―人間は根源的に時間的存在である―
ハイデガーの言葉だ。
つまり、人は時間という概念から抜け出すことはできないと記している。
無論、これは理論的に考えられて言われた言葉だろう。
しかし、”俺”がこの言葉を知ったときこう思った。
”本当にそうなのか?時間という概念から抜けることはできないのか?”
……と。
まあ、それは聞いたときしか考えなかったが。
実際、もし時間という概念から突破できるならもうすでに専門家などがしているだろう。
結局人間は時間から抜け出すことができない。
だが、もし人間じゃなかったら?
人とは違うものが時を越える手段を持つとしたらどうだろう?
時を越えて過去を変えようとするのか?
……おそらく、そんなことはしない。
なぜならそれは人としての考えを持ちえていないからだ。
とある神話では精神のみを未来や過去に送る者たちがいる。
その者たちは時間を完全に理解し、支配をしている。
しかし、決して過去を変えようとはしない。
おそらくそれは未来も変わり自分たちが無かったことになるからだろう。
だが、それは所詮人の考え切れる限りの予想に過ぎない。
実際の理由はおそらく人が知ることはできない…もしくは理解ができないだろう。
だから、俺の考えはこうだ。
人の枠の中では過去を変えることは難しい。
過去を変えるには人を超えるしかない…と。
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八雲紫は、珍しく辺りの探索を行っていた。
彼女は妖怪の中でも異質とも言われる部類だ。
妖怪の中で最も神に近いとも言われる。
しかし、そんな彼女の動向は不明だ。
何が目的でどのようなことをしているのかすらもだ。
しかも、彼女はつい先日に月面戦争という大きな事を起こしたばかりだった。
生き残りは彼女しかいない、その上にかなりの妖力を消費したはずだ。
たった数日で回復する程度のものではない。
それに加えて、いくらかの妖怪にも狙われている身だ。
そんな状態なのに彼女がなぜ探索をしているかというと……彼女の目的のためだ。
今彼女がいる場所は彼女自身の目的の終着点となる場所。
その場所には森があり、湖があり、大きな山もあり、人里もある。
まさに、彼女の目的をこなす場所としては完璧だった。
そんな場所の視察のために、彼女は探索を行っていた。
紫がしばらく歩いていると、奇妙な男を見かけた。
髪は長く、黒い髪をしている。
どうやら日本人のようだが人里の人間より筋肉が少ない。
そしてなにより、服装は人里の人間が着ているものとは大きく異なる。
紫はその人間に興味がわいた。
もしかしたら、変わった人間なのかもしれない。
自分の知らない何かが関係しているのかもしれない。
そう考えると、紫は男を自分の住んでいる屋敷に連れて行くことにした。
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「……ここは?」
男が目を覚ましたとき、見たことの無い場所にいた。
床はフローリングではなく畳でベットの上ではなく布団に寝かされていた。
なぜこんなことになっているのか?
男は自分の身に何があったのか思い出そうと考える。
そして、あのとき声が言ったことを思い出した。
「…まさか、本当に世界を変えろというのか」
男はしばらく考え込んでいたがあることに気づいた。
いつも、余計なことばかりを言う声の存在がない。
声が聞こえない。
「……おい!、聞こえているんだろ!だったら答えろよ」
しかし、返答は帰ってこない。
男は頭を抱え込んだ。
まさか、知らない場所で一人っきり。
何も持っていないという状況だったからだ。
しかも、今いる場所は誰がいるかもわからない屋敷の中。
もしかしたら殺される可能性もある。
そう考えると男はいても経ってもいられない。
男は布団から出ると周りを見渡す。
布団以外にあるのはおそらく縁側に出るだろう障子、屋敷の中の廊下につながってある襖。
「……おかしいな、足音のひとつも聞こえない?」
見たところこの部屋だけでもかなり広いのだからほかの部屋も大きいはずだ。
となると、ここは屋敷レベルの大きさのはずだ。
そうだったら雇っているものはいるはずだ。
なのに、足音のひとつも聞こえてこない。
これは明らかに異常だ。
「あら、目が覚めたようね」
男の背後から声がする。
男は驚きながらも後ろへ振り向く。
するとそこには、全体的に紫色の変わった服を着た金髪の女性…紫がいた。
「あ、あんたは誰だ!」
男は動揺した様子で紫に尋ねた。
紫は冗談気味におどけた様子であやまった。
「あら、ごめんなさい。私は八雲紫」
「八雲…紫?」
あまり聞かない苗字だと男は不思議に思う。
紫は話を続ける。
「それで、あなた名前は?」
「名前?俺の名前は_____。…!」
男は自分の名前を言おうとした。
しかし、名前を言おうとすると声が出ない。
その後何回か言おうとしたが、名前を言うときだけ声が出ない。
少し考え込んだが、名前が無いと関わりづらいだろうと思った男はこう名乗った。
「……今は、『コルテス』と呼んでくれ」
男……コルテスはそう言った。
ちなみに『コルテス』という名はインターネット内での男のハンドルネームだ。
「コルテス……ええ、わかったわ」
そう言うと紫はコルテスに近づいてまじまじと見る。
コルテスは近くできれいな女性に見られることで少し赤面する。
「……やっぱり、あなたどこから来たの?」
紫の言葉にコルテスは再び動揺する。
なぜ、不思議に思われたのか?
コルテスは真実を言うか否か悩んだ。
しばらく黙っていたが、コルテスは口を開く。
「______言えない」
ただ、そう言った。
コルテスの予想だとおそらくここは前にいた場所とはまったく違う場所。
声の言うことから推測すると、大いなる何かを任された。
コルテスには想像できない事だろう。
しかし、そうだとしても……そんな自分の経緯を話せるわけではない。
「……そう、わかったわ」
紫はそう言うとそれ以上は聞かなかった。
おそらく、そこまで気になってはいないのだろう。
……もしくは、
「(すでに、わかっている……というのも考えられるな)」
「でも、あなたはどこか行く当てはあるの?」
紫の言葉にコルテスは再び考え込んだ。
確かに、今の自分には行く宛は無い。
あの声が言ったとおりならコルテスの使命は……世界を変えること。
「(……つっても、どうやって変えろってんだ。)まあ、行く当ては無いな」
「そう……だったら、ここに住むというのはどうかしら?」
「…何?」
コルテスは少し驚いた。
確かに紫は命の恩人のようなものだ。
あのまま森の中でいたら行き倒れていただろう。
しかし、彼女にはコルテスをここに住まわす理由が無い。
まともな情報源にならないのはさっきの一言でわかっているはずだ。
コルテスは、少し疑問を抱いた。
……それでも、行く当てが無いのは本当なのだから
「……わかった、しばらく世話になる」
「ええ、よろしくね」
コルテスと紫の、奇妙な同居生活が始まった。
補足
コルテスは今まで謎の声にさまざまな話を聞かされたせいである程度耐性ができています。
しかし、一般人なので妖気や霊力を感じること、妖怪と人の違いは判りません。
ネット中毒というよりは気を紛らわせるためにネットをしていました。
久々の投稿です。
最近、投稿速度は低下していますが完結はさせます。
こんな駄文を見ていってくださる皆様にはとても感謝です!