平成アニメ世界で令和の価値観を注入されたショタの話   作:浅学寺のえる

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── 別視点からのみ抽出できる成分 MCT

5月1日 夜 / 羽吹家

 

 「まことよ、本当によいのか? 海外の猛者と闘う絶好の機会なのだぞ?」

 

 羽吹浪志(はぶきろうし)──ボクのおじいちゃんが最終確認をしてくれる。

 いよいよ明日から、本格的にゴールデンウィークが始まる。ボクの家族は、今夜から飛行機に乗って海外へ旅立つ予定だ。連休を利用して、各国の武器使いを相手に武者修行の旅……はっきり言って、ものすごく着いて行きたい‼︎

 ボクだって海外の猛者を叩きのめして、羽吹流の名を世界に轟かせたい。世界中の武器という武器を、破壊し尽くしたい! 武器を壊された相手の絶望に打ちひしがれた姿を、この目で見たい‼︎

 

 でも! 最近様子がおかしい幼馴染を放って、海外遠征になんて行けないよ。

 幼稚園からの幼馴染で、今でも付き合いの続いている唯一の男の子。この頃、やけに萬宮寿しいな達と交流を持っている彼。もし、詠の時みたいな事があったら困るもん。

 だからボクは、いつも通り油断せず彼を見張って……見守ってなきゃいけないんだ。理珠さんや理奈に聞いて、スケジュールもバッチリ押さえてるから安心! 明日から早速、木嶋家にお邪魔して一日中見守ってあげるからね! 

 

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5月2日 昼 / 木嶋家

 

 「いらっしゃーい、まこ姉ぇ。あ、お兄ぃなら居ないよ? あはは、そこに居るのはお姉ぇだよー! ほんとに、本当だって〜」

 

 「ちょ、ちょっと、まことちゃん!? そんなベタベタ触って確認しないでよ〜。ホントに私だから! あの子は、一人で勝手にキャンプへ行っちゃったんだよ?」

 

 

 嘘でしょ!? 一人でキャンプに行った……?

 そんなアウトドアな性格してないのに。キャンプに行くとしても、彼がボクを……ボク達を置いてくなんてあり得ない。やっぱり、どこか変だよ。

 

 「あの子が、変? うーん、急に反抗期になったりしてたもんねー。でもさ、ハカセのおかげで色々解決したって言ってたよ?」

 

 「お兄ぃが付けてる腕輪って、ハカセの発明品なんだって!」

 

 あの腕輪が発明品? なぁんだ。大事な物だって言ってたから、てっきり女の子からのプレゼントだと思ってた。変に言い淀んでたから、怪しかったんだよね。うん、善じいちゃんの発明品なら安心!

 

 けど……念のため裏を取っておこうかな。

 羽吹流の理念は『常在戦場』だもん。油断は大敵。理珠さんの言葉は信頼してるけど、万が一って事もあるからね。彼が、どこかの悪い女性(ひと)に騙されて嘘を言わされてるとか……まあそんな事、絶対ないと思うけど!

 でも、もし。もしも、ボクや理珠さんに言えないような隠し事をしてた時は──

 

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──────

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 電話を借りて、善じいちゃんに話を聞いた。

 あの腕輪は『精御輪具(せいぎょりんぐ)』って名前の煩悩を封じるアイテム。なので、腕輪を外すと彼はエッチな変態になってしまうと説明された。今までの彼ならとても信じられないけど、最近の様子を考えると……うーん?

 よし! 例えエッチな変態になっても、ボクだけは味方でいてあげよう。それに変態って言っても、井伊くんよりはマシだと思うし!

 元が純情な彼だもん。きっと間接キスにドキドキするとか、保健体育の授業で恥ずかしくなるとか、その程度だよ。

 

 とりあえず腕輪の件は裏が取れたし、ついでにワッカくんが在宅中なのも確認できたし。

 うん! ボクだけ除け者にして男子だけでキャンプへ行ってなくて良かった!

