東方神主伝   作:ごくでヴぁる

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第三十一話 世界をめぐる鬼

「…っ…ここ…は」

 

黒夢が目を覚ますと見慣れた天井が目に入った。

どうやら、博麗神社に帰ってきていたようだ。

そして体を起こすと次の瞬間!

 

「黒夢~!!」

 

涙で顔が濡れたチルノに抱きつかれた…もとい突進された。

正直氷の尖った羽が刺さらなかっただけマシなのだが痛いものは痛い。

黒夢は少し咳をするとチルノを持ち上げた。

 

「い、いきなり抱きつくのはやめろ」

 

チルノは能力を完全に操りきれてはいない。

だからなのかは知らないが、無意識のうちに自分の体の周りに冷気を纏わせている。

黒夢も非干渉を無意識のうちに常時発動させているため抱きつかれても冷気で凍りつくことはない。

実は少し前に博麗神社を凍らされたことがあった。

そのときの復習で博麗神社の建物すべてにコルテスの使える能力の一つである力を固定化させる程度の能力で札に非干渉能力を固定化させて博麗神社中に貼り付けている。

まあ、そのせいで博麗神社の中で能力を展開させることはできなくなったが。

その代わり魔法だけは非干渉にできない。

それは、能力だけを非干渉にするからだ。

まあ、魔法使いは今の幻想郷には佳奈美しか存在しないが。

黒夢は上半身を起こした状態で周りを見渡す。

佳奈美はどうやら出かけているらしくいない。

しかし、畳に横になって大きな体で寝ている雷鬼がいた。

体の傷がほぼ完治しているのを確認するとおそらく佳奈美が応急処置をし雷鬼が能力で治した事が分かった。

 

「…まあ、博麗としての仕事はこなせるということでいいとするか」

 

黒夢はそうつぶやいて布団から出るとガットは引き出しから一冊の書物を取り出した。

チルノは興味心身に書物を見た。

 

「ねえねえ!それなに?」

 

「…今まで戦った妖怪のことを記す書物だ、とは言っても俺が書くんだがな」

 

そう言うと机の上においてある筆に墨をつけて今回戦った妖怪たちについて書き記す。

どれも危険な妖怪であるのは間違いない、だからこそ死んだとしても能力や危険性、戦い方などを記すのだ。

それが、未来の博麗のためになるだろうと思って。

書き終えると黒夢は筆を戸棚にしまい書物を倉庫へしまいに行った。

チルノは黒夢が目覚めたことで安心したのかいつの間にか寝ていた。

一応毛布をかけておいた。

倉庫を開けると中にはたくさんの箱が置かれている。

しかし、実際のところ箱だけで中身はほとんどないに等しい。

その中に空き箱の一つに黒夢は書物をしまった。

 

「…そろそろか。今回ではなかったということは、近いな」

 

そうつぶやくと倉庫から出て鍵を閉めた。

居間に戻ると帰ってきていた佳奈美に抱きつかれた…もとい突進を受けた。

 

「うぐっ!?」

 

黒夢の口から少し苦しむ声がもれ出た。

しかし、佳奈美は気づいていない。

 

「いつもいつも無茶ばっかりして!!少しは待っているほうの気持ちも考えてよ…」

 

佳奈美は…泣いていた。

どれだけ心配したのだろう、助けに行っても役に立たないと分かっていた。

だからこそいけなかった…どんな気持ちだったんだろうか。

黒夢には想像できなかった。

なぜなら、黒夢は待つことはないから。

ただ前に進んでいくだけだ…誰よりも早く。

 

「…ごめん」

 

黒夢は佳奈美に謝った。

その声は普段の黒夢とは違い弱弱しかった。

佳奈美は黒夢の胸板に顔をつけて泣いていた。

しばらく、ずっとその状態でいた。

しかし、

 

「おうおう、いい雰囲気だな」

 

いつの間にか目を覚ましていた雷鬼がにやけながら黒夢と佳奈美の方を見ていた。

黒夢と佳奈美は顔を合わせてうなづくと雷鬼に蹴りと火の玉を当てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すまん、今は反省してる」

 

少しこげた和服を着た雷鬼が正座で座っている。

そしてその前には黒夢と佳奈美が仁王立ちで立っていた。

雷鬼は二人の雰囲気が怖くてとてもふざけれる状態ではない。

 

「(…この状態でも妖精は寝れるのか。…すごいのか馬鹿なのか)」

 

チルノは布団の中で寝ている。

精神が図太いのかはたまたただの馬鹿なのかは分からない。

…おそらく後者なのだろうが。

そのあと、雷鬼は何もかもを搾り取られたような状態で畳に寝そべっていた。

 

「くそっ、誰が治してやったと思ってんだよ」

 

やはり雷鬼が治してくれたようだ。

黒夢は雷鬼の近くに湯飲みを置いた。

 

「…まあ、その事は感謝している」

 

「感謝してもらわないと俺が泣くぞ」

 

そう愚痴を言いながら雷鬼は湯飲みのお茶を飲む。

なんだかんだで文句を言いながらも別にいやではないようだ。

黒夢と佳奈美のとき、雷鬼が途中で介入しなければずっとあのままだっただろう。

 

「…あの後、どうなった」

 

黒夢は雷鬼に聞いた。

雷鬼は少し頭をかきながらこう言った。

 

「とりあえず、鬼達に能力で聞いたが殺がいなくなったことで次に強い妖怪であるさとりという妖怪がなったらしい」

 

「お前はならなかったのか?」

 

さとりとは心を読む妖怪だという事を知っている黒夢は雷鬼より強い相手とは思わなかった。

力だけなら鬼神である雷鬼のほうが到底上なのだ。

しかし、雷鬼はつまらなさそうにこういった。

 

「上にいるだけなんてつまらないだろ。それに地底に戻る気はない」

 

そう言うと雷鬼は湯飲みを置くと境内へ出る。

そして、黒夢の方を見ると残念そうに言った。

 

「…お前に会えなくなるのは少し寂しいがな」

 

黒夢は少し驚いた。

雷鬼は分かりやすいなと一言言うと笑った。

そして、賽銭箱のある場所まで着くと黒夢のほうを振り向いた。

 

「それと、豪という男はどこか行ってしまったがなに心配する必要はない。今は幻想郷の外に武者修行とやらで行っちまったからな」

 

そう言うと雷鬼は能力を発動した。

すると、雷鬼と黒夢以外の時間は止まった。

 

「じゃあな、黒夢。…機会があればまた会おう、俺は幻想郷以外の世界を見ていくからな」

 

そう言うと雷鬼はその場から消えた。

そして少しすると時は動き出した。

 

「…まったく、勘の鋭いやつだな」

 

困ったように頭をかくと黒夢は博麗神社へ帰って行った。

…また、会えることを思いながら。

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