僕には幼小中高とずっと一緒にいた幼馴染がいた。
底抜けに優しい、そう形容するのが一番だった。困っている人がいたら自分の手が届く範囲で助ける、その行為に一切の躊躇を伴わなかった。その姿に強烈な憧れを抱いたことを今でも覚えている。
そんな幼馴染と一緒に幼稚園に行っていた頃、個性が暴発してしまったことがあった。僕の個性はブラックホール。吸い込んだものを分子レベルで崩壊させる、とても危険な個性だ。目の前の子を
「
脇腹の皮膚を吸われて激痛を感じていただろうに、無理して気丈に笑って見せたのだ。
その時から、彼は僕のヒーローになった。
―――僕には信じられなかった。そんな彼が、高校卒業後何も言わず姿を消したのが。
◆ ◇ ◆ ◇
「...亜南」
言葉を失う。それに尽きた。この世で最も付き合いが長い、そして一方的に離れた人が目の前に立っていた。
「...久しぶりだな。元気だったか?」
「うん。迅も元気そうだね」
別れ方が別れ方だっただけに、気まずい時間が流れる。
「その...何も言わずいなくなってごめん」
思い切って頭を下げる。許してもらおうとは思ってない。だが、ケジメはつけておきたかった。
「ほんとだよ。君がいなくなって僕がどれだけ焦ったか知ってる?」
「うっ、すまん...」
亜南の言葉が、的確に俺の心を
「でもこれも君の優しさなんだよね?」
「...」
「君はもう知ってたと思うけど、僕たちもオールマイトの秘密について話されたんだ。もちろん、オール・フォー・ワンについてもね」
そばにあったベンチに二人で座りながら、口を動かす。二人とも長身なので、少し窮屈だ。
「君はオールマイトのところでインターンをしてただろう?君もオール・フォー・ワンと戦ったんだよね」
「あぁ」
「多分君自身が経験を積み脅威から逃れる、という意図もあったんだろうね。でも君の一番の理由は、僕たちを巻き込まないためだろう?」
「...オール・フォー・ワンは狡猾だ。自身の覇道を妨げる者は徹底的に潰す。もし生きていた場合、お前にも被害が行くことが嫌だったんだ」
俺は11年来誰にも言ってこなかった心情を吐露する。
「それだけじゃない。あいつは強大だ。次に戦う時、
俺だけが知っていた、象徴の限界。動かずにはいられなかった。
「だから、お前を...」
「置いて行ったんだね」
「...そうだ」
再び無言の時間が流れる。先に静寂を破ったのは俺だった。
「本当に、ごめん」
「まったく」
亜南はベンチから立ち、呆れたように口にしながら
「むっ」
俺の両頬を手で挟んだ。
「ん、にゃにしゅりゅんだ」
「変わらないね、君は。本当に、どこまでも優しい」
そう言い、優しく微笑む。
「君は周りのことを考えて、行動を起こしたんだ。それについてとやかく言う権利は僕にないさ」
俺の頬から手を放しながら、くるっとターンする。
「また昔みたいに一緒に話そう。あ、でもまだ怒ってるから。ご飯奢るくらいはしてもらうよ」
「...はいはい」
口角を上げながら、俺も腰を上げる。
「まったく...お前も変わってないよ」
小声で、そう口にしながら。