洞窟の中をしばらく進むと大理石でできた床が見えた。
この時代に大理石をわざわざ用意してくるとは、めずらしいことだった。
「相変わらず雷鬼のいるところはずいぶんと豪華ですね」
華扇は少し気に入らなさそうに言った。
黒夢の方は大理石で出来た床や周りの壁を見ていた。
ここらは先ほどまで歩いていて道よりもかなり違っている。
黒夢はこの先に雷鬼がいるとなんとなく確信していた。
これもおそらく黒夢の勘なのだろう。
そのとき、周りに変化が起きた。
再び周りが動かなくなった。
しかもそれだけじゃない。
なんと周りが崩壊し始めた。
だが黒夢を含むみんなはその場で立っている。
まるで透明な足場でもあるかのように。
そして、黒夢が見た先には・・・雷鬼が立っていた。
「雷鬼!・・・貴様、何をした」
黒夢は今の状態が時が止まったものでも時が加速したものでもないことに気づいていた。
それとは、次元が違うようなものだった。
黒夢は自分の手の中に霊破槍を作り出すとそれを雷鬼に向かって投げつけた。
しかし、なんとその攻撃は雷鬼を
「すべての時は吹き飛ぶ」
雷鬼はそのまま黒夢たちの後ろに回りこんだ。
「そして時は再始動する」
すると周りの景色が元に戻った。
黒夢は雷鬼の方を警戒しながら見ている。
「(時を吹き飛ばす、それがさっきの能力か。・・・やつは、さっきから“時”関連の力しか使ってないが・・・それだけでは能力の受け渡しの説明には不十分か)」
黒夢は左手でお払い棒を持って雷鬼に向かっていった。
すると雷鬼は突如右手を目の前で振った。
いや、正確には違う。
雷鬼に向かっていく黒夢には見えた!
雷鬼はただ腕を振ったわけではない。
その空間を削り取るのが目的だったのだ。
すると、突如佳奈美が雷鬼の方に引き寄せられた。
「(まずい!・・・くそ、後一回が限界だっつうのによ)静止の世界!」
すると、周りの色彩が反転した。
再び時が止まったのである。
黒夢は佳奈美たちを安全な方向に移動させると雷鬼の右腕をお払い棒で切断した。
そして、黒夢は懐から札を出した。
「霊符「霊破槍 拡散」!」
すると札が青白く光った。
黒夢の周りにはたくさんの霊気で出来た槍が浮かんでいた。
そしてそれはすべて雷鬼の方に飛んで行き当たる寸前で動きを止めた。
黒夢は雷鬼から少し距離をとった。
「・・・そして静止は終わる」
時は動き始めた。
「むぅ!?」
黒夢の霊破槍はすべて雷鬼の体に突き刺さった。
佳奈美達は何が起こったのかわからない様子だった。
すると、黒夢が突如にひざまずいた。
「黒夢!?」
佳奈美は黒夢の方に近寄った。
「・・・かなり霊気を消費してるわね、右腕も負傷しているからこれ以上戦うのは無理よ」
萃香はそういうと黒夢をかばうように黒夢より前に出た。
すると、黒夢は前に立った萃香の腕をつかんだ。
そして、次のことを言った。
「に・・・げろ」
萃香はそれを聞くと雷鬼の方を見た。
そこには、雷鬼の姿は無かった。
次に萃香が雷鬼の姿を見たのは・・・自分の腹部が雷鬼の左腕によって貫かれたときだった。
「な・・・・」
「まずは貴様からリタイアだな、伊吹萃香」
だが、萃香は気を失う前に雷鬼の左腕に打撃を加えた。
しかしそれは青あざになった程度だった。
雷鬼はそのまま左腕を萃香の腹から引き抜いた。
そのとき、華扇の蹴りが雷鬼の腹部にめり込んだ。
しかし、雷鬼は微動だにしないで華扇のほうを見た。
だが華扇はそのまま雷鬼に殴りかかった。
その拳は雷鬼の右手につかまれた。
華扇はさっき黒夢が切り落としたはずの腕がもうくっついていることに驚いた。
「お前の拳、ぬるいぞ。来る前にかなり体力を消費したようだな」
雷鬼はそのまま華扇のわき腹に蹴りを入れた。
華扇は蹴りを入れられた勢いで壁まで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「がはっ!?」
華扇は壁に叩きつけられた後吐血した後に地面に倒れた。
「(くそっ・・・まだだ、まだあれには時間がかかる!)」
「さて、次は貴様 ッ!」
黒夢に詰め寄ろうとした雷鬼に火の塊が当たった。
雷鬼は火の勢いで少し吹き飛ばされた。
「・・・よくも二人を」
炎の放たれた先には杖を構えた佳奈美が立っていた。
雷鬼は少しこげた右腕の傷の部分を左手で触れた。
すると、その傷が消えたかのように治っていた。
「傷が治った?それもあなたの能力の一部なの?」
佳奈美は杖を構えながら言った。
「・・・ふん、このままだとつまらん。能力でも教えれば貴様らでも少しは歯ごたえがあるようになるか?いや、そんなことはないか」
雷鬼は笑いながらそういった。
佳奈美の方は変わらずに雷鬼の方を見ている。
「冥土の土産ぐらいに教えてやろう。俺の能力は“
