬硬直したかと思うと、ガラス状のポリゴンとなって砕け散った。

 

「・・・ふう」

 

ミトは大鎌の先端を地面に置き、軽く汗を拭う。

こんな仮想空間で汗をかくとはどういった仕組みなのかと言いたくなるが、こだわりというものがあるのだろう。

 

「・・・トターの方はどうかしら」

最近になってから片手剣より大剣の方が扱いやすいと言っていたトターの様子を身に少し離れた部屋へ足を運んでみると、そこには戦闘中のトターがいた。

 

「・・・フッ!!」

 

鈍色に煌めく巨大な刀身が《トルーパー》の頭を叩き潰すかのように振り下ろされ、その身体がポリゴン片と化する。

どうやら終わり際に来てしまったようだ。

 

「これで八」

 

私が十体倒している間に八体も倒しているトターには流石のミトも脱帽せざるを得ない。

 

「さっすが、トター。貴方の戦い方を見てるとホントに初心者って疑うわ」

 

「・・・・昔、剣術を習っていた事がある。その経験が今、生かされているだけだ」

 

「剣術って・・・ホントはリアルの事を話すのはタブーだけど貴方の家ってどんな家よ」

 

「普通の家だが」

 

「リアルで剣術を教えてる家を普通って言わない」

 

「・・・そうか」

 

そう言いつつ、大剣を鞘に納めるトターにミトは呆れながらも小さく吐息をつく。

 

「それで?その剣の使い心地はどう?」

 

「問題ない。この重さがしっくりくる」

 

「・・・そう。なら良かったわ」

 

大剣使いと大鎌使いのコンビ。

これほどバランスの悪いパーティーもあるのかと言わんばかりの組み合わせだが、その辺りは互いでカバーをするしかない。

そんなミトにトターの口から落ち着いた声で聞いてきた。

 

「今日はどうする。このあたりで引き返すか?夕方に《トールバーナ》で《フロアボス攻略会議》があるんだろう?」

 

「そうね・・・今から戻れば夕方前に町につく・・・武器の強化もしておきたいし、ここで引き返すのも良いわね」

 

「なら戻るとしよう。晩の飯は期待すると良い」

 

「デスゲームになったこの世界で戦闘スキル以外を取る貴方はどうかしているわよ・・・」

 

「飯は俺達のモチベーションにも関わる。別にあの黒パンで良いのなら今日はそれにするが?」

 

「うっ・・・それは・・・」

 

あの一コルの黒パンはお昼にこそ良く食べているが、あのぼそぼそと粗い黒パンは《逆襲の雌牛》のクエスト報酬であるクリームが無ければ好き好んで食べようとは思わない。

NPCの店で美味しい物を食べても良いのだが、如何せん値が張る。

それに食材アイテムもそこそこ手に入るのだ。売ってコルに変えるのも悪くないが、良い物が出たら出たでそれを食べてみたいという気持ちも無くはないのだ。

 

「文句は無いな。戻って飯にするぞ。ミト」

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