東方神主伝   作:ごくでヴぁる

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第三話 病気

森の奥

そこでは、黒夢がお払い棒での戦闘訓練を個人で行っていた。

いつもは文に手伝ってもらっているのだが、今回は忙しくてこれなかったらしい。

しかし、個人で訓練するにはやはり限界がある。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

黒夢はいくら強くても、体力はそこらの3歳児とあまり大差はない。

いつも走ったりしているとはいえ、それはすぐにつくものではない。

それに、黒夢は大体の攻撃を霊気で行っている。

霊気は人間の生命エネルギーのようなもの。

それを多量に出すことは普通なら出来ないことである。

黒夢はそれを生まれつきに所有しているので使える。

が、やはり黒夢でも長時間使うのには限度がある。

 

「・・やっぱり、その対処法も考えないとなぁ」

 

黒夢はそういうといつも着ている脇のでている神主服(紫作成)の裾から一枚のお札のようなものを出してきた。

黒夢が最初に目をつけたのは、ある一冊の本だった。

それは、陰陽師についての本だった。

陰陽師はお札を使って妖怪を封じ込めたりすることが出来るらしい。

それを見て黒夢はひらめいた。

妖怪を封じ込めることが出来るなら、おそらく霊気などを使用しているのだろう。

ならば・・・封じ込める札ではなく、技の発動キーとして使えるのではないか・・・と。

札に霊気を一つの技に使う分だけ蓄え、それに使えれば・・・・

黒夢はそう考えるとすぐに作業に取り組んだ。

そして、何百回と失敗した中でできたのがこの一枚だけだった。

だが、この一枚の成功で黒夢にある確信が生まれた。

それは、確実に霊気を使う技ならば・・・札一枚で一回分は使えることが出来る・・・と。

黒夢は今まで、一枚の札で複数回技を使えるもの作ろうとしてたが・・・それは間違いだった。

なぜなら、札一枚では複数回の使用に耐えることは出来ないからだ。

おそらく、一回使用しただけで札は役目を終えて消えてしまうだろう。

だから黒夢は、その札をたくさん作ることでいくらかの技の分だけ枚数を用意することが出来る。

しかし、技の札を作るのは正直、デリケートな作業を要する。

それに、霊気を蓄えて作り続けても・・・一日に数枚ほどしか作れない。

黒夢はその問題点を解消するために今、考えているのである。

 

「・・・どうすれば」

 

黒夢は懐に抱えていた陰陽師の本を開いた。

そしてしばらく読み進めると、気になる記述を見つけた。

‐陰陽師のお札には妖怪を封じるためのさまざまな紋様や呪文を記載した-

 

「・・・これだ!」

 

黒夢はこの記述を見てあることを思いついた。

それは、魔法使いが呪文を唱えて魔法を唱えるように札に自分の技を呪文のようなものにしてそれを札に書き入れて使う。

霊気をこめて毎回作るよりはまだ簡単な方法だろう。

使うときには少々の霊気を使い、呪文のように技名を唱えれば・・・多少威力は落ちても長時間戦うことが出来る。

 

「よし、今すぐ・・・ッ!」

 

黒夢が立ち上がったとき、少しめまいがした。

しかし、今はそんなことを気にしている暇はない。

 

「早く・・・家に戻ろう・・・」

 

札を作る材料の一式はコルテスにそろえてもらっている。

だから、家に帰ればすぐに作成することが出来るだろう。

と、そのとき

 

「おぉ、うまそうなガキがいるじゃねえか」

「早く食っちまおうぜぇ!」

 

黒夢の周りを十数匹の妖怪が囲んだ。

 

「・・・俺のことを知らないなんて・・・(そういえば、文に情報操作してもらって知られないようにしてたっけ)・・・」

 

黒夢は腰にさしていたお払い棒を抜いて構えた。

しかし、再びめまいが黒夢を襲った。

 

「ッ!」

 

