「侵入者!?今どこまで来てるの!どうにかしないと…死にたくないよぉ…!!」
『落ち着いて下さいアルビノ様!侵入者と言ってもダンジョンに入って来ているわけでは御座いません!
具体的には南方15km先にある村で討伐隊が準備をしている所です』
だとしてもダンジョンに敵が入ってくるんでしょう!?ここまで来られたら殺されちゃう…!!
『アルビノ様、落ち着いて聞いて下さい』
「はいぃ…」
『奴らの目的はあくまで『黒魔』の私。
ダンジョンの手前に良い感じの屋敷を建ててそこで私がやられれば相手がここまで辿り着く事はありませんしアルビノ様の命が脅かされる事はありません』
平然としながら残酷な提案をして来た『黒魔』。
簡単に自分を犠牲にしようとする『黒魔』になんだかムカッ腹が立ってきた…!
「…それはダメ」
『…どうして?』
「『黒魔』さんは私が描いた子なんだから死んだらダメ!…討伐隊は私がどうにかする!」
『アルビノ様……!!!お気持ちは非常に有難いですが…討伐隊が私を容易に殺しうる実力を持っていたらどうにもなりません!!どうか考え直して下さい!』
なぜ起きぬけなのに赤の他人の討伐隊なんかを怖がって「お願いだから私の『黒魔』を殺さないで」なんて思わなくっちゃあいけないんだ…?
『逆』じゃあないのか?
「うるさい!」
『えっ』
私は悪魔になったんだ…悪魔らしく生きれば良いじゃないか…!
「私がやるって言ったんだから『黒魔』を死なせずに討伐隊をブチのめす!これは決定事項!やるよ!『黒魔』さん!」
怯えて命乞いをするのは討伐隊…あいつらの方だ!
『流石……御主人様!!!私のような者でも必要としてくれるとは!!そこにシビれるあこがれるゥ!!』
「『黒魔』さん!あの時のアレやるよ!」
『了解です!』
決意を固めた私と『黒魔』は意気揚々とダンジョンコアを操作して権能を発動する。
▼権能:『描画』
『モンスター生成』を使用しますか?
はい いいえ
「ここはモチロン『はい』だ!」
虚空から出現した液タブ風の板と謎のペンを机に置き、気合を入れる。
「討伐隊が何だ!私が全部ブッ飛ばす!やるぞぉ!うおーー!!」
やる気が湧いて来た!!うおおおおおーーー!!!!
〜数時間後〜
「なんで私あんなテンションだったんだろう………」
絵を描き始めて数十分経った頃から最初のテンションが落ち着き、自分の考えてた内容がアレすぎて自己嫌悪に陥りながら描き進める事数時間。
絵を描き終えた頃には私のテンションはコアルームに放り出された当時のそれに戻っていた。
評価…最高
階位…A
系統…魔獣
新種族『赤獣』を生成しました!
ダンジョンメニューに『モンスター生成:魔獣系』が追加されました!
「本当にコレ誰が評価してるんだろう…」
『あ、来ますよアルビノ様』
『黒魔』の念話?とほぼ同時、前に二つの光が見えたと思って良く目を凝らすと…赤色に黒の縞々が入った大きな虎がこちらを見ていた。
私が描いたのは女の子では……??
「ひえぇぇ……!?」
『アルビノ様!?』
「グルル!?」
目の前に突然現れた大型肉食獣に思わず腰が抜けてしまった私を心配してさらに近寄って来た『赤獣』。
「……きゅう」
目の前に広がる凶悪な顔面。先程のテンションも相まって限界がきてしまい、私は意識を失った。
種族:
ストレスによる気絶が発生したため
緊急進化を実行します
『え?』「ガゥ?」
「痛ッたぁぁーー!!!」
〈種族:
〈権能:『描画』〉の
〈権能:『描画』〉で生成できる対象の範囲が拡張されました
「う…う…」
『う?』「グル?」
「うおーー!!次だ次ィィ!!」
『「!?」』
全身の痛みと共に何かに叩き起こされた私はダンジョンコアからの通知に気付かずに湧き上がる謎のテンションに突き動かされ、再び権能を発動した。
▼権能:『描画』
『モンスター生成』を使用しますか?
