あたいは生まれもってある力を持っていた。
それは妖精の中では異端の能力だった。
冷気を操る程度の能力、それがあたいの能力。
その能力のせいかは知らないけど、私の羽根はうまれついて氷のような羽をしていて体温も他の妖精よりも冷たかった。
自分達の中に異端者がいると思った妖精たちは、あたいを仲間はずれにした。
妖精たちと羽の手入れや遊ぶこともできなくなってしまった。
気づいたときには、本当に一人になっていた。
だからあたいは、一人でいることになれたふりをした。
自分で自分のことはすべてできるふりをした。
それが・・・馬鹿であるあたいが唯一できることだった。
そんなあたいがあいつと会ったのは・・・
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雨の日、森の中は静けさに包まれていた。
晴れの日なら妖精たちでにぎやかな森は、異様なほどの静けさを保っていた。
そんな森の中を、誰かが歩いていた。
歩いていたのは、博麗黒夢だった。
おそらく、妖怪を退治してきたばかりなのだろう。
その様子を見ていた者が独りいた。
その視線に気づいた黒夢はその方向に振り向いた。
そこには、氷のような透き通った羽を持った少女が木の幹に座っていた。
こんな雨の日に、さらにただの人間がこんな森の中にくるはずがない。
しかも羽がついていることから黒夢はそれを妖精と判断した。
「(こんなところに妖精)お前、何でこんなところでいる。雨宿りでもすればいいんじゃないのか?」
なぜかはしらないが、黒夢はその妖精に話しかけた。
話しかけられた妖精は黒夢を少し見た。
「あんた、あたいが怖くないの?」
妖精らしからぬ真剣な表情で言った妖精の言葉に黒夢は少し不思議に思った。
今まで黒夢は20年ほど生きてきた中でたくさんの妖怪と戦ってきた。
その中で能力を持っていたものはかなりの数がいる。
しかし、その中で妖精がこんなに真剣な表情を見るのは初めてだった。
「なんで、怖がらないとといけないんだ?」
思っていたことを言った。
それは、今まで人間の恐怖の対象であった妖怪と渡り合ってきた黒夢だからこそ言える台詞だった。
それを聞くと、妖精は驚いた。
それは嘘をついていない言葉だからこそ驚いていた。
「…変わっているね」
黒夢は笑った。
「よく言われる」
そう言うと妖精の隣に座った。
雨は木の葉によってあまり来ないがまったくこないというわけではない。
黒夢は妖精に雨がなるべく当たらないように雨が少し当たりやすいところに座っている。
「…風邪、引くよ」
「かまわない」
そう言うと黒夢は木の幹にもたれかかった。
すると、突然妖精と黒夢の上に氷の板が張られた。
その氷は降ってくる雨を防いでいた。
「…冷気を操る力か、使い勝手がよさそうだな」
そんな判断を能力にする人間は見たことがなかったと妖精は思った。
周りから浮いている存在なんだろうなとも思った。
「そういや、お前名前は?」
妖精は少し困ったそぶりをしていた。
その様子を見ると妖精を少し目をそらすと、
「チルノ。お前は今からチルノだ」
と言った。
妖精…チルノには今まで名前がなかった。
妖精たちと関われなかったものからすれば当然である。
名前を、呼ばれる必要はないのだから。
だから、今まで名前を呼ばれるなんてこと考えたこともなかった。
「…ネーミングセンスないね」
少し黒夢はショックを受けていた。
それを見て少し笑うとチルノはその場から立ち上がった。
「冗談よ、…この名前気に入ったわ。ありがとう」
そういうとその場から飛び立とうとした。
しかし、右腕を黒夢に掴まれた。
「…いつでも会いに来いよ。俺は博麗神社に住んでるから」
こくりとチルノがうなづいたのを見ると黒夢は手を離した。
そして、飛んでいった。
空を見たら、雨はやんで空に虹がかかっていた。
それを見ると、黒夢は博麗神社に帰るために歩いていった。
実は、今日黒夢がここにきたのは湖に住んでいる妖精…チルノのためである。
チルノは冷気を操る程度の能力を所有している。
上手く使えていなくても、その力は幻想郷の中でもかなりのランクに入るだろう。
だからこそ、今のような精神状態でいられたら能力が暴走するかもしれない…そんな可能性があったので黒夢が来たのである。
「(しばらくは俺と一緒にいることで、他人といるぬくもりを知って心が休まるだろう)」
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翌日、博麗神社にはチルノが来ていた。
季節は6月の半ばである。
博麗神社の中は湿気でじめじめしていた。
「あ~、暑い」
つまり、蒸し暑い。
チルノは神社の縁側での転がっている。
昨日に会ったときよりも妖精っぽくなったなと黒夢は思う。
そう思いながらチルノの隣でお茶を飲んでいる。
「黒夢~、何か涼しくなるものない?」
「いや、お前自分で氷作れるだろ」
そう言うとチルノは思い出したかのように手の中に氷を作り出した。
やっぱり妖精か、と黒夢は思った。
「涼し~い」
それを見ながら黒夢はお茶を飲んでいる。
今日の夏は涼しくすごせそうだと思った。