魔都精兵の狩人   作:ぺへ

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6話

クナドを通じて何年ぶりかも分からない現世に来たが隣にはベルもいた。

 

なんでも、わざわざ休みを取ったらしい。

 

「ひ、久しぶりのお出かけだね。」

 

「そうだな。だがお前にとっては退屈するだろう。」

 

「そ、そんな事ない!それに、こう君と一緒に居れるだけでベルは・・・」

 

「そうか。着いたぞ。」

 

クナドから歩いて三十秒程。正しく権力者の住む家と言っても過言ではない豪邸へ着く。ベルは驚き過ぎて固まっているが頭を撫でると今度はアタフタとし始める。

 

「こう君。今日の服装はいつもと違うんだね。それに、背中の大きな車輪は・・・?」

 

「立派な武器だ。大昔の処刑隊の用いたな。」

 

ベルが指摘したように俺の服装は白を基調とした聖歌隊の装備に加え、背中には『ローゲリウスの車輪』に左腰には『千景』と改良したM1877、右腰には『トニトリス』を装着している。

 

俺の読みが正しければ今回の東の晩餐は日万凛の為に用意した茶番。あまり動く事も無いだろう。

 

従者に案内され庭に着くと全員揃っていた。今回は本家だけで無く分家も参加の様だ。

 

何名かはリラックスした表情だが、日万凛と八千穂、和倉優希は緊張した面持ちだ。

 

付き添いとして出雲組長と羽前組長もいる。

 

「へぇ。逃げずに来たんだな。お前。」

 

周りがニヤニヤと見てくる中、一際ニヤ付く誉が話し掛けて来る。相も変わらず目つきが悪い。

 

「東組長の令だからな。そういうお前こそいい加減、露出を辞めたらどうだ?最も他人の趣味を否定するつもりは無いが。」

 

俺の一言に少し苛立ったのだろう。目つきが鋭くなる。そんな誉を無視しつつ日万凛の前に立つ。

 

「久しぶりだな。日万凛。」

 

「・・・光来。ええ、何年ぶりかしらね。言っとくけど加減はしないわ。」

 

昔の気弱だった日万凛とは違い、目には力強さが零れる。思わずニヤケそうになるのを堪えるが成長した彼女を見るだけで楽しくなる。

 

「良き晩餐としよう。和倉優希。」

 

「は、はい!」

 

視線を和倉優希へ向けると緊張した面持ちで直立する。前に見た時より多少は強くなっている。恐らく、コイツも醜鬼殲滅と同時に別の目的も持っている。

 

「そう緊張するな。食ったりはしない。・・・日万凛を頼むぞ。」

 

「え?」

 

俺は彼女らと別れベルから離れた位置に立つ。今回の進行役である『東海桐花』が口を開いた。

 

「この晩餐では次の東家の当主を決める!!九人全員が異空間で戦い戦闘不能かギブアップで失格じゃ!最後の一人が東当主となる。」

 

「それだけですか?」

 

糸目の女性が質問したが、現当主である海桐花はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「開始位置はバラバラじゃ。一人一人入れ。」

 

その言葉に和倉優希は多少、衝撃波受けるものの日万凛と八千穂の一言に納得する。説明するまでも無く彼は闘争に足を浸からせているらしい。

 

「バトルロイヤル形式かぁ・・・。落ちこぼれシバいて波に乗ろうっか。・・・なぁ、日万凛ぃ。」

 

あからさまに日万凛を煽っている。この光景に八千穂は怒りに震えるが日万凛の啖呵に矛を収めた。日万凛は既に俺の知っている日万凛では無い。それだけで笑みが零れる。

 

「ちっと通して下しゃんせ。御用のないもの通しゃせぬ。行きはよいよい、帰りはこわい。こわいながらも通りゃんせ。通りゃんせ。」

 

「こ、こう君!!」

 

最後に入ろうとした瞬間、ベルが珍しく大声を出して振り向く。振り返れば拳を一直線に出し何か覚悟を決めた顔付きだった。

 

「が、頑張れ!!」

 

彼女は気が弱い。それでも、覚悟を決めた時には優しげな顔が引き締まる。魔防隊ではどれほどの人間が知っているだろうか。俺は返すように拳を突き出す。彼女からの信頼だけは裏切る訳にはいかない。

 

「ああ。」

 

俺は地獄への門を潜る。なんて事ない。今まで地獄続きだったのだから。

 

 

 

 

 

分家side

 

私が出たのは浜辺に近い場所でありつつ崖。ここならば簡単には見つからない。そう思っていたのも束の間。私の胸からは人の手が生えていた。

 

ありえない。背後に気配は無かったはず。なのに何故私の胸から。引き抜かれた際、やっとの思いで見た下手人の顔は冷たく、感情を感じられ無い見下していたはずの本家の男だった。

 

 

 

 

 

光来side

 

弱すぎる。正直、それが本音だった。今、殺した相手は、記憶が正しければ警視庁異能課の一人。

 

桃を食した異能者を相手にするはずなのにこの体たらく。弱すぎると言っても仕方の無い。この程度の裏取りでさえ気付か無いのだから。

 

女の腹から腕を引き抜き血を払う。利き手である右袖には血がベッタリと付いていてクリーニングでも落ちないと悟り気分的に腕を振るう。

 

地面には未だ新鮮な血が地面へ染み込み土に吸われる。それを見て尚、笑みが思わず零れる。

 

きっと俺は狂っている。血を見て己の生き方を無意識に肯定してしまう。それでも、この光景は愛しさを感じるベルには見て欲しく無いと理性が伝える。

 

それでも笑みが零れて仕方ないのだ。狩人として生きてきた自分には俺に理性などと言った優しい感情は無い。

 

だからこそ自覚する。俺はベルを心から愛していても手放すしか無いのだと。

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