東方神主伝   作:ごくでヴぁる

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第二十六話 地底

「…!」

 

黒夢が目を覚ますと博麗神社の中だった。

すぐに黒夢は斬られた右腕を見た。

そこには魔法陣によってつながれている斬れた右腕があった。

この魔法陣に黒夢は見覚えがあった。

 

「あ、やっと目を覚ましたんだ」

 

「…佳奈美、か」

 

いつも着ている黒い上着を脱いだ佳奈美が立っていた。

おそらくあの場で倒れた黒夢を治療してここまでつれてきたのが佳奈美だろう。

あの時、腹部を肉片が貫いた。

普通なら一撃で内臓が持っていかれる一撃だった。

だが、黒夢の服の中には防御用の札が仕込んであった。

それにより、ダメージを最小限に抑えることはできた。

しかし、最小限に抑えてもそのままの状態だったら確実にこの世にいなかっただろう。

 

「…ありがとな」

 

大怪我をした自分を治療してくれたことに純粋に感謝していた。

だが、黒夢はまだ知らない。

 

「例はすべてが終わった後に言ってもらいたいかな…まだ、敵は生きてるから」

 

あの大妖怪が生きていることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…まだ、生きてるだと!あの時完全に燃やし尽くしたはずだ」

 

信じられなかった。

あの時出せる力を使って確実にしとめたはずだった。

だが、現実ではそんなことはなかった。

 

「…あの妖怪の能力は『肉片を操る程度の能力』らしい。肉片だったら自分のでも他人のでも操れる」

 

佳奈美は倒した妖怪に別の妖怪の妖気が少し宿っているのに気づいた。

それが気になった佳奈美はここ数日間自分の家にこもってそれについて調べていた。

そのとき、肉片と化した妖怪が襲い掛かってきた。

それを撃退するために何度も魔法で吹き飛ばしたりしたが何回も襲ってきた。

その後火炎魔法で何とか撃退できた。

そして解析を進めると肉片に能力の痕跡が見つかった。

肉片に対しての能力発動に気になった佳奈美は本の資料で調べ、その中に今回の異変の妖怪の力と能力があった。

実際佳奈美が持っていた本は魔法の森に住んでいる一人の魔法使いが書いたものを本人に直接もらったものだったので人里の人間や普通の妖怪…博麗の神主すら知らない情報だった。

その情報を早く伝えるために、佳奈美は人里に行って伝えた後に黒夢を探していた。

そのときに大怪我をして倒れていた黒夢を見つけた。

 

「あの妖怪は、紫さんと同じ一人一種族の妖怪でその特性が瞬間再生…つまりすぐに再生する力があるみたい」

 

それを聞くと黒夢は疑問に思った。

さっき相手をした妖怪はそこまで再生力がある風には思えなかった。

だが、その疑問は一つの仮定によって納得がいった。

 

「俺が相手したのは…あいつの能力で作られた奴か…」

 

「そのようね。本体自体はおそらく隠れて他の肉片たちを操っている」

 

それを知ると黒夢は怒っていた。

自分が、こんな単純なことに気づかなかったことに。

自分が、あんなにも惨めにやられたことに。

 

「…決めた」

 

そう言うと黒夢は布団から出て立ち上がった。

佳奈美はまだ傷が完全に治っていないと止めようとした。

だが、黒夢は聞かない。

黒夢は神の力を宿した。

その力は天照大御神の力を宿した。

すると体の傷が再生していく。

神の力を借りているからこそできる芸当である。

切れていた右腕もいまだとすっかりくっついている。

 

「…さて、それじゃあ探しに行こうか」

 

「…はぁ…まったく、あなたはいつもそうだね」

 

佳奈美はそう言うと机の上においていた黒い上着を着た。

そして壁に立てかけてあるほうきを掴むと黒夢にいつもの神主服を投げ渡した。

 

「早く行きましょう、探知魔法はすでに使っているから場所ぐらいならすぐに分かるし」

 

能力の痕跡をもとに探知魔法で場所を探知しているらしい。

さすがだな、と着替えながら黒夢は思う。

佳奈美は魔法使いとしてかなりのレベルにまでなっている。

おそらく完全に人間をやめることもできるだろう。

 

「…いやな、場所にいるね」

 

黒夢はそれを聞くと不思議に思った。

佳奈美がいやな場所だと言うことは殆どない。

それこそ森の中でも妖怪の山でも魔法の実験ができると喜んで行くからだ(人はそれを無謀と言う)

