リオリールとトルテのアトリエ~三つ大島の錬金術士~ 作:ジャミゴンズ
結局、なにも決められなかった。
「……一人の方が好きだったのにな」
レッドマンの居城に居た頃は、そうだった。
ユウバナ村で過ごした時間は僅かな物だ。 一年も経っていないのに。
自分の使命。
もしリオリールに全てを話したら、理解してくれるだろうか。
それなら、トルテにとって一番簡単な解決法になる。
少しだけ自分勝手な妄想が頭の中に広がっていく。 あまりに都合の良すぎる未来が瞼の裏で繰り広げられて。
突如、パキっと室内に響いたラップ音に現実に引き戻される。
リオリールが理解してくれるなんて、馬鹿げた妄想だ。
同じ錬金術士だから分かる。
海水を吐き続ける錬金釜を見て、ショックを受けないハズが無い。
トルテも錬金術士だ。
おとーさんの世界征服の計画を知って居なければ、きっと同じ感情を抱いていた、と思う。
いつもなら寝ている時間になってもまるで寝付けず、トルテはベッドから抜け出して木の床をはだしで踏みしめた。
ギシリ、と小さな軋む音を響かせて。
ひとりきりで過ごす時間が増えたせいか、いつもなら快適さを覚える静かな空間も、余計な考えばかりが頭の中を通り過ぎては、消えていく。
何か、音が欲しい。
着替えると部屋を出て、トルテは真夜中のハチヤドへと歩き出した。
目的地もないし、行きたい場所があるわけでもない。
トルテにはそもそも具体な目標は無いのだ。
あるのは『成すべきことを成す』というもので、言いつけの成人の儀を成功させること。
リオリールやカスカルと別れても、その目標に向かうことは出来る。
カンカンと小気味よい金属音が響く『鉄工の宿・鳴弦』
常に賑やかな音楽が絶えない『祭り屋敷・響』
甘ったるい香りが漂う『眠り姫』
自然の音が反響する『太古の水滴響計』
ここ数日、トルテは毎日違う宿を渡り歩いていた場所を通り過ぎていく。
「そうだよね」
今更ながら、トルテはリオリールやカスカルが興味を持ちそうな場所を無意識に選んで巡っていた事に気付いた。
偶然を装って二人に会えるかもしれないと、心のどこかで期待していたのだ。
そんな都合の良い偶然は起こらず、結局一度も会うことはできなかったし、出会えたところで今朝のように困ってしまうだけに違いなかった。
「私……一人になりたくないんだ」
自分がどうしたいのか、どうすべきなのか。
ロジックで世界を整理しようとする彼女の思考が、最終的にはそこに行きつく。
誰もが寝静まるこの時間帯の通り道に、人は居なかった。
朝とはまるで違う、しん、とした街の空にコンコンと水滴を岩に当たって響く音だけがハチヤドを包んでいる。
自分だけの足音だけが、いやに耳の奥を刺激した。
ふっとトルテは顔を上げた。
二階の建物を繋ぐ橋。
中央のテラスはカンテラの光に照らされて、誰も居ないテーブルや席を静かに照らしている。
いつのまにか、ハチヤドでは毎朝あの場所に3人で集まることになっていた。
陽が登れば、どうなるんだろう。
リオリールと別れて、カスカルと旅を続けることになるのか。
別れる。
トルテの足がピタリと縫い止められた。
二階のテラスを見上げたまま、トルテは止まった。
巨大な源泉の温泉地から聞こえてくる、マグマの雫が岩を叩く自然の鼓の音が響く。
トルテはどのくらいぼうっと立っていたのか分からなかった。
考えは白く塗りつぶされたままで、思考をしていたのかも自覚できない。
そのまま、足先が展望台に向かった。
どこに行くつもりなの?