はい いいえ
「『はい』だ!私はやってやるぞ!!」
うおーーー!!最強のモンスターを描き上げてやるぞ!!うおーーー!!
描き始めて数十分後…私のテンションは元に戻り、どうしてまたあんなテンションになってしまったのかわからずにもはや恐怖を感じ始めていた。
「…なんであんなテンションになってたか分かる?」
「全然ワカラン」
「!?」
『黒魔』への質問に知らない声が返ってきて一瞬ビクッとなってしまった。
恐る恐る振り返ると私のベッドに尻尾と猫耳の生えた赤い短髪の女の子が座っていた。
私がさっき描いた女の子と瓜二つの容姿をしている…という事は。
「『赤獣』さんも私が描いた時の姿になれるんだね…最初からそうして欲しかったな…」
「スンマセン」
『黒魔』さんとは違って『赤獣』さんは少し適当な性格のようだ。
『あ』
「どうしたの『黒魔』さん?」
『いえ…少し思い出したのですが…モンスターは進化の際に気分が高まる事があるとダンジョンからの情報に記載がありました』
「そう……やっぱり悪魔ってモンスターだよね」
『ああ…アルビノ様がショボショボに…』
さっきの変なテンションの原因がわかったのと引き換えにもう自分が人間では無くなっているという事実に少し悲しくなる。
思ったより取り乱さなかったな…これも私の気が狂わないように調整されているのかもしれない。
〜数時間後〜
『モンスター生成』用のイラストが描き終わりペンを置くと、液タブとペンがどこかに消えてダンジョンコアの方にホログラムが出現した。
評価…最高
階位…S
系統…植物
新種族『緑王樹』を生成しました!
ダンジョンメニューに『モンスター生成:植物系』が追加されました!
ホログラムが消えるのと同時に足元からコトリと物音が聞こえた。
皆が一斉に私の足元に視線を向けるとそこにあったのは…拳ほどの大きさの植物の種だった。
「…種?」
「…種ダナ」
『これを育てろ…という事でしょうか』
外に植えに行くのは少し怖いなあ…と私が思っている間に『黒魔』はどうするか決めたようで、私に提案をしてきた。
『一度やると取り返しがつかないのでこれまでやってこなかったのですが…アルビノ様は虫は苦手でしょうか?』
「虫?そりゃあ少しは苦手ですけど…」
『なら壊しちゃいましょう、DPの量産装置』
「そんなのあるの??」
道理でDPの桁がおかしいと思った…1DPの価値が未だに分かってないんだけどね。
『ええ、アーミーアントの巣を丸ごと乗っ取って古い働きアリを自動で“収穫"できるようにしてあるのですが…いかんせん見た目が悪くて…アルビノ様は見ない方が良いかと』
「わ…わかった…」
それは…確かに見ない方がいいかもしれない。
「それでその…DPの量産装置?を壊してどうするの…?」
『これまではダンジョンの入り口付近に他の生物の領域があるのでダンジョンそのものを地上に伸ばす事はできなかったんですが…アーミーアントの巣を丸ごと破壊すればそこは自由な領域となります。
地上に新たに階層を追加してそこにこの…『緑王樹』を植えればいいのではないでしょうか』
「「おおー…」」
もう全部『黒魔』さん一人で良いんじゃないかな?
『それでは早速壊しに行きましょうか!』
「「えっ」」
『討伐隊が近くに来ている以上事態は一刻を争いますからね…『赤獣』さん、取り憑いてもよろしいですか?』
「オウ!イイゾ!」
『黒魔』さんが足元のネズミから『赤獣』さんに乗り移った瞬間、コアルームの中を威圧感のようなものが駆け巡った。なんだか強そうだ。
『それでは行きましょう!『赤獣』さんも戦いますか?』
「モチロン!ガウグルルル……!!」
『それでは行ってきます!』
「行ってら……行っちゃった」
女の子の姿から大きな虎に戻った『赤獣』さんと女の子の霊体を引っ込めた『黒魔』さんが一瞬でコアルームを出て行った。
話が早すぎてついていけないよ…。