神代の大魔族と神話の魔法使い   作:匿名希望

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 クーリオの魔道具一式。多分作中で語る枠が無いので此処で雑に載せときます。

・魔力を込めたら切れ味が上がる大剣
・衝撃を増幅する鉄甲と具足
・物理完全無効の衣服

ラスボスみたいなイメージです。


#4魔族

 

 ––––––堕楽のクーリオが人間になって三ヶ月後。

 

 彼路銀稼ぎの為にとある森の中で魔族を狩りながら、その在り方について考えを巡らせていた。

 

 魔族には家族と言う概念が存在しない。しかし、今際の際に命乞いの言葉として『お母さん』等と口にする事がある。

 

 人間の性としてその様な言葉を聞いた場合、同情や躊躇い等が発生し、確実とは言わないまでも見逃される可能性が生まれると言う事を魔族として知っているが、何故そう口にするのかが分からなかった。

 

 単に経験則的な理由でその言葉が効果的だと知っているだけ、答えとしては単純にこうなのだろうが、家族がなんなのかを理解する事が出来ない魔族にとって、自身が理解出来るその他の言葉と同じ様に命乞いの台詞として肩を並べる理由があるのでは?と、この疑問は彼自身の好奇心を刺激していた。

 

 魔族にとって本来言葉とは意思疎通の手段では無く、起源を辿れば人類を惑わせる為の道具。それがいつしか人類を模倣し、魔族間での会話にも使用し始めた。この変化は魔物から進化する過程で何らかの生物学的利点(収斂進化)を求めたのでは無く、人類を捕食する為に都合の良い形になったのでは無いだろうか? だからこそ家族の概念が存在しない魔族の口からその様な言葉が出る。

 

 

 そう考えながら彼が今まで出会って来た魔族の姿を記憶から掘り起こしていると、年々『人類』に姿形が似通って来ている事に気が付いた。

 

 

 全身が体毛や竜の鱗の様な物に覆われた見るからに怪物然とした自身の様な大魔族はクーリオと言う自我を獲得した時点では主流だった。今現在も探せば全く居ないと言う事は無いだろうが、それでも人に酷似した姿の魔族はこれからも増え続けると言う確信が彼にはあった。

 

 何故なら自分は人類(ゼーリエ)に討たれ掛けた。取るに足らない食物連鎖の下位カーストの分際で、明確に生存本能を刺激され、逃亡と言う手段を取らされたのだ。種族全体の力は自身の想定を遥かに超えている可能性があると、クーリオはそう考えるに至る。

 

 更に深く考えるのなら、人類はお互いの繋がりによって技術と情報を交換し合い、互いに高め合っている。今勝てなくても次やその次には勝つ。そう言った群体の強さが彼らの脅威だと、クーリオは見下していた筈の彼らの危険性に気が付き嗤う。

 

 彼は魔法によって人間となっただけで本質や性根は歴とした大魔族である。如何なる出会いも、如何なる経験も、自身の中に出来上がった強固な魔族的価値観を崩すには至らないだろうと考えて、『家族』と言う物に改めて目を向けた。

 

 

 

 「魔族が命乞いの言葉として選ぶ程、人類種にとって重要な家族と言う魔族には無い群れとしての概念を理解できれば、いつの日か私は人間を真に理解出来るかもしれない」

 

 「–––––––そんな日は来ない。何故なら貴様は此処で私によって死ぬからだクーリオ」

 

 

 唐突に自分を追い込んだ女(思い人)の声が聞こえたと認識した瞬間、クーリオはその超人的な身体能力を以てその場から跳び退く。

 

 思考を置き去りにした超反射。だが魔族としての肉体と人間としての肉体ではその性能に明確な開きが存在していたらしく、何を撃たれたのかを認識する前に左半身が吹き飛んだ。

 

 通常なら即死してもおかしく無い一撃だが、彼は事もなげに虚無から万象を生み出す魔法(リライト)で新しく吹き飛んだ身体を作り直して立ち上がる。

 

 

 「三ヶ月振りだねゼーリエ。会えてとても嬉しいよ」

 

 「人間の真似事をしていると聞いていたが、なんだその成りは」

 

 「キミから逃げる為の一時的な変身のつもりだったんだけどね、私は思いの外優秀だったらしい。実質的な弱体化をしているような物だ」

 

 

キミなら分かるだろう? そう言って彼は服についた土埃を払いながら立ち上がり、ゼーリエの目を真っ直ぐに見据える。

 

 相対した彼女は魔力量やその反応速度の劣化からクーリオの言葉に偽りが無い事を即座に理解し、同時にその所為で今の彼は以前と比べ物にならない程の厄介さを得ていると判断した。

 

 今の彼の状態はある意味手負の獣の様な物、自分のスペックが十全に活かせない以上、可能な限りその弱体化した実力の差分を技術や発想で埋めようとするだろうと、ゼーリエは今から起きるだろう魔法戦に知らず知らずに好戦的な笑みを浮かべる。

 

 だが、彼女が意気込んでいた(心待ちにしていた)魔法戦は思わぬ言葉のジャブ(魔族の常套手段)から始まった。

 

 

 「そうだゼーリエ。––––––私を産んで『お母さん』と言う物になってくれないかな?」

 

 「は?」

 

