東方神主伝   作:ごくでヴぁる

19 / 41
第十八話 鬼ノ異変 ~信頼~

「(さあ、どこから来る)」

 

萃香は博麗が来るのを待っていた。

いつでも攻撃できるように構えながら。

しかし、博麗は萃香の予測しなかったことを行った。

博麗は周りにある木を根っこごと引き抜くとそれに能力で速さをふかして萃香に投げつけた。

萃香はそれを裏拳で吹き飛ばした。

その隙に博麗は萃香の背後に回りこみ拳を繰り出した。

 

「(勝った!)」

 

しかし、勝ちに急いだことが隙を作ってしまった。

萃香の裏拳で吹き飛ばされた大木がさらさらと霧のようになって消えた。

そして次の瞬間、博麗の前に霧が集まってきた。

その霧は一瞬で元の大木に戻った。

大木が壁になり博麗の拳は大木だけしか切ることが出来なかった。

そして切れた大木突如博麗の前に飛んできた。

大木が切れたのを見た萃香が拳でそれを殴って博麗のほうに飛ばしたのである。

 

「しまった!」

 

博麗は再び能力を使おうとしたが、間に合わずにそのまま木に当たってしまった。

だが、鬼の耐久力があるためこの程度では倒れなかった。

だがそれは萃香だってわかっていることだ。

萃香は自分の拳を霧にするとそれを木で前が見えない博麗に向かって放った。

博麗は萃香の攻撃によって腹に風穴が開いた。

博麗は腹部から大量の出血をしながら地面に倒れた。

 

「・・・あなたの能力が、もっと使い慣れられていたら倒れていたのは私かもね」

 

萃香はそういうと鎖を解いた。

 

「・・・止めを刺さないの・・・」

 

そういった博麗に萃香はこう言った。

 

「私はあなたを殺しに来たんじゃない。ただ、あの男が面白いからあの男についていっているだけ。あなたにもいるんでしょ、そういうやつが」

 

博麗はなぜか雷鬼が頭に浮かんだ。

博麗はすると気を失った。

萃香はそれを見ると黒夢たちの方に向かった。

 

 

 

 

 

「あ~、やっと終わったか」

「いきなり気絶したやつに言われたくないね」

「まったくそのとおりだよ」

「確かにそうですね」

「ぐっ・・・」

 

黒夢は三人に気絶していたことを言われてずいぶんと参っていた。

こんな様子で雷鬼を倒せるのだろうか・・・

ちなみに勇儀は博麗の治療のために博麗を地底に連れて行ったらしい。

ともかく、黒夢達は雷鬼のいる洞窟の中を歩いていた。

 

「・・・それにしても暗いな、誰か明かりを持ってるか?」

 

黒夢は何とか話を逸らそうとしてそういった。

確かに洞窟の中は光が通っていないようで真っ暗だった。

黒夢は霊気を超音波のように放って物の位置を把握しているから物などに当たらずに済んでいるが、正直明かりがあったほうが動きやすい。

 

「え、別に私はこのままでいいけど」

 

佳奈美はそういいながら黒夢の手を握っている。

華扇はさっきから佳奈美の方をにらみつけている。

萃香はその様子を見るとため息をついた。

 

「(まったく、ここがどこかわかってるのかな。・・・それにしても、私たちすら雷鬼の能力がなにかは知らない。・・・能力を持っていなかったら話が早いんだけど、そんなわけは無いよね)」

 

萃香は博麗が言ったことが頭に残っていた。

『・・・まあ、その通り。この能力は雷鬼から受け取ったもの』

 

「(能力を受け取った?いったいどういうことなの)」

 

一方黒夢も萃香との戦いで見ていたときの博麗の能力を思い出していた。

 

「(時を加速させる・・・か、確か父さんが持っていた漫画という書物でそういうキャラがいたっけ。確か・・・)」

 

そのとき、黒夢は世界が色彩を失ったような感覚が起こった。

そしてその後黒夢にとって信じられないことが起こった。

 

「(・・・この感覚、まさか・・・時間が止まっているのか?)」

 

黒夢はこのとき、本能的にまずいと思った。

背筋が凍るような、恐怖に近い感覚を感じていた。

黒夢は常時能力を展開しているおかげで時の止まった空間でも動くことが出来た。

だが、ほかのみんなは違う。

もし時を止められたまま体をつぶされたり切断されたりすれば。

よければ重傷、悪ければ死んでしまうだろう。

黒夢はその最悪の結果が起こるかもしれないという()が働いたことで、体を動かすことができた。

黒夢が後ろをむくろそこには!