自問にすら答えられずに、トルテはハチヤドの街から姿を消した。
――・
ハチヤドから少し離れた『奏で海浜』の岩肌に背中を預け、トルテは一人、膝を抱えて座り込んでいた。
お尻に当たる岩の表面は冷えていたが、体温を奪われる感覚が現実を繋ぎとめているようで、そのまま受け入れている。
俯いた視線の先には、細かな白い砂と赤茶けた砂が層を成して堆積していた。
潮の匂いをたっぷり含んだ海風が吹き抜けるたび、さらさらと音を立ててトルテの指先の表面を撫でていく。
今頃、リオリールやカスカルは自分を探しているだろうか。
探していたとして、声を掛けられたら?
多分、トルテはまともに答えることができないだろう。
今までと同じく、どうしたの、大丈夫? と言われて、張り付いたような笑顔で大丈夫と答えるだけしか出来ないのだろう。
そんなことにきっと今の状況を打破するような変化はない。
けれど、心の隅っこでは、自分を探して声をかけてくれる誰かの存在を待っている自覚がある。
なんて矛盾に満ちた行動だ。
今、この場所に居る自分が、浅ましいとさえ思えた。
寄せては返す波の音をただ聞き続け、足元の砂の模様が変わるのを眺める。
時間だけが規則正しく過ぎていく中、トルテは動かなかった。
無為に時間を過ごして、事態が好転するなんて微塵も思わない。 ここで海を眺めて答えだって出ることはない。
ただ、逃げているだけ。
そんな自分が嫌なのに、何もする気力がわいてこない。
なんで、なんで、なんで。
トルテは無数に沸き上がる疑問に答えようとして、すぐに煮詰まってしまう。
やがて、岩肌を温め始めた陽ざしの熱に思考が溶け出し、抗いがたい微睡みがトルテの瞼をゆっくりと落としていった。
バサリ、と音が近くで鳴った。
遠く聞こえたその声は、薄っすらと開いた瞼と共に近くなっていく。
トルテはふっと目を覚ました。
「グアァ、グア」
野太い鳴き声と共に、生臭い獣の匂いが鼻を突く。
アードラーのドラが巨大な羽を広げ、仕留めたばかりの角ウサギの肉を鋭い嘴で引き裂いて喰らっていた。
狩りでもして帰って来たのか。
ぼんやりと食事を楽しむドラを眺めながら、トルテは思った。
ユウバナ村で引き取った時は、両手で抱えられるほどのヒナだったのに。
見事な赤い羽毛を朝日に照らされ、羽を広げる姿はとても大きい。
あまりドラはドラだから、と気にしていなかったが、どう見てもアードラーの中でも変異種だ。
少し見ない間にまた一回り大きくなっているように感じる。
「大きくなったね……どこまで大きくなるの?」
普段は人が多い街中には入ってこない様、トルテは言いつけていたから暫くの間見ることは無かった。
だが、トルテがこうして街の外へ出ていることに気づけば、どこからともなく飛んできて、そっと寄り添ってくれるのだ。
旅の最中でもそうだ。 三つ牛のクウの背中に乗っている時も、街道を歩いている時も、高い大空を飛翔しながら見守るようについてくる。
そして今も。
トルテが立ち上がって砂を払うと、ドラは食事を止め、グルグルと喉の奥で低い音を鳴らしながら近づいてきた。
大きな頭をトルテの肩口にすり寄せてくる。
ドラの頭を撫でようと手を伸ばし、首に触れると硬い感触。
「あ、ガラガラ……ちょっと苦しい? 緩めてあげるね」
ドラが激しい夜泣きの騒音を抑えるために作ってあげた音を打ち消す首輪『ドラのガラガラ』
リオリールと一緒に作った思い出がよみがえる。
当時の成長に合わせて調整した革紐が、今では成長した太い首に食い込むようにパツパツに張り詰めていた。
トルテは申し訳ない気持ちになった。
自分のことしか頭に回って無くて、ドラの事を忘れていたから。
