平成アニメ世界で令和の価値観を注入されたショタの話   作:浅学寺のえる

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── 別視点からのみ摂取できる栄養素 V.C

4月16日

 

 (わたくし)は萬宮寿しいな。身長158cm、牡羊座のB型、16歳、女子高生。

 そして、世界征服を目指す『オメイラガ』の最高幹部。

 前回、猫になってしまった反省を踏まえ、こうして活動記録を残すことに致しました。

 憎きリングリットの邪魔立てで失敗が続いておりますが、今度こそやり遂げてみせますわ!

 

 過去の敗北から、私は学びましたの。

 まずは局所的に作戦を遂行していき、ヒーローへ察知されずに組織の目的を果たす事が肝要。

 組織の活動が目立つからこそ狙われるのならば、コッソリと行えば良いのですわ。我ながらカンペキな作戦ですわね! 賢く、手堅く、地道な努力が実を結ぶのでしてよ。

 それらを踏まえ、今回標的に決めたのが2年C組。勝手知ったる私のテリトリーですわ。手始めにクラスメイトを全員、ワンちゃんにして可愛がって差し上げますわ!

 

 あら? そろそろお昼休みが終わってしまいますわね。続きはまた放課後に撮影しますわ──

 

Ƶ━━━z

 

 さて、現在は6時間目の授業が終了した直後。

 ここからは時間との勝負。帰りのHR(ホームルーム)終了前に間に合うよう、記録を撮りつつ急ぎますわよ。まずは今回の作戦に志願してくれた小さな柴犬を紹介しますわ。名前はケンケン、可愛いでしょう? ふふっ、くすぐったいですわ。この子が、作戦における重要なピースの一つですの。

 続いて紹介するのは、私のメイドであり盟友でもある(うた)

 

 「ミーアさま。ワタシは匿名にして。万が一だけど、第三者が見るかもだから」

 

 えぇ!? 私、お昼に自己紹介してしまったわ! どうしましょう、詠!?

 

 「大丈夫。肝心な情報は伏せてた。例えば、体重45kg、バスト87cm、ウエスt──

 

 おやめなさい!? どうしてそんなに詳しいんですのよ!

 コホン。記録はあとで編集するとして、一先ず話を戻しますわ。

 柴犬の『ケンケン』

 詠……ではなく『A子』

 そして、お祖父様の残した設計図を元に組み立てた『催眠音声ー欲棒くんー』

 作戦に重要なのは、この三要素でしてよ。今は説明している時間が惜しいですわね。

 さあ、三位一体となり生まれ変わる時ですわ! ポチッっとな  

 

 現在、このドーム状の巨大装置『Σ(シグマ)リアクター』によって合精霊化(コンフュージョン)が行われています。

 そろそろ完了しますわ! ドームの中から、可愛らしい柴犬の戦士が現れましたわね。

 ケンケンの肉体、欲棒くんの能力、A子の魂。無事に融合できたようで安心しましたわ。少し不安でしたが、押すボタンはあれで合ってましたのね!

 

 あとは抜け殻になってしまったA子の身体を、屋敷のベットへ移送するよう手配して──最後に、最も重要な儀式『命名』を行うことで、私と合精霊(コンフュージン)の『契約』が完了いたしますわ。

 

 

 決めましたわ、あなたの名前はケンケンα!

 存分にチカラを振いなさい! 責任は全て私が引き受けますわ!

 

 「まかせて。『オメイラガ』の宿願を果たす、わん」

 

 さっそく上層に戻りますわよ、ケンケンα!

 ここにあるエレベーターは、お祖母様の理事長室へ繋がってますの。やっぱり学校の地下に基地があるのは、とても便利ですわね。

 さあ、ここからの記録は私の装着した『オメガバイザー』へ自動で録画されますわ。

 

 次にこのカメラで撮る映像は、作戦成功で喜ぶ私達の姿になりますわねっ!

