レジェンド・オブ・ゴッド   作:プロトタイプ・ゼロ

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第三話「黒服」

 

 

 

 

「これは……少々予想外デスねェ」

 

 ピエロの仮面を被り自ら道化師を名乗る少女は、圧倒的な強さを持ってカタカタヘルメット団の集団を捻じ伏せた少年に冷や汗をかいた。

 

 道化師は自分がドン引きするほどの快楽主義者であることを自覚している。だがそれは、あくまで自分で立てたプランを策とし、相手を嵌め、嘲笑うことだ。

 

 ここまで純粋な力のみであらゆる策を捻じ伏せられたのは生まれて初めてだった。と言っても彼女が本格的に活動し始めてから、これほどまでに強い実力者がいなかったこともある。

 

 彼女自身の戦闘力はそれほど高いわけではない。だが、生まれ持ったセンスと頭脳を駆使して幹部の座に居座りついてきた。

 

 それ故にジャンの持つ圧倒的な強さを見て、彼女は胸を抑えた。動悸は荒くなり、頬は紅く染まる。目を見開き、一秒も見逃さないようにジャンの動きを、ジャンの肉体を凝視する。

 

「はぁ、はぁ……ハハハは! キャハは!」

 

 彼女は生まれたときから人格が壊れている。親に捨てられ、ブラックマーケットでなんとか生き延び、偶然遭遇したレンの足掻きを見て、レンがカタカタヘルメット団のリーダーとなるように誘導した。だがそれは、単なる遊びに過ぎなかった。

 

 暇つぶし、と言ってもいい。ただただ、彼女の欠けた心の何かを埋めたかっただけである。

 

 その受けるなにかを、道化師は見つけた。

 

「ふぅ……で、お前は見ているだけか?」

 

「キャハ……ハハハは! 今日のところは引キましょウかァ……また会いに来ますカラねェ?」

 

「に、二度と来るな!!」

 

 レンの言葉などもはや聞こえない。ジャンの低く男らしい少年の声だけが耳に残る。

 

(あ、あぁ……貴方が、欲しいッ!! ワタシの心を埋めてくれる貴方がッ!!)

 

 引き返す時チラッとジャンを見れば、彼はジッと道化師を見つめていた。それが道化師の興奮を煽りブルッと身体を震わせる。

 

(次はァ……ワタシの事だけを見てくれますかねェ?)

 

 道化師は、生まれて初めて恋をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

「じゃーーん! 見て見て〜」

 

「……なんだそれは?」

 

 カタカタヘルメット団と道化師を追い払った数日後、超ご機嫌なユメが二枚の紙を持って学校にやってきた。夢に呼ばれたことでいつもの日課となってきていた砂集めを終わらせ、教室に向かったジャンとレンは突然突きつけられたその紙を見ながら首を傾げる。

 

「えへへ~これはね! アクアリウムの入場券だよ!」

 

「すまない、オレはそのアクアリウムとやらがわからないのだが?」

 

「あ~そっか! ごめんねぇ!」

 

 ユメからアクアリウムの説明を受け、ある程度のイメージを固めたジャン。魚という見たことない生物の集まりに、多少の楽しみがあった。

 

「で、それをアタシらに言ってどうすんだよ?」

 

「見るに、そのチケットは2枚だけ……当日買えると言ってもお金がかかるのだろう? どうするんだ?」

 

「それなんだよねぇ……4枚貰えたら良かったんだけど」

 

 頭を悩ませるユメを見て、ジャンとレンは苦笑いを浮かべながら頷きあう。

 

「そのチケットはホシノと行ってくるといい」

 

「えぇ!? い、いいの……?」

 

「ん? あぁ、いいよ。ぶっちゃけアタシはそこまで興味あるわけじゃないし」

 

「魚というのは少々気になるが、その機会などいくらでもある。お前もホシノもたまには楽しんできたほうがいい」

 

 二人の言葉に涙を浮かべるユメは、勢いよく二人に抱きついた。

 

「うぅん!! わかった!! ありがとうねぇ、ふたりとも〜!」

 

「やれやれ」

 

 ジャンは肩をすくめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククク。初めまして、お会いできて光栄ですよ」

 

「誰だ、お前は」

 

 広大な砂漠の広がる地面。月明かりに照らされながらジャン黒いスーツに身を包んだ男と会合した。

 

「私達の事は【ゲマトリア】と。そして私のことは【黒服】と呼んでくだされば嬉しいです」

 

「そうか、それで? オレになんのようだ?」

 

 キッと鋭くさせながら睨みつける。

 

「クククッ! そうですね。少しばかり話をしてから、と思いましたが……いいでしょう。単刀直入に聞きましょう。我々【ゲマトリア】へ来ませんか? 対価として、アビドスにおける借金の援助を行いましょう」

 

「ほう? 借金については初耳だし、後でユメとホシノを問い詰めるとして……そうだな、悪いが断ろう」

 

「クククッ! 理由をお聞きしても?」

 

「ふん。貴様のような怪しげな見た目でどう信用しろと?」

 

「それもそうですね。ですが、私は諦めるつもりはありません。いずれ貴方がこちら側についてくれることを祈っていますよ」

 

「そんなことは訪れない。オレはアイツらを裏切る気などない」

 

 アビドスに向けるジャンの目を見たあと、黒服は音もなくその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は? ユメと喧嘩しただと!?




どうだったでしょうか?
良ければ感想などをくれると嬉しいです。

次回、あのヘビが登場します

敵対者

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