 

 

 「あ、電話終わった? そうそう、あの子もキャンプ中だって連絡を、いきなり電話でして来たんだよねー。そんな予定聞いて無かったから、ビックリしたよ〜」

 

 理珠さんに詳しく話を聞いたら、今朝から彼の姿が見えなくて家族が心配していたらしい。けれどボクが来る少し前に、キャンプをしてるだけだから大丈夫という連絡があったみたい。

 やっぱり、どこか変だ。格闘技をやってたのに、インドア派な彼。急に思い立って、家族にも黙って一人でキャンプへ行くなんて考えられないよ。

 趣味と言えば、アニメとかゲーム。あとはカンフー映画と音楽……あれ? そういえば最近、ウォークマンを付けてる姿を見かけてない気がする。

 

 「言われてみれば、前より音楽を聴く時間が減ってるかも。あの子の、数少ない趣味なのにねー」

 

 「お兄ぃはパソコンも辞めちゃったんだって。まこ姉ぇ、知ってた?」

 

 当然知ってるよ。パソコン部があるから笛壱を受験したって言ってたのに、この前急に辞めちゃったから驚いたもん。そう言えば、あの時もおかしな事を言ってたなぁ。

 ウチの学校にはイグナおばあちゃんの手配した最新機種が揃ってる。なのにそれを、これからの時代に着いていけない旧型パソコンなんて言ってた。前はあのパソコンを気に入ってゲームまで作ってたのに、どうして急に?

 

 なんだか凄く心配になって来た! ボクちょっと、彼のこと捜して来る‼︎

 

 

 「捜すって言っても、詳しい場所は私も知らないよー……って、もう行っちゃったかぁ」

 

 「まこ姉ぇ、ウチへ何しに来たの……?」

 

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5月6日 朝 / 2年C組 教室

 

 結局、連休中に彼と出会う事はなかった。

 

 近場のキャンプ場から捜索して、山の中までくまなく探し回ったのに……!

 おかげで、野生の熊と闘っちゃったよ! この前クマ怪人の話を聞いた時、闘い方をシミュレートしといて良かったよー。うんうん、いい修行になった。

 

 「野生の熊と闘った!? いくらなんでも無茶しすぎだよ、まこと」

 

 「あら、クマ怪人と闘った張本人が何を仰ってますの? あの時、(わたくし)がどれほど貴方の身を案じていたか判ってらして?」

 

 

 約一週間ぶりに彼と会話していたら、急にしいなが割り込んできた……そんなにボクと闘いたいんだね。困ったライバルだよ本当に。でも最近のボクは、口喧嘩でも負けないんだから!

 さあ、勝負だ!

 

 「相変わらず、猪のような性格ですわね。いえ……よく見れば連休前より、野生に帰ったのではありません事? そうですわ! 山で熊とお友達になったのですから、そちらでお相撲でもしてみては如何かしら?」

 

 むきーっ‼︎ ボクは金太郎じゃないんだ! 熊だって、撃退したから友達じゃないやいっ!

 

 「まあ野蛮ですこと! 私はシロクマが相手でも、お友達になれますのに。羽吹家の方は、やはり戦闘民族ですのね……あっ。決して満月を見たらダメですわよ? 大きなお猿さんになってしまいますわ!」

 

 サ、サイヤ人でもないもんっ……! か、仮にそうだとしても、ボクはエリート戦士だ!

 だから大猿になっても、理性を保てるからヘッチャラなんだっ! どうだ参ったか!

 あれ? なんで溜め息ついてるの? あ、ちょっと!? 待ってよ、しいな。まだボクは負けてないぞー!

 

 

 「まこと、レスバは顔を真っ赤にした時点で負けてるんだ。いいかい? 口喧嘩において、まことは落ちこぼれの下級戦士なんだよ? ほら、ドラゴンボールの話なら僕が聞いてあげるからさ。あまり()()()()()を困らせたらいけないよ」

 

 お、落ちこぼれだって、必死に努力すれば……あれ? なんだか今、凄く違和感があったような?

 うーん……そっか! ボクの知らない言葉があったんだ。

 レスバ。レストランとバー? たぶん違う。話の流れから考えると、口喧嘩みたいな意味かな? なら『バ』はバトルの『バ』だね!

 

 「うふふ、お姉ちゃん判っちゃった〜。レスポンスバトルの略でしょー、弟くん?」

 

 「そうそう! さすが、()()()()()。まことも、英語が苦手なのにバトルだけは正解して偉かったよ」

 

 えへへ。褒められちゃった……あれ? 今、美衣さんの事を『お姉ちゃん』って呼んでなかった? うーん? あまりにも自然な流れだったから、聞き間違えかもしれないね。彼のお姉ちゃんは理珠さんだけだもん。

 それより! なんで美衣さんがボクらの会話に割り込んで来てるのかな!? 萬宮寿流の人は、羽吹流の彼に近づいちゃダメだから!

