「まず一番組の人事から。世代交代のお知らせを。アタシは組長を降りた。」
そう言ったのは魔防隊の服を纏った老齢の女性『冥加りう』。
「りうさんならまだまだ"踊れ"ますよ。」
「魔防隊は激務。若い者が組長やってた方がいいんだよ。改めて皆に挨拶しな。」
そう言って座っている子の頭を撫でた。撫でられた子は元気良く立ち上がる。
「押忍っ!多々良木乃実です!高校生と若輩ですがよろしくお願いします!」
「木乃実は鍛えに鍛えた秘蔵の弟子さ。数年経てば総組長になれる逸材。それは確かだよ。」
総組長という単語が出た瞬間、部屋の温度が下がった事を感じ取る優希。ふと光来の方を見ると先程と全く体制を変えずに座っていた。
「(こ、この空気をなんとも思わないのか?)」
「では本題よ。」
総組長が指を鳴らすと立体映像が現れ、二人と一体が映し出さられる。
「八雷神と自称したこの敵について。黒髪の方は三番組の隊員を蹂躙し、この巨体は六・七番組の隊員達を病院送りにした。でもコイツは天花が直々に滅したわ。」
「確実に仕留めたとは言いきれません。」
「それでもよ。組長なら神であろうと対抗出来る。」
総組長が自信のある発言をして全員を確信に導こうとする中、光来が小さく手を上げる。
「あら、なにかしら?」
「俺もそいつらと対峙した。」
瞬間、会議室内に緊張が走る。全員が光来の方を見るも姿勢も目線も変えることはない。
「それはいつの話?」
「ここへ来る二時間前だ。応援を呼ばなかった理由は二つ。強固な結界が張られていたのとお前達を信用していないからだ。」
この言葉を皮切りに緊張は一部、殺意と怒りへ変貌した。取り分け強い怒りを見せるのは総組長だ。
「・・・それは私を弱者として見ていると?」
「そうだ。」
毅然とした態度で伝える光来と怒りが収まらず椅子の肘置きを握力のみで粉々にする総組長。全員が触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに無視を決め込んではいるが、ベルと木乃実はアワアワとしていた。
「・・・ふぅ。いけないわね。次に行きましょうか。そこの男の子について。彼は京香の能力に必要な存在、装備品と思ってちょうだい。」
「わ、和倉優希です!普段は七番組寮で管理人をやっています。」
自己紹介が終わると二つの小さな拍手が聞こえてくる。一人は天花、もう一人は光来だ。
「可愛い子ね。私ももう一人くらい男の子が欲しかったわ。」
「え?」
「風舞希さんは日万凛や八千穂、光来の母親だぞ。」
その言葉を聞いた瞬間、優希に衝撃が走る。若すぎると。その感想を抱いた瞬間、扉が開かれ十番組隊員『備前銀奈』が慌てて入ってくる。
「か、会議中失礼します!醜鬼の大群がこちらに向かって来ています!」
すぐさま映し出される画面。そこには四方向から攻めてくる醜鬼の大群。誰が見ても分かるように統率の取れた集団。八雷神かはたまた桃の能力かをすぐさま分析する組長格。しかし、答えは決まっているようだ。
「(組長会議を狙っての襲撃。どこのテロリストかは知らないけどいい度胸ね)風舞希と八雲、美羅、木乃実は醜鬼の撃退を。残りはここの防衛よ。」
「「「「了解」」」」
名前の上がった者達はすぐさま外へ向かう。しかし京香がこれに黙っているはずも無く、すぐさま能力である『
「総組長。私達も出撃させて下さい。守りは性に合わん。」
「生で見ると結構な迫力ね。」
「総組長!」
こんなやり取りをしていても光来は気にせずに 姿勢を崩さない。
しかしここで全員に想定外の事が起こる。醜鬼が入ってきたのだ。が、次の行動で納得する。
「っ!消えた!?」
「透明化・・・。厄介な能力ね。」
全員が奇襲に備える中、光来はゆっくりと立ち上がり傍に置いていた槌を握りそのまま壁にフルスイングする。
壁の破壊される音と共にグチャリと肉を潰した音がした瞬間、醜鬼が姿を現したがその場所は丁度槌が激突した場所。
今度は反時計回りに回転し、殴り飛ばす。醜鬼自身も混乱している様に見えるが、それを好機と見なした光来は槌の仕掛けを解除し持ち手を引き抜くと剣が現れる。
そのまま無慈悲に醜鬼の首を跳ね飛ばした。この光景に優希は圧倒される。
「(す、すげぇ・・・!能力を持ってないのにこんなに強いなんて・・・!!)」
「光来。あんた、何故そこに居ると分かったんだい?」
最初に尋ねたのはりうだ。当然の疑問だろう。透明化の敵を見破るなど、それこそ桃の能力を持っていなければ難しい。戦闘勘が働いたとしても多少時間は掛かる。
「俺は脳に瞳を得ています。故に消えた程度で不利になる事などありません。」
そう言って先程と同じ様に椅子へ座り黙り込む。
その後、醜鬼の大群を導いた首謀者達を発見し総組長自らが捕縛。その後の尋問もある為、組長会議は終了となった。