その隙をついて妖怪たちが黒夢に向かって襲い掛かってきた。

黒夢は一瞬でめまいを振り切って向かってきた一匹の妖怪をお払い棒でたたき飛ばした。

しかし、背後にまた別の妖怪が襲い掛かってきていた。

黒夢は横に移動してよけようとした。

だが、まためまいが起きてこけてしまった。

妖怪のつめは黒夢の腕をかすった。

 

「ッう!・・・」

 

黒夢はすぐに立ち上がろうとしたが、思うように力が出なかった。

 

「(なんで・・・いつもならこんな連中・・)!」

 

黒夢が少し考え事をしている間に妖怪のこぶしが黒夢の体に向かってきていた。

 

「(しまった!)」

 

黒夢はお払い棒で防ごうと、殴られる前にこぶしをお払い棒で受け止めた。

だが、勢いで後ろの木まで飛ばされて激突した。

 

「がぁ!?」

 

黒夢の口から少量だが血が出てきた。

 

「おいおい、手加減しろよ。せっかくの生きのいい飯が死んじまうだろ」

「死なない程度にしたさ」

 

妖怪たちはその場でけらけらと笑い出した。

 

「(ちっ・・・こんなところで使いたくなかったが・・・)」

 

黒夢は懐から札を出した。

そして、

 

「霊破槍 散」

 

すると、札が青色に光り黒夢の背後に大量の霊気で作られた槍が出てきた。

そして、一斉にその槍が妖怪たちに襲い掛かった。

妖怪たちは次々に槍に刺さり地面にひれ伏していく。

しかし、数匹残ってしまった。

 

「(でも・・・しばらくは動けないダメージを負ったはず)早く・・・逃げないと」

 

黒夢は顔が赤く、頭がボーとする状態で妖怪たちから離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

どのくらい走り続けたか分からない。

だが、あたりはもう真っ暗になっていた。

夜は妖怪たちがさかんに動き出す・・・早く家に戻らないと妖怪に食べられてしまうだろう。

しかし、黒夢はもう走ることができないほど頭がくらくらして顔をさらに赤くなっていた。

黒夢は自己分析で自分がどんな状態になっているのか理解していた。

 

「・・・熱だ・・・ね。・・・こんな・・・時に・・・」

 

そのとき、草むらで音がした。

 

「くっ・・・もう・・・」

 

黒夢はふらふらしながらお払い棒を構えて立ち上がった。

しかし、そこにはあのときの妖怪の姿はいなかった。

そこには・・・中華風の服を着た、赤色の髪をした女性が立っていた。

 

「・・・誰だ」

 

黒夢は熱で意識がおぼつかなくても、いつもの様子でその女性に話しかけた。

顔が赤くなっているので効果はないかもしれないが、しないよりはマシだと判断したのだろう。

 

「ちょっとあなた!大丈夫ですか?こんなに顔が赤くなって。腕に怪我もしてますね」

 

するとその女性は黒夢の額に手を当てた。

 

「ひゃあ!?」

 

黒夢は彼女に触れられていきなり冷たさを感じたのか、少し驚いた。

しかし、それより驚いたのは・・・熱を引いてるとはいえ、警戒している黒夢が対応しないうちにおでこに触れたことだ。

 

「うわっ、すごい熱じゃありませんか!とりあえず、早く貴方の家に・・・」

 

その女性は次の言葉を言うのをやめて、近くの石を拾って後ろの茂みに投げつけた。

すると、そこからはうめき声が聞こえた。

 

「・・・ま・・・さか・・追っ手が・・・」

 

黒夢はそうつぶやいた。

すると、草むらから100を超える妖怪たちが出てきた。

 

「・・・少し、待っていてくださいね」

 

そういうとその女性は妖怪たちのほうへ向かった。

その女性は格闘術だけで100を超える妖怪たちを次々に倒していった。

しかも一撃で。

黒夢は今までそんなことを出来る妖怪を見たことはなかった。

そして十数秒もしたら、もうその場にいた妖怪は全て地に伏せていた。

 

「・・・まさ・・か・・・」

 

