お前の青春にザバーニーヤ 作:ブルアカエアプ民
04 お前の青春にザバーニーヤ
【働けど働けど】
「おはざーす」
「おはようハサン」
「おはようございますせんぱい!」
今日も今日とて給食部は仕込みに精を出すのら。
「〜♪」
「機嫌が良さそうね」
「はい、この間知り合いに分けてもらったタケノコがいい味出したので」
「あー、あれね」
もっと言うとカヨコと朝会えて見送ってもらえたからご機嫌が大変よろしゅうおま。
だがしかし、今からやることを思うと少し落ち込む。
「すぅ、はぁ……良し、すぅ……“
ポンポンっ!と
「……毎回この時だけ凄い微妙な気分になるわ」
「???」
部長はアレだが……あぁジュリよ、ぜひ知らないで欲しい、が知らないままあれだから知ったらやばいなってなる。
ちなみに今のは分身を作る?出現させる?なんて言えばいいのか分からないが、ようは分身さんいらっしゃいする呪文みたいのだ。
……地獄かな。
「じゃ、今日もキリキリ働きますか」
とはいえ、朝イチの仕事は決まっている。
「出前いってきマース」
「よろしく」
「行ってらっしゃいですー」
ゲヘナ学園。キヴォトスに乱在(暴論)する学園でもマンモス校として名高く、かつその
なにせ生徒会長が支持率10パーセントほどで当選するくらいなのだ。地獄かな?(n回目)
どこを歩くも油断すると流れ弾に巻き込まれかねない荒廃ぶりだが、意外と校内は騒がしくない。
「チャオ☆料理部デース」
「……来たのね、ハサン」
何故か……などと勿体ぶる気は無いので答えを言えば“風紀委員”のおかげ、もっと言えば“風紀委員長”のおかげだ。
「シェフのおまかせモーニン、お待ちどうさまです」
「ありがとう、楽しみにしてたわ」
そう言って貰えるのは料理人(補佐だけど)冥利に尽きる。
ご用意しましたのはなんでもない
トマトは無い。まあ一歩間違えると落としたトマトみたいになるのがキヴォトスだし……。
あとホットサンドプレートは私物である。給食部で出すには効率が悪い、目玉焼き四千個とかやらなきゃならんのに大量生産できないものをメニューに加える気は無い。
バターなどの酪農が辛うじてあるのホンマありがたいわー。量を維持しつつ質がギリ担保できるものは大歓迎。
揚げ物は油の消費がエグイけど下拵えさえ済ませておけば、効率が良くボリュームを増やせて実際便利。
それも目の前の委員長様が睨みを利かしてくれてる(物理)おかげである。
「……いただくわ」
「あい」
できたてホヤホヤを妙に素早い身のこなし(無自覚)と気配を消す動き方(無意識)で最短最速のデリバリーだ。
経路は壁と天井、蜘蛛男かな?
だってちんたら床走ってると目立つんだもん。我、希少なキヴォトス男児よ、ナンパ即射(鉛玉)がまだ有情というバグ。最悪ちょっとタッパがある(女子の中に混ざる男なだけ)って理由で頭分減らされそうになったゾ。
おかげで隠密行動?みたいなのが余計得意()になってきたわよ(白目)
「……おいしい。厚切りベーコンの濃い塩気がレタスのシャキシャキとたまご本来の甘みに合ってて、全体を……無塩バターかしら?特有の風味と小麦の包容力がまとめ上げてる」
「お口にあったようで何よりです」
給食部は元々デリバリーに対応してない。なにせ、数千人分の昼食を数人(ガチ)で賄わないとならないのだ。
だがしかし、そのためには必要なものがある。
食材と設備だ。
設備は辛うじてある。
単純に設備と対応人数比があってないが、そこには目を瞑り、誤魔化し誤魔化しだがなんとかなっていた。
だが、食材は違う。無い袖は振れぬのだ。かの有名な救世主とて最初にお出しできるものがなければ、集まらないのである。
とある日にこんなことがあった。
食材を持ってくる業者が運悪く、我が校の温泉開発部と美食研究会のいつも通りテロに巻き添えを食らったのである。
いつも通りのテロってなんだろね。
だが食材(と業者)は無事、給食部へ届けられた。
目の前の彼女、風紀委員会〈空崎ヒナ〉委員長によって。
我々は大層感謝した。
食材がなければ調理人は包丁を持った人なのだから。(ド偏見)
フウカ部長と話し合い、委員長に何かお礼をしたいなと聞き取りを行ったら……。
「片手で食べられそうな物を時々届けて欲しい」
━━とのことだった。
何でも忙しすきてご飯の用意に睡眠時間を削る時が出てきたそうな。
(え、あの労働量で自炊してたの?)