カランとガラガラが揺れて、金具が緩む。
「どう?」
ドラは一鳴きすると、トルテの冷えた身体をそっと羽で包み込んだ。
――・
ゆらり、ゆらりと、群青の海面をいくつかの木樽が潮の流れに乗って漂っている。
高く昇った陽ざしを受け、波間に揺れる樽の縁では、海鳥が羽を休めて熱心に翼を啄んでいる光景が見られる。
三つ大島で毎年新年に行われる『潮の結び目』という行事がある。
内海の時計回りに巡る潮流を利用したものだ。
みつ島からふた島へ。
ふた島からひと島へと。
願いや不用品、豊富や新年への景気づけ。
思い思いに人々が来年に向けて気持ちを新たに向き合う為の、古くから続く習わしの一つである。
樽は海風と波の気まぐれに翻弄されながら、長い時間をかけてどこかに漂着していくのだ。 『ふた島』において、その漂着地点はある程度決まっており、この『奏で海浜』もその一つだった。
新年が明けてしばらくすると、ハチヤドから数人の大人たちが樽を回収しに海辺を歩くようになる。 大抵は、宝石貝を集める素潜り漁を営む屈強な男たちが中心になるのが恒例だ。
湿った砂を踏みしめる重たい足音が近づいてきた。
「お、おい。 ありゃ、アードラーかよ?」
「で、でけぇな。 こんな大型のアードラーは高壁山脈にも居ねぇぞ」
警戒の色を濃くした中年の男性と若い男性が、足を止めてドラを見上げていた。
無理もないだろう。
ドラの足元には血みどろになった角ウサギの残骸が転がっており、生臭い血の匂いが海風に混じって漂っていたのだから。
しかし、男たちは岩肌に寄りかかり、ドラの隣に座るトルテの存在に気づくと顔を見合わせた。 よく見れば、ドラの首元にはカラリと軽やかな音を立てる鈴が固定されている。
「もしかしてよ、あのお嬢ちゃんの飼ってるアードラーなんじゃないか」
「マジかよ、テイマーって奴か?」
「そら知らん。 まぁモンスターも動物だからな……懐くこともあるのかもな」
若干腰を引かせながらも、微動だにせずトルテとの時間を楽しんでいるドラを見て、彼らは恐る恐る声をかけてきた。
声を掛けられるとは思っていなかったトルテだが、少し間を置いて戸惑ったように頭を下げる。
「こんにちは……」
「休んでいる所すまないな。 にしても、驚いたよ。 こんな立派なアードラーを飼いならすなんて、普通じゃないぞ」
「間近で見ると、雄々しいけどカワイイな。鳥なのには変わらないんだなぁ、コイツも」
「……ドラは、良い子……です」
短く答えるトルテに、素潜りで鍛え抜かれた筋肉質の男たちがへへへ、と笑い、そうみたいだと人の良さそうな声を上げた。
「その木札、成人の儀の旅の途中か。うちのせがれも来年には旅に出るんだわ」
「俺もこんなの飼ってみようかな」
「馬鹿、こんなに成長するまでどれだけ大変だと思ってんだ。生命を預かるってことを侮っちゃいかん」
青年の甘い考えをピシャリと諫めた後、年配の男性はトルテに向き直った。
「こんなに立派で大人しいアードラーを育てるなんて、尊敬するよ。若いのに立派だな」
「ありがとう」
トルテは短く礼を言った。
ドラを褒められたことで、沈み込んでいた気持ちが少しだけ浮上する。
リオリールやカスカルが一緒にいればもっと愛想よく、上手に感謝の言葉を伝えられただろうけど……トルテには上手く表現が出来なかった。
その時になってようやく、トルテは彼らが太い縄で引いているソリのようなものに気がついた。 砂浜に深い轍を残すその上には、海水で濡れた何本もの大きな木樽が乗せられている事に。
「それは、漁に使う道具?」
「ん? ああ、あれは『潮の結び目』で流れ着いた樽だ」