黒夢は限界だったらしく、そこで意識を失った。

そして地面に倒れそうになったが、その前にその女性が黒夢を受け止めた。

 

「・・・早く、連れて行かないと」

 

そのとき、草むらから誰かが出てきた。

 

 

 

 

 

「・・・・ん・・?」

 

黒夢が目を覚ますと、そこは自分の家だった。

 

「あ、やっと目を覚ましたわね!まったく、心配させて」

 

黒夢が寝ている布団の隣には紫が座っていた。

 

「・・・母さん」

「彼女とコルテスが見つけてなかったらやばかったわね」

 

黒夢は上半身を起こすと、リビングの方にあのときの女性とコルテスが座っていた。

 

「目が覚めたようですね、熱も下がったみたいですし。・・それより」

 

女性は黒夢に近づき、

 

「あなたがあの紫の子供だなんて、正直驚いたわ」

 

黒夢はこの女性のことを知っていた・・・いや、話で聞いたのを思い出していた。

 

「えっと・・紅美鈴さんですよね」

「あ、知ってたんですか」

 

すると、女性・・・美鈴は微笑んだ。

そして紫の方を向いて、

 

「紫、少し席をはずしてもらっていいですか?」

「ええ、かまわないわ。今から人里にご飯の材料を買ってこようと思っていたし」

 

紫はそういうと買い物籠とお金を持つとスキマを開いてその中に入っていった。

 

「さて、これで演技をする必要はありませんね」

 

美鈴がそういうと黒夢は口を開いた。

 

「何で俺は、助かったんだ」

「それは」

 

美鈴は昨日の夜の話を始めた。

 

 

 

 

草むらから出てきたのは、

 

「・・・コルテスさん」

 

美鈴はそうつぶやくと警戒を解いた。

 

「・・・よかった、黒夢は無事なようだな」

 

そういうとコルテスは黒夢を抱き上げた。

 

「とりあえず、紫の家まで連れて行く。お前もついてくるか?」

 

コルテスがそういうと、美鈴はうなづいた。

 

 

 

 

「というわけでコルテスさんが、貴方をここまで連れて帰って治療をしたわけです」

 

美鈴が話した後に黒夢は顔をうつむいていた。

そして、いつもの黒夢じゃいわない言葉を言った。

 

「・・・ごめん、迷惑をかけて」

 

黒夢がそういうと二人は笑い出した。

 

「家族のことを助けない奴がどこにいるんだ?」

 

コルテスは黒夢のところに来てしゃがむと黒夢の頭をなでた。

 

「お前はな、紫がお前を拾ったときから・・・俺達の家族なんだよ」

 

コルテスがそういうと、黒夢はうれしそうに笑った。

 

「ありがとう、みんな」

 

それは純粋な・・・めったに見せない演技じゃない笑顔だった。

 

 

 

 

後日、

体調が回復した黒夢は美鈴の修行を受けていた。

その修行とは、格闘術の修行である。

前に格闘術が一番強い知り合いって誰?と黒夢が言ったとき。

そのとき名にでたのは紅美鈴だった。

彼女の格闘術はあの二人も一目置いているらしい。

なので、黒夢はそんな彼女に修行をしてもらっている。

美鈴の方も、日々強くなっていく黒夢を育てるのを楽しんでいるそうだ。

黒夢も、独自の方法で作った技の札・・・スペルカードと名づけた物をうまく使えるようになったらしい。

黒夢がもう少し成長したら、さらに使える技の種類も増えるだろう。

ちなみに、なぜ美鈴があんな場所にいたかというと

しばらく旅に出ていたが、久々に幻想郷に戻ってきて紫に会おうとしていたのだが・・・どうやら迷子になったらしい。

そのときにたまたま、黒夢に会ったらしい。

まあ、結果往来というやつだろう。

美鈴はその後紫たちの家に一緒にすむことにしたらしい。

実際この家でもともと美鈴と紫と、後二人と住んでいた家らしい。

黒夢は、

 

「(その人たちにも会えるといいな)」

 

と考えていた。

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