魔都精兵の狩人   作:ぺへ

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3話

組長会議終了後、光来は槌を背中に背負い部屋を出た。その後ろをベルがちょこちょことついて行く。その様はまるで飼い主を追い掛ける子犬の様。

 

「光来。私の奴隷がお前と話したいそうだ。」

 

京香が話し掛けるとゆっくりと振り向く。優希は光来の瞳を見た瞬間に再びゾクリと寒気がした。言葉では言い表せない様な、謎の悪寒。しかし意を決する。

 

「・・・ベル。先に行ってろ。」

 

「う、うん。」

 

心配そうにしつつも光来の事を想って先に行く。光来は体を向け優希を見つめる。

 

「お、俺!和倉優希って言います!貴方に聞きたい事が「力を何処で手に入れたかだろう?」っ、はい!」

 

「聞いたところで手に入らん。そもそも、手に入れた所でいずれは醜い鬼に成り果てる。」

 

「醜い鬼・・・ですか?」

 

「お前が人として居られるのは薄っぺらい理性を持っているからに過ぎん。先の獣化もその薄い理性の成れの果てだ。」

 

「私からも聞きたい事がある。「脳に瞳を宿す」とはどういう意味だ?」

 

優希も気になっていた事を京香が割って聞いてくる。光来の表情は見えないが目元では何かを哀しむような目をしている。

 

「十九世紀ヴィクトリア王朝時代、ビルゲンワースと呼ばれるサイコ集団が高次元生物との対話を求めた事があります。その際に知ってはいけない、見えてはいけない世界の真実を覗いた。彼らはこの事象を『脳に瞳を得る』と語り伝えてきました。」

 

「見てはいけない真実だと?」

 

「いつから存在しているか分からない、宗教的に言えば『神』に近い者共です。いえ、『神を騙る者』と言うべきですね。」

 

「神を騙る者・・・」

 

「これ以上の詮索は辞めておくことをお勧めします。知れば誰も信用出来無くなりますから。和倉優希。」

 

「!は、はい。」

 

「貴公が羽前組長への忠誠を捧げ戦うのは結構。故に警告だ。『兼ねて血を恐れたまえ』。」

 

不可解な言葉を残して光来は踵を返す。優希はその背中をただ見守る事しか出来なかった。

 

「・・・チッ。だから私はアイツが苦手なんだ。」

 

「で、でも、あの人の目は魔都災害で家族を失った人達の目にそっくりでした。」

 

「いや、あれは魔都災害よりも酷いだろうねぇ。」

 

「師匠!」

 

声のした方を振り向けば、りうと新しく組長となった木乃実が向かってきた。木乃実は光来に話し掛けたかったが、既にその姿は遠くまで離れている。諦めて京香達の方へと振り返った。

 

「せっかくですから送ります。」

 

「そうかい。助かるよ。木乃実、今回は甘えるよ。」

 

「押忍!よろしくお願いします!」

 

そうして四人はジープの止めてある地下へと向かう。

 

 

一方、ベルの待つジープへ乗り込んだ光来はただ外を見ていた。運転はベルで助手席は光来。この構図は、ベルが魔防隊に入ってからあまり変わる事はなかった。しかし、光来は気付いている。運転中のベルが自身をチラチラと見る事に。

 

「ね、ねえ、こうくん。も、もし良かったらなんだけど・・・その・・・こ、今度、ご飯とか一緒にどうかな!?」

 

光来は鈍感では無い。当然、ベルから向けられている好意が他者とは違うと言うのは理解しているが光来は踏み込もうとは思わず敢えて距離を取っていた。理由は裏切りと懺悔。

 

悪夢とは言え、光来は裏切りと悲しみに包まれすぎていた。生き残った者達を助けたいと思い、善意で生き残りを助けたのにも関わらず、全員が狂い皆死んだ。

 

その時から光来の心は壊れ今に至った。ただ獣を狩る狩人。ただそれだけの、血に飢えた獣と成り果てつつある。しかし、それを止める唯一のストッパーがただ一人信頼出来るベルしかいない。

 

「そこはお魚料理が沢山あってね!こう君も気に入ってくれると思うの!」

 

そんな事情を知らないベルは積極的にデートへ誘う。光来が何かに怯えているのは分かる。しかし、唯一無二の親友と共に楽しい時間をすごしたいと思うのもまた事実なのだ。

 

「ああ。たまの息抜きだ。それには先ず、ベルの仕事を片さなければならないがな。」

 

「あぅ。が、頑張ります・・・」

 

ベルを失えば自分は血に酔いしれる。だが、それもまた楽なのだろうと思ってしまう自分がいるのも事実だった。

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