東方神主伝   作:ごくでヴぁる

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第二十五話 代償

石の上に座っていた妖怪は黒夢の技によって肉片になった。

五十封印 ‐多重破壊- は面で攻める黒夢の技である。

その破壊力は霊破槍には劣るが奇襲には使いやすい技である。

他の札の中には地雷のように仕掛けて踏んだだけで爆破する物などさまざまなものがある。

ともかく、今の黒夢の攻撃はたいていの妖怪なら粉々になるぐらいの威力があるのは確かだ。

 

「…おかしい」

 

黒夢はつぶやいた。

大妖怪と聞いて黒夢はそれなりの準備をしてきている。

服の中には防御用の札をたくさん貼り付けており、攻撃用の札まで用意していた。

なのに、目の前の妖怪は小手調べで撃ったさっきの一撃でやられてしまった。

確かにさっきの攻撃がかなりの破壊力がある。

案内させた妖怪はさっきの攻撃の爆発に巻き込まれて消滅してしまっている。

 

「(今の一撃でやられた?いや、それはないはずだ。いくらさっきの攻撃が強いとは言っても仕留めきれるわけが)」

 

そのとき、黒夢の肩を何かがかすった。

それに気づいた黒夢はお払い棒から霊弾を出して何かにぶつけた。

それは、さっき粉々になった大妖怪の肉片だった。

 

「(何ッ!?)」

 

咄嗟にガットは肉片があったところを振り向いた。

そこには、攻撃を受ける前の姿で大妖怪が座っていた。

 

「よォ、どォしたンだ?」

 

一瞬、たった一瞬だったが黒夢はこの妖怪に恐怖を覚えた。

さっきの攻撃を天魔がしたように反射したり、紫がしたように空間を開いてそこに攻撃を吸収させるなどならまだ対処ができるレベルだ。

だが、さっきしたことは何があったのかまったく分からなかった。

黒夢が分からないと感じた恐怖だった。

 

「…」

 

黒夢無言で札を構えた。

無理やり自分の恐怖を断ち切ったようだ。

それに気づいたのか目の前の妖怪は不気味に笑った。

 

「おいおい、ナにおびェてるンでスかァ?」

 

そう言うと妖怪は片手を上に上げた。

するときの周りからたくさんの妖怪が出てきた。

その妖怪達は、すべて目の前の大妖怪と同じ顔ををしていた。

 

「これが、お前の能力か?」

 

黒夢は返答はこないと思いながらも質問した。

しかし、その予想とは違い

 

「あァ、そうだがァ」

 

妖怪は即答した。

黒夢は想定外のことに少し驚いていた。

自分で能力の一部を言うということは得策な判断ではない。

 

「(知能があまりよくない可能性もあるな。…試してみるか)」

 

そう思うと黒夢はお払い棒を地面に捨てた。

その様子は目の前の大妖怪は不思議に思っていた。

 

「やっぱり、お前なんかにお払い棒を使う必要はなかったな。だったら札だけで十分だ、数だけなら俺でも対処できるしな」

 

プッツン

 

血管がちぎれるような音がしたような気がした。

そして目の前には、自分の妖気で周りのものを壊しかけている妖怪が一人いた。

 

「コロス」

 

思ったより安い言葉でつれたなと黒夢は思った。

しかし、そんなことを考えている暇はあまりなかった。

周りにいるたくさんの妖怪たちが黒夢に襲い掛かってきたからだ。

 

「(まあ、動きが単調だから対処はまだしやすいほうだがな)」

 

黒夢は懐から数枚の札を出すとそれを周りにばら撒いた。

するとその札から霊気が噴出した。

 

「霊子結界」

 

黒夢の周りに霊気で構築された結界が現れた。

それにより妖怪たちの攻撃は防がれる。

しかし、それがずっと続くわけではない。

黒夢は結界の中で札の準備をしている。

妖怪たちは殴る蹴るなどをして結界を壊そうとするがびくともしない。

 

「…吹き飛べ」

 

そういって結界に一枚の札を貼ると黒夢の周りに張っていた結界が大爆発を起こした。

結界を攻撃していた妖怪たちを全員吹き飛んでいった。

しかし、肉片となった妖怪たちは肉片をくっつけながら再生を始めていた。

 

「(きりがないな…ん?)」

 

黒夢が周りを見渡したとき、ある違和感があった。

肉片の中に再生している奴と再生していない奴があった。

 

「(何か違いでもあるのか?だが違いといえばさっきの爆風で焦げてるか焦げてないかぐらい…まさか)」

 

ある可能性が見えたらしく、黒夢は少し戦い方を帰ることにした。

意識を集中させる。

その姿はまるで誰かと会話をしているようにも見えた。

すると、黒夢の体を赤い何かが包み込んだ。

それは炎。

しかもそれはただの炎ではない。

この地上で一番熱い炎。

 

「愛宕の炎。神の炎を受けるんだな」

 

そう言うと黒夢は手の中にある炎の塊を妖怪たちに投げつけた。

すると妖怪たちは灼熱の炎に包まれて灰となっていった。

妖怪たちは再生しない。

 

「…なるほど、やっぱりある程度原型が残っていないと再生はできないのか」

 

とりあえず打開策が見つかったことに少し喜んでいた。

しかし、そう簡単にもいかない。

石のあったところに座っていた大妖怪が立ち上がった。

 

「ヘぇ、まさかタいしょ方をミつけることができたトはなァ」

 

すると、妖怪の右手が不気味な音を立てながら変形し始めた。

そして変形が終わると右手は鋭利な刃物のようになっていた。

 

「ジャ、はジめるトするカ」

 

すると右手の得物がまるで発光しているかのように光り始めた。

その光は刀が光浴びて光っているなんて生々しいものじゃなかった。

本当に光っていた。

 

「(なんだ?どんな原理で光っているんだ)」

 

すると、妖怪が恐ろしい脚力で黒夢に距離をつめてきた。

黒夢は地面に落ちているお払い棒を掴むと攻撃に備えた。

そして右手の攻撃をお払い棒で受け止めた…はずだった。

黒夢の血が、近くの木にこびり付いた。

そして、地面に真っ二つになったお払い棒が転がった。

 

「(そう…か、発光していたのは…すごい速さで刃を回転させていたから・・・か)」

 

無論この時代に電動のこぎりといった道具があるはずがない。

だが、直感で分かった。

なぜなら、すでに斬られていたのだから。

 

黒夢の右腕が切り落とされていたのだから。

 

「ギャハハハハ!!思ったよりたいしたことなかったな、博麗!」

 

右腕のあった場所からは血が流れ出る。

体にまとっていた炎は力を失ったように消えていた。

つながっていた右腕は、足元に転がっている。

 

「……」

 

しかし、少しすると血が出なくなった。

そして残っている左腕がゆらゆらと妖怪を掴んだ。

 

「あァ?なんのツもりだァ」

 

すると、黒夢の手から炎が出てきた。

そして妖怪の体に炎が燃え移った。

 

「ギャ、ギャアアアアアアアアアアア!!」

 

火だるまとなって妖怪が地面を転がりまわる。

黒夢はそれを見ながら息をきらしている。

今は血が流れ出ないように体内の霊気を操って一時的に押さえつけているが最初に流した血が多かった。

 

「…もう、終わりか…」

 

敵を倒して安心していたのか珍しく黒夢は気を抜いていた。

そのせいで気づかなかった。

後ろに大妖怪が最初に飛ばした肉片があることに!

気づいたときには遅かった。

黒夢の腹部を、とがった肉片が刺さっていたことに。

 

黒夢はそのまま、意識を失った。

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