『黒魔』side
アルビノ様に見送られてコアルームを出発した私は『赤獣』さんに我らがダンジョンを紹介しながら地上へ向かいます。
『こちらはダンジョンのモンスターを定期的に生成する施設ですね、これを交換するのは中々骨が折れましたよ…』
「幾ラシタンダ?」
『現状の最高
「マジカヨ」
ダンジョン内のモンスター達をアーミーアントの巣を破壊した後の片付けの為に連れ歩きながら地上に向かって歩いていきます。
「ソレニシテモ…コレマデ悪魔系モンスターダケデヤッテキタンダロ?大変ダッタンダナ」
『ええ…これからは魔獣系と植物系も生成できるので階層ごとにコンセプトの差も作れるようになります!
討伐隊のこともあり色々と諦めかけていたのですが…アルビノ様が『赤獣』さんを作ってくれたお陰で夢が叶いそうです!』
「ヨカッタナ!」
「ええ!」
コアルームを出て歩くこと数時間後…地上への転送専用の施設がある41階層まで辿り着いた私達は、連れて来たモンスター達に指示を出します。
『皆さんは私達が出発してから…そうですね、3分後に来て下さい。それまでには終わらせます』
「「「了解しました!」」」
「大物ハ私ガ殺ッテモ良イカ?」
『そうですね、『赤獣』さんの戦闘能力を見る為にも大物は残しましょうか』
「ヤッタゼ!」
『それでは皆さん、3分後に』
「「「行ってらっしゃいませ『黒魔』様!」」」
モンスター達に見送られた私達は施設の中の魔法陣に乗り、一階層へと転送されました。
一階層の魔法陣に転送された私達は施設の管理を任せているアークデーモンと挨拶を交わした後、ダンジョンの入り口へと向かいます。
「サッキノ転送施設ハ幾ラシタンダ?」
『あれですか?41階層の物は…40万DPですね、階層を隔てるごとに10000DPずつ消費量が増えると知った時はビックリしましたよ』
「大変ナンダナ」
『もうすぐ入り口ですね…残す大物は『最高傑作』でよろしいですか?』
「モチロン!コッチモソノツモリダ」
『赤獣』さんとの最終確認を終わらせた私達はダンジョンの入り口に到着すると、アーミーアント達を堰き止める役割をしていたガーゴイル達を下がらせてアーミーアント達の巣の中心に躍り出ました。
『『赤獣』さん、巻き込まれないで下さいね』
「了解ダ」
「「「キシャァァァ!!!」」」
侵入者に対して即座に反応し襲いかかって来たアーミーアント達。
彼らは我らがダンジョンの発展に多大な貢献をしてくれました…が、それはそれとしてダンジョンコアを狙って定期的に侵入してくるのは正直ムカついておりました。
なのでさっさと消えて下さい、この無駄にゴチャゴチャした美しくないアリの巣ごとね。
『黒魔法…対象選択!『空を落とせ 望みを砕け「ウソダロ!?〈赤魔法『レッドストリング』〉」狂気の神の 恐れを知れ』…『ブラックホール』!!』
ガオン!
私が詠唱を終えると同時にアーミーアントの集団の中心に黒点が現れ…全てを塗り潰しました。
私の黒魔法『ブラックホール』はブラックホールと同じ性質の魔力を生成し広範囲の対象を一瞬で吸い寄せ圧殺する殺戮の為の魔法。こんな時ぐらいしか使いませんね。
今回『ブラックホール』の対象にしたのは「一定以下の大きさの生物を含む物体」です。
「ギシャァァァ………!?!?」
そういうわけですので…魔法が解除された後には一定以上の大きさの生物しか残りません。大地も砕けば小さくなるので対象内です。
突然体がボロボロになって自分以外の群れと巣が消え去った女王アリが困惑してますね。
ズシンッ!!