 

Ƶ━━━z

 

 ここからは反省記録ですわ……

 現在映しているこの場所は、お屋敷にある私の部屋。そうですわ、今回も敗けてしまいましたの。A子の機転で私の正体はバレずに済みましたが、散々な結果ですわ。

 

 「ミーアさま。まずはイヤホンを着けて。きっと、もうすぐ始まる」

 

 そうでした。事前に欲棒くんで作っておいた自己催眠音声を用意していたのでした。

 えーと、呪詛返しの説明も残しておきませんとね。

 

 まず、合精霊を創り出す儀式には『生贄』と『呪物』と『精霊』が必要になりますわ。あ、ケンケンは無事でしてよ? きちんと美衣(みい)が連れ帰ってくる手筈ですわ。元々は犠牲を伴う危険な儀式でしたが、お祖父様が発明したリアクターを使う事で犠牲は最小限になりましたの。

 

 合体を解除すれば、肉体の素となる動物は無傷のまま解放。

 呪物は壊れてしまいますが、機械ですので材料さえ揃えばまたいつか作り直せますわ。

 そして、精霊は在るべき場所へと戻る。今回の場合は、A子の魂が肉体へ帰るという事ですわね。お祖母様が考案して下さった、精霊の帰還プロセスを利用した移動方式。これのお陰で、私も一緒に戦線から離脱していますの。

 

 「ミーアさまに魂をギュっとされる感覚。クセになる」

 

 変な言い方は、おやめなさいな。

 人間でありながら、精霊の血を引くA子。そして、特殊な血筋を持つ彼女らの魂を掴む事が可能な私。どうやら私には、巫女の能力があるようですの。その恩恵で、通常でしたr──うっ!

 

 「しいな様!? 早く催眠音声を流さなきゃダメ。かして、ワタシが再生する」

 

 《わたくしはニンゲン。わたくしはニンゲン。わたくしはニンゲン──》

 

 ふぅ、助かりましたわ。思った通り、これで呪詛返しを相殺できましたわね。

 説明の途中でしたが、合精霊が合体解除を行うとそれまでの『業』が我が身へと帰ってくる。これは自然の摂理ですわね。

 巫女である私は合精霊へ命名することで、その『業』の全てを引き受ける契約をしていますの。通常でしたら108日続くとされる呪詛返しも、巫女の適性が高い私でしたらその24分の1。たったの108時間、つまり4日と半日で呪詛に打ち勝つ事ができますの。呪いの効果も徐々に薄れていくので、たとえ金曜日に猫そのものになってしまっても、月曜日にはネコミミと尻尾と肉球だけを残して人間に戻れましたわ。

 

 「むー。自己犠牲はダメって言ったのに。ミーア様がんこもの」

 

 A子が何か言っていますが、イヤホン越しでは聞こえませんわ。

 あら? 美衣もとい、B子が帰ってきましたわ。やっぱりリニアモーターカーは速いですわね! お屋敷から学校までの直線区間の土地を買い取って、地下に線路を引いた甲斐がありますわ。学校の地下にあるΣリアクターともパイプラインを通せましたし。この件はお祖母様も褒めて下さいましたわね。

 

 「ただいま〜」

 

 「わん!」

 

 まあ! ケンケン! やっぱりワンちゃんは本物に限りますわ! もう羽吹まことに舐め回されるのは懲り懲りですの。失敗を繰り返さないよう、きちんと反省会を致しませんと!

 

 まずは、先程の活動記録をモニターで見直しませんと……えっと、私が装着していたオメガバイザーに、この赤白黄の3色端子を挿すんでしたっけ?

 

 「違うわよ、ミーアちゃん。バイザーは昔の規格だから、まずはコンバーターに繋ぐのよ?」

 

 「ミーアさまは機械音痴。かして? ワタシがやってあげる」

 

 うう。どうしてこんなに、ややこしいんですの!? それに2人とも、そんなに顔を近づけなくても大きな声なら聞こえますのよ!

 

Ƶ━━━z

 

 《この教室は私たち『秘密結社オメイラガ』が占拠いたしますわ!》

 《わん》

 

 モニターから流れるのは、教室を占拠した直後の映像。

 ここまでは順調でしたわね。

 

 《おい! お前、また鼻血が出てるぞ!?》 

 《もうっ! 君は純情なんだから、あの変態女を見ちゃダメって言ったでしょ!》

 《お待ちなさい! 私のどこが、変態だと言いますの!?》 

 《その格好!!》

 

 反省点はここからですわね……私のコスチューム。

 お祖母様は「女幹部たるもの、この位は着こなしてご覧なさい」と仰りましたけれど、やっぱり殿方には刺激が強すぎるのかも知れませんわね。

 ええ! 次からは露出を減らす事に決めましたわ!

 

 「ミーアさまがDに気を取られたスキに、皆逃げ出した」

 

 「あらあら〜」

 

 仕方ないでしょう! 私のせいで鼻血を出したのかもしれませんし、心配でしたの!

