神代の大魔族と神話の魔法使い   作:匿名希望

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 マハトを見て思わず書いた。後悔はしていない。


#1 始まり

 

 

 ――魔王が生まれるよりも遙かな昔、『魔族は人を欺く為に人語を話す害獣』。何時しかその認識が人類に浸透し始めたある時、『大魔法使いゼーリエ』との死闘を終えた大魔族が居た。

 

 当時の魔族にとって、ゼーリエは死神や絶望と同意語であり、相対すれば死を受け入れなければならないと言われていたのだが、その魔族はある方法で彼女から瀕死の重傷を受けながらも逃げ延びる。

 

 

 

魔族から人間になる魔法(リィンカーネーション)

 

 

 土壇場で発動させた空間転移魔法と同時に即席で作り上げたこの魔法を使い、魔族の肉体を捨てて人間へと擬態する事で当時のゼーリエから生き延びた初の魔族になったが、即興かつ術式の精査すら許されない程のタイミングで発動したこの魔法には発動後にならなければ分からない一つ重大な欠陥が存在した。

 

 

 「…………なるほど。ニンゲンとはこうも思考の働きが悪く、加えて肉体も脆いのか」

 

 

 ゼーリエとの()()()()()()()をどちらかの死と言う決着で終わらせたくないと言う傲慢な欲求によって一時的な潜伏としてこのような行動を取った彼だったが、魔法の構築が()()()()()為に文字通り魔族から人間に生まれ変わってしまった。

 

 更に付け加えるならば魔族の視点から見た人間という生物種と言う形状である為、肉体を完璧に人間へと変化させられたとしても精神及び思考能力は魔族のままである。瀕死の状態から回復出来ているのは良いとしても、それに見合っているかは疑問だ。

 

 ついでと言わんばかりに予想外の事象として余剰魔力が形となった魔道具も幾つか存在しており、それらが如何なる能力を持つのか、何故余剰魔力が魔道具の形になったのかも分からない。そもそもそう言う仕様の魔法なのかもさえ、今の頭脳では解析に途方も無い時を要するだろう。

 

 頭脳も、肉体も、魔力も、魔族の誇りと呼べる物は全て大幅な弱体化が発生し、また自身の発動した『魔族から人間になる魔法(リィンカーネーション)』の原理も全く理解出来ない。また、予想外の事象として余剰魔力が形となった魔道具も幾つか存在しており――それはつまり一時的な擬態魔法の筈が、自身に対する不可逆且つ原理不明の『呪い』となってしまったと言う事。

 

 

 「必要に駆られたとはいえ、門外漢な魔法を使った弊害か。これではゼーリエと満足に遊べそうにないな」

 

 

 肩をすくめるような仕草をしながらも、男は本人の意思とは別に楽しげな表情を浮かべており、暫く何かを思案すると側に落ちていた枯れ枝を拾ってその場に立てる。

 

なってしまった物は仕方ない、寧ろ『人類』が何故我々を『害獣』とするのか? 食物連鎖と言う摂理に則る捕食行動の何が悪なのかを理解する事が出来るようになったと考えればいい。

 

 特に当ても無ければ目標もない、だが暫定的な目的は決まったからか、彼が取った行動は過去に目撃した人間の行動を模倣する事。…………つまり棒倒し占いである。

 

 

 「人間は自分の進む道が分からなくなった時、こうやって吉兆の方角を占うんだったか、確かゼーリエもやっていた記憶があったような? まぁアレがやっていたのなら効果はあるのだろう」

 

 

 彼は魔族として生きた幾星霜の記憶を人間の記憶領域に圧縮した為か、記憶の合体によって生み出された存在しない記憶(ゼーリエ主演の人類の行動講座)を頼りに棒の倒れた方角――――北へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 ――――大魔法使いゼーリエは戦いの爪痕が残る地にて満身創痍の身体を杖で支えて立っていた。

 

 勿論、彼女とて相手を逃した事は理解している。だが追いかけようにも件の大魔族の魔力反応が急に変質した事と彼の現在位置が遠く離れた場所にある事、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事で無策で追うのは悪手だと聡明な頭脳が結論付けていた。

 

 

 「…………堕楽のクーリオか、時代最強の大魔族と言う話は伊達では無いな」

 

 

 戦慄、恐怖、絶望。そんな口調で誰がいる訳でもないのに呟く彼女はしかしながらその言葉とは裏腹に、何よりも楽しいひと時がまだ続くと言わんばかりの獰猛な笑みを浮かべていた。

 

 

 『堕楽のクーリオ』

 

