錬金術…
それは、近代より前に存在した技術であり、鉛を金に変える、不老不死の方法を探すなどを目的としたものであった。
これらの試みは成功しなかったが、錬金術によって積み上げられた知識は、近代科学の礎となった。
だが、これは表の話だけである。
錬金術は二つだけ、常識では測れない成功を収めた。
一つは、人間を超人的な化け物、人造人間ホムンクルスへと変える技術
そしてもう一つは、協力な戦術兵器の開発成果である武装錬金である。
そして、武装錬金を操る戦士たちによる秘密結社、錬金戦団はホムンクルスの殲滅の為、そして世界に散らばっている武装錬金の中核である、核鉄を回収するため、日々ホムンクルス達との戦いに明け暮れていた…
しかし、そんな彼らにホムンクルスではない、第三勢力が敵となって襲い掛かって来る事となった。
錬金術戦士団露西亜方面大隊第5支部
ウラル山脈麓にある廃村を装った秘密施設に存在するこの錬金戦団は、丸で蜂の巣を突かれたように大騒ぎになっていた。
「急げ!!重要書類と物資をすぐにここから運び出すんだ!!」
「持ちきれないものは、速やかに処分しろ!!」
「時間が無い!!急いでウラジオストクの本部へ合流し、亜細亜方面大隊の元に行くぞ!!」
これほどまでに大騒ぎになっている理由、それはロシア政府が錬金戦団と完全に縁を切ると宣言して来たのだ
錬金戦団は、その活動内容上、各国政府との強いパイプを有しており、犠牲者が出ないならば大規模破壊すらも許されるほどの権力を有していた。
しかしそんな中、突如としてロシア、そして旧ソ連勢力圏であった国は、錬金戦団へ絶縁を勧告、そしてそれだけならまだしもロシアに散らばる各支部が何者かに襲われ、同地にいた者は全て殺されるか、行方位不明になっていると言う異常事態が発生していた。
「しかし、なぜこうも簡単に他の支部が…」
「武装錬金を扱える者達も大勢いたはずなのに一体なぜ…」
何かが起こっている、そんな不安に撤退作業を勧告していた支部長は襲われていた。
その時であった
「どうも、お忙しいところ…失礼致します」
突如、拡声器で拡張されているのか、村一帯に突如男の声が…どこか冷酷さを感じるそんな声が響き渡った。
「何処だ!?」
「何処から…あそこだ!!」
撤退中の錬金戦団は声の主を探そうと周りを見回すと、戦団の研究者と思わしき人物が突如、村の中心に建てられた廃教会の塔を指差した。
するとそこには、ウラル山脈に降り積もる雪のような、真っ白なスーツとコート、帽子を被った、氷の様に冷たい目をした男が塔の上から見下ろす様に佇んでいた。
「武装錬金!!」
その姿を見た支部長はすぐさま、自分の武器であるトンファー型の武装錬金を展開した。
「何者だ貴様は!?見たところ人間の様だが、ホムクルスの信奉者か!?」
支部長のその問いにその男はニヤリと笑い
「あぁ失敬、挨拶が遅れまして」
そう言うとその男は丁寧にお辞儀をしながら、続いてこう言った。
「初めまして錬金戦団の皆様、私はロシア連邦政府連邦保安庁にて、あなた方錬金戦団の追跡と殲滅を担当させていただいている…錬金術師です」
「なっ!!」
ロシア政府が自分たちを殺しに来た事も驚きであったが、同時にその男が錬金術師と名乗った事に思わず、支部長は驚愕した
だがその一瞬の隙に、その男は右と左の手の平に刻まれていた、太陽と月を表す謎の入れ墨を重ね合わせた。
その瞬間、血の色の様に真っ赤な閃光が村全体に走り、そして次の瞬間。
「な、何だ…うぁあ!!!」
「きゃあ!!!」
「ぐぁあ!!!」
村全体が、爆風雨と共に文字通り吹き飛ばされ、男が立っていた教会の塔以外はすべて、この場にいた錬金戦団のメンバー達の断末魔と共に破壊された。
そしてその後に残ったのは瓦礫と、柄に潰され、あるいは爆発に巻き込まれ、文字通りバラバラなった死体が散乱し、血とコンクリートの匂いしかしない、文字通りの地獄であった。
普通の人間であれば、この光景を見た瞬間、吐き気を覚え、あの内容物を吐き出すだろう。
しかし、錬金術師を名乗る男は、まるでコンサート終わりのミュージシャンの様に、この状況に浸る様な様子で胸いっぱいに、コンクリートと血の匂いで肺を満たした。
