もっともな戦隊はごもっともな変態!?   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(3)生徒会室での問答

「……や、やっと着いた……」

 

 美蘭が『生徒会室』とネームプレートの付いた、立派な部屋の前にようやっとの思いでたどり着く。多少早歩きをしたとはいえ、肩で息をしてしまうほどだ。この最上学院の広大さというものを、身を以って実感する。

 

「こ、ここが、生徒会室ね……」

 

 美蘭は生徒会室の醸し出す雰囲気にやや気圧されてしまう。ここに至るまで、職員室や、校長室、理事長室などの前を通過したが、それらよりも立派な部屋なのだ。もちろん、学校というものは、生徒あってのものではあるが、ここまで特別扱いする必要が果たしてあるのだろうかと美蘭は首を傾げる。なんといっても扉である。生徒会室は通常の教室とは違い、外側から内側に向かって押し開く内開き型のドアであった。劇場などでよく見かける重厚なタイプである。ドアの色は赤茶色で、ドアノブは真鍮色である。

 

「貴族さまでもお住まいなのかしら……?」

 

 美蘭が苦笑交じりに呟く。美蘭は咳払いをひとつしてから、ドア越しに声をかける。

 

「2年V組、亜久野美蘭、只今参りました……」

 

「……入れ」

 

「失礼します……」

 

 美蘭は重いドアを押して、部屋の中に入る。部屋にはふかふかとした赤絨毯が敷かれ、座り心地の良さそうなソファーが並べてあり、それに挟まれるように、大理石のテーブルが置かれている。だが、そこには人はいない。ソファーを囲むようにコの字に机が置かれている。左右に二つずつ、奥に一つだ。その一つの机の椅子が窓の方を向いている。これまた立派な回転する椅子だ。その椅子がくるりと回り、美蘭の方に向き直る。椅子に座っていた人物が声をかけてくる。

 

「待ちくたびれたぜ、亜久野美蘭……」

 

「!」

 

 美蘭は驚く。椅子に偉そうに座っていたのは、今朝がた、道でぶつかった赤髪の少年だったからである。赤髪の少年は笑みを浮かべながら尋ねてくる。

 

「さては……迷子になったな?」

 

「……」

 

「まあ、無理もねえわな、この学院はあまりにも広すぎるからな……」

 

「………」

 

「生徒会室にもどうしてだか、人は寄り付かねえし……小耳に挟んだが、場所を分かっている生徒の方が少ないらしい……それで、生徒会の機能が果たせるのかねえ……って、他人事のようなことを言っちまったな……」

 

「…………」

 

「どうした? 黙り込んで?」

 

「の、の、の……」

 

「の?」

 

「覗き魔!」

 

 美蘭が赤髪の少年のことを指差す。赤髪の少年は慌てて椅子から立ち上がる。

 

「だ、誰が覗き魔だ! 誰が!」

 

「あなたよ!」

 

「俺が⁉」

 

「そうよ!」

 

「いつ、何を覗いたんだよ⁉」

 

「そ、それは今朝、わ、わたしの下着を……」

 

 美蘭が恥ずかしそうにスカートの裾を抑える。

 

「あ、あれはたまたま見えちまっただけだ!」

 

 赤髪の少年が釈明する。

 

「ま、まじまじと見ていたじゃないの!」

 

「そ、そんなには見てねえよ!」

 

「ご丁寧に色まで声を出して確認して……!」

 

「いや、なかなか大人っぽいのを着けているなって思って……」

 

「はあ⁉」

 

「ち、違う! 思わず口に出してしまっただけだ!」

 

 赤髪の少年が手を左右にぶんふんと振る。

 

「……ちょうど良かったわ」

 

「ちょうど良かった?」

 

「飛んで火にいる夏の虫のなんとやらよ!」

 

「もうほとんど言っているじゃねえか! 虫の後に何が続くんだよ!」

 

「今朝も言ったけど、警察に突き出してやろうと思っていたのよ! あなたから接触してきてくれるとは、余計な手間が省けたわ!」

 

「け、警察だと⁉」

 

「ええ、そうよ!」

 

「い、いや、あれは不可抗力だ……警察もまともに取り合ってくれねえと思うぞ?」

 

「む……」

 

「と、とにかく少し落ち着け……」

 

「ならば社会的に抹殺するまで!」

 

「ぶ、物騒なことを言うな⁉」

 

「ふん!」

 

 美蘭がスマホを取り出して、赤髪の少年の方に向ける。

 

「ど、どうするつもりだ?」

 

「『この男、下着覗き魔です』って、SNSを使って拡散するわ」

 

「やめろ!」

 

「やめない!」

 

「そ、そういうことをしても恐らく逆効果だと思うぞ? むしろ、お前のアカウントが炎上するんじゃねえか?」

 

「……どうして?」

 

「自分で言うのもなんだが、俺は結構な有名人だからな。スカートをめくった動画でもない限りは、世論の大半は俺の味方とは言わないまでも、俺寄りになると思うぜ」

 

「……結構な有名人? あなた、誰なの?」

 

「……赤千代田強平(あかちよだきょうへい)……この最上学院の『最強』の生徒会長だ」

 

「せ、生徒会長⁉」

 

「ああ、そうだ、一応な……」

 

「み、見るからにガラが悪そうなのに⁉」

 

 スマホを落とした美蘭が強平と名乗った少年を指差す。

 

「人のことを指差すやつに言われたくねえよ! 大体な、この学院は素行がすべてじゃねえんだよ……敷地だけでなく、器もでっけえんだ」

 

 強平は両手を広げて笑う。

 

「い、いや、素行こそ大事にすべきことだと思うけれど……」

 

「やることはしっかりやっているから問題はねえんだよ……」

 

「やること?」

 

 美蘭が首を傾げる。

 

「ああ、そのおかげで、生徒会としての活動がなかなかまともに行えていないというのが目下の課題ではあるんだが……」

 

 強平が自らの後頭部をさする。スマホを拾った美蘭が少し落ち着きを取り戻して問う。

 

「最強(笑)の生徒会長さまが、転入生に何の用?」

 

「(笑)を付けるのやめろ……口調で分かるぞ……実はな……うん⁉」

 

 室内にブザーが鳴る。強平が舌打ちする。

 

「悪の組織が侵入⁉ 現在出動出来るのは……俺だけか……」

 

 強平が美蘭の方をチラッと見る。美蘭が首を捻る。

 

「?」

 

「まあ、見られても良いか……『セイバーチェンジ』!」

 

「⁉」

 

 強平が左腕に着けた腕時計を操作すると、赤い眩い光に包まれ、ヒーローの姿になる。

 

「ちょっと待っていろ! 悪の組織を片付けてから本題に入る!」

 

「レ、レッドセイバー⁉」

 

 窓から飛び出していった強平の背中を美蘭は驚きの目で見つめる。


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