東方神主伝   作:ごくでヴぁる

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第三十四話 闇の化身

1年がすぎた。

今霊夢は今日紫たちに連れられ幻想郷を散歩している。

それは黒夢がある用事で出かけていていないからだ。

幻想郷には強い妖怪がたくさんいる。

いくら霊夢が強くなったからと言っても中級妖怪を倒すのが精一杯のレベルである(逆にこの年で中級妖怪を倒せること自体がすごいが)

なので、今は紫とコルテスがそばにいることで霊夢を守っている。

…その頃黒夢は。

 

「おお、今日はいい天気だな。そう思うだろ、ルーミア」

 

「…ええ、そうね」

 

ルーミアと一緒に散歩をしていた。

実は紫たちに無理を言って予定を立ててもらったのだ。

そして、二人は今湖まで来ていた。

湖でたくさんの妖精が遊んでいる様子が見れた。

しかし、ルーミアは特にそんな様子を見ないでただ黒夢の隣にいた。

…そう、ルーミアは黒夢に好意を持っていた。

実際にルーミアが黒夢に散歩に誘われたときも内心うれしかった。

しかし、今は緊張しすぎて何も話せない状態になっていた。

そんなとき、

 

「なあ、話があるんだ」

 

黒夢はルーミアに話しかけた。

ルーミアはいきなり話しかけられたことに驚いたがすぐに

 

「何、どうしたの」

 

と受け答えをした。

黒夢は少し息を飲んだ。

そして、真剣な表情でルーミアに話しかける。

 

「…お前が気づいているかは知らないが…最後に人間を食べたのはいつだ?」

 

「え?…確か最後に食べたのは、復活する前くらいだと思うけど」

 

黒夢は少し顔を曇らせた。

ルーミアは一瞬戸惑ったがすぐに返答した。

黒夢は答えを聞くと少し考えた様子をした。

そして、

 

「そうか…今夜、もう一度散歩をしないか?」

 

とルーミアに言った。

ルーミアはうれしそうに、

 

「ええ、別にかまわないわ」

 

と黒夢に言った。

二人は湖から離れて博麗神社へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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夜、博麗神社から一人の男が出て行こうとしていた。

それは黒夢だ。

いつもの神主服に手には武器として使っているお払い棒、それに服の中にはたくさんの札がしまわれている。

そして表情は険しい。

境内に出たとき、黒夢の前に一人の男が現れた。

それは黒夢の父親代わりであった亡霊、コルテスだった。

 

「もう、行くのか?」

 

黒夢が何しに行くのか知っている様子で黒夢にたずねる。

返答は分かっているはずだ。

 

「ああ、こればっかしは…ルーミアを助けた俺の責任だ」

 

黒夢の脳裏には子供の頃初めて会ったルーミアの姿が浮かんでいた。

ルーミアは黒夢にとって昔から一緒にいた友人だった。

 

「…もう少し早く気づいていれば、こうはならなかった」

 

1年前、コルテスは黒夢に伝えた。

ルーミアが復活してからずっと人を食べていないことを。

そして人食い妖怪である彼女が人を食べないということはいずれ本能が暴走してしまう。

ルーミアは闇妖怪、つまりは闇の化身だ。

そんな彼女が暴走すればどうなるか…すぐに分かる。

世界は闇に包まれ、再びルーミアは太陽神たちと戦うことになる。

それはつまり、ルーミアが再び消えるということを表す。

それは個人的な理由で黒夢が嫌がった。

最初に話したときもコルテスは別に黒夢がする必要はない、しなくても他の神がどうにかしてくれる…と言った。

しかし、黒夢はコルテスの言うことを拒否した。

それは、ルーミアが大切な友人だから…という理由だけではないのだろう。

 

「なに、別にコルテスのせいじゃない。それに…これは俺のわがままだ」

 

そう言うと黒夢は博麗神社の方を見た。

おそらく、神社を見るのももうこれで最後だろう。

 

「霊夢こと…頼んだぞ、それと頼んでいたあのこと(・・・・)もな」

 

あのことと言われてコルテスは少し反応した。

その表情はいつものコルテスが出すことのない、迷っている表情だった。

 

「いいのか、そんなことをすればお前は」

 

言葉を続けようとしたコルテスを口元に手をむけることでやめさせた。

黒夢の目は、これ以上言うなと言っていた。

…言われると、決心が揺らぐからだ。

 

「それじゃあ、頼んだ」

 

もう一度言うと黒夢は体を宙に浮かせると湖に向かった。

コルテスは黒夢がいくのを見ると神社の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…遅いわね」

 

湖の辺で木を背もたれ代わりにして座っているルーミアはそうつぶやいた。

とは言っても、特に時間などは決めておらず夜と言っただけなのでしょうがないとは思うが。

少し拗ねているとき、よく知った気配を感じた。

その場で立ち上がるとすぐ近くに黒夢が降りた。

 

「もう、遅いわよ」

 

ルーミアは少し怒った様子で黒夢に言う。

黒夢は少し困った様子で頭を掻く。

 

「悪かった、少し野暮用があってな」

 

そう言うと黒夢はルーミアに近づいた。

そして、ルーミアに袖に隠していた札を貼り付けた。

 

「…どういうつもり?冗談にしてはやりすぎだと思うけど」

 

札の効力は動きを止める。

昔は八方鬼縛陣という複数の札を合わせることで使える物を使用していた。

しかし、今では札1枚で…最低10秒ほどは動きを止めれるものを完成させた。

 

「冗談ではないさ、今日は俺が博麗としての最後の仕事をしに来ただけだ」

 

そう言うと黒夢は左手で持っていたお払い棒を右手に持ち替えルーミアに突きつけた。

そして、好戦的な笑みを浮かべこう言った。

 

「ルーミア、お前を退治させてもらおう」

 

ルーミアは少し驚いていた。

それと同時に、これは夢じゃないのかと疑問を抱いた。

黒夢はこんなことをするはずがない、そう信じていたから。

そう…これは夢だ。

悪い夢だ。

夢だから……何をしてもかまわない、殺してもかまわない。

 

「アハハ、面白いこと言うね!」

 

ルーミアが少し力をこめるだけで、札の束縛はいとも簡単に砕かれた。

黒夢はそのことを予想していたのか、とくに驚く様子はなかった。

ルーミアは狂気の笑みを浮かべながら手の近くに闇を纏わせる。

そしてその中からは黒い大剣が現れた。

それはルーミアが所有している宝具、『ストームブリンガー』。

神殺しの剣とも言われるそれはルーミアの体の一部といっても過言ではない。

黒夢は少し息を飲むと余裕の笑みを浮かべ左手の指の間に札を挟みこんだ。

 

「さて、それじゃあ始めるとしますか」

 

そう言うと黒夢はルーミアに向かって札を投げつけた。




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