 

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5月7日 放課後 / 空き教室・ロッカー内

 

 どうしよう……彼はボクが思ってたよりも、ずっと変態なのかもしれない。

 

 つい弾みで一緒に入ってしまったロッカー。ここで今、ボクはとんでもなく恥ずかしい目に合っている。彼の腕輪が、ボクの太ももで震えて──ひゃっ! 

 なんで煩悩を封じるアイテムで、こんなエッチな事してるの!? 煩悩を封じてて()()なら、もし腕輪を外しちゃったら……!

 

 

 「ごめん、まこと。このバングルを外せば、震えは止まるから……え、ダメ? そんなこと言っても、震えたままじゃ困るだろう? ほら、外すから手を離してよ。怖がらなくても大丈夫だって。大丈夫、だいじょーぶ」

 

 ダメーッ! お母さんが言ってたもん「大丈夫って繰り返す男は、大丈夫じゃない」って。軽い気持ちで流されたら、物凄く大変な事をされちゃうって注意されたんだ。

 きっと、ロッカーの外でワッカくんと女の子ロボットがしてる様な事をする気でしょ!?

 

 

 「……そんなに不安なら、少しだけ外してみるよ。ほんの少しだけ試して大丈夫なら、それで安心できるだろう? 本当に一寸(ちょっと)だけだからさ」

 

 ダメ! お母さんが言ってたもん「チョットだけって言う男は、チョットで済まない」って。軽い気持ちで流されたら、物凄く変態な事をされちゃうって注意されたんだ。

 君がここまで変態さんだったなんてビックリだよ……。ワッカくんがヒーローだった事よりビックリだよ……。

 

 そうだ‼︎ 何回か頭を叩けば、元の純情な君に戻るかな?

 

 「て、手荒な真似はやめてくれ! 僕は昭和の家電じゃないんだ! いいかい、まこと? 君に言うのも釈迦に説法だけど『武』は間違った使い方をしたら『暴力』と一緒なんだ。ほら、羽吹流の教えにも『拳を振るうは、武器を構えた相手へのみ』ってあるだろ?」

 

 うん。でもそれには『但し、裏切り者はその限りに非ず。問答無用で成敗すべし』って続きがあるんだよ。

 だからボクは、人類を裏切った悪の組織に容赦しないし、もし君がボクの信頼を裏切る様な真似をしてたら……えへへ、どうしようかなぁ?

 

 「ダメだ、まこと! そのまま『暴力ヒロイン』になってしまえば、時の流れに埋もれる運命が待ってるんだ。時代のアップデート後に、まことが消えてしまったら僕は悲しい……! うん、バングルは外さないで『裏技』を使って振動を止めよう。少しリスクがあるけど、これもコラテラルダメージだと割り切って考えるよ」

 

 

 あ、バングルが光って文字みたいな模様が浮き出てきた。これが裏技なのかな? 震えも止まったし、ひと安心……だよね?

 でもさっき、少し早口だったけど『ヒロイン』とか『運命』とか、ボクが居ないと悲しいとか。どうしてそんなラブソングの歌詞みたいな事を言って──

 

 

 も、もしかして、あれって告白なのかな!?

 

 

 そうだよね、君は昔から照れ屋だもん。

 遠回しすぎたけど……長い付き合いだから、ボクにはちゃんと伝わったよ!

 

 でも……

 お断りしないとね。知ってる筈だけど、ボクは自分より強い相手としか──あれ?

 ん? んんー? この腹筋の触り心地。割と鍛えてる? 高校生になってからは、トレーニングも辞めたって言ってたのに。

 

 「ちょ、ちょっと、まこと!? バングルの仕返しにしても、触りすぎだって! そんなに色々な所をベタベタと……っ!」

 

 うん。やっぱり連休前より、身体全体の筋肉量が増えてる。

 パソコンを辞めて、音楽を聴く時間も減らして、きっと隠れてトレーニングしてたんだ──全ての謎が繋がったよ。最近様子がおかしかった原因は、全部ボクのせいだったんだ。君はボクの事が本当に好きなんだね。

 

 だから本気で、ボクより強くなる気なんだ……!

