もっともな戦隊はごもっともな変態!?   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(4)最高の銃

「大事なお話があります。東校舎の空き教室まで来てください……っと」

 

 美蘭がスマホを操作してメッセージを送信する。

 

(さてと……)

 

「……亜久野さん、いらっしゃいますか?」

 

「あ……」

 

 廊下から正高の落ち着いた声が聞こえてくる。

 

「……亜久野さん?」

 

「ど、どうぞ……」

 

「失礼……お待たせいたしました」

 

「いえ、こちらも突然お呼び出ししてごめんなさい」

 

 空き教室に入ってきた正高に対して、美蘭は頭を下げる。

 

「いいえ、それは別に構わないのですが……」

 

 正高が首を左右に振る。

 

「そう、それなら良かった……」

 

「……大事なお話というのは?」

 

 正高が尋ねる。

 

「……生徒会の広報活動にご協力をお願いしたくて……」

 

「広報活動というと……」

 

「ええ、ユーブロードの配信よ」

 

「ああ、最近はアイさんという方が出ていますね」

 

「ええ」

 

「……しかし、あのような方……一体どこから見つけて探し出してきたのですか?」

 

「ちょっとした繋がりがあって……」

 

 首を捻る正高を見て、美蘭は笑みを浮かべて答える。

 

「ふむ、繋がりですか……」

 

「まあ、それはともかくとして……配信する動画の幅をもっと広げたいと思っていてね。速人君や雄大君にも色々とやってもらっているのだけれども……」

 

「ああ、RTAと……共喰い?」

 

「共喰いはまだやってないわ。これからやってもらおうと思っているけれど」

 

「こ、これからやるんですか……うん? まさか……」

 

「そのまさかよ。青港正高さん、貴方にチャンネル出演を依頼します」

 

「ふうむ……私には向いてないと思うのですが……」

 

 正高が眼鏡の縁を指でなぞる。

 

「……貴方にピッタリの企画があるの」

 

「え?」

 

 再度首を捻る正高に対して美蘭はニヤリと笑う。

 

「見たか? 生徒会のユーブロードチャンネル?」

 

「見た見た!」

 

「しかし、すげえよな……副会長の論破っぷりは」

 

「相手の言葉足らずな部分もしっかりと補足してからの論破は痺れたぜ」

 

「あの丁寧な物言い、『ウチの子にも見せたい』って言って、子持ちの親世代にもよく視聴されているみたいだぜ」

 

「ああ、どうせ真似するならああいうのだな」

 

「……子どもの模範になるとは……やはりヒーローね……」

 

 アレコレと話す男子生徒たちを横目にしながら、美蘭が空き教室に入る。

 

「亜久野さん!」

 

 白いワイシャツ姿の正高がそこにいた。

 

「今日もまたノリノリね……」

 

「それはもう! 議論するということは社会の発展にとっても良いことですからね! それで? 今日は誰と論戦を交わせば良いのです?」

 

「そうね、大方の論客は論破し尽くしたし……」

 

 美蘭が顎に手を添えて考え込む。

 

「そうですね……」

 

「まあ、ひとつ思いついたのだけど……」

 

「なんですか?」

 

「……港区女子よ」

 

「み、港区女子⁉」

 

「……価値観や考え方が真逆……位置関係の見え方を変えれば天と地の違い……」

 

「て、天と地の違い⁉」

 

 正高が面食らう。

 

「……この場合、貴方が地……見下されるのはお嫌い?」

 

 美蘭が悪戯っぽく微笑む。

 

「い、いや……むしろ望むところです……」

 

 正高が笑みを浮かべる。

 

「……とはいえ、多少の歩み寄りは必要だと思うの……」

 

「ん?」

 

 正高が首を傾げる。

 

「成金男性の恰好をしてもらおうかしらね」

 

「ええっ⁉」

 

「挑戦してみない?」

 

「い、いや、それはなかなか……!」

 

 ブザーが鳴り響く。

 

「屋上に悪の組織が侵入⁉」

 

「ちょっと行って参ります!」

 

 正高が空き教室を飛び出す。

 

「……三度目のなんとやら……この学院を制圧する!」

 

「ははっ! コウモリ怪人さま!」

 

 再び蘇ったコウモリ怪人の号令に戦闘員たちが答える。

 

「待て!」

 

「うん? なんだ?」

 

「『セイバーチェンジ』!」

 

 正高が左腕に着けた腕時計を操作すると、青色の眩い光に包まれ、ヒーローの姿になる。

 

「き、貴様は⁉」

 

「『高き心で悪の影を覆う!』 最高の戦士、ブルーセイバ―、高らかに参上!」

 

「ブ、ブルーセイバー⁉ ベストセイバーズはここの所、動いていなかったはずだが……」

 

「ど、どうしますか⁉ コウモリ怪人さま!」

 

「ええい、怖じ気づくな! やってしまえ!」

 

「はっ!」

 

 戦闘員たちがブルーセイバーに襲いかかる。

 

「喰らえ、『高の銃』!」

 

「ぐわあっ!」

 

 ブルーセイバーが高く飛び上がり、上から銃を連射して、群がる戦闘員たちを弾き飛ばす。

 

「何⁉ な、なんという高さ! 翼も無いのに軽々とそこまでの高度に達するとは……!」

 

「なんといっても最高ですから」

 

「む、むう……」

 

「隙有り!」

 

「はっ⁉」

 

「もらった!」

 

 ブルーセイバーが銃弾をコウモリ怪人の体にぶつける。

 

「ぐわあっ!」

 

 コウモリ怪人は爆散した。駆け付けた美蘭が声をかける。

 

「やったわね!」

 

「ふむ、ざっとこんなものです……」 

 

「……」

 

「む?」

 

「港区女子を十人くらい呼んでみて良いかしら?」

 

「ええ? 聖徳太子の気分ですね……」

 

 美蘭の提案にブルーセイバーは苦笑気味に応えるのであった。

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