 それに、この後の気絶も気になりますわね。一度、彼の事を精密検査する必要がありましてよ。

 

 「気絶はワタシのせいじゃない。たぶん」

 

 「弟くんは気絶しちゃったし、わたしは耳栓をしてたから。結局、催眠を受けたのは2人だけね〜」

 

 そうですわ。残った二人──羽吹まこと、井伊エツジだけは標的にできましたの。

 B子も催眠を受けた演技が上手でしたわね。普段より目を開いていて、なんだか新鮮でしたわ。

 

 まあ! ご覧なさいな、画面の中で羽吹まことが無様に闘いを挑んできていますわ。

 普段から猪の様な動きですのに、今回はより単純な突進。私の扇子で一撃与えて終了ですわ!

 うふふ。お腹を見せて服従を示してますわ。なんだかちょっと可愛いですわね……

 

 「このヘン、早送りしよ」

 

 あ、コラ!? もっと、まことの恥ずかしい姿を見せなさいな!

 あら、これは井伊が殴り飛ばされるシーンですわね? なるほど、A子はあの男に何かされてましたのね。まったく、犬になってまでイヤらしいなんて困りものですわ!

 やっぱり本物が一番。私の膝に乗っているケンケンはこんなに可愛いのですもの。

 

 《よくも皆を酷い目に……! ゆるさん!!》

 《性懲りも無く現れましたわね!! やっておしまいなさい、ケンケンα!》

 《わかった……わん》

 

 出ましたわねリングリット。特殊攻撃が一切効かないというズルい男。

 体術自体は素人同然。力任せの攻撃もA子の技量ならば難なく躱せますし、隙を突いて反撃まで決める余裕がありますわ。

 けれど問題は、やっぱりあのリングですわね。

 あの男が放つ『クロスリット・ハイロゥ』という名の空飛ぶ光輪。

 ただの飛び回る光輪ならば、武道を嗜む私達にとって一つ二つの対処は容易ですのに……現在確認できている最大数は32本。

 ズルですわ! 人間の処理能力を超えてますもの! あの男は、どうやって動きを制御していますの!?

 

 「あらあら。2人とも捕まっちゃったわ〜」

 

 「ごめん、ミーアさま。しっぽが付いてること忘れてた」

 

 仕方ありませんわ。そもそも、今回の作戦はリングリットとの闘い自体が想定外ですもの。

 それにしても、ヒーローの登場が早すぎますわね。学校がパニックになって15分程度ですのよ? 都合よく近所で暮らしているなんて偶然はありえませんし……もしかすると、あの男には合精霊のチカラを察知する能力があるのかもしれませんわ。侮れませんわねリングリット!

 

 《くぅ〜ん。ぺろ、ぺろ》

 《ひゃん!? やっ。んんっ! ま、って》

 

 ここは早送りですわよ! どれを押せばいいんですの!?

 あれ? えっ? うぅ〜。どうして反応しませんの……?

 

 

 《なんかさ! 女の子同士って、イイよなっ!》

 

 え? リングリットは、誰に話しかけてますの? あの場で会話できる人間──まさか!?

 気絶していた筈の彼が!? こ、この光景を見ていましたの!?

 

 「弟くん、お顔が真っ赤だったのよ? 今のミーアちゃんみたいね〜」

 

 「ふしぎ。この光景のが鼻血でそうなのに。Dはへいきだった」

 

 ッーー! 萬宮寿流心術『明鏡止水』!

 ふぅ〜、危ない所でしたわ。催眠の影響下にあるいま、取り乱すのは危険ですもの。心を鎮める術を身に付けておいて良かったですわ。

 

 もう早送りは諦めますわ……。リングリットへの対策も次回考えるとして。

 直近の問題は、彼の鼻血の件ですわね。

 思い返せば『叡智の書』なる結晶体へ触れた時も鼻血を出していましたわ。

 あの結晶体が置かれていた場所は、Σリアクターが設置されている地下施設よりもずっと上の層。天然の地下空洞でしたわね。

 以前の調査では、あの場所には浮世絵などが仕舞われた古くさい箱しかなかったと報告されていましたのに……得体の知れない物へ触れてしまった彼が心配ですわ。

 

 「ミーアさま、Dに甘すぎ。どうして?」

 

 「弟くんは可愛いからよ〜。ミーアちゃん、可愛い動物が好きでしょ?」

 

 違いますわ! 私はただ、ただ……あら? どうして、こんなに気にかけてしまうのかしら?

 確かに幼少期、萬宮寿流の道場でお会いした事はありますけれど。それ以来、特に親しい関係でもない彼を何故?

