変わった世界でやり直し。〜ずれた世界をあの娘と共に〜 作:清谷ペン太郎
「たっだいまーっと」
俺は香村さんと駄弁りながら歩いて十数分、なつかしの我が家にたどり着いた。
今日は、いや、も、か。今日も両親はいない。共働きで、息子の入学式の日さえ忙しくしている。
まぁ俺は慣れっこだし、お詫びって形でゲーム買ってもらったので当時はむしろ喜んでいたと思う。
「はぇー、なかなか立派な一軒家だねぇ」
香村さんが、手で目の上に影を作って俺の家を見上げていた。
「普通だよ普通。縮んでるから大きく見えるだけだろ」
「そんなことないと思うけど……」
「とにかくあがってあがって。麦茶くらいはあったはず……」
俺はガチャリと鍵を開け、香村さんを家に招いた。
「洗面所はそっち、で、リビングがあっちの右のドアの先ね。
「りょーかーい」
そう軽く案内をした俺は、台所に向かって適当なお菓子を見繕い、麦茶と共にお盆に乗せてリビングへ向かった。
「ねぇねぇ、なんか懐かしい感じだね、ほらテレビもブラウン管!」
地上デジタル放送はまだない時期だ。テレビもまだ薄型液晶でなく、箱っぽい形のブラウン管だった。
「とりあえず、ほい!」
「おわっと、これ、コントローラー?」
「そそ、うちの親が入学祝いに買ってくれたんだよ。据え置きゲーム。アクションゲームやろうぜー、ミスったら交代な」
「'……へへ、実は私、こういうのそこそこうまいよ?君の番来ないかもね」
「ほほう言うね。なら、その腕前見せてもらおうか!」
「あたぼうよ!ゲームスタート!」
そうして、俺たちは夕暮れまでゲームを楽しんだのだった。
てか、ほんとに上手かった。俺の番二回しか回って来なかったし、当時の俺が数日かけたボスを彼女は楽々クリアしてしまった。
「あー、楽しかった!こんなに熱中してゲームしたの久しぶり〜!」
「そりゃよかった。楽しんでくれたなら何より」
「じゃっ、また明日ね!」
「っ……お、おう、また明日!」
俺はこちらに手を振りながら走り去る彼女を、こちらも手を振って見送った。
俺はそのあと帰ってきたら両親と夕食の食卓を囲み、二十年ぶりの、小学生の頃の自分の部屋に入った。
勉強机と一体になったベッド、パーツ数の少ないプラモデルが数体。当時やっていた特撮ヒーローのなりきりアイテムとロボット。
何もかもが懐かしい。
俺はパジャマ姿でベッドに横になる。
なんとなくだが、ここで眠るとこの夢が終わってしまう気がしていた。
まだ続けたい。その思いもあるが、急激に襲ってきた眠気に抗えず、俺の意識は気絶するかのように闇に落ちた。
思考の闇の中、俺は何か光を見つける。
その光はどんどん小さくなり、ソフトボール大になる。
そして、更に小さくなってゆき、しまいには卓球の玉くらいの大きさになり、突如俺の方に向かってきて、ぶつかる!と思ったら俺の体の中、胸の辺りにスッと溶け込むように消えた。
……なんだったんだ?
目が、覚める。
「はぁ、いい夢だったな。さて、仕事仕事……って、え?」
俺が部屋を見渡すと、そこは昨日寝た場所。すなわち、二十年前の自分の部屋……。
しかし少し違いがあった。
【おもちゃ】【おもちゃ】【カバン】【服】【床板】
なんか……文字が、見える?