 

 ここまでされたらボクも期待しちゃうよ。小学生の頃に一度は諦めたけど、いつかボクを倒す男の子がいるとしたら、君しかいないと思ってたんだ。

 あーもう! なんだか凄く嬉しい! ずっとボクが守ってあげるつもりだったのに、逆にボクを倒してくれるなんて‼︎ えへへ、楽しみだなぁ。

 

 だから──さっきの告白の返事はボクに勝てた時にしてあげる。

 

 

 「まこと? ほら、もうすぐワッカの着替えが終わりそうだ」

 

 あ、ホントだ。頑張れワッカくん、あとチョットだ! 君が着替えてくれなきゃ、ボクらも出られないからっ!

 こんな狭い場所で抱き合ってるんだもん、そろそろ彼の理性も限界だよ!?

 うぅ〜、意識したらボクまで恥ずかしくなっちゃった。

 

 だから早く着替えて、何処かへ行って〜!

 

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──────

───

 

 ロッカーから解放され、ボクらが教室へ戻るとリングリットが窮地に追い込まれてた。

 

 困った。ワッカくんが、弱すぎる。

 ヒーロースーツは頑丈な作りだし、ワッカくんも体格に恵まれて膂力だけは凄い。それだけ恩恵があるのに、格闘センスが絶望的だよ。

 

 今回はボクが怪人と女幹部を倒せたけど、怪人の特殊能力によってはボクじゃ戦力になれない。あの変態女幹部に、犬にされたり石像にされたり……う〜、思い出しただけでも恥ずかしいっ!

 今だってクラスメイトが見てる前で、しいなの事を認めてるみたいな発言しちゃったし。それも、これも全部。ヒーローが弱いせいだよ‼︎

 

 でも、良いこともあったんだ。サイ怪人の能力が判らない時、彼──Dくんが身を挺してボクを守ってくれた。おかげでツノが危険だって知る事ができたよ。

 えへへ、咄嗟にボクを守るなんて、ボクのこと好きすぎじゃないかなー? まだ告白の返事もしてないのに、困っちゃうなぁ。

 

 「うふふ、がんばった弟くんをお姉ちゃんが褒めてあげる〜。いい子、いい子。よしよ〜し」

 

 「ま、待ってお姉ちゃん。みんなが見てるから! わぷっ、は、離して……!」

 

 どうして、美衣さんの胸に抱き寄せられて嬉しそうにしてるんだろう…………さっき、ボクの胸元にエッチな視線を送ってた変態さんなのに。おかしいよね? こういうケースも『浮気』っていうのかな。なら裏切りだよね? ボコボコにしても怒られないよね。

 

 でも……さっき守ってくれたから、成敗だけは勘弁してあげる。その代わり、もう一度その身体に羽吹流を叩き込んであげようかな。いま道場は休みだし、みっちり鍛えてあげるね!

 

 いつかボクを倒す男の子を、ボク自身が育てる。

 

 うぅ。なんだかイケナイ事をするみたいで、ちょっと恥ずかしいかも。あんな告白をされて、道場に二人きりなんて余計に意識しちゃうよ。せめて、誰かもう一人くらい居てくれれば──

 

 そうだ! ついでにワッカくんを鍛えちゃえばいいんだ。これで解決だね!

 

∝ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽ ∽

 

 

 同日 夕方 / 羽吹道場

 

 「まことちゃん、待って待って! 急に俺達同士で戦えって言われても!?」

 

 「そうだよ、まこと。僕も左手首が少し痺れてて、まだ本調子じゃないんだ」

 

 うん。ここへ来るまで、ボクが強く握り締めてたんだから当然知ってるよ? ワッカくんが相手なら、片手を封じて丁度いいハンデになると思ったからね。

 別に君が、美衣さんの胸に顔を埋めてた事に怒ってやった訳じゃないよ。ワッカくんへハンデをあげる為に、計算して握り締めてただけなんだよ?

 

 「おい! お前が、山丹姐(ひめゆりねえ)さんとイチャイチャするから! まことちゃんが怒ってるだろ!? ほらきっと、胸の大きさを気にしてんだよ。あんな巨乳を見せつけられたら、そりゃ怒るって」

 

 「ワッカ! 声がでかい。ヒーロースーツを着てない生身のワッカじゃ、まことの逆鱗に触れたら命に関わるぞ!?」

 

 ほらほら、早く始めて二人とも。あと10数える内に始めないと、直接ボクが羽吹(はぶ)くよ?