「そういえば、君はみつ島から来たんだろ? 故郷の物があるかもしれないぞ」
促されて立ち上がり、樽へと近づきながら思い出す。
ユウバナ村でも行われる新年の伝統行事。
だが、彼女たちが成人の儀の旅に出発したのは12月だったため、村での儀式を体験することは叶わなかった。
小さな村から大きな街まで、一斉に内海に向かって樽を流す光景は、きっと特別になるものだ。 少しだけ惜しい感情を抱いていた。
「あ……ある、ユウバナ村の」
「お、良かったな!」
アムースコ村長がユウバナ村では3本の樽を流すと言っていた。
そのうちの一本が、波に揺られてこの奏で海浜に辿り着いたのだろう。
「ユウバナ村かぁ。 成人の儀の旅をしていた昔に一度、訪れたことがあるよ。 夕焼けが綺麗だったのを覚えているぞ」
年配の男性が潮風に目を細めて感慨深そうに語る横で、若い男がトルテに樽の中を見てみるか、と尋ねてきた。
「いいの?」
「ああ。どうせ漂着物は後で中身を検めるし、今開けたってかまわないからな」
そう言って、彼は器用に道具を使い、ギシギシと音を立てて樽の蓋をこじ開けた。
中からは長い航海を経た古い木の匂いと、微かに生活の匂いが混ざり合って漂ってきた。
大工が使い込んで傷だらけになった歪な木槌。
新年の抱負と共に、子供たちが元気いっぱいに描いたであろう落書きの紙。
新調したと言っていた、ロモイ婆さんの商店の少し草臥れたお品書き。
そして、トルテの視線がピタリと止まった。
記憶の片隅にある、見覚えのあるゼッテル用紙の束があった。
旅立ちの前、ヘーゲ兄さんに何か入れておけよ、と促されてリオリールと一緒に放り込んだ物だ。
「これ……」
トルテはそっと手を伸ばし、少し湿り気を帯びた用紙の束を手に取った。
指先でめくると、アトリエの中で良く見ることになった、リオリールの筆跡を残した文字が目に飛び込んでくる。
そこには、リオリールの錬金術士としての新年の抱負が綴られていた。
アカデミー入学を目指す事。
アトリエの借金がまだ60万コール以上ある事の泣き言。
成人の儀の旅への不安と期待。
アトリエテントの失敗による恐怖と新たな豊富。
早く大人になってユウバナ村を支えたいこと。
自分に錬金術の基礎を教えてくれたトルテへの感謝。
家族である両親や妹達への親愛。
そして、最後に思いついたかのような筆致で書きなぐられていたのは。
トルテちゃんが 『最高の錬金術士』になれるように、一緒に頑張る!
リオリールの文字を追っていたトルテの思考が、一瞬にして真っ白になった。
おとーさんのために、最高の錬金術士にならなければならないという使命。
いや、夢。
リオリールは何の疑いもなく、ただ純粋にトルテの夢を信じ、自分のことのように応援してくれている。
錬金術の悪用に対するリオリールの真っ直ぐな怒りと、この紙に込められた温かい想いが重なり合い、胸の奥が締め付けられた。
目尻から勝手にポロポロと涙がでる。
瞑った瞼の裏側で、一人の騎士の男が過った。
『自分の為にも、相手の為にも。 礼節と勇気を持つことが何よりも大事なんだ』
ドラの卵を拾った時に、贈られた言葉が響いてくる。
他の誰でもない。 君自身が幸福を。 それを掴む為……最高の錬金術士に成るための勇気。
怖いけれど。 どうなってしまうかは分からないけど。
『夢の為に歩くための 勇気を持とう、トルテ君』
トルテはぐうっと下唇を強く噛みしめ、ゼッテル用紙の束を両手で胸に抱き込んだ。
白い砂浜に、小さな染みが一つ落ちていく。
「ううぅぅ……」
「お、おい、泣いてるのかよ?」
若い男が慌てたように声をかけたが、年配の男がすぐにその腕を掴んだ。
