疾走優駿演舞 supplement・withdrawn 作:チョコカビ人間
「問おう、私があなたのマスターか?!」
「君は...誰?」
まじまじと目の前の彼女を見ていると既視感の正体に気づいた。カルデアに所属していたサーヴァント、源頼光に似ているのである。しかし、明らかに異なる雰囲気と言動がそうではないことを示していた。
「おいおいマスター、俺の顔を忘れちまったのか? まあそもそもこんなんじゃなかったんだけどな!」
笑いながらこちらに話しかけてくる彼女を見て、考えを巡らせるが、中々思い浮かばない。
「で、結局誰?」
「おう、我が名は京極。源氏大将軍、源頼光が騎乗なされる軍馬なり!」
そういわれてみると頭にある角がどこで見たかを思い出した。彼,,,というかまあ今は彼女だがカルデアの厩舎や夏のレースで印象に残っていた。しかし京極は馬である。サマーレースで相方だった白竜や太公望の所有する四不相は竜種みたいなものであったが、彼はアルトリア・ランサーの宝具たるドゥン・スタリオンと同様に馬であるはずである。
「なんでウマ娘の姿になってるの?」
「この姿ウマ娘っていうんだ、マスターは博識だな!」
目の前のウマ娘が情報面で頼りにならないことが確定した。
「あー...聖杯からの知識とかどのくらいある?」
「そんなものはない。ではないがなんかなぁ、主...頼光殿の知識があるみたいだ」
聞くべきことを考えながら手の甲を見てみても令呪は存在しない。つまり、目の前の彼女のマスターではないことが確定している。湧き出る疑問を捌きながら質問を続けていく。
「オレ令呪ないんだけど...」
「そこなんだがなぁ、なんか受肉しているみたいだ。今の俺はサーヴァントじゃないみたいぜ」
「そうか...。頼光の知識はどんなのがある?」
「カルデアでの生活は全部覚えてるぞ。おかげで馬のときの記憶と混ざってごっちゃごちゃだ。」
「今のクラスわかる?」
「ライダー...と言いたいところだがバーサーカーだ。赤兎馬はライダーなのに...」
主と同じクラスだからいいか...とブツブツなんか言っているが頭の整理を続ける。ピール・ガウガメラという象自体が英霊になった事例も考えると京極単体が英霊として召喚されたパターンだと推測できる。なぜ実体化しているかはしらないが...
「あ、そうだった。ようわからんがほら見ろ、主の刀出せたぞ!金時殿の斧もだ!」
これ以上考えるとグレートでcatsなバーサーカーについての考察まで始めることになりそうなので今後について考えることにした。仲間は増えたがここは現代社会、食事の調達に狩りはできないのでそっち方面は頼りにならなそうだ。ひとまず今後の方針について話すことにする。京極は恐らく土木作業はできそうだが、見た目は未成年である。身分証がないとまともな仕事にありつくことは難しいので、京極は情報収集、自身は明日から職探しを担当する。
「ひとまず武器は戻して、銃刀法で捕まる。」
「おう、武器だけは霊体と切り替えできるからいつでも敵はぶっ殺せるぞ」
「それは今必要ないから、もう夜遅いから寝るよ。明日は京極は図書館とか行って色々と探ってみて、まずはこの常識を身に着けること。オレは日払いの仕事を探してくる。」
「えー、俺も全然働けるのに。サマーレースで見ただろ、俺がでっかい馬車引っ張るくらいは荷運びできるぞ」
「ダメ、自分がどんな存在かわからなかったでしょ。そのまま働くとどこかでボロが出る。」
「ちぇー、別にその程度いいじゃないかぁ。そんなに重要じゃないだろ。」
「だったらいいんだけどね、その調子だと騙されそうだし身分証もないからまともな仕事もないぞ。」
明日からは忙しいことになりそうだ。だが、そのような仕事を募集している場所は正直わからない。警備員や土木工事ならばできそうだと思うため、重点的に探すことにする。力仕事をするならば、体力をできるだけ回復させるため布団などで寝たいのだが...
「そういえばマスター、カラオケとかネカフェとやらは使えないのか?さすがに硬い場所で寝るときついだろ、あるだろそういうの。」
「却下、そっちも捕まる。さっきもいったでしょ。身分証がないとまともに暮らしができないの。今までなら特異点とか異聞帯なら協力してくれるサーヴァントがいたけど今回はそれも期待できない。それも仕方ないことだよ。」
今まで協力者がいたことがむしろ驚きであったと今となっては思う。彼らの協力がなければ成し遂げられなかったことも多々あった。自身は幸運であったのだなと今更ながら考えたのであった。
考えが横に逸れたがひとまず寝ることにする。貴重品は財布、スマホ、そしてトランクである。現在ろくに役に立たないスマホはともかく
「安心しろ、夜の警備は俺がやる。馬の基本的な生態を知ってるか?」
「どういうこと?」
「野生の俺らってのはな、ゆったりしてるときは半分寝ているんだ。いわゆるうたた寝ってやつか。異常があったらすぐに反応できるから安心して寝ていいぞ。」
「なら猶更働けないな。」
「失敬な、ゆったりしているときは、だ。きちんとすべきところはちゃんと動く。それより被り物かなにかあった方がいいだろ。」
「ちょっと抵抗はあるけど、呪腕のハサンから貰ったものでちょっと暖をとるよ。」
「あー、トランクの中身ってもしかして
「だいたい。まあとにかくお休み。今夜は頼むよ」
..........
翌朝、ベンチで起きた彼は一回り身の回りを確認した後。ベンチの横で寝ぼけている彼女に声をかける。特になくなっているものはないため、無事に彼女が守ってくれたようだ。
「京極、朝だよ。何か異変はあった?」
「んんぁ...おはよマスター。特になかったぞ、周りに普通に人も来なかったし。」
というわけで今日は仕事探しである。日が明けてまだ早いが仕事探しのためにそれっぽそうな所を探すことにする。そういえば前の世界で見た家出少年がたむろするエリアはこの世界でも同じだろうか。人が集まるところに需要ありなのでそこに向かうことにする。
「京極、それじゃ仕事探し行ってくるから時間潰ししてから図書館向かっていってね。図書館はあっちの方だから。」
「おお、そういえばマスター。良さそうな仕事見つけたぞ。特に怪しいところはないみたいだ。」
「え、いや、どこかいってた?」
「いや、そこいらのやつが集まってきてな、そいつらに色々聞いたら良さげの仕事があるらしいからそこいけばいいみたいだ。」
「優しい人がいたんだ。どんな人だった?」
「そりゃずっと暇だったみたいだから俺に気づいたらすぐに駆け寄ってきたぞ。」
周りには人が来た痕跡はなさそうだが、複数人いたようだ。まあそんなところがあったら怪しいが...
「ほら、今もそこに...」
「...へ?」