お前の青春にザバーニーヤ 作:ブルアカエアプ民
02 お前の青春にザバーニーヤ
【パラパラチャーハンしっとり仕上げ】
「んじゃ、先上がりマース」
「おつかれ、ハサン」
「お疲れ様です、せんぱい!」
仕込み中の記憶が曖昧朧気不透明だが、分身たちは頑張ってくれたようだ。
最後に何故か彼らは“無謀なる蛮勇者に!”とヴァルキューレ警察学校生でも見たことの無い見事な敬礼をして掻き消えたのはなぁぜなぁぜ?
そんなどーでもいいことは置いておいて帰宅だ。
何とか今日も無事捌けた充足感とは別に体が気配を消す。
だって、ココゲヘナ。全体からすればひっじょーに少ない(オブラート)
お外でもジャカジャカだかドコドコだかのメッポー被った不良生徒が跋扈している。自衛はエチケット、……やっぱマッポーすぎるってキヴォトスェ……。
生徒でも滅多に訪れない校舎の端に隠した愛車(原付)へ跨り、エンジンを吹かして後にする。
「今日の夕飯は……あそこがやってるか」
帰って用意するのも面倒だし、今日は馴染みの店の週一出張デー。
行くっきゃナイト。
━━━━━━
「ちわー」
「あっ、ハサン。今日は来たんだね」
というわけで公園の傍にバイクを止めて訪れたのは知り合いの移動飯店。
彼女こそ週一でおいどんの食卓を豊かにしてくれる朱城ルミでごわす。
「いつもの、お頼み申す」
「はいはい、愛情たっぷり込めて作るから待っててね」
「わぁい」
ルぅミ
自ら鍋を振るいつつ経営するだけあり、どれも味がべらぼうに美味い。その中でも……。
「はい、いつもの炒飯」
「いただきまーす!」
お気に入りはチャハーンだ!スープもついてお得!
まずはスープを一口、疲れた体に適度な塩気が水分とともに喉を湿らせる。
綺麗なドーム型へレンゲを当てれば抵抗なく崩れ、家庭では難しいしっかり水気の飛んだパラパラ具合。
レンゲで掬い上げた
噛むほど米本来の甘みが卵と調和し、焦がし醤油の香りが鼻をぬけ、塩気が味に輪郭を強くした。
ルミ姐さんのところでは肉入りチャーハンも出しているが我は断然具なしチャーハン。
米、卵、数種の調味料と薬味のネギが生み出す、シンプルでありながら料理人の腕が輝く。
「ふふっ」
「……なぜいつも見るので候?」
ただし、食事中はルミ姐さんの視線に耐えなければならない。
「いつも美味しそうに食べるなぁって、ね?感心してるの」
「美味しいものであるから致し方なし」
腕を枕に頭を支えながらカウンター越しに眺められるのはいつもの事だが、時折なにやらものすごくにこにこして眺められては食事に集中できない。
「そうだねー、あといつも半分くらい掻っ込むから喉に詰まらせないか心配なのさ」
「…………」
だって美味いんだもん……。
「ふふっ、不貞腐れないの。そういうところも可愛いと思ってるから」
ミーはメーンなのでカワイイは複雑デース。
「……ご馳走様でした」
「はい、いつも綺麗に食べてくれてありがとね」
ここは値段も手頃なのがありがたい。
「そういえばハサン。連邦生徒会の噂は聞いた?」
「いや全く聞いてないな」
「最近あの辺騒がしいでしょ?どうにも連邦生徒会のメンバーに何かあったみたいなの」
「連邦生徒会……ねぇ」
連邦生徒会。数多くの学園が仕切る自治区を束ね、都市全体の行政を一手に取り締まる組織。
地区を管理するのも生徒、その上の組織も全員どこかしらの生徒という、前世?的なところでは考えられないほど、この都市では
では大人は何してるかというと、一言で言うとヤベーことしかしてない。
詐欺は当たり前、中抜き、食品偽装、暴利貸しetc.etc.大人の汚い面を煮詰めたようなヤベーことしてるのが大半で、平気で
泣きつく場所もない訳では無いが、おおよそ“騙される方が悪い”を地で行くのがキヴォトスの治安だ。まじマッポーすぎンゴ。
「だから、気を付けてね。ハサンは割とひ弱だから」
「よ、弱くねーし。頼りになるミスターキヴォトスやし」
前世よりは断然に強いはずなのだ。ただキヴォトスのゴリゾ
「へー、じゃあまた手伝いに来てよ。シュン教官たちも来てくれると助かるって言ってたし」
「ア、ハイ、キカイガアレバ……」
さて腹も膨れたし帰んべ帰んべ。
「……それともウチ
「おい、なんか言ってることとルビが違うぞ」
「あはは、冗談だよ」
商会の長だけに会話の中で本心が読めぬ。
このままでは力だけでなく言葉でも負ける。
「……山海経も楽しそうではある、ルミ姐さんも居るし。ご馳走様。んだらば、ばははーい!」
「はいはい、気をつけるんだよ!」
美味しいものが今以上に定期的に食べられるならちょっと魅力的だ。
「……冗談、だよ」
━━━━━━
「そういえば、あの移動飯店。儂が行く時、他に客を見かけないな」
隠れた名店……的な?
途中で美食研究会のテロに巻き込まれかけたフウカ部長を何とか助け出し無事帰宅。
駐車場に愛車を隠し(盗まれるから)、ササッと汚れを落として寝落ちしてたようだ。
一応、就寝前にセットした炊飯器を開ける。
「……うん、俺でもこれくらいはできるか」
ちょっと前に分けてもらったタケノコはしっかり炊き込みご飯になったようだ。
自分の朝ごはん用に少し残し、残りをおにぎりにしておく。
帰りは遅かったがそろそろ起きてくるだろうし、手早く汁物を作る。
顆粒をぶっこみズボラ出汁にお麩と豆腐を投入、お味噌を溶くだけの簡単仕立て。
浅漬けにした白菜に風味付けで一緒に漬けた細かく切ったトウガラシを見栄えよく添えておく。
最後にだし巻き玉子をちゃちゃっと作れば完成。
「……おはよ、いい匂い」
「おはよう、カヨコ」
同棲してる鬼方カヨコのお目覚めのようである。
性癖は詰め込むもの。