「あぁ…素晴らしい…良い音だ…私の錬金術で生み出される破壊の音と、その破壊に巻き込まれる多くの人々の断末魔…まるでオーケストラのアンサンブルの様に、私の体と心に響く…脊髄は悲しく踊り…鼓膜は歓喜に震える…まさか死してなお、この様な喜びを味わえるとは…何と充実したセカンドライフか!!素晴らしい!!!やはり戦場こそ!!殺し殺されるこの殺戮の世界こそ!!私が求める世界だ!!!素晴らしい!!実に素晴らしい!!!フハハハハハハハハーーーーーッ!!!」
そして、死と破壊の光景を目の前に、そう歓喜の声を上げた。
その瞬間であった
「この狂人が!!!!」
突如その男の背後をとった、血まみれの錬金戦団の支部長がトンファーを振り下ろした。
「おおっと、生きておいででしたか」
しかしその男は、軽々とその攻撃を避け、感心した様子で支部長の姿を見た。
「しかし、その姿でいつまで待つやら…」
支部長は右手がすでに欠損し、顔も右側の顔の皮膚が無くなり、右脇腹から血を大量に出していると言う、最早助からない様な姿であった。
「長くなくて…ゲフッ、いいさ…お前を道連れに…出来るまで…体が…」
だが支部長は、仲間の仇、そしてこの男を生かしておけば、他の戦団メンバーの、後日の災いになる、ならば今ここで自分の命を犠牲にしても倒してやると言う、強い信念を持って、男に立ち向かって行った。
「なるほど…うん、素晴らしい…実に素晴らしいですよ、これ程までに血だらけになりながらも私を倒そうとするその覚悟…実に美しい…」
するとその男は、まるで獲物に狙いを定めた様な口調と目をしながらそう言った。
「はぁあああーーーー!!」
そして男がそう言うと同時に支部長は、残る全ての生命力を載せたような声を上げながら、男に飛びかかり、トンファーを振り下げた。
「ふん」
しかし戦闘慣れしているのか、その男はその攻撃を軽々と避けた。
しかし支部長は諦めず、ひたすら、ただひたすら男との距離を詰め、攻撃を繰り出した。
(奴の攻撃は、見たところ手合わせと同時に発動する爆破能力…ならば)
(近づけさせなければ相打ちへの活路もあると…そう思っているようですね)
「なに…」
なぜ読まれた…そう支部長が思ったその時、先ほどと同じ赤い閃光が走ったと同時に、突如地面が槍のように鋭い棘に変形し、支部長の体を貫いた。
「まぁしかし、こんな物ですね」
(な…こんな術…こいつは一体…こいつの錬金術は一体…何なんだ…)
色々と疑問に思うこと、謎に思う事、できる事なら問いただしたい事…様々な思考が支部長の頭を巡るが、最後に倒れた瞬間、支部長が捻り出した言葉はこれであった。
「一つ聞きたい…貴様…一体何もの…名は…何と…」
その問いを聞いた男は、ニヤリと不敵に笑うと名乗った。
「ゾフル・J・キンブリー…階級は大佐 、連邦保安庁…FSB対錬金術特務部隊アメストリスの指揮を担当しております…そして、かつて元の世界では、紅蓮の錬金術師と呼ばれた…こことは違う、別世界から来た、錬金術師ですよ…」
ゾルフ・J・キンブリー
階級:中佐→大佐
所属:アメストリス国軍→ロシア連邦保安庁
本作の主人公であり、かつて元の世界では、紅蓮の錬金術師として恐れられた、爆破能力を使う、サイコパスな国家錬金術師。
訳あって、元の世界からこの世界へと飛ばされ、今はロシア連邦政府お抱えの錬金術師として、FSB(ロシア連邦保安庁)に属する対錬金戦士、そして錬金術の軍事転用を目的とした特務部隊"アメストリス"の指揮官として、ロシア政府の命令の元、錬金戦団と戦ったり、そして世界各地のロシアが関わった紛争地を、自分の錬金術で吹き飛ばしたりなど、"仕事"に満ちた、セカンドライフを嬉々として送っている。
と言う事で、武装錬金inキンブリーの作品を作ってみました。
正直武装錬金とハガレン、どっちも錬金術が設定の根底にあるのに、恐ろしいほどにクロスオーバーの二次作品が全く見当たらないので、それならばと自分が書いてみました。
そして本作の主人公のキンブリーですが、正直錬金戦団として正義とホムンクルスを倒す為に戦っている姿が想像できず、かと言ってホムンクルスの信奉者として、パピヨンと一緒に戦う姿も想像出来なかったので、オリジナル設定として錬金術の力を軍事転用しようとする国家であるロシアに属する、特務部隊の指揮官と言う、第三勢力のリーダー的立ち位置で物語に関わってゆく予定です。