 いーち、にー、さーん……

 

 「わ、わかった! さあ、勝負だワッカ。僕は右手しか使わないから、好きに攻撃して来ていいよ」

 

 「え? なんだよ急に、てか『はぶく』ってどんな意味だよ!? なんかコエーから、とりあえず攻撃するぞ!? うぉぉっ!」

 

 

 うーん。ワッカくんは本当に素人だね。あんな大振りが当たる訳ない。ほら、簡単に避けられちゃってる。腕力だけは強いから、宝の持ち腐れって感じかな。

 

 それに比べて、Dくんの動きは相変わらず綺麗だなぁ。体重移動を利用して、最低限の動きだけで華麗に避けてるもん。ブランクを感じさせない洗練された動き。やっぱり、連休中に相当鍛えてたみたい。これだと、左手だけ封じてもハンデにならないなぁ。

 たった数日でここまで鍛え直してるなんて、そんなにボクの事を……!

 Dくんに関しては、美衣さんの件も大目に見てあげようかな。あの人は、しいなや詠にもあんな感じだし。

 

 でも、ワッカくんは許さない。本人は小声のつもりみたいだけど、さっきの会話は普通に聴こえてたからね!

 丁度いい機会だし、ボクが出せる渾身の一撃を()()()()()()に打ち込んでみたいかも。そう言えば、変身スーツ……じゃなくて女の子ロボットは何処にいるんだろう? 透明になれる機能が付いてるんだし、近くにいるのかな? うーん、気配は感じないケド……

 

 「まこと。人造人間は『気』が無いから、気配を探れないんだよ?」

 

 「ぜぇ、ぜぇ、お前ぇ。息切れもせず、良くそんな冗談を……あぁ、JK(ジェーケー)ならギャル仲間たちと遊んでるんじゃね?」

 

 「え、ロボなのにギャルの友達が!? そうか、ハカセが量産型のギャルロボットを……!」

 

 「ちげぇよ! JKの友達は、みんな人間のギャル。まー、じっちゃんは確かにギャル好きだけどな! 俺はもちろんギャルより、まこt──」

 

 JKが居ないんじゃ、リングリットの頑丈さを測れないね。さすがに、生身のワッカくんへ奥義を放つ訳にはいかないもん。せっかく全力を出せる機会なんだし、楽しみは取っておかなきゃね!

 

 

 さてと、一通り動きは観察できたかな。

 ワッカくんは膂力に優れているものの、持続力が足りない。無駄な動きも多いから、すぐに息切れしてしまう。心肺機能の強化は短期間で改善できないし、トレーニングを継続してもらうとして。今できるのは、きちんと腕力を活かせる様に戦闘スタイルの矯正が必要だね。

 

 Dくんは足捌きと右手だけで、見事にワッカくんを振り回してた。左腕を背中へ回し腰骨に当てた姿勢で、右腕だけで攻撃を捌く。あの様子は、まるでカンフー映画の『老師 vs 若い弟子』みたいだったね。うーん……実力差がありすぎて、これじゃDくんの修行にならないなぁ。

 

 

 「いやいや、ワッカを強くする事が目的だろう? 僕の修行とか考えなくて大丈夫だから……と言う訳で、そろそろ僕は御暇(おいとま)するよ。姉さんが心配してると思うし」

 

 あ、問題ないよ。さっき理珠さんに電話して、月曜の朝までウチで修行するって伝えておいたから! 大丈夫、大丈夫! もうすぐ理奈が、君たちの着替えを持って来てくれる事になってるの。だから安心して鍛錬に打ち込んでね!

 

 「まことちゃんの家で、お泊まり……!?」

 

 「ブレないなぁ、ワッカは。僕は、ずっと鍛錬漬けなんて困るんだけど……」

 

 うふふ、仕方ないなぁ〜Dくんは。ちゃんと理珠さんから、ドラえもんだけは見せてあげてって言われてるから大丈夫だよ? あと3時間頑張ったら今日の鍛錬は終わりだから、それまで修行しよ?

