ソードアート・オンライン インタールード・デバッガー 作:悠旅白樹
————オレはどこで間違えたんだろう。
そんな疑問を浮かばせながら、空へと消える無数の青いポリゴンを眺める。
キラキラと輝いているのは、それがこの世界を完結させるための通過儀礼というやつだろうか。
そんな輝きを鬱陶しそうに、黒いポンチョの男が振り払おうとしていた。
その手に持った大きな包丁をオレや周囲にいた顔馴染みの仲間たちに振り下ろすも、紫色のシステムウィンドウに阻まれる。
そうこうしているうちに黒いポンチョの男やオレたちを取り囲んでいた黒ずくめのプレイヤーたちも青いポリゴンの輝きの中に消えていった。
残ったのは、同じように青いポリゴンに消え始めたオレたちと。
(……おい。なあ、待ってくれ……ッ!)
赤いポリゴンを立ち昇らせたまま、倒れ伏した友だちが、一人。
————最初は本当の意味でゲームだった。
偶然手に入れた最新ゲームのβテスト参加枠を手に入れて、現実とは違う、けれど現実以上に生きていると思えるその世界に夢中になった。
最初の街を探索して、装備を整えて外へ踏み出し、襲いかかるモンスターと戦い、時には他のテスターと協力したり競いながら仕掛けやトラップを潜り抜けて。
あっという間に二ヶ月が経過してβテストが終わると、正式版パッケージが発売するその日を待ち遠しいと思うようになった。
あの世界へ、もう一度。
まるで熱に侵されたように夢中だったオレは、手元に残った優先購入券を眺めながら、ふと思った。
————友だちと一緒にこの世界を遊んでみたい。
正式版の優先購入券は一枚につき二つまで一緒に購入することができる、つまりオレ以外にもう一人が一緒にゲームを始められるのだ。
そうしてオレは一番仲の良かった友だちを一人誘って。
サービス開始のあの日、この世界から出られないことを知り、招いたことを後悔した。
この世界の創造主は、今いる場所よりも遥か上の層にいるラスボスを倒すことでこの世界から脱出できると言う。
しかしそれは、一度でも体力がなくなれば叶わない途方もない夢のような話だった。
最初のうちは街の外へ出てレベル上げに勤しんだが、βテストの時とは違って死んでしまうかもしれない恐怖からそれ以上先に進めなかった。
何よりも怖かったのは、オレ自身が死ぬことではなく、一緒にいる友だちが死ぬことだった。
————オレが誘わなければ、友だちを巻き込まずに済んだのに。
友だちは気遣いのできるいいヤツだった。
巻き込まれた当初もオレを責めることをせず、一緒にレベル上げをしてくれた。
コイツがいたから普通のプレイヤーたちよりもまだ外に出て戦うことができているのかもしれない。
だからこそ、同時に失うことも怖かった。
せめて助けが来ればと何日待っていたが、一向にゲームが強制終了する気配はなく、やがてオレは失意に沈みかけていた。
————一ヶ月が過ぎたころ、一つ上の層に繋がる扉が開いたという話を聞いた。
誰かは知らないが、この世界から出ようと頑張る人たちが、力を合わせてその一歩を踏み出してくれたというのだ。
普通なら一ヶ月かかってようやく一層と思うところだが、βテストを受けたオレは思った。
攻略に協力する人がもっと増えれば、その分だけ攻略が楽になるんじゃないか、と。
そう思ったら、死ぬのが怖いなんて考えて惰性に過ごしているのが馬鹿らしく思えた。
だからこそ、もう一度。
この世界で生きるために、このゲームから出るために、一緒に行こうと友だちに手を差し伸べた。
『……わかった』
『行くよ、この城の天辺まで、その先にある俺たちの帰る場所へ』
友だちはオレの手を取って一緒に来てくれた。
この進み始めた攻略を後押しするために。
必ず、二人で現実の世界に帰るために。
そうして、上を目指して戦って、冒険して————
「一緒に現実に帰るんだろ、ユートおおおおッ!」
————そして、世界を青白い輝きが埋め尽くす中で。
血のような赤が、崩れゆく浮遊城に消えていった。
『————11月7日14時55分』
『ゲームはクリアされました』
『ゲームはクリアされました』
『ゲームはクリアされました————』
……外部から複数のアクセスを確認。
……MHCP-003よりデータ参照。
……DD???を————します。
————どうか、彼らの戦いが報われますように。
————の結果、DD???から二つのファイルが再構成されました。どちらのデータから閲覧しますか?
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RD(本編)
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LD(SAO編)