ワテが思った感想である。
登校時間には既に動き回ってるのを見た事あるし、休み時間どころか授業中すら八面六臂の活躍を目にし、昼休みは屍(気絶でヘイローが消えてるだけ)の山を築き、放課後は鉄火場へ単身制圧している委員長殿が、自炊する暇があったのにも驚いてるし、学生の内から遊びや勉学以外で睡眠時間すらまともに取れない事実に涙した。
く、くたびれたOLみたいになっている……。
けど、能力が高すぎてギリ首の皮が繋がるレベルを維持しているのだろう。
あと遊びに誘われても忙しさを理由に断らざる得ないとも、光のギャルたちがコミュ力発揮して食堂で話しかけてきた時に言っていた。
そんな裏事情も含め、以来定期的に届けるようにしている。
「ハサンたちのおかげで最近は十五分も多く寝れてるわ」
「よ、良かったです(´;ω;`)ブワッ」とっさに後ろを向く
なんやこのちっこい生物(虎より強そう)、守護らねば(虎より強い)。
「お、お大事にぃい!(青春ダッシュ)」
━━━━━━
「なぜ涙が出るんだろー」
「玉ねぎ切ってるからでしょ」
今日も今日とて戦場を乗り切り、明日以降の仕込み。
「そういえば、美食乗り込んできましたけど、なんだったんです?」
「…………さぁ?」
美食研究会のメンバーがこちらの都合も考えず部長を
部長を連れ出そうとする、中身がついカッとなってテロテロしちゃうゲヘナ脳と知らなければ、特級美人が人の顔見た途端、“ごごごごきげんようー!?”とか言ってどこかへ消えていった。
「……ま、いいでしょ。そろそろ新しいメニュー考えた?」
「え、あー、まぁ?」
手を止めて半眼で睨め付ける部長に何とかそう返す。
「煮え切らない、ホントは考えてないんでしょ」
やれやれ顔をされると言い返したくなるけど小生としてもやらざるを得ない。
「考えてきたというか、試しに作ってはみたので試食お願いします」
「!?わ、わかったわ」
考えるより何とやら。実は前々から案だけあったのを見切り発車で作ってしまったのだ。
とりあえずお互い最低限の仕込みは終わっているので片付けをして、試食会と相成った。ちなみにジュリは食堂のフロアを片付け次第合流することとなるでごわす。
「というわけで、これが考えた結果の“プリン”です」
「うわぁ、キレイにできてますね!」
「ホント、ハサンはお菓子も作れたのね」
「言うて、基本は材料混ぜて蒸すだけですよ。とりあえず食べてみてください」
卵とミルク、砂糖にその他少量の香り付けのエッセンスを混ぜて、蒸し器にシュゥウウウ!すれば完成でヤンス。
日持ちしないけど作った感触から、いっぺんにタネを作り、蒸し器の使い方で少数限定メニューとしてギリギリできなくないラインであーる。
「「いただきます!」」
「ん……おいしぃです!」
「そうね、少し材料費が気になるけどこれなら新メニューとして並べられそう」
何度か自分で味見をしてこうして試食会を開ける程度には味に自信はあるけど、やはり緊張してたのかみんなの反応にホッとした。
「うん、後でレシピ頂戴」
「了解っす」
何はともあれ仕事だ、仕事ー。
残弾ゼロ。次回は未定。