「こら、放っておけ。野暮なことすんな……さて、俺たちはさっさと樽を運んじまおう」
「あ、ちょっと……良いのかな……なぁ、雲が速いぜ。 雨が降りそうだから……」
「おい、いいんだよ。 でもな、俺達のお節介も、たまには役に立つようだぜ?」
男たちは気を遣うように視線を外し、ソリの縄を引いて静かにその場を離れていった。
「うぅ……うわぁぁ……っ、うあぁぁん……」
ザザァ、という波の音に混じって、しゃくり上げる声が漏れる。
ユウバナ村から流れ着いた想いの前で、トルテは堪えきれずに袖口で強く目元を擦った。
何度も、何度も。
眼の端が赤くなるくらい、強く。
そんな彼女の小さな背中を守るように。
ドラがそっと身を寄せ、温かく柔らかな大きな顔を、トルテの背中にぎゅっと押し付けて……
奏で海浜からハチヤドの中心部へと戻ってきたトルテは、泣き腫らした赤い目元を隠そうともせずに階段を登る。
頬にはまだ涙の乾いた跡が突っ張るような感触を残しているが、その足取りは一変していた。
二階の中央テラスを通り抜けようとした時、ふいにエプロン姿のテラスを運営している主人がちょっといいかな、と声を掛けてきた。
「君、トルテさんかい? 薄い桃色の髪に、目元のほくろ。 聞いていた特徴と一致しているが」
「はい、トルテですけど……何か?」
立ち止まったトルテに、主人は一枚のメモ書きを取り出しながら口を開く。
「カスカル君という人から、言伝を預かっていてね」
ほら、と一枚のメモ書きを取り出して渡してくれた。
トルテはありがとう、と礼を言ってメモに視線を落とす。
とりあえずカスカルは、認定証のことだけでもめどを立てたい。
一足先にハチヤドを発つということと……トルテが迷っているならハチヤドに居たままでもいい。 だから、妹を頼む。 と。
トルテは小さく息を吸い込んだ。
カスカルの優しさが詰まったメモだった。
リオリールとトルテをハチヤドに残し、二人に考える時間と向き合う場所を与えてくれたのかもしれない。
格好いいな、とトルテは初めてカスカルにそんな感情を抱いた。
テラスの主人に頭を下げて別れを告げると、右手に持った『とつげきうお』の柄を、ぎゅっと強く握りしめる。
顔を上げて歩く、トルテの表情に迷いはなかった。
いつもの私だ。
いや、それよりもちょっと、勇気を持ってる。
そのまま足早に向かったのは、海側に面した宿『潮騒亭』
入口の暖簾をあげて中に入れば、恰幅の良い店主を見つけて声をかける。
「リオちゃんかい? 出かけたまま、まだ戻ってきていないんだよ」
「そうですか」
「最近ちょっと元気がなさそうだから、心配してるんだよね。 あんた、お友達だろ? うんと励ましてあげてくれよ」
その言葉に、トルテは珍しく薄く笑みをこぼした。
「はい。 ありがとうございます」
店主に一礼すると、トルテは宿の前にある木製のベンチに腰を下ろし、リオリールの帰りを待つことにした。
空を見上げれば少しずつ陽が海の向こうに消えていく。
茜色が夜闇を告げる藍色の空に代わっていき、ハチヤドの建物の影が長くなっていった。
トルテはじっと待ち続けた。
日暮れの空気がハチヤドを包み込んで1時間くらいだろうか。
少しだけ雨が降ったけど、通り雨のようで20分もすればすぐに上がって。
トルテの視界に、泥だらけになった見慣れた姿が遠くから近づいてくる。
歩くたびに、頭につけたブリ人形のヘアバンドが揺れていて。
はぁ~、と疲労を滲ませる声を出しながら歩いてきたリオリールに、トルテは立ち上がった。
「……と、トルテちゃん? え、ど、どうして此処にいるの……?」
「リオ」
名前を呼ばれ、トルテは真っ直ぐにリオリールと向き合ったのだった。