もっともな戦隊はごもっともな変態!? 作:阿弥陀乃トンマージ
「やったな!」
レッドセイバーがガッツポーズを取る。
「焦らされるのが苦手な人が焦らす側に回るとは……ちょっと待って、じゃらしだと意味が違うかしら?」
美蘭が顎に手を添えて呟く。
「美蘭ちゃん、なにをぶつぶつと言っているの?」
ピンクセイバーが振り返って問う。
「あ、え、えっと……」
「もうちょっと下がっていた方が良いよ~」
「え、ええ……」
イエローセイバーの言葉に美蘭は頷き、ベストセイバーズの面々と距離を取る。
「それよりも……」
「なんだよ、ブルー?」
レッドセイバーがブルーセイバーに顔を向ける。
「何者でしょうか……?」
ブルーセイバーがディープソルジャーを指差す。
「あれ、追加戦士じゃねえの?」
「いや、違うでしょう……我々の追加戦士候補は亜久野さんで……」
ブルーセイバーが美蘭を指し示す。
「あ、そうだっけ?」
「そうですよ……」
ブルーセイバーが呆れ気味に頷く。
「……」
「! ……」
レッドセイバーに見つめられて、ディープソルジャーがキョロキョロと周囲を見回す。
「? 周囲を伺っている?」
ブルーセイバーが首を傾げる。レッドセイバーがなおもディープソルジャーを見つめる。
「………」
「…………」
「……まあ、良いんじゃねえのか?」
「い、良いのですか⁉」
ブルーセイバーが驚く。
「とりあえず、悪の組織とは敵同士みてえだし……」
「た、確かにそのようですが……」
「とにかく、連中を片付けてから考えようぜ」
レッドセイバーがローブを着た悪の組織をビシっと指差す。
「白虎がやられたわね……」
「ククッ、奴は四天王の中でもせっかちじゃからな……」
「あわてんぼうさんめ」
三人が白虎を嗤う。距離を取っている一人が声をかける。
「……余裕を見せているところ悪いのだが、どうする?」
「ワタシが行くわ……」
フードをよけて、鳥の頭をした怪人が前に進み出る。
「む……」
レッドセイバーが身構える。
「悪の組織、四天王が一人……朱雀、参る」
「ここはボクに任せて……」
ピンクセイバーがゆっくりと前に進み出る。
「ピンク……任せたぞ」
レッドセイバーが声をかける。
「『愛の力は悪をも愛でる!』 最愛の戦士、ピンクセイバ―、愛らしく参上!」
ピンクセイバーが名乗りを上げ、ポーズを取る。
「愛らしい子……好みよ!」
朱雀と名乗った者が、ローブを脱ぎ捨てると同時に、ピンクセイバーに飛びかかる。
「うわっ⁉」
「ふふふ……」
朱雀がピンクセイバーの体をがっしりと掴む。
「は、離れろ!」
ピンクセイバーが振りほどこうとする。
「素直に離れると思う?」
「くっ!」
「ふん!」
「ぐっ!」
「ふん! ふん!」
「うぐっ! むぐっ!」
朱雀がくちばしでピンクセイバーの顔や肩を突っつく。鋭い攻撃を受け、ピンクセイバーは苦しそうにする。
「ふふ、さっさと終わらせるわ!」
「せいっ!」
「⁉」
「なにっ⁉」
ピンクセイバーと朱雀の間に、全身灰色のスーツを着た者が割って入る。
「はん……」
「だ、誰⁉」
「『最悪の報せを届けてやる……!』 最悪の戦士、グレーソルジャー、只今参上!」
グレーソルジャーと名乗ったものがポーズを取る。
「えっと……?」
「いいや、全然、知らないです!」
朱雀に向けられた疑問をピンクセイバーは手を振って否定する。
「ふ~ん、単なる邪魔者ってわけ……」
「少し違うな……」
グレーソルジャーが右手の人差し指を左右に小さく振る。
「え?」
「邪魔ではなく、邪悪だ……!」
「は?」
「そこのところ、間違えてもらっては困る!」
「い、意味の分からないことを! アナタから先に片付けてあげるわ!」
朱雀がグレーソルジャーに飛びかかる。
「はっ!」
「うおっ⁉」
グレーソルジャーが槍を取り出して、鋭い突きを見せる。朱雀はすんでのところでそれをかわす。グレーソルジャーがたたみかける。
「はっ! はっ!」
「お、おっと!」
朱雀が翼を広げて、空に飛び上がる。
「む……」
「ふふっ、なかなかの槍さばきだけど、ここには届かないでしょう⁉」
朱雀は空を飛びながら勝ち誇る。
「まあ……さして問題はない、想定内だ」
「負け惜しみを!」
「むん!」
「!」
グレーソルジャーが槍を地面に突き立てて、柄の部分を思いっきりしならせて、それをパッと放して、反動を利用して、空に飛び上がる。
「届いたぞ」
「ば、馬鹿な⁉」
「せえいっ!」
「ぬわあっ⁉」
グレーソルジャーに思いきり殴りつけられた朱雀は地面に叩きつけられる。
「終わりだ!」
グレーソルジャーが朱雀を踏みつけようとする。
「! そうは問屋が卸さないっての!」
「うおっ⁉」
朱雀が翼を勢いよくはためかせて、突風を発生させて、グレーソルジャーを吹き飛ばす。
「はあ、はあ……」
朱雀がゆっくりと立ち上がる。
「案外としぶといな……」
なんとか着地したグレーソルジャーが呟く。
「いらつくわね、アンタ!」
「‼」
朱雀が翼を大きく広げる。その翼には炎を帯びている。
「燃やし尽くしてあげるわ!」
「そ、そういう、情熱の向け方はご勘弁願いたい……」
グレーソルジャーが戸惑う。
「遠慮しなくていいわよ!」
「い、いや……」
「さあ、覚悟なさい!」
朱雀がグレーソルジャーに飛びかかろうとする。
「よっと! 『愛の鞭』!」
「ぬうっ⁉」
ピンクセイバーが鞭を朱雀の体に巻き付ける。
「ボクを無視して盛り上がらないでくださいよ……」
「アンタは後回しよ!」
朱雀が声を上げる。
「まあまあ、そんなツレナイこと言わずに……!」
「きゃあっ⁉」
ピンクセイバーが鞭を思いきり引っ張る。鞭から体が離れた朱雀がぐるんぐるんと回転させられる。回転の加速がつき、勢いよく燃え上がった炎が朱雀を包む。ピンクセイバーが愛らしく告げる。
「愛し合おうよ!」
「きゃあああ!」
朱雀が爆散する。
「これもお互いの愛が燃え上がった結果……悪く思わないでね♡」
鞭の火を払ったピンクセイバーが空に立ち上る煙に向かって手を振る。