組長会議が終了し数日、五番組・六番組・七番組が合同訓練を行っている同時期、光来は醜鬼を狩りながら予想もしない者と相対していた。
「今は忙しいから後にしろ。」
そう冷たく返す光来は醜鬼の首を目掛けて逆手で『獣狩りの斧』を振るい簡単に切断したかと思えば勢いに任せて後ろの醜鬼を真っ二つにする。
流された事に激怒している様子は無いものの、不満には思ったようだ。正に神速と言える速さで距離を詰め光来へ殴り掛かろうとした。しかし、目に捉えていたはずの光来が消え目的を失った拳は地面を砕きクレーターを産む。
光来はと言えばバックステップで避けた後、自身の全力で神へ斬り掛かる。が、この攻撃に反応した鳴姫は腕でガードしその際に金属音の様な甲高い音が響く。
「硬いな。」
互いに下がり目を合わせる。一方は獲物を狩ると言う目つきを、もう一方は玩具を見つけたと言う目つきを。しかし、周りの醜鬼は待つこと無く光来に攻撃を仕掛ける。
複数の醜鬼を処理しつつも八雷神の攻撃を避けると言う不条理。組長クラスでも何発かは被弾し下手を打てば致命傷にもなり得る不条理を光来は捌ききっていた。
悪夢で強敵を相手取りながら囲まれる等、日常茶飯事だった。当然、捌き切れなければ死が待っているが所詮は全てが夢。死んだところで死なせてもらえない。だからこそ身に付けるしか無かった。一対多の立ち回りを。そして身に付けた技術が今役に立っている。
時間にして三十秒程の攻防。鳴姫に小さな、されど確実な隙が出来た。この好機を逃すまいと腰に装着していた改良型M1877ショートを抜き高威力の散弾を浴びせる。
通常兵器では醜鬼に傷を付ける事等不可能だが、散弾銃は倒すまで行かなくともかすり傷を付けてよろめかせる事が出来ると言う噂があった。
巷では迷信の一つとして扱われて来たが、光来が試した所それは本当だった。針が刺さった程度の傷。しかし、その傷こそが狩人にとって最大の好機。
『くっ!』
鳴姫の身体にはかすり傷一つ付かなかったが、よろめきはした。すぐさま銃を捨て手袋の中で左手の中指を這うナメクジへ精神を集中し鳴姫へ突き出す。
瞬間、鳴姫の腹に穴が空いた。何も見えない、何も感じない。それなのに何かに腹をぶち抜かれ吹き飛ばされた。
『ゴアッ!!』
鳴姫は久しぶりの激痛に頭がパニックになる。人の真似をして着ていた服には血が広がり下着に関しては紐が切れ胸が顕になっている。
そんな事など関係無い光来は問答無用で斧を振るうがギリギリで避けられ蹴りを貰ってしまい少し遠くの岩に叩き付けられる。
人間と醜鬼の膂力が同じはずもなく岩は粉々に砕け散り血を吐くが立ち上がる光来。マスクが落ち素顔が晒されると、血を吐きながらも満面の狂気じみた笑みを浮かべている。
「くふふふふ・・・これだ。これこそが狩りの醍醐味だ・・・」
身体が限界を迎えているのかフラフラとしてはいるもののゆっくりのこちらへ向かってくる。醜鬼を盾にして撤退しようとした所で全く違う方向から殺気を感じ、痛みに耐えながら跳躍する。先程いた所は破壊された地面と十文字槍が刺さっている。
冷や汗が流れるのを感じながらも岩場に着地すると隣から紫黒が現れる。
『やあ鳴姫。・・・相当手酷くやられたようだね。』
『・・・この戦いは余の負けだ。だが、次はこうは行かんぞ!!狩人!!』
紫黒と共に姿を消し、それを好機と見た醜鬼が再び襲おうとするが全て細切れにされ、巨大な手で圧縮され、真っ二つにされる。光来はこの技に見覚えしかなかった。
「光来。かなり手酷くやられたようね。」
「・・・単なるかすり傷です。東組長。こんな僻地までなんの御用で?」
「大事な話があって来たの。終わりまで後どれくらいかしら?」
懐から懐中時計を取りだし時間を確認する。残りは一分三十秒。思ったより八雷神に時間を取られたようだ。
「もうそろそろです。待つなら小屋の中へ。」
「ええ。麻衣亜、誉。行くわよ。」
メガネを掛けた麻衣亜は素直に頷くが、目つきの悪い誉は光来を面白くないと言うかのように見てついて行く。斧を腰に掛け背に背負った大剣を抜く。
祈る様に構えた瞬間、刀身は輝きまるで月の照らす光の様に優しく醜鬼達を葬り去る。全て狩り終える頃には時間ピッタリだった。
大剣を背負い小屋へ入れば、風舞希は壁に掛けてある武器を眺めていた。斧と大剣を壁に掛け椅子に座り足を組む。
「それで?話というのは?」
「一週間後。『東の晩餐』が開かれるわ。あなたもそれに参加してもらう。」
「・・・断らせて貰えそうにはありませんね。理由をお聞きしても?」
「日万凛を見極める為よ。東に相応しいかどうか。」
日万凛の名を聞き思案する。思えば長く会っていない。久しぶりに顔を見るのもいいかもしれない。
「いいでしょう。ただし外出許可などは東組長に全て取ってもらいます。」
「ええ。構わないわ。・・・話は変わるのだけれどここにある武器を全て使えるのかしら?」
「ええ。その日の気分で決めます。」
「そう。趣味が悪いわね。」
「自分でもそう思います。」
風舞希はそう言い残し光来以外が小屋を出る。光来は輸血液を体に流し次の狩りの支度を始める。