もっともな戦隊はごもっともな変態!? 作:阿弥陀乃トンマージ
8
「ベストセイバーズが……」
「まさか負けるなんて……」
学院内を歩く美蘭の耳に話し声が聞こえてくる。
「最上って言うけどさ、案外大したこと無かったんじゃねえの?」
「それな、これまでの相手が弱かったからバレなかったんだろう?」
「はっはっは!」
(先の敗北以来、ベストセイバーズの評判が徐々に下がってきている……歓迎すべき事態なのかもしれないけれど……)
美蘭が顎に手を添える。
(まさか五人揃って生徒会に顔を出さなくなるとは……それはそれで困りものね……)
美蘭が顎をさする。
(首領があの連中までも呼び寄せるとは……確かに連中ならば、大概の相手には勝てるでしょうね。だけど……ただでさえ優秀な連中に『ベストセイバーズ打倒』というこの上ない手柄を挙げられてもらってはマズいわね、組織内でのわたしの立場というものが大きく揺らいでしまう……こうなったら……)
美蘭が俯いていた顔を上げて呟く。
「ベストセイバーズを再起させる……!」
生徒会室に着いた美蘭は自分の席に座り、考える。
(再起させるとは言ってもどうするか……そうだ! これだわ!)
美蘭がバッと立ち上がり、スマホを操作する。
「……何の用かな、亜久野さん?」
空き教室に愛一郎が入ってくる。
「……生徒会の広報活動にご協力をお願いしたくて……」
「広報活動?」
愛一郎が首を傾げる。
「ええ、ユーブロード配信を本格的に始めようかと……」
「へえ……」
「つきましては……」
「ま、まさか……」
「そのまさかよ。桃新愛一郎さん、貴方にチャンネル出演を依頼します」
「い、いや、顔出しは無理だって!」
愛一郎はブンブンと顔と両手を左右に振る。
「……なにも素顔でとは言っていないわ」
「え?」
再度首を傾げる愛一郎に対して美蘭はニヤリと笑う。
「見た? 生徒会のユーブロードチャンネル?」
「見た見た!」
「あんなカワイイ子がいたなんてね~」
「メイクの仕方とか参考になるわよね」
「ファッションも真似したくなっちゃったわ」
「紹介していたお店行ってみない?」
「行こ行こ!」
「……想定以上の反響ね……」
キャッキャッと騒ぐ女子生徒たちを横目にしながら、美蘭が空き教室に入る。
「亜久野さん!」
そこには女装した愛一郎がいた。
「今日もまた一段と素敵よ。愛一郎くん、いいえ、アイちゃん……」
美蘭が優しく微笑みかける。
「ま、まさか、女装してユーブロードに出ろだなんて……」
「折角の美貌なのだから、披露しないともったいないというものよ」
「……」
「ご感想は?」
「……とっても……」
「とっても?」
「……満足しているよ! 今まで満たされていなかった承認欲求が一気に満たされたんだ! こんなに嬉しいことはない!」
愛一郎は両手を大きく広げる。
「それはなにより……」
美蘭があらためて微笑む。
「で、でも……アイがボクだってバレないかな?」
「コメント欄などに『あの子は誰?』というベタベタな問い合わせは相次いでいるけど……」
「や、やっぱり!」
愛一郎が不安気な顔になる。
「ご心配なく、情報コントロールは上手くいっているわ。誰も愛一郎くん=アイちゃんだとは思わないでしょうね」
「け、結構結びつけやすいと思うけれど……」
「堂々と構えていれば分からないものよ」
「そ、そういうものかな?」
「そういうものよ」
「な、なんか、妙に説得力があるね……!」
ブザーが鳴り響く。
「第二駐車場に悪の組織が侵入⁉」
「行ってくるよ!」
愛一郎が空き教室を飛び出す。
「……三度目の正直だ、この学院を制圧する!」
「ははっ! サソリ怪人さま!」
再び蘇ったサソリ怪人の号令に戦闘員たちが答える。
「待ちなさい!」
「うん? なんだ? お前のような美少女に用はないぞ?」
「び、美少女⁉」
「どうした⁉」
「い、いや、なんでもない! 『セイバーチェンジ』!」
愛一郎が左腕に着けた腕時計を操作すると、桃色の眩い光に包まれ、ヒーローの姿になる。
「き、貴様は⁉」
「『愛の力は悪をも愛でる!』 最愛の戦士、ピンクセイバ―、愛らしく参上!」
「ピ、ピンクセイバー⁉ ベストセイバーズの活動は確認されていなかったはずだが……」
「ど、どうしますか⁉ サソリ怪人さま!」
「ええい、怯むな! やってしまえ!」
「はっ!」
戦闘員たちがピンクセイバーに襲いかかる。
「喰らえ、『愛の鞭』!」
「ぐわあっ!」
ピンクセイバ―が鞭を振るい、群がる戦闘員たちを吹き飛ばす。
「何⁉ そ、そんな武器をどこから取り出したのだ⁉」
「これも愛の力の為せる業!」
「そ、それで説明がつくと思っているのか⁉」
「はっ!」
ピンクセイバ―が鞭をサソリ怪人の体に巻き付ける。
「し、しまった!」
「はああっ!」
「ぐわあっ!」
ピンクセイバーがサソリ怪人の体を勢いよく持ち上げて、地面に思い切り叩きつける。サソリ怪人は爆散した。駆け付けた美蘭が声をかける。
「やったわね! ……あら?」
「ふふっ、お前のような美少女だって……美少女……」
「自信を付けさせようと思ったけれど、妙なベクトルに向かっちゃったかしら……」
頬を抑えて、体をくねくねとさせるピンクセイバーの姿を美蘭は目を細めて見つめる。