日本魔法史序説   作:沖田十三郎

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はじめに

 魔法世界(ウィザーディング・ワールド)における日本は、あまり多くが知られていないという現状がある。

 それは極東という地理的な理由によるところも大きいが、それよりも文化的な隔たりという要素が大きく影響しているものと思われる。

 現状として現状欧州に流布されている日本魔法界の情報を書き出してみよう。

・十一ある偉大な魔法学校の一つ、魔法所魔法学校がある。

・魔法所は七歳で入学でき、学校寮に入寮できるのは十一歳からであり、

 十一歳までは大海燕(おおうみつばめ)の背に乗って通学しなければならない。

・入学時に配られるローブは学習段階によって色が変わる。

 色の変化の概要

  入学当初配布された時点では白桃色(ピンク)である。

  その後、学業において優秀な成績を収めればその色は黄金色(ゴールド)へ変わる。

・日本の魔術師の規範を裏切って違法な慣行を採用した場合、ローブは白色となる。

・白いローブは恥辱である。

・非常識な訓練が行われるため、クィディッチが強い。

・一六九二年に施行された国際魔法使い機密条約に締結している。

・一四六八年に行われた魔法大会に参加している。

 以上のたった八点である。この八点だけが欧州における日本魔法界のイメージという時点で断片的な情報しか流布していないという状況はお分かりいただけるものと思う。

 斯様(かよう)なる状況であるため、日本における魔法史について概論、ないし序説として本書を上梓するものである。

 

 さて、本書においては日本魔法界について概説していくわけだが、しかしそれ以前の前提として幾つかのことを読者諸兄には伝えておかなければならない。

 それは、日本における魔法族と非魔法族の歴史は現在の日本史と呼ばれる歴史考察と大まかな流れとしては大きな乖離点を見出すことができないという事である。

 端的に言えば、魔法族側、非魔法族側双方の記録に残っていないのである。

それは書き残す術というものがなかった時代が相当程度に渡って存在したことが要因であり、そもそも生きるという事以外にリソースを振り分ける事が出来ない、資源と呼べるものが少ない土地柄であったことも一つの要因と考えられる。

 このため、非魔法族による古事記や日本書紀、ないし中国に残る魏志倭人伝の記述と魔法族に伝わるそれに大した違いがないというのが実情となる。遡れる限界というものは存外に近く、分かる範囲から記述していくこととなることをお許し願いたい。

 詳細は本文に譲るが、ひとまずは前提として述べておかなければならないことは以上となる。

 

 最後に、欧州諸国――ひいては大陸における魔法族と非魔法族の関係や文化・共生の歴史と日本におけるそれには著しい差異というものが存在する。

 これが閉ざされた島国であったが故の特色なのか、それとも別の要因によるものなのかについては歴史という名の浪漫――遥かなるページの向こう側となる。

 しかし、本書で示すいくつかの状況に対し、幾許かの興味を持たれたのであれば是非とも現地に赴き、研究をしてほしい。

 一人の歴史探求家として、読者諸兄の興味の針を少しでも震わせる事が出来るよう、骨を砕いたつもりである。楽しんでもらえれば幸いである。





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