 

 唐突に投げられた想定外の言葉に高揚していた感情に冷や水を掛けられた彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()虚無から万象を生み出す魔法(リライト)を経験に裏打ちされた直感によって回避する。

 

 放たれた漆黒の閃光は直線上の木々を跡形なく消し去り、一定距離を離れた所で十数条に分裂すると、生い茂る葉の中に隠れながら蛇の様な柔軟な軌道でゼーリエへと襲い掛かった。

 

 先手を取ったアドバンテージを奪い返された事に内心舌打ちをしつつ、彼女は周囲の植生を利用しながら自身の魔力を極限まで封じ、追尾する魔法を躱して行く。

 

 一瞬、魔法で受ける事もゼーリエは考えたが、堕楽のクーリオならば受けへの対策を練っていると言う、その厄介さ故の信頼が彼女に回避を選択させた。

 

 そしてその彼女の行動は正しく、この時クーリオが虚無から生み出した事象は後の時代の大魔族『腐敗の賢老クヴァール』が放つ人を殺す魔法(ゾルトラーク)に類似した能力を持っていた。その能力は人類の魔法やその耐性を無視し、()()()()()()()()()()()()と言う物であり、受けに回ったが最後、一撃目に防御手段は消失し、間髪入れずに入れられた二撃目によって死体すら残らない。

 

 無差別に魔力の粒子として消えて行く樹木を見ながら、ゼーリエは自身の行動が正しかった事を悟りつつも、このままではジリ貧になると判断し、視界の悪さを利用した隠密軌道でクーリオの背後を取ると、その手に地獄の業火を出す魔法(ヴォルザンベル)を収束、完全な零距離から極大の熱線を放った。

 

 その威力は凄まじく、射程範囲内の悉くを熱波と衝撃で焼き尽くし、多少の空間転移や防御手段では耐える事の出来ない過剰攻撃(オーバーキル)だった。

 

 この時代に存在する並の大魔族であれば即死。戦いを楽しむ為に相手に合わせた手加減も抜いた殺意の一撃は、彼女自身の目で見ても会心の一撃と言えただろう。

 

 

 

 ––––––だが相手は堕楽のクーリオ(神として崇拝された大魔族)である

 

 

 

 「素晴らしいよゼーリエ。やはりキミはこの世界で明確に私を殺害しえる唯一無二の天敵だ」

 

 

 燎原となった森の中で、肉体の欠損を再構築しながら立ち上がる怪物(クーリオ)は、本人も気付かない内に心の底からゼーリエに対し称賛を送っていた。

 

 圧倒的な力で敵を蹂躙する事が出来る彼にとって、戦いとは自身が手を抜かなければ成立する事が無い概念であり、彼が神として崇められる事になった遠因も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言える。

 

 だが、彼はどのように温厚であっても『大魔族』であり、悠久の時を肉体と魔法の研鑽と共に生きて来た。

 

 彼は魔族として異端であり異質であるのは事実だが、決して『例外』では無い。人類を捕食する事自体に食物連鎖の一環であると言う以外の価値観を見出せず、他の魔族の様に魔法や技術に対しての誇りも持ち合わせている。

 

 だからこそ、意図しない弱体化をしているとは言え『本気』且つ『全力』で敵対者を叩き潰す為に戦う等と言う経験は、彼女以外から摂取する事の出来ない高揚だった。

 

 魔法とはイメージの世界、想像力による力が大きく働く。それは人類も魔族も共通の事項であり、不可能と思ってしまった事は実現する事が出来ない。

 

 だからこそ、邪神として崇められた経験と自身への傲慢により、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う強烈な思考とそれを疑わない精神性に到達した彼は魔法使いにとって既に人類や魔族と言った括りから掛け離れた存在となっていた。

 

 精神の高揚と共に立ち昇る魔力の柱は彼の思い込みによって周辺が軋む程の圧力となり、ただ立っているだけで絶大な魔法耐性を持つに至っており、それによって零距離からの地獄の業火を出す魔法(ヴォルザンベル)を耐えていた。

 

 勿論その耐性の上から彼の肉体の一部を欠損させる火力を撃ち込んだゼーリエは最早神域に至っていると言って差し支えが無く、だから彼女を()()()()()()()()認識したのだろう。

 

 

 「私は人類を理解する為には『家族』を理解する事から始めなければいけないと思うんだ」

 

 「ほう、それで? 私を孕ませるのでは無く、私に産ませると言った結論になった理由はなんだ?」

 

 「会話に応じるとは思わなかったが、分かりやすく言えば『百聞は一見にしかず』だよ。私が人間の『家族』と言う概念を理解する為には経験する事が一番だと判断したんだよ」

 

 「その矛先が私と言う事か、随分と好かれた物だ。虫唾が走る」

 

 「ああ、そうだよ。私にとって『人類』に該当する存在はキミしか居ないし、その上で私が何かを学ぶに足る人物もキミ以外に居ないからね–––––故にキミを捩じ伏せて目的を達成させて貰おう」

 

 

 そう言って彼は杖を取り出しながら嗤い、そこから壮絶な魔法合戦が始まるのだった。

 





 クーリオ「ゼーリエは私の母親になってくれるかもしれない女性だ!!」

 ゼーリエ「こわ……殺そ」
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