ただ狩った。只管に狩った。それでも尚、減らぬ獣。殺しては蘇り襲ってくる。
それは夢から醒めても同じだった。醜鬼と呼ばれる獣が人を襲う。俺はそれも殺し続ける。俺はいつまで殺し続ければいいのだろうか。
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「お、俺が組長会議に!?」
「総組長の急な指名だ。『日万凛』、留守を頼んだ。」
「はい!」
ここは男女平等などという概念が昔に消え失せた世界。
『桃』と呼ばれる女性にのみ異能を与える果実と人を襲い喰らう『醜鬼』と呼ばれる怪物が日常だ。
醜鬼に普通の武器は効かない。故に異能を持った職人の作る武器が有効的であり、それらを扱い魔都より無尽蔵に溢れ出る醜鬼から人々を守るために結成された『魔都隊』と呼ばれる醜鬼殲滅のプロフェッショナルがいる。
魔防隊は九つの組に別れており、彼女達がいるのは七番組。
『組長』羽前京香、『副組長』東日万凛、『戦闘員』駿河朱々、『探索員』大川村寧、『奴隷兼管理人』和倉優希の五名。
そして組長会議とは各隊の組長が集結するもの。今回の場合は新型である人型醜鬼の事。
京香と優希はジープに向かい、会議場所である十番組の寮へと走らせる。しかし、道中で優希は見た事のない醜鬼の死骸を見た。
京香の目にも写ったのだろう。隣から舌打ちが聞こえてきた。
「あいつも来ているのか・・・」
「あ、あの。さっきの醜鬼の死骸に覚えがあるんですか?頭が完全に潰されていましたけど・・・」
京香と優希の見た死骸とは、頭のみが完全に潰されていたのだ。それだけでは無い。人体で例えるなら鳩尾部分に穴が開いていた。
「・・・ああ。名は『
優希の中に衝撃が走る。優希が魔防隊に来た時、京香から「男は魔防隊になれない」とハッキリ言われたからだ。
「あ、あれ?でも、男なのに醜鬼を倒せるんですか?」
「奴は私の様に素手でも醜鬼を葬る。どこで覚えたかは分からんがな。」
「す、素手って・・・あれ?でも東って日万凛や八千穂さんと兄妹って事なんですか?」
「日万凛は双子だったんだ。光来の方が兄らしい。元は普通の男だったそうだが、ある日から突然変わったそうだ。本人は何も言わなかったそうだがな。」
そんな話をしているといつの間にか十番組の寮へ到着していた。ジープを隊員へ預け寮を進む。
途中、二番組組長『上運天美羅』と京香が出会い一瞬ギスギスしたが特に何事も無かった。そして会議室の扉の前では、三番組組長『月夜野ベル』と出会い会議室へと入る。
中には美しくも強い自信を感じる者達が各々好きな様に過ごしていた。しかしその中に違和感と存在感を醸し出す者が足を組んで椅子に腰を下ろしていた。
全身を黒の服で包み、頭には映画の海賊が身につけているような三角帽子、口元はスカーフで隠しており目元しか見えない。
一瞬ではあったが優希と目が合う。その瞬間、背筋が凍った。理由は分からない。しかし、自分が恐怖しているのは確かだ。そんな事を思っているとベルが彼に近づく。
「こ、こう君。来るならベルに言ってくれればよかったのに。」
「・・・悪かったな。たまには散歩もいいかと思ったが気晴らしにもならなかった。帰りは頼もう。」
「は、はい!」
返事をすると嬉しそうに自分の席へ着くベル。優希が最初に見た時はかなりオドオドしていたのが嘘のようだった。そんな事を思っていると、突然京香に尻を強く叩かられる。
「来たぞ、総組長だ。」
浮かぶ椅子に座りながら、自信の満ち溢れた堂々とした表情で現れる、魔防隊総組長『山城恋』。
彼女の登場により全員が席に着く。優希は京香の後ろに立つが、その際に寮から出た時に京香から「総組長とは目を合わすな」と言われた事を思い出す。
一瞬、横目に見るだけならと見たところ向こうはこちらをじっと見つめていて思いっきり目が合った。その目は恐怖そのもの。再び優希の背筋が凍った。
「皆、今日は集まってくれてありがとう。早速始めましょうか。」
そうして組長会議が始まった。