カミキヒカル「……あれ?価値ある命って散らすより育てて独占した方が良いのでは?」   作:湯タンポ

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なんか色々あった結果こうなりました。


マタニティブルーな一番星

 

 

 

 

「ヒカル君、この子達の名前…決めてくれた?」

 

 

『名前……ですか』

 

 

 

あれから20週程が過ぎ、私のお腹は大分大きくなっていた。

 

 

そう……検査の結果、このお腹には正真正銘、私とヒカル君の愛の結晶が宿っている。それも男の子と女の子の双子だ。

 

 

そして、現在地は宮崎県の人里離れた総合病院なんだけど、そろそろ出産予定日が近いから、ヒカル君と電話でこの子達の名前を考えてるところ。

 

 

 

『……すみません、僕にはあまりいい名前が思い付かなくて……やはり"母親"であるアイさん自身に決めて頂ければ……と。』

 

 

「うーん……でも、私も1人じゃ決められないよ…」

 

 

『……では、花や宝石から名前を取るのはどうでしょう。花言葉や石言葉、宝石言葉なんてものがあるので、その意味を考えて付けるのが良いのでは?』

 

 

「花や石から名前を取る……か。うん、それ良いかも!ヒカル君って頭良いね!」

 

 

『これでも大学進学を考えている身なので』

 

 

「ヒカル君なら絶対行けるよ!

 

……でも、花や宝石か〜。」

 

 

『何か良い候補が見つかりましたか?』

 

 

「そうだね〜……うん、男の子は"アクアマリン"で、女の子は"ルビー"が良いかな……って思ったんだけど…ヒカル君はどう思う…?」

 

 

結局ヒカル君に聞いてしまった。

 

 

でも、正直ヒカル君が良いと思う名前なら何でも良いかな……なんて思ったり。

 

 

『……ええ、どちらもいい名前だと思いますよ。アイさんの子供らしい名前です。』

 

 

「えへへ、そうかな?ありがと♡」

 

 

ヒカル君が良いって言ってくれたなら、男の子はアクアマリンで女の子はルビーにしよう。

 

 

……でも、やっぱりヒカル君にも考えて欲しいな〜……なんて思ってしまうのは、贅沢なのだろうか。

 

 

『……それよりアイさん、そろそろ退院だと思いますが、病院での生活はどうでした?何か困った事とかはありませんでしたか?』

 

 

「うーん……特になかったかな。ご飯は美味しいし、景色は綺麗だし、面白い事(担当の先生が私のファンだったり)もあって退屈しなかったから」

 

 

『そうですか。それは良かったです』

 

 

ヒカル君と一緒に居られないのは少し寂しいけど、この子達が産まれればまた一緒に過ごせる時間が増えるはずだから、それまでの我慢だ。

 

 

それに――

 

 

「……急にどうしたの?ヒカル君がそんなこと聞くなんて珍しいね。」

 

 

『これでも僕は、アイさんの事が心配なんですよ…』

 

 

「―――♡♡♡」

 

 

 

―――ヒカル君が私の事をこんなに気にかけてくれてるんだから。

 

 

それだけで私の不安は全部消し飛んでしまう。

 

 

「えへへ……ヒカル君ありがと♡私もヒカル君の事大好きだよ♡」

 

 

『……はい、僕も愛してます……そろそろ次の仕事なので失礼しますね。』

 

 

「……うん、電話してくれてありがと!私もヒカル君の事―――愛してるよ♡」

 

 

やっぱり私は幸せ者だ。

 

 

こんなに素敵な人に愛されて、子供も授かって、もう何も思い残す事は無いかな〜なんて、縁起でもない事を思ってしまう。

 

 

"今"が人生の絶頂期なんじゃないかとさえ思う程に幸せな日々を送れている。

 

 

 

でも――

 

 

 

そんな幸せの絶頂がずっと続く程、この世界は甘くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……もしかしてこれっ、て、ヒカル、君?そ、そんな訳……でも、私が見間違えるわけが……」

 

 

次の日、私は暇な時間を潰す為にSNSを開いて、ヒカル君や私に関するエゴサをしていたら、ある投稿が目に付いた。

 

