はじめて───この世界での人の死を見た。
目の前で一人の一生が終わった。
無限にポップする雑魚モンスターと何も変わらない───安っぽいエフェクトを伴って。
───あんまりだ。
こんなの・・・・・
◇◇◇◇◇
うわああああッ!というような叫び声───あるいは悲鳴がボス部屋を満たした。
レイドメンバーのほぼ全員が、己が武器に縋るように握りしめ、両眼を見開いている。だが誰も動こうとしない。いや、動けない。リーダーが真っ先に倒れる、いや死ぬという状況が余りに想定外でどうすべきなのか判断出来ないのだ。
「・・・何で・・・何でや・・・。ディアベルはん、リーダーのあんたが、何で最初に・・・」
その声の主は膝をついたキバオウの声だった。
恐怖。絶望。狂乱───。
様々な不の感情がボス部屋に広がり、伝播していく。
それは私もそうだった。
カタカタと、大鎌を握りしめる手が震える。逃げ出したいという衝動が身体を満たす。
「─────ッ!!」
一瞬、アスナを見捨てて逃げ出したあの瞬間が瞼の裏にフラッシュバックする。
ギュッと大鎌の握りしめる力が強くなる。嫌だ、
「うわああああッ!?」
そんなミトの心情をまるで嘲笑うように更に悲鳴が部屋にこだまする。周囲を見渡すと、《ルインコボルド・センチネル》が再びポップしていた。
「ま、まま、また出た!もうポップしない筈だろ!?」
「く、来るなっ!!」
このままだと被害がもっと大きくなる!撤退する為に道を作らないと!
ポップしたセンチネルに悲鳴を上げながらも応戦する彼等を見て、ミトはすぐに冷静さを取り戻そうと大きく息を吸い込み、それによって少し落ち着きを取り戻したミトは、近くで転倒した所をセンチネルに襲われそうになっているプレイヤーを助けるべく、ダッと駆け出した。
「はああああッ!」
《センチネル》のポールアームを手にした大鎌でかち上げ、その勢いのまま、一番装甲の薄い喉元にソードスキルを叩きつけるようにして振るった。
その一撃を喰らった《センチネル》は残ったHPゲージをゼロにし、ガラス片を撒き散らすようにして四散する。
(トターは!?)
彼のいる方へ視線を向けると、体力が減った者たちを後方へと退避させるべく、三体の《センチネル》を一人で引きつけていた。その姿を見て、ミトは走り出す。
「トターッ!」
「・・・ミト?」
ミトは叫びながら彼の元へと駆け寄ったが、トターが相手をしていた三匹の内、二匹の《センチネル》がミトへと気付き、こちら目掛けて走り出してくる。
その二匹にミトは迎撃しようと大鎌を構えた時───
「・・・ぐッ!?」
鈍い衝撃と不愉快な痛みがミトの背から襲ってきた。
なに、が──と考える前にミトは全力で横へと身体を動かし、その場から逃げるように走り抜けると、自分がいた後ろには一匹の《センチネル》がいた。
どうやら正面の敵を迎撃することで頭がいっぱいになって背後からの不意打ちを喰らってしまったらしい。
自身のHPバーを見てみると、体力は半分を切り、イエローゾーンへと突入していた。
回復をしておきたい。だが、そんな隙はない。その一瞬で《センチネル》の一匹がミトに襲いかかってきた。
「くっ・・・!」
《センチネル》の攻撃を鎌で受け止め、硬直状態となる。その隙を狙ってもう一匹がミトの背後に回り込み、手にした武器を振り上げる。
「しまっ・・・!?」
回避出来ない!
そう脳裏に浮かんだその時──
「──────」
疾風のように赤い影がミトの視線から横切った。
繰り出されたソードスキルのライトエフェクトがまるで流星のように駆け抜け、《センチネル》の喉元を穿った。
ポリゴンのガラス片となって砕け散ったソレを驚愕と戸惑いの中で眺めた後、すぐに我に返り、立ち直ったミトは自分が相手をしていた《センチネル》をそのまま押し返し、その横からあの
「あ、ありが──」
その細剣使いにミトは礼を言おうとした時、彼女は反転し、ミトの背後にいた《センチネル》にソードスキル《リニアー》を放つ。
(この技──)
ただの細剣スキルの《リニアー》。だが、この動きを私はどこかで──
「スイッチ!!」
「──────ッ!!?」
その
だが今は話は後だ。彼女の声に合わせるようにして私はソードスキルを発動し、《センチネル》を吹き飛ばす。
振り返ると、その場から立ち去ろうとするその
「
その言葉に赤ずきんの
「アスナなの?・・・そんな・・・生きて・・・私は、あの時・・・」
見捨てて逃げた。アスナが死ぬ瞬間を見たくなくて──
恨んでいるだろう。怒っているだろう。私は今、彼女がどんな顔をして私を見ているのか怖くて見れなかった。
だから──チンッと私の握る大鎌に彼女の細剣が触れた時、思わず私は顔を上げてしまった。
そして私の目の前に立つ彼女の顔は──
「このゲームをクリアするんでしょ?まだボスは倒れてない。いっしょに生き残ろう」
あの時のように笑っていた。
だからこそ──私は──
「・・・ええ!」
再び前を向く事が出来たんだ。