金髪の髪をした、額に角らしき物がはえた体つきのいい男が立っていた。

その男はまるでわかっていたかのように黒夢の方を見ながら笑っていた。

そして、黒夢はこの男の見た目に何か心当たりがあった。

 

「(偶然か?・・・それとも)」

 

黒夢は少し迷ったがすぐに行動に移した。

佳奈美の手を離してみんなを安全なところに移動させると男に霊破槍を投げつけた。

しかし、その槍は投げた後に速度が減速していき男に届く前に動きを止めてしまった。

 

「ちっ!(やはり時が止まっている間は直接攻撃しないと無理か)」

 

黒夢は手の中に霊破槍を作った。

そのとき!

 

「・・・しょうがない、そして時は動き出す」

 

時が、動き始めた。

どうやらもう限界だったようだ。

時が動き始めた瞬間、萃香たちはいきなり自分の位置が変わっていたので急いで気配のするほうを向いた。

萃香と華扇はそこに立っている男を見ると目つきを変えた。

 

「・・・雷鬼」

 

黒夢はそのとき初めて目の前に立っている男が雷鬼だと理解した。

黒夢は初めて、このような妖怪に会った。

こんなにもどす黒く、野望を持っている妖怪が・・・幻想郷にいるとは考えもしなかっただろう。

黒夢は、同時に目の前の男に悪意がないことに気づいた。

普通は悪いことをしていると自覚して起こすことなのだろう。

妖怪にも多少は悪意を感じる。

敵対しているならなおさらだ。

なのにこの男からは悪意をまったく感じなかった。

つまり、悪と自覚しないで行動していることになる。

・・・それがたとえ、自己満足のものだとしても。

 

「お前は、俺が見てきた中でも見たことの無い・・・吐き気を催す邪悪だな」

 

黒夢がそういうと雷鬼は不気味な笑いを浮かべた。

この場にいる全員は、それを見ると全員背筋が凍りつくような衝動に陥った。

そして、突如雷鬼が一瞬で萃香の前に現れた。

 

「これは博麗の能力の!?」

 

萃香はすぐに身構えたが雷鬼は手刀で腕ごと切り落とそうとした。

だが、突如世界の色彩が失われた。

すると全員の動きが止まっていた。

・・・一人を除いて。

 

「霊符「静止の世界」」

 

黒夢が自身の能力を使って時を止めたのだ。

しかし、時を止めたら時を止め動いていた雷鬼も動くのでは・・・

だが、雷鬼は動いていなかった。

 

「・・・やはり、何らかの方法で能力を使い分けているようだな」

 

黒夢はさっきの博麗が受け取ったといわれた能力を見た瞬間そう勘付いたのだ。

発動する瞬間、少しタイムロスがある静止の世界だが、今回は何とか発動する瞬間を早めたことで間に合った。

黒夢は萃香たちを別の場所に移動させると霊破槍を手に出現させた。

 

「(残り2秒か!)」

 

黒夢は霊破槍で雷鬼の頭を貫こうとした。

そのとき、雷鬼の目が少し動いてこちらを見たような気がした。

 

「!?」

 

黒夢は動揺し霊破槍の動きを止めてしまった。

しかもそこで時間切れになってしまった。

そのまま、黒夢は手刀で斬られそうになったが霊破槍をその腕に投げつけた。

腕に刺さって一瞬動きが鈍くなったのを見ると黒夢は能力を使った。

能力によって時の加速が無効化されたが雷鬼はお構い無しという感じで手を振り落としてきた。

黒夢は左側に身をそらそうとしたが右腕に雷鬼の手刀をもろ食らってしまった。

黒夢の腕からはいびつな音が聞こえた。

 

「ぐっ・・・このっ!」

 

黒夢は腰からお払い棒を抜くと霊気を通したお払い棒の紙で雷鬼を切りつけた。

雷鬼は後ろに下がったため少しかするだけで終わってしまった。

そしてそのため黒夢の非干渉空間の範囲外に出てしまった。

雷鬼はそのまま洞窟の奥に向かっていった。

 

