もっともな戦隊はごもっともな変態!?   作:阿弥陀乃トンマージ

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第2話(1)強平の提案

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「……来たな」

 

 生徒会室に入ってきた美蘭を見て、強平が笑みを浮かべる。

 

「……」

 

「それじゃあ、あらためて……」

 

「………」

 

 強平が美蘭に歩み寄る。美蘭が体を強張らせる。

 

「ビンタをしてくれ」

 

 強平が右の頬を美蘭に向かって差し出す。

 

「だ、だから、するわけないでしょう!」

 

「何故だ?」

 

「する理由がないからよ!」

 

「理由なんてこの際どうだって良いだろう」

 

「どうでも良くないわよ!」

 

「ほら……」

 

 強平が右の頬を突き付ける。美蘭が戸惑う。

 

「ほ、ほら、じゃないわよ!」

 

「安心しろ……」

 

「え?」

 

 美蘭が首を傾げる。

 

「右の頬を打たれたら、左の頬も差し出す」

 

「どこかのイエスみたいなことを言うな!」

 

「決して反撃はしない」

 

「当たり前でしょ! そもそも、ビンタをしないけれど!」

 

「え……しないのか?」

 

「ええ!」

 

「そんな……」

 

 強平が肩を落とす。

 

「そ、そんなに露骨にガッカリされても!」

 

「じゃあ、なんで……」

 

「は?」

 

「なんで生徒会室に来たんだよ⁉」

 

「はあ?」

 

 美蘭が首を捻る。

 

「ここに来たということはビンタを了承したということだろう⁉」

 

「いや、なんでそうなるのよ⁉」

 

「そうじゃないと説明がつかない……!」

 

「いくらでも説明がつくわよ!」

 

「え……?」

 

 強平が首を傾げる。

 

「あんなにしつこく校内放送で呼び出されたら、来ないわけにもいかないでしょう? 休み時間の度に放送するなんて……まったく……何を考えているのよ!」

 

「無視するという選択肢だってあったはずだろう?」

 

「当然、それも考えたけれど、周囲の視線が痛いのよ! アンタたち生徒会はこの学院では、随分と畏敬の念を持たれているみたいだからね、『その呼び出しを無視するとは一体何事か』みたいな雰囲気になるのよ!」

 

「ふむ、そうか、畏敬の念を持たれているのか……」

 

 強平は顎をさする。美蘭は肩をすくめる。

 

「……厄介なことにね」

 

「どうやら……」

 

「どうやら?」

 

「こちらの狙い通りに事は運んだようだぜ」

 

「た、性質が悪いわね⁉」

 

 得意気な笑みを浮かべる強平に対し、美蘭が声を上げる。

 

「これも生徒会の威光の為せる業だ……」

 

「威光がメッキを剥がせば偽物だということを知らしめたい気分だわ」

 

「知らしめる? どうやってだよ?」

 

「え? お、大声で言いまわるとか……」

 

「ガキかよ。そんなことにいちいち耳を傾けるやつがいるか?」

 

「が、学院内で発行している新聞に情報をタレ込むわ!」

 

「はっ、そんなことをしたら、アンタの方がひんしゅくを買うことになるぜ?」

 

 強平が両手をわざとらしく広げる。美蘭が困惑する。

 

「な、なんでそうなるのよ⁉」

 

「このご時世をよく考えてみろよ」

 

「ご時世?」

 

「ああ、今の時代は『多様性を尊重する』時代だ」

 

「……それがどうしたの?」

 

「……分からねえのか?」

 

「あいにく、さっぱり」

 

 美蘭が首を左右に振る。

 

「はあ……」

 

 強平がため息をつく。

 

「な、なによ、そのため息は?」

 

「多様性……俺のこの“ちょっとばかり特殊な性癖“も尊重されてしかるべきだ」

 

「! そ、そんなバカげたことが……」

 

 美蘭が愕然とする。

 

「タレこみか……まあ、何事もやってみないと分からねえがな……受け取り方もまた人それぞれなわけだからな……」

 

「そ、そうよ!」

 

 美蘭が生徒会室から出ようとする。

 

「まあ、落ち着けよ。少し冷静になれ……それは悪手ってもんだぜ」

 

「ええ……?」

 

 強平に呼び止められ、美蘭が振り返る。

 

「それでもしもそれなりの騒ぎにでもなったら、アンタに対して余計に注目が集まってしまうことになるぜ?」

 

「! そ、それは……」

 

「望むことではねえだろう?」

 

「え、ええ、出来る限り平穏無事に学生生活を送りたいから……」

 

「それならば、答えはひとつだ」

 

 強平は右手の人差し指をピンと立てる。

 

「は……?」

 

「簡単なことだぜ」

 

「な、なによ?」

 

「……俺を思いっきりビンタするんだ」

 

「結局それじゃないの!」

 

「それで万事解決だ」

 

「だからそれが嫌だと言っているのよ!」

 

「どうしてだよ?」

 

 強平が不思議そうに首を捻る。

 

「ど、どうしてって……」

 

「知人とじゃれ合っているようなものだと思えば良いだろう」

 

「ふ、普通は知人にそんなことしないわよ! 大体、よく知らないし!」

 

「ふむ、そうか……やはりここはあれだな……」

 

「あれ?」

 

 強平が右手を美蘭に向かって差し出す。

 

「……亜久野美蘭、アンタも生徒会に入れ」

 

「はあっ⁉」

 

 強平の突然の提案を受け、美蘭は驚きの声を上げる。

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