「
佳奈美は今まで
「・・・選択肢を変えた、もう一つの世界。つまり“もしも”の世界が存在するという考え方だな」
黒夢はそういうとふらつきながら起き上がった。
雷鬼はそれを聞くと不気味に笑った。
「そう、つまり俺はその“もしも”の世界でいる俺の力を使えるんだよ!まさに支配する力ということだ!」
黒夢は雷鬼の能力に何らかの違和感を感じていた。
つまり何らかの方法で別の能力を持っていることは無いわけではない。
「(だが、さっき戦った様子から一度に使えるのは一つ。あれは同時に複数の能力を使うことができないということだな)」
「さて、これ以上無駄話をするつもりは無い」
雷鬼はそう言うと右手を出した。
「帝王の末路!」
そう叫ぶとさっきと同じように世界が崩壊した。
おそらく時を吹き飛ばしたのだろう。
「さて、貴様は最後に消してやる。博麗黒夢」
そういうと雷鬼は佳奈美の方に行こうとした・・・だができなかった。
なぜなら自分の体が結界に閉じ込められていたからだ。
「何っ!?これは・・・貴様がやったのか!博麗黒・・・っ!?」
雷鬼は自分の体が動かないことに気づいて黒夢の方を見た。
だが、そこに立っていた黒夢は変わっていた。
それは、さっきより霊気は2倍3倍以上になっていたからだ。
「な・・・何が?」
雷鬼は時が吹き飛んだ空間で混乱していた。
時が吹き飛んだ空間、つまり自分が支配できる世界。
その世界に干渉するものはいない、そう思っていた。
だが、それは違った。
たった一人の異常者によってそれは覆された。
それが、博麗黒夢。
彼は他の
少なくとも雷鬼が見た
そんなことは普通ありえない。
何があろうと選択肢を変えた
博麗黒夢の存在は、雷鬼の理解を超越していた。
だから雷鬼は黒夢を壊そうとしていた。
しかし、それは不可能に近くなっていた。
なぜなら雷鬼は黒夢の本気を出させようとしてしまったからだ。
「・・・やれやれ、この封印を解くのは久しぶりかな」
黒夢はそう言うと雷鬼に近づいてきた。
さっき雷鬼は佳奈美を始末するために触れれる状態で時を吹き飛ばした。
そのせいで時を吹き飛ばした状態で動ける黒夢は雷鬼に触れることが出来るというわけである。
「こ、この!」
雷鬼は帝王の末路を解除した。
すると周りの景色はさっきの状態に戻った。
佳奈美は雷鬼と黒夢の方を見た。
すると、雷鬼が札で構築された結界で動きが封じられているのを見た。
「あれって、ここに来る前に黒夢が用意していた札の・・・」
~数時間前~
博麗神社から出てから少し経ってから黒夢は札に使用する紙に何かを書いていた。
「黒夢?何書いてるの」
「ん?ああ、さっき萃香と戦ったときに思いついた札を書いてんだ」
黒夢がそう言うと萃香は気まずそうにしていた。
やはりまだ気にしているようだ。
「まあまあ、そんな気にしなくていいから」
黒夢は萃香にそういいながら札を書いていた。
「それって、どんな札なんですか?」
華扇は黒夢に聞いた。
黒夢は札を書きながら答えた。
「これはな、鬼対策用の札だ。そして、その効果は・・・」
「・・・鬼を束縛する結界を作り出す札」
佳奈美はそうつぶやいていた。
黒夢の手の中には一枚の札があった。
どうやらあれが結界の発動トリガーだったようだ。
「八方鬼縛陣」
雷鬼はそれによって動きを封じられていた。
しかもその結界には微弱とはいえ黒夢の能力が付加されていた。
それによって雷鬼の能力を使っても削り取ることも時を操って効力を消すことも出来ない。
「ぐ・・・この」
雷鬼は自分の腕力で結界を割ろうとしたが結界はびくともしない。
「無駄だ、その結界は必ず一分は動きを封じる。お前に抜け出す術は」
黒夢は左手の手のひらに霊気を集めていた。
そして霊気が集まると一つの青白い球体になった。
「ない」
その球体を黒夢は雷鬼に投げつけた。
球体は霊気を圧縮して出来たものだ。
もちろんそれを食らえば多大なるダメージを食らう。
その球体は雷鬼に当たると爆発を起こした。
「ぐああああああ!!」
雷鬼はその攻撃をもろくらって体が焼きただれていた。
そして結界の効力がきれたらしく、結界が消滅し雷鬼はそのまま地面にひれ伏した。
「ぐっ・・・ばかな、この俺が」
雷鬼は息を切らしながら立ち上がった。
だが、その足取りは黒夢よりも不安定だった。
「容赦はしない」
黒夢の手の中に霊破槍が出現した。
その霊破槍はさっきより、おおきくなっていた。
雷鬼はそれを見て焦っていた。
その霊破槍にも黒夢の能力が付加されており、能力で消したり時を止めたり吹き飛ばしても無駄だった。
それに加えて、雷鬼自身も黒夢の非干渉空間の射程内にいて能力も使えなかった。
「終わりだ」
黒夢の霊破槍は、雷鬼を貫いた。
雷鬼は吐血しながら気を失った。