魔法科高校にひとでなしを突っ込んだ(今更) 作:3期楽しみ!
「はぁ〜あ……」
季節は4月。桜が咲き散る季節。溜め息の主、九藤真人は溜息を吐く。
「なんでいんだろ。俺」
真人としては高校に入学意思はなく。祖父の仕事を手伝う気であったが、その祖父からの厚意、もとい命令で最低でも高校は出ておけということで真人は
魔法大附属第一高等学校に今年入学した。しかも一高である。一高には面倒な奴が大勢いる。
「行くなら最低3高でいいだろ……」
毒づきながら直人は端末でネットサーフィンをしてる。そうして時間を潰すこと数分。真人に遠慮がちに声がかかった。
「あの……真人さん……ですよね…?」
良く通る鈴の音のような声に端末から視線を上げると目の前に黒髪を背中まで流した人形のような美少女がいた。
「はぁ……深雪か……」
面倒な奴が来たと内心で吐き捨てながら応える。
「その……真人さんも一高に入学だったんですね」
「ああ、で?」
「そ、その……知り合いを見つけたので声をかけただけ……だったんですが……ご迷惑、でしたか?」
「迷惑だな。お前とは話したくない。お前と話すと達也が出てくる」
深雪の絶世の美貌にも臆さず真人は会話を切って捨てる。深雪の目には動揺が見て取れ、瞳には涙が滲むほど。
「ああ。あと学校の中では話しかけるな」
「……な、なぜ……」
「分からないのか?お前の容姿と魔法力は目立つから人と厄介ごとを呼び寄せるんだよ。俺に関わるな」
ウザイ。と、止めの様な一言に深雪はたじろぐ。真人も話は終わりとばかりに端末に視線を戻す。
「……ごめんなさい……」
その一言を絞り出して深雪は真人の前から走り去った。
真人と深雪、その兄の達也とは元、従兄妹同士だ。真人の生家は四葉。真人は十氏族の四葉家現当主。四葉真夜の実の息子“だった”
「はぁ……面倒なこと思い出したら疲れた……」
特に誰とも関わる気もない真人は結局入学式を“分身”に任せてオリジナルである自分は帰宅した。
九藤真人の住む家は東京都心の中でも有数の富裕層の住む住宅地。その更に奥にある一軒家だ。
指紋認証とカードキーによる門前のロック。そして玄関前には別のカードキーと網膜認証までついてる徹底振り。そのロックを通過して真人は玄関を潜ると、玄関には女物のスニーカーがある。おそらく同居人の物だろうと特に気にもせず自分も靴を脱いで上がると、帰った真人に気づいたのかリビングから美女が現れた。
「おかえりなさい。真人君。随分早い帰りね」
いじらしい笑みを浮かべて迎えるのは真人にとっての姉同然の存在。藤林響子だ。
そして真人が心から気を許せる数少ない人物。
「ただいま。姉さん。入学式は分身に任せた」
真人の響子の中では案の定な回答に響子はうなだれる。
「はぁ〜……やっぱりこうなっちゃったかぁ……」
真人の生家との仲の悪さ(というより実母との仲の悪さ)は知っていたし、それに次いで第一高校にいる自分の仕事仲間とその妹さんとも仲が悪い(真人が一方的に嫌っている)のも分かっているが余りにも予想通りの展開に響子は大きく溜息をつく。
「仕方ないだろ。一高は俺にとってストレス“だけ”が溜まる場所だ」
“だけ”を強調して真人はリビングに向かい、側で響子も歩く。
「便利よねぇ。分身の術」
真人の学校に置いて来たのは分身の術で作った分身体。しかも術を解除すれば分身が体験したことが自分に経験、イメージとしてフィードバックされる優れた術。生まれつき魔法の才能に恵まれなかった真人は家を出され、九藤家に養子入りした。だが直人に宿ったのは忍術ともう一つの異能という才能だった。
「今日だけは分身に同情する」
真人は自分を追い出した家に対して嫌悪感がある。可能なら家ごと叩き潰したいほどに。実母には最早殺意も生易しい愛憎がある。
養子入りした九藤家と仲が悪い訳ではない。寧ろ良好だと自信をもって思ってる。
義父のことは本当の親だと思ってるし、親子関係である九藤家当主、九藤烈とは年齢上爺ちゃんと呼んでしまうが烈も自分を孫のように可愛がってくれてたまに血の繋がりがないなんて忘れてしまうほど。
従兄弟であり本当の兄弟のような光宣。
響子とは家系図上は伯父と姪だが、響子の方が年が少し上ということもあって姉と呼んでるし、また響子も自分を弟のように世話を焼いてくれる。(最近ちょっと過保護だが)唯一義理の兄弟である真言とだけは折り合いが悪い(というより一方的に避けられている)その点だけ除けば真人はこの家を本当の実家と思っている。
そして響子もそんな心中を察して、真人の背中を押す。
「どうしたの。姉さん」
「一応あの学校には真人君の友達だっていたのよ?」
「え?誰……」
「エリカさんと幹比古くん。真由美さんだっていたのに……」
「エリカと幹比古はともかくあの女は違う」
響子は真人をテーブルに着かせ、その肩に自分の顎をのせる。
「婚約者同士じゃない」
「ほとんどあっちの親がゴリ押したことだろ。香澄はともかく泉澄はウザイし。真由美は……生理的に受け付けない」
響子は内心そういう女ほど真人に惹かれる今までの例を回顧しながら避けられてる女の子達に合掌する。
「姉さん心配。弟が将来結婚出来るか」
「だったら姉さんが俺と結婚すればいいだろ」
「え……」
自分のことなのに他人事のように言う真人。だが、思いもしない言葉に響子は目を丸くする。いや。真人は弟で……でも身内贔屓を差し引いても容姿はいいし、お互い性格もよく知ってる。本人は嫌がってるけどモテてるし。四葉の血が外に出ないってこともいいし……アレ?結構優良物件なのでは?ウチの弟。
「生まれは変えられないのは仕方ないけど俺は四葉の血を引いてる。それに俺の“目”も外に出すべきじゃない。結婚するならまず姉さんが候補だろ。爺ちゃんに曽孫も見せられるし」
と、理路整然と言う真人に響子は我に帰る。真人はあくまで恋愛感情のない。政治的観点のみで言っているのだ。
「も、もう……そういうこと女の人に軽々言うもんじゃないわ。私は真人君が連れて来た人なら歓迎するから。頑張って♪」
気を取り直して肩を軽く叩かれる真人は大きな、とても大きな溜息をついた。
「はぁ………」