いろんなおはなし   作:衝動書きする人

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ミホノブルボン

 

 暇だ。ぼんやりと早朝に目が覚め、朝食に食パンをもそもそと食べてテレビを見ていたが、朝早くにやっている番組と言えば子供向けのアニメとニュースのみ。ニュースも代り映えなく、アニメも興味がない物しか放送していない。このままぼんやりテレビを見ていてもいいことはないな、と思い暇つぶしにどこかに出かけようかと準備をする。服を着替え、財布を持ち、買ってもらったばかりの携帯を手に起きてきた母親に一言かけてから外に出る。

 チチチ、と小鳥の鳴く声が聞こえる。日曜日の早朝ということで人通りもあまりなく、いるのはランニングをしているウマ娘やヒト、ペットの散歩をしているヒトたちぐらいで車通りもあまりない。まぁ、田舎だからということもあるだろうけど、早朝の空気というのは澄んでてとても気持ちがいい。今日はどこに行こうかと思いながら適当に歩く。

 

 町中にまで来ると早朝とはいえ人通りも多くなってきている。その中を空中に電波の道が至る所に走っており、その上を電波でできた人形らしき存在がせわしなく移動している。電波が形となって行動している、なんて誰も信じそうにないことに最初は面白くて観察をしていたが、今ではもう見慣れた景色だ。家の中はもちろん、外では空が見えないほど複雑に絡み合っている道だが見ようと思わなければ見えないその道に、便利な目だなぁと思うだけで特に何かを思うわけでもない。

 この能力、最初はなんかよくわからんものが見えてると言うことで怖くも感じていたのだが、冷静になってからよく思い返してみるとゲームで覚えのある光景だと言うのを思い出した。それも自分がよく遊んでいたゲームだったこともあってもしかしてあの世界に来たのか、と思ってワクワクしていたのだが住んでる街も年代的にもどうもそうじゃないようでガッカリもしたが、まぁ今では楽しく過ごしている。

 

 1時間ほどブラブラと散策している中、のどの渇きを覚えてジュースかなんか買おうかな、と財布の中にいくら入っていたかを思い出しながら田舎にしては立派なレーンもある公園に入っていく。公園には老若男女ヒトウマ娘問わず賑わっており、少し見渡していると目的の自販機を見つけた。小さい子もよく利用しているからか背が低くても最上段のジュースも買える仕様になっていたので難なく目的のジュースを買って近くのベンチに座ってジュースを飲む。

 

「ん?」

 

 ベンチに座ってチビチビとジュースを飲んでいると、肌に電気が走ったかのようにビリビリとした感覚が走る。久しく感じていなかった感覚に懐かしさと驚きを覚えながらその発生源を探すように辺りを見回しながら歩いていると、その原因らしき存在は案外近くにいた。

 

「……うわぁ。すごいノイズ」

 

「?」

 

 思わず呟いてしまうほどに、そのウマ娘にはノイズが走っていた。ノイズとはよくテレビやラジオ、携帯が映らないときによく使われるものだが、俺はそのノイズを目で見ることもできる。まぁ、見ててあまり気分のいいものではないのだが。

 そのウマ娘の周辺の電波は歪にゆがみ、電波を見る目で見ると全身が靄のようなもので覆われているかのように見えるほどだ。ノイズ現象はあまり見ていないとはいえ、顔すら見えないほど濃いノイズ現象を見たのは初めてだった。

 

「それ、私のことを言ってるのでしょうか?」

 

「あ~、聞こえてたか。すまん。つい漏れちまった」

 

 俺の漏れたつぶやきが聞こえたのかウマ娘がこちら近づいてきた。声からして若干不愉快そうだ。まぁ確かにいきなりノイズとか言われながら見られるのはあまり気分はよくないだろう。

 

「しっかし、本当にすごいノイズだな。電化製品なんか正常に動かないだろそれ」

 

「……わかるんですか?」

 

 俺の言葉にウマ娘は若干驚きの声を上げる。その言葉から察するに機械関係で困っているのは間違いないだろう。実際ここまでひどいノイズ現象だと正常に機械が動くとは思えない。

 

「私が触ると機械が壊れるんです。だからお父さんとお母さんには迷惑をかけて……」

 

 ウマ娘は顔を下に下げ、申し訳なさそうな声を出す。そこからポツポツと話を聞いていると、やはり機械全般を触ってしまうと原因不明の故障を起こしてしまうらしい。家電製品が悪いのか、と思って何度も修理や保証による交換をしても同じように壊れてしまっている。両親もこれではまずいと言うことで家電を最低限にして生活するようになっていった、とのことだった。

 まぁ、そうなってしまうだろうな。と思えるほどに体にまとわりついているノイズがひどいのだ。

 

「ん~。ちょっと待ってな」

 

 ここまでひどいノイズ現象は初めてだが、まぁ大丈夫だろう。俺は全部は無理かもしれないが多少なりともノイズを除去できる不思議体質持ちなのだから。

 

「……?なにを?」

 

「はいちょっと触るからな~」

 