「黒夢!大丈夫?」

 

佳奈美は急いで黒夢に近づいていた。

黒夢は痛みの干渉を断ち切って痛みを感じないようにしていたが、腕が動かせなくなっているのはわかっていた。

佳奈美は急いで魔法で腕を回復させようとした。

黒夢は魔法で回復させるために能力を解いた。

すると突如痛みが襲ってきた。

 

「っあ!?」

 

正直気絶しそうになったが耐えていた。

佳奈美はその様子を見て心配しながらも傷を治すのに専念していた。

萃香と華扇は心配しながらも雷鬼が向かった洞窟の奥を見ていた。

 

「・・・なんであいつ奥にいったんだろう?もう少しで止めをさせたのかもしれないのに」

「確かに、それは気になるね」

 

萃香たちはそのことを考えていた。

そのとき、

 

「それは・・・っ」

 

黒夢が口を開いた。

 

「黒夢、今はしゃべらないほうが!」

 

華扇は傷を治している黒夢にあんまりしゃべらないように言ったが、黒夢は関係無しに言った。

 

「あいつは・・・自分の能力を無効化する俺を警戒しているからだ」

 

黒夢はそう言うと左手で痛みで落としたお払い棒を拾った。

 

「おそらく・・・奥に行って俺を殺す準備でもしてるんだろうよ」

 

萃香と華扇はそれを聞くと気に入らないという様子をしていた。

鬼は卑怯なことが嫌いなのだから当然といえば当然なのだが・・・

 

「(もっとも、やつは何か焦っている様子をしていたから・・・何らかの準備を

急いでいたのか?もしくは・・・)」

 

黒夢は華扇に腕を治してもらいながら考え込んでいた。

正直、まだ雷鬼の能力はわかっていない。

だがこのままほおって置いても幻想郷に何らかの被害をもたらすのは目に見えている。

黒夢はそう考えるとやることが決まった。

 

「あいつは、俺が倒す」

 

そういうと黒夢はその場から立ち上がった。

佳奈美はまだ治療を続けているが、まだ時間がかかりそうなのを見ると黒夢は治療をやめさせた。

 

「黒夢!・・・・・」

 

治療をやめさせたの怒ろうとしたが、怒れなかった。

なぜなら今の黒夢の目は・・・博麗の神主としての目だったからだ。

黒夢は左手で懐から札を出してそれを負傷している右腕に貼り付けた。

すると、右腕を多少は動かせるようになっていた。

 

「・・・正直ここからはかなり危険だ、あいつの能力もわかってないからな・・・下手したら死ぬかもしれない。それでも来るなら俺は止めない。来ないなら来ないで俺はかまわない」

 

黒夢はそういうと洞窟の奥に向かおうとした。

すると佳奈美は黒夢の左腕をつかんだ。

 

「・・・私は行くよ、役に立たないかもしれない。でも黒夢が一人頑張っているのに私だけ残るなんて出来ない」

 

すると、華扇のほうも黒夢の方に来た。

 

「あいにくだけどここまでやって戻っても雷鬼に何されるかわからないからね。それに、黒夢はいつも無茶するからついていかないから不安なんですよ」

 

そういうと華扇は黒夢を見ながらため息をついた。

しかし、その表情は笑っていた。

萃香も二人の様子を見るとため息をついた。

 

「まったく、ここまで着たらついていかないと駄目みたいじゃないか。それにアンタにつくことにしたんだからもう離れたりはしないさ。鬼は素直なやつの味方だからね」

 

萃香はそういうと笑い出した。

黒夢は三人を見て少しあきれた様子でいたがすぐに顔を赤らめて、

 

「そうかよ、じゃあ好きにしろよ」

 

と一言言うと一人洞窟の奥に向かった。

佳奈美たちも黒夢の後を追った。

 

「(・・・それにしても、さっきの時止めでかなり霊気をつかっちまったな・・・あれを使わなきゃならなくなるかもな)」

 

黒夢はそう思いながら洞窟の先を進んでいた。

よくわからない、予感も感じながら。




補足
雷鬼の見た目はDIOと大体同じです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。