 

 高校で再会して──そう言えば、彼が先生から校則違反だと勘違いされた事がありましたわね。彼の髪が生まれつき茶髪に近い事は知っておりましたので、私が執り成して誤解は解けましたけれど……

 その時、彼が感謝のついでに述べた「海の近くに住んでいるのに、萬宮寿さんの黒髪は綺麗だね」という言葉が妙に嬉しく感じましたわ。あんな美辞麗句は、他人からいくらでも言われておりますのに。

 この気持ちは、一体なんですの? これは安心感? それとも友愛? どこか、詠と美衣へ寄せている信頼とも似ているような……あ。そう言う事ですのね!

 

 

 彼も精霊の末裔なのかも知れませんわ!

 

 


 

 

 翌日。

 車での登校中、さっそく彼を発見しましたわ。

 イヤホンのことを失念したまま話しかけてしまいましたが、慌てた私を見て詠が彼の言葉をスケッチブックに書き出してくれましたの。相変わらず、頼れる盟友ですわね。

 そして会話の結果、彼が火鬼崎博士の検査を受ける予定だと判明いたしました。おかげで計画が台無しですわ!

 彼には精霊疑惑があるので、首尾よく我が家へ連れ込もうと思ってましたのに!

 

 コホン!

 けれど火鬼崎博士は、お祖父様と肩を並べる程の天才科学者。検査に関しても信頼できますわ。

 

 その後、世界史の授業で彼がお祖母様を怒らせてしまい。現在は、理事長室でお説教を受けている最中。

 かれこれ1時間は経つので、そろそろ終わる頃合いだと思いますけど。中々、出てきませんわね。

 

 「ワタシおなか空いた。そろそろ帰ろう、しいな様?」

 

 もう少しだけ付き合って下さいな。お祖母様だってお腹が空くのだし。流石にそろそろ──

 

 

 「やっと終わった……もう猿人は懲り懲りだよ」

 

 ふふっ。肩を落として歩く姿は、まるでお猿さんのようですわよ?

 けれど、真面目に授業を受けている彼があんなお巫山戯をするなんておかしいですわ。

 まことの影響? だとすれば、今日受けた屈辱も上乗せして一度懲らしめなくてはいけませんわね。私がイヤホンのせいで言い返せないのを良い事に……! あの勝ち誇った顔を思い出しただけでも悔しいですわ!

 

 んんっ。何はともあれ、まずは彼を労いましょう。どこか調子が悪いのかもしれませんし。

 

 「萬宮寿さんこそ、今日は調子が悪いんじゃないかな? あはは、まことが絶好調だったせいもあるけどね。ごめん」

 

 何かを述べたのち、何処か遠くを見つめる彼。

 彼が長めに喋ると詠の字幕が追いつきませんわね。会話の流れが分からないので少し強引ですけど、体調が悪そうな事を口実に車へお誘いしてみましょう。

 彼を自宅へ送り届けたあと、落ちた髪の毛などが車に残っていれば、精霊かどうか調べる事も可能ですわ!

 とっさに思い付いた作戦にしては完璧ではなくて? さあ! 私と一緒に下校いたしましょう!

 

 あら? こうして近づいてみると、私と彼は目線の高さが全く同じなのですね。普段は前髪に隠れて見えない左目も、間近ならば髪の隙間から観察できますわ。やけに目が泳いでますけれど、どうされたのかしら?

 

 「こわっ!?」

 

 な、怖いとはなんですの! 人が心配しているというのに!

 そんなに怯えなくても宜しいでしょう!? 私って、そんなに怖がられてますの……?

 あ、詠が先程のセリフを書き終えたと合図していますわ。

 どうやら私の体調を気にしてらしたようですが、何故まことの件で彼が謝っているのかしら? 貴方は別に、まことの保護者ではないでしょうに。なぜだか無性に腹立たしいですわね!

 

 もう今日は、誘うのを諦めますわ。さっさと火鬼崎博士の所へ行ってしまいなさいな。

 

 「うん。それじゃあ、またね萬宮寿さん」

 

 あっ!

 振り返った彼が、背後にいた詠を見つけてしまいましたわ。

 どうしましょう!? 彼が驚いていますわ!

 当然ですわね。自分のセリフが書かれたスケッチブックを持つ、銀髪幼女がいるんですもの。幼女……? そうですわ! 詠は見た目がとても幼いんですもの。字の練習をしていた事にしてしまいましょう! ねっ!

