日本魔法史序説   作:沖田十三郎

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本項においては基本的な魔法族の歴史と欧州における魔法族について概説する。
以下は第一章にて取り扱う項目である。
第一節 ヒトという種として
第二節 魔法族と非魔法族の関係
第三節 欧州に行ける魔法族と非魔法族の呼称


第一章 魔法族と非魔法族の関係性

ヒトという種として

 非魔法族が定義する処による『人間(ホモ・サピエンス)』という区分において、基本的に魔法族と非魔法族とを分ける要素というものは魔法を扱える才を除けば存在しない。そもそも、外見的な部分だけで言えばよほど特殊な例を除けば目に見える部分での差異がない事は純血主義を標榜する魔法族であっても否定することは難しいだろう。

 

 また、魔法族の寿命は非魔法族と比べ二倍から三倍あるいはそれ以上であり、肉体の頑強さにおいても比較にならない強度を持っている。単純な身体的差異がほとんど存在しない両族において、何故これほど明確な生命体としての強度差が生じるのかについては今のところ判然としていない。だが、これほどまでに容姿が酷似している以上、近縁種であることはまず間違いがないと言っていいだろう。

 

 近年の非魔法族の遺伝子研究で判明したところによれば、人とゴリラの遺伝子上の違いは僅か 1.2%程度だという。では、我々魔法族と非魔法族の間ではいかほどの違いがあるのか。恐らくはそう開いたものではないだろうことが予想される。(この点について、日本における健康診断および医療の歴史上魔法族と非魔法族の人間としての遺伝情報上の違いは皆無という結果も出ているが、日本という島国の特性が絡むためこれについての詳述は次章以降に記す。)

 

 現生人類の遺伝情報にはネアンデルタール人、メラネシア人、デニソワ人という旧人類のそれを受け継いでいるという。また、近年の研究では前述した三種の人類に加え、未知の旧人類の遺伝子情報の存在の可能性が示唆されている。我々魔法族の祖は、この未知の旧人類であったのではないかとも考えられる。

 斯様(かよう)にして魔法族と非魔法族の生物としての起源の差については判然としないものの、些細な差を主観に基づいて大きな差と捉え、数えきれないほどの戦火という名の災禍の歴史を刻み続ける 両種族は鏡面正対称の存在と言って差し障りないだろう。

 

魔法族と非魔法族の関係

 さて、地球という名のこの星に生まれた人型知的生命体である我々魔法族と非魔法族は、いわば双子の兄弟のようなものだという事が出来る。兄弟ならば互いに得意な分野が異なる事もまた当然のことである。

 ――そして、近しいが故に険悪な仲に陥る事もまた、当然と言えば当然のことであろう。

 

 現在魔法族全体に施行されている国際魔法使い機密保持法は、もはや修復不能であろう両者の関係を、せめて断絶させることで両者間における争いを回避しようという賢明な法律であろうと思う。

 何故ならば、我らの関係は共生と融和、そして迫害と弾圧の歴史だったからだ。

 もしかすれば、かつての如き融和の時代がまた訪れる事があるのかもしれないが、少なくともそれは今現代の事ではあり得ない。

 かつて、かの高名なホグワーツ魔法魔術学校を創設した四人の偉大な魔法使い、ゴドリック・グルフィンドール、サラザール・スリザリン、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクローが現役だった頃――すなわち、およそ九世紀頃は魔法族が非魔法族の戦争に加担することもあったほどその距離は近く、特にグリム童話など収録された口伝や民謡にはその距離感が色濃く残されていると言って良い。敢えて好意的に考えるのであれば、その頃はまだバランスが取れていたと言う事が出来るかもしれないが、良くも悪くも欧州のそれは血の歴史だったと言えるだろう。

 そして、そのバランスが大きく失われ決定的な亀裂としたのが一五~一七世紀にかけて欧州及びアメリカにおいて跋扈した魔女狩りであろうことは歴史的な事実と言えるだろう。断定するものではないが、キリスト教が席巻した地域においては恐怖と焦燥に駆られ視野狭窄と疑心暗鬼に陥った非魔法族がこともあろうに同族とそして力のない魔法族を火にくべ、拷問にかけた。

 

 今現在、世界中の魔法族に施行されている国際魔法使い機密保持法はこの時の教訓を元に制定されている。当初においては凶暴な非魔法族から我らが身を護るために、今時分とあっては魔法族の脅威から非魔法族を遠ざけるために、という意味を込めて。

 一九八〇年代において、グリンデルバルド氏がこの法律が守るのは我ら魔法族ではなく非魔法族であるとして異議が唱え、反攻に及んだが、それは決して誤りという事は出来ないものだった。

 だが、圧倒的なまでの絶対的な人数差というものを考慮すれば、グリンデルバルド氏の主張が些か的を外したものであることは否定できないものであろう。たしかに、魔法族が総力を結集すれば当時は非魔法族を圧倒せしめたかもしれない。しかし、核爆弾というプロテゴ・マキシマですら防ぎようがない熱線と爆風、加えて強毒性の放射線を撒き散らす悪夢の技術を手中に収めた非魔法族を、果たして魔法族が総力を結集してどうにかできる物であろうか。

 ――もっとも、ヴォルデモート卿の如き才人が、せめて彼一人ではなく三ダース分もいればグリンデルバルド氏の主張もあながち世迷い事とは言い切れない部分もあるかもしれない。だが、それは全て仮定の話に過ぎないのである。

 

欧州における魔法族と非魔法族の呼称

 魔法族と非魔法族を分ける呼称は各国により多少の差異はあるものの、欧州では主に以下のような呼称が一般的である。(なお、本稿をまとめるに際して『マグル生まれ』の事を非純血という項目で挙げているが、一般的にこの様な呼称は用いられない。対称性を重視して非純血という項目を挙げたが、古い文献に数件見られる程度である)

・魔法族

  純血  非魔法族の血が混じらない純粋な魔法族を指す

  半純血 家系図の中に一人以上非魔法族の血が混じる魔法族を指す

  非純血 非魔法族の家系から突然変異で生まれた魔法族を指す

      非純血のことをマグル生まれや、蔑称として穢れた血と呼ぶこともある

  スクイブ 魔法族に生まれたが魔法を使う事が出来な者を指す

・非魔法族

  マグル  家系図の中に魔法族がいない、魔法を使えない者を指す

 

 さて、概要と書くにも抜けの多い雑感程度であるが一般的な魔法族に関係する状況のまとめは以上とする。

 次章より本題である日本における魔法の展開と現代の状況について述べることとする。

 

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