『おっと、これは良い素材になるので回収しましょう。『ブラックボックス』』
先程『ブラックホール』を発動した辺りの地面に拳大に圧縮された大地とアリ達がめり込んでいました。
ここまで圧縮された魔物の素材は非常に貴重なので確保しておきましょう。
「……オーバーキルジャナイカ?」
『良いじゃないですか、時間の短縮です』
「マ、私ハアイツヲ貰ウゾ」
『見てますので頑張って下さいね』
私が詠唱を始めた時点で赤魔法の『レッドストリング』で私と繋がり、魔法の影響から逃れていた『赤魔』さんが女王アリに向かって歩みを進めます。
「キシャァ………キュルルルルルルルル!!!」
ビチャビチャビチャ…ゴトンッ!
体を震わせた女王アリの腹から一つの巨大な卵が産み落とされ、中から大きな魔力反応が現れました。
窮地に陥った女王アリは体内の全ての魔力と胎の中の卵全てを対価に一つの卵を生成します。
その卵から孵るのがアーミーアントの最終兵器…「最高傑作」です。
パキパキ…バキッ!!
「グルァァァァァ!!!」
「オ!中々良イノ作ルジャネーカ!グルルルァァァ!!!」
卵から孵った「最高傑作」…今回は獣型ですか。それに応じて巨大な虎の姿になる『赤獣』さん。
『赤獣』さんの実力を知る為にも私は手を出しませんが…正直すぐに終わりそうですね。
「グルルァァ!!(まずは一発来いや!)」
「グラァァ!!!……ァア?」
『赤獣』さん…ノーガードで「最高傑作」の一撃を受けて無傷はちょっと引きますね。
「ガルルル…ガァァァァ!!!(少し期待外れだな…とりあえず死ねェ!!)」
「ギャピッ!?」
終わりましたか…『赤獣』さんの反応的に今回の「最高傑作」はせいぜい
この調子で討伐隊相手にも無双できたら楽なんですがね…。
「キシャァァーー……」ベチャッ
「グルル……フゥ…『黒魔』ァ〜…アレ?ドコイッタ?」
『先程からずっとあなたの中に居ますよ』
「ソウイヤソウダッタナ!デ?コレドウスンノ?」
女王アリを仕留めた後人型に戻った『赤獣』さんが指差した方向を見ると…ダンジョンの周囲が私の『ブラックホール』の影響で大きなクレーターとなっていました。
ズタズタになった大地とダンジョンの入り口まで差し込む日差しに私は少し考え込んだ後…。
『…植物が育つには良いんじゃないですかね』
「……マァ確カニ」
どうせ『緑王樹』を植えるしいいでしょう。
後からやってきたモンスター達と後片付けを終えてから数時間後…複数の能力を貸し出してコアルームに残しておいた使い魔を通じてアルビノ様と中継を繋ぎ、『緑王樹』の植樹式をすることになりました。
『赤獣』さんにはアルビノ様の護衛にコアルームに戻ってもらっています。
『アルビノ様、ここで宜しいですか?』
「うん、討伐隊のいる村とダンジョンの間でお願い」
『了解しました』
アルビノ様に頼んでDPで生成してもらった
『さて…そもそもどれくらいの速度で』
ズンッ!!メリメリメリメリィィ!!
『エッッ!!全員ダンジョンまで退避ィィーー!!』
凄まじい地鳴りと共に隆起し割れ始める地面に慌ててモンスター達に命令し、素早く動けないエビルカズラをケルベロスが引き摺りながら皆で必死に地割れから逃げ回ります。
『ハァッ…!ハァッ…!皆無事ですか!!』
「バウッ!!」「シュルルル……」
『何がどうなっ……』
ダンジョンの入り口まで辿り着いた私たちが振り返ると…荒野が広がっていたはずのダンジョンの周囲は巨大樹が生い茂る大森林となっていました。
皆が呆けていると、コアルームの使い魔からの念話によってアルビノ様の声が周囲に響き渡りました。
「すごい地鳴りがしたけど大丈夫!?『黒魔』さんは無事?『黒魔』さん?」
『アルビノ様…こちらは皆無事ですが…』
「よかった…!今の地鳴りの原因は分かる?」
『ええ…その…外に森林が出来ました』
「……はぁ?」
アルビノ様の困惑した声が静まり返ったダンジョン内に響き渡りました。