 

 「……そう」

 

 「いやいや、流石に無理があるって!? ほら、萬宮寿さんが付けてるイヤホンが原因なんじゃないかな? 音楽を聴いてて、会話が聞き取り辛いから筆談を試してたって所かな? あ、別にもう放課後なんだし咎めるつもりは全くないんだ。むしろ音楽好きな一面が知れて良かったくらいだよ。そうだ! これ、もし良かったら貰ってくれないかな? 昨日買ったCDアルバムなんだけど、最近このバンドにハマっててさ。気分が沈んだ時とかオススメだよ? あ! でもチルい曲って訳じゃなくて、ジャンルはしっかりとしたロックだから趣味に合うかは分からないけど──とにかく聴いてくれたら嬉しいな。それじゃあ! また来週!」

 

 怒涛のような言葉の嵐を残したのち、彼は走って行きましたわ。

 詠が書き起こそうと頑張っていますけれど、きっと全部は無理ですわよ? 間違えて『ちるい』なんて、日本語ではない単語を書いてますもの。

 けれどこのCDは私へのプレゼントで合っているようですわね。なぜ急に、という疑問は残りますが。

 

 「むー。Dおしゃべり! 全部書けなかった。しいな様ごめん、細胞も採取できなかった」

 

 細胞? 何を言ってますの?

 どうして、綿棒をもってますの詠?

 

 「スキをみて、Dの口に入れる予定だった。案外スキがなくて、ビックリ。さすが元・羽吹流」

 

 どうして貴女は、そう非常識なんですの!?

 いきなりそんな事をしたら、嫌われてしまいますのよ? もし彼が精霊の末裔だったら、これから協力して頂きたいのに!

 私の為だということは判りますけれど、もう少し節度をもって──

 

 

 「あ〜! しいなちゃんが、詠ちゃんをイジメてる。いけないんだ〜」

 

 違いましてよ! 私はただ、詠のためを思って……いえ、言い過ぎてしまいましたわね。ごめんなさい、詠。

 それはそうと、美衣は理事長室に居りましたのね。もしかして、貴女までお祖母様からお説教を受けてましたの?

 

 「わたしは弟くんの付き添い。イグナさまに怒られて泣いちゃうといけないから、よしよしってしてあげる係よ〜」

 

 「ププっ。D子供すぎ。ホントに高校生?」

 

 「あとね。はい、コレ! しいなちゃんへの誕生日プレゼント〜。なんてね」

 

 美衣が手渡してきた物は、密封された小さいビニール袋に入った──髪の毛?

 光に当てると茶色に輝くこれって、まさか?

 

 「うん。弟くんの髪の毛。きちんと毛根も付いてるから検査できるかもしれないわ。ね? 頭よしよし係は必要だったでしょ?」

 

 「さすが美衣。ワタシにできない事を平然とやり遂げる」

 

 「詠ちゃんの背だと、ちょっと撫でるのは難しいもんね〜。うふふ」

 

 「むー。ワタシの頭まで撫でなくていい!」

 

 仲がよろしいですわね。

 けれど美衣のおかげで彼の検査ができるのは僥倖ですわ。

 それと忘れていましたが、今日は私の誕生日でしたのね。つまり、彼からの贈り物もそういう意味──色々と思い出せましたわ。

 

 どさくさ紛れにプレゼントだなんて、相変わらず恥ずかしがり屋さんですのね。

 

 


 

 

4月20日

 

 本日は火曜日。

 2日ほど記録を残しておりませんが、催眠の影響を少し受けただけですのでお気になさらず。すでに呪詛返しから85時間経過しているので、呪いの影響も大分薄くなってますわ。

 

 「しいな様。CD聴こうとしてイヤホン外した。ドジっこ」

 

 「ペロペロしてて、可愛かったわ〜」

 

 おだまりなさい! どうして2人とも、私のベットにおりますのよ! 学校を一緒に休んでまで、私に付き合わなくても構いませんのよ?

 そ・れ・に!! この首輪はなんですの!?

 

 「猫の時は逃げちゃった。首輪は必要」

 

 「そうよ〜。あの状態で街へ出ちゃったら、大変でしょ?」

 

 「だからワタシ達がお世話した。ほめて」

 

 うぅ。記憶はありますのよ……逆に、あるからこそ困るのですけど! あぁ〜もうっ! ともかく、助かりましたわ! 急いで身支度を整えて、今日は学校へ参りますわよ!

 

 取り急ぎ、全員シャワーを浴びる必要がありますわね……

 カメラが濡れるといけないので、記録は一旦停止しますわ。

 

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