 

 最強の魔族と呼ばれる存在であり、ある意味ではゼーリエの対となる大魔族である。

 

 彼の操る魔法は『虚無から万象を生み出す魔法(リライト)』と呼ばれており、ある種の『神』の領域に足を踏み入れていた怪物。望めば物質であろうと魔法であろうと、森羅万象凡ゆる物が自身の手によって生み出せると豪語する彼はある時期から人類を襲わなくなり、とある単一の集落に身を寄せていた。

 

 単純な実験、『人類と魔族の()()』、それが実現可能かどうかに興味を持ったクーリオはその集落の者達にこう取り引きを持ち掛けたと言う。

 

 

 『年に一人、私に食糧として集落の中から人間を差し出せ。その対価として集落の不都合を魔法で取り除く』

 

 

 辺境の離島であった為に冒険者は居ない。ましてや才能ある者にしか伝えられない『魔法』を扱える人間などその島には居らず、島民はその取り引きを受け入れてしまった。

 

 そこから数百年、クーリオは契約を履行し続けた。この行為は本人の気質もあるが、『実験』の過程的に必要と判断した為であり、これによって年に一人の人柱を差し出す行為が時間経過で如何なるのかを調べる為には長期的な結果を必要としたのである。

 

 そして、この実験はクーリオにとって極めて興味深い結果を生み出す。

 

 

 最初の百年こそ何も起きなかったが、次第に嵐や凶作、天災や魔獣による実害など、()()()()()()()()()()()()()()を解決する内に人柱は『契約』から『風習』に変わった。

 

 勿論クーリオはそう誘導する様な行為言動を意図的に封じ、必要の無い時は封魔鉱による魔力制限まで行った。それが結果的に島民の認識を好意的な物へと染めて行き、やがて『人柱』の呼び名が『御役目』となり、『名誉』とされる様になった。

 

 これは外界との連絡が船による往来しかなかった事、如何なる不便や不都合も『虚無から万象を生み出す魔法(リライト)』によって解決して貰えると言った事、そして何より一人の犠牲で多くの者が莫大な利益を得る事がこの変化を生んだのだろうと、ゼーリエは考察する。

 

 

 それ故に必然的に産まれたのが『クーリオ』の神格化と彼を祀る土着信仰。後年は年に一度の『御役目』とは別に月に一度『他から拉致した人間』を人柱として差し出して私利私欲を満たす物まで現れたと言う。

 

 ――――だからこそ『邪教』が離島に隔離されている不幸中の幸いに乗じてゼーリエがこの地を焼き払った。この『邪教』が外部に伝わる事はなんとしてでも防がなければならない。()()()()()()()()()()()()()()()()()彼女に全面協力をしてでも『邪教』と『邪神』を滅ぼす事に躍起となった。

 

 燃える島を見ながら興味深そうに笑みを浮かべるクーリオとのやり取りが彼女の脳裏に浮かぶ。

 

 

 『魔法使いは人類全体から見ればほんの僅か、この実験を行う為には人間では不可能だろう。だがエルフであるキミならこの結果の意味を理解できるんじゃないかな? ゼーリエ』

 

 『私が害獣の鳴き声に耳を貸すと思うか?』

 

『面白い事を言うね。確かに私はキミ達の定義からすれば魔族(害獣)だが、この島での出来事を考慮するならば、人類にだってキミの言う害獣たる部分があるのではないかな?』

 

 『無駄話は終わりか? 言っただろう、害獣の鳴き声に耳を貸す気は無い』

 

『言葉は知性の証ではないのかい? まぁいい、ならば戦いの中で語り合うとしよう』

 

 

 そうして始まった殺し合いは彼女の生涯において最も死力を尽くした戦いであり、無限に続く魔法の応酬はお互いから言葉すら削り取って、闘争本能を強く揺さぶった。互いに唯一無二の好敵手と確信できる程に。

 

 故にゼーリエは嗤っていた。感情の起伏に疎いエルフでありながら、生涯に出会った何者よりも心を焼く怪物に出逢えた事に――――。

 





 クーリオ君は大魔族から人間に無理矢理企画合わせてるのでボケ担当です。これから沢山『存在しない記憶』でゼーリエとの思い出に浸り始めます。尚直接の面識は殺し合いの一件のみです。後人間化した彼のスペックは弱体化(当社比)です。


 ゼーリエ様はガチガチにメタりに行った上に仕込みしまくって新魔法バカバカ撃ちまくりましたが仕留め損なっておこ(大歓喜)です。尚人間化してるとはさすがに思ってない模様。
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