 

 「そういう事なら、まあ」

 

 「お前もブレないなぁ……どんだけ好きなんだよ、ドラえもん。そう言えば、さっきから俺の攻撃を逸らしてる技って『ひらりマント』みたいでズリィぞ!?」

 

 え。

 

 実戦ではヒーロースーツっていう『鎧』を着てる人間が、羽吹流『枝垂柳(しだれやなぎ)』をズルい……?

 これができる様になるまで、Dくんがどれだけ努力を積んだかも知らないクセに……ズルい?

 

 「落ち着いて、まこと! ワッカも悪気があった訳じゃ──」

 

 Dくんどいて! そいつ(ワッカくん)を羽吹けないっ……!

 

 

─────────

──────

───

 

 

 あれ? いつの間にか3時間近く経ってる。

 集中するとあっという間だね! 床に二人の着替えが置いてあるから、理奈が来てくれた筈なんだけど……全然覚えてないや。結局、2人同時に羽吹いちゃったからなぁ。

 でもそろそろ終わりにしないと、理珠さんとの約束を破っちゃう!

 

 はい、そこまで!

 

 

 「ハッ……! ほらワッカ、地獄が終わったみた、い……? ダメだ。死んでる」

 

 「い、一応、生きてる……ケド。もう立てねぇ〜、結局『はぶく』ってなんなんだよぉ〜……」

 

 「羽吹くとは、門下生へ『時間感覚が麻痺』するレベルの『濃密な稽古』を付ける事だよ。鍛錬に集中し過ぎるあまり、まるで時間が省かれたかの様に感じる事から、そう名付けられたそうだ。分かり易く例えるなら、キングクリムゾn……じゃなかった。ほら、ドラえもんのひみつ道具に『タイムワープリール』ってあるだろう? あれと似た様な原理さ」

 

 「そんなマイナーな道具、お前しか知らねぇよぉ〜……とにかく俺は、もう動けね〜」

 

 

 だらしないなぁワッカくんは。それじゃ、Dくんは居間でテレビ観てていいよ。その間に、ボクがご飯を用意しておくから。ハンバーグとカレーでいい?

 えへへ、理珠さんから好きな食べ物を聞いておいたんだ。あ、大丈夫だよ。この一週間、ボクは自炊してるんだから! 期待して待っててね。

 

 「まことちゃんの手料理っ!?」

 

 あ、起き上がった。食いしん坊だなぁワッカくんは。そうだ! ボクから一本取れたら、その日のおかずを一品増やしてあげるよ。それなら、やる気が出るんじゃない?

 いつでも襲ってきていいよ。羽吹流は『常在戦場』を理念としてるからね。

 

 「い、いつでも……襲っていい!?」

 

 でも、お風呂の時に来たら命の保証はできないかな。さすがにボクも、それは恥ずかしいからね……。それ以外なら、いつでも大丈夫! 例え寝てる時でも対応できるもん。

 

 「寝込みを……襲っても……いい!? なんかさ、誘い方が大胆すぎないか!? な、なあ、お前はどう思う……?」

 

 「うるさいなぁ。もうオープニングテーマが流れてるんだぞ? 僕は一週間、ドラえもんを楽しみに過ごしてるんだ。この時間を邪魔するなら、たとえ『心の友』だろうとコテンパンにするぞ。メッタメタのギッタギタにしてやるっ!」

 

 「や、やめろ! ジャイアンより、鬼みたいなこと言うな! ひっ……!」

 

 

 さってと、それじゃあ料理を作ろうかな!

 えーと、鍋にお湯を入れて真空パックに入ったハンバーグと、レトルトカレーのパウチを温めればいいんだよね? えーと時間は〜、まあ適当でいいや。

 お米は、お母さんが炊いたやつを沢山冷凍してくれてるから、3人分レンジで解凍して……

 

 そうそう、電子レンジって金属を入れたらダメなんだよね。この前レトルトカレーを早く作ろうと思って、アルミのパウチを温めたら青い火花が出てて焦ったなぁ〜!

 それで思い出したんだ。中学生の頃に観た『グレムリン2』でレンジの中にお鍋を入れて爆発させてたシーンがあったなって! いや〜、危なかったよ。あの映画を観てなかったら、お母さんが作り置きしてくれたお味噌汁の鍋を、そのままレンジで温めてたかもしれないもんね! あははは!

 

 

 「まこと。ドラえもんは、多分姉さんが録画してくれてるから……僕が料理するよ」

 

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