『今日はとある俳優さんとお食事に行きました♡優しくて気配り上手な方で、とっても素敵な時間を過ごせました♡顔出しはNGとの事なので隠していますが、とってもイケメンです♡』

 

 

「な……なにこれ……」

 

 

その投稿に添えられた写真には、ヒカル君であろう人物と知らない女性が一緒に写っていた。

 

2人で高級レストランに入って行く瞬間を撮ったであろうそれは、どう見ても"デート"にしか見えないものだった。

 

投稿の通り肩から上は写っておらず、顔を確認することは出来ない。

 

……だけど私には分かる。これはヒカル君だって事が。

 

"確信"を持って言える、これはヒカル君。

 

…でも、"確証"は無い。

 

しかし、確証が無いからと言ってヒカル君に直接聞く訳にもいかないし……

 

「こ、これは……うん、そ、そう、"人違い"だよ、ヒカル君に似てる人かも!ほ、ほら!ヒカル君ってイケメンだから、こういう事もよくあるよね!」

 

……なんて言い訳をしてみるが―…『ヒカル君に似てる人』だなんて、我ながら苦しい言い訳だ。

 

「うぅ……どっ、どうしよう……」

 

私は途方に暮れていた。

 

この写真に写っているのはヒカル君で間違いない。だけど、もしこれが本当にデートだったとして、私にそれを咎める権利があるのだろうか……?

 

そもそも私達の関係はいわゆる"内縁"に近いから、ヒカル君が他の女の人と付き合っていても法律的にはなんの問題も無いし、むしろ私がヒカル君を束縛する権利なんて無い。

 

……でも、頭で分かってても心が納得しないのが人間っていうもの。

 

「…そ、それに、これをわざわざ言ったりしたら……めんどくさい女だって、私は捨てられちゃう…かも……そ、んなのいやだ……」

 

マタニティブルーになっていたのもあるのだろう。

 

私は、ヒカル君から見捨てられるんじゃないかという不安がどんどんと膨れ上がっていった。

 

そして、その不安はやがて"恐怖"へと変わり、私の身体を支配する。

 

「やだっ……いやだっ……!ヒカル君に捨てられたら私……生きていけないよ……!」

 

私はベッドの上で蹲り、涙を零しながら震えていた。

 

「やだ…やだぁ……嫌だよぉ……捨てないで、私を捨てないで…ヒカル君…わた、わたしを愛してよ……」

 

"ヒカル君に捨てられたくない"……それだけの思いで頭がいっぱいになり、私の思考はどんどんと悪い方向へと向かっていく。

 

「私に価値が無いから…?顔くらいしか取り柄が無いような女だから捨てられるのかなぁ…?」

 

ヒカル君に捨てられるくらいなら……いっその事、ヒカル君との子供なんて産まない方がいいんじゃないか? そんな考えさえ浮かんでくる。

 

「あ、はは……ヒカル君に捨てられたら、私なんて生きてる意味も価値もない(・・・・・・・・・・・・)のに…」

 

 

そうだ、ヒカル君に捨てられたら私は死ぬしか無い。

 

それなら……

 

 

 

 

「…それならいっそ……この子達と一緒に―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなに泣いてどうしたんですか、アイさん。そんな捨てられそうな子犬みたいな顔をして。」

 

 

 

 

 

 

 

―――え…?」

 

突然聞こえた声に驚き、顔を上げるとそこには――

 

 

 

「ひ…かる、くん…」

 

 

 

 

「はい、僕ですよ……アイさんは今日も可愛いですね」

 

 

 

 

 

 

 

―――今一番会いたくない(会いたい)人が居た。

 

 

 








なお、病院に来る前のカミキ君「金だけが取り柄の女と会って軍資金を稼いでました。最近身長がかなり伸びてきました。」

マタニティブルーなアイさん「捨てないで捨てないで捨てないで―――私を愛して…」


今回のお話の要約

アイ「ヒカル君に捨てられるくらいならいっそ――」

カミキ「こんにちは」(ぽぽぽぽーん)

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