そんな佳奈美が嫌うところといえば…

 

「まさか、地底か?」

 

「…うん」

 

昔、地獄だった場所が地底と呼ばれる。

その土地では地上で忌み嫌われた妖怪たちが住んでいる。

そして、妖怪は厳密進入禁止である。

 

「…なるほどなぁ。道理で今まで聞いた事のない妖怪だと思った。…地底に追放された妖怪ならな」

 

そう言うと黒夢は新しい札を押入れから取り出してそれを服に貼り付けた。

防御用の札と攻撃用の札を持っていくみたいだ。

そして押入れから丸い球体を二個出してきた。

そしてその中から一つを佳奈美に渡した。

 

「…これは?」

 

「うちの父さんが作った連絡と援護ができる…陰陽玉って言うアイテム」

 

そう言うと黒夢は渡していないもう一つの陰陽玉を自分の周りに浮かせた。

もとい、浮かせることができるアイテムのようだ。

 

「そっちは地底には入れないからここで補助をしてもらいたい」

 

佳奈美には地底にいけない理由があった。

今は地獄じゃないにしてもそんな土地に精霊がいるはずもない。

そうなると精励魔法の得意な佳奈美は戦えない。

だからこの場所で補助するほうがいいと黒夢は考えた。

 

「…無茶は、しないでね」

 

無駄だと分かってた。

黒夢はこんなことを言っても無茶をするのはわかっていたから。

 

「…行って来る」

 

今言ったのもそうだ。

黒夢は分かったとは言わなかった。

…無茶をしなければならない事を分かっていたからだ。

 

「…いってらっしゃい」

 

佳奈美は、行かないでとは言わなかった。

その言葉は、黒夢のためにならないと分かっていたから。

言っても、行ってしまう事は分かっていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想像していたより地底は暗い。

それに道もくねくねしていて曲がりづらい。

陰陽玉から明かりを出すことによって進んでいた。

 

『思っていたより何もでないね』

 

陰陽玉から佳奈美の声が響く。

通信装置としての昨日は地底でもきちんと発動しているようだ。

 

「そうだな。だが、入ったばかりだからな」

 

油断はできない。

そう言おうとした時、目の前に白い糸が見えた。

黒夢はそれに当たらないようによけていく。

そのとき、目の前にさっきよけていた白い糸が束で黒夢に襲い掛かってきた。

 

「…まったく、敵か」

 

袖から札を出すと霊破槍を生み出して糸を切った。

その糸は切れると地面にくっついた。

 

「こんなところに人間が来るなんて…とんだ命知らずだねぇ!!」

 

暗闇から、一人の少女が現れた。

この現れた気配から、黒夢は少女が妖怪であることを察知した。

そしてこんなところにいる妖怪から地底にいる妖怪だと察知できる。

 

「…地底に喧嘩を売りに来たわけではないぞ」

 

無駄だとは思いながら話して通れるなら通るために事情を説明しようとした。

だが、次の言葉を話す前に妖怪が言葉を挟んだ。

 

「そんな言葉にはだまされない。人間はうそつきだからねぇ!」

 

そう言うと妖怪は黒夢に向かって紫色のもやを放ってきた。

黒夢はすぐに左手をもやに突き出した。

そしてもやは黒夢の左手に当たった。

 

「(私の出したウイルスに触れたわね)」

 

妖怪は勝利を確信した。

だからこそ目の前で起こったことが信じられなかった。

左手で触れたウイルスがまるで最初からなかったかのように消えていった事に。

 

「…悪いな。今は遊んでる暇はないんだ」

 

「…あはは、どうやら能力持ちの人間みたいだね」

 

妖怪はそう判断した。

その判断は確かにあっていた。

だが、妖怪は知らない。

目の前にいる人間が地上では人間と妖怪の中立を守る人間だということに。

 

「さあ、本気を見せてあげるよ」

 

そう言うと妖怪は体の回りにたくさんのウイルスを浮かばせた。

そのとき、奥から一人の少年が歩いてきた。

 

「おい、何をしているんだ」

 

妖怪はその声を聞くとピクッと一瞬震えた。

その少年は金髪の髪をして額に小さな角が生えていた。

そして左腕に赤い布を巻いている。

妖怪からは恐怖の対象。

黒夢たちには見覚えがある妖怪だった。

 

「…雷鬼」

 

「ふん、ずいぶんと久しぶりだな…黒夢」

 

黒夢が昔に力を封印し、地底に身を置く鬼神が黒夢たちの前に現れた。

 

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