 バチバチバチ、と電気が走ったかのような音が手から鳴った。雷ほど、とは言わないが周辺にいた人たちが何の音だと驚きながらこっちを見るほどに大きな音が鳴ったのは、俺も初めての経験だった。

 

「っ!?」

 

 その音に驚いたのかウマ娘は驚いた声を上げて俺から離れる。さすがウマ娘だと思える瞬発力で離れていき、自分の尻尾を守るかのように掴んでいる。

 

「うわお。すっげぇノイズ率。少なくとも30%は超えてるんじゃねぇのこれ?」

 

 しかし、そんなウマ娘の様子を横目に吸収したノイズに驚愕を覚えていた。今までもノイズを吸収して機械を直してきたこともあったが、その時でもせいぜいが数%程度だった。どんなにひどくても10%もいったことなかったし、吸収してもすぐになくなっていくのだが、今回吸収したノイズは今までで感じたことのないほどだった。

 

「……何をしたんですか?」

 

 俺が何かをした、というのはわかっても何をしたのかまではわからないからか無表情ながら、やっと顔が見えるようになったがウマ娘ってやっぱかわいいな、怪訝そうにこちらに目を遣っていた。

 

「ん?ん~。説明してもわからないと思うから、内緒ってことで」

 

 ポケットから携帯を取り出していじりながらそう答えると、ウマ娘は不満そうに声を漏らす。まぁ、あんな音を出しておいて内緒、なんて言われても文句を言いたくなるのはそうだろう。急に触ってきて電気の発したような音が鳴ったかと思ったらそのカラクリは秘密、なんて言われたら俺だって文句を言いたくなる。

 

「ほい。触ってみ」

 

 まぁ、その結果どうなったのかがわかるのは俺だけなのだから仕方ない。と心の中で言い訳をして音楽が鳴っている携帯をウマ娘に差し出す。突然のことにさっきまでの怪訝そうな表情とは一転して俺の携帯を見て、そして俺の目を見る。

 

「え?でも、壊れてしまうのでは……」

 

「いいからいいから」

 

 今までのことを思い出しているのか携帯から離れるように後ずさりをするウマ娘。逃がさないようにウマ娘の手をつかみ、その手に携帯を掴ませて手を放す。手に持った携帯を放そうとして、けど俺の携帯であることを思い出して慌てて掴みなおし、俺に渡そうと携帯を持った手を差し出す。けどそれを俺は受け取ろうとはせずしばらくその状態のままにで待った。ウマ娘は何をしている、と言わんばかりの視線を向け、口を開こうとしてふと手にしている携帯の音楽がまだ流れていることに気が付いた。

 

「っ!こわれ、てない……!」

 

 初めて携帯を触った子供のように、いや俺もこの子も子供なんだけど、目を輝かせて携帯を触るウマ娘。恐る恐ると携帯にもう片方の手を遣り、触れる。音は消えない。画面も消えない。その事実にウマ娘は無表情な顔が驚きの色に変わっているのがわかる。

 

「うまくいったか」

 

 正直、ノイズを取ることはできるが全部を取ることができるかは不安だった。見た感じは取り除けたと思っていたが、自分が受け取れる上限がわかっていなかったからもしかしたら、と思っていたけどこの様子だと大丈夫そうだな。

 

「あの、その、ありがとうございます」

 

「あぁ、いいよいいよ。ノイズもらっただけだし」

 

 もらった、というと語弊があるが取り除いたというと嫌なニュアンスにとらえられてもおかしくはないからもらったと言うことにしておこう。体内でうごめいているのがわかるほどに濃度の高いノイズを受け取って問題ないのか、と自分でも思うのだがやったことなかったから実験的な意味合いもあるしな。

 

「ただ、異常なノイズ率がちょっと気になるなぁ。体質か?」

 

 さっきまで顔すら見えなかったほどのノイズを思い出して首をひねる。ウマ娘といえどもここまでひどいノイズを持ってて今まで大丈夫だった事実が気になる。もしかして俺と同じノイズをためやすい体質で、俺と違って放出できない体質なのかもしれない。

 

「よし。1週間後ここに来てもらっていいか?」

 

「?なんでですか?」

 

「今ノイズを除去したけど、また発生してもおかしくないからな。1週間でどれぐらいノイズが戻ってるのか確認したいんだよ」

 

 もし俺の仮説が正しいなら、これからもノイズを除去していく必要がある。見た目俺と同じぐらいの年だから5年で30%前後と考えたら1週間でもそこまで溜まることはないだろうけど、でも今までも機会を壊し続けていたという言葉から上限が30%ぐらいでずっと溜まり続けていたのかもしれない。それを確認するためにまた1週間後に来てほしいのだが、果たしてどうなのだろうか。

 

「……わかりました。また来週ここで」

 

「おう。またな」

 

 ペコリと頭を下げるウマ娘に手をヒラヒラと振って別れる。これでノイズがあまり増えていなかったらたまに会った時に取り除けばいいか、と思っていたのだが、まさか次週会った時に見えるぐらいにノイズをため込んでいるとは思ってもいなかったのだった。

 

 これが俺とミホノブルボンの初邂逅であり、今後長い時間一緒にいることになるとはこの時まったく思ってもいなかったのだった。

 

 

 

 

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