陰陽師安倍晴明の優雅なオフ~五人の愛弟子奮闘記~ 作:阿弥陀乃トンマージ
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「はあ……」
ある部屋の中で金がため息をつく。
「美女にため息は似合わないよ」
「!」
金がビクッとして振り返ると、部屋の出入り口に基が立っていた。基が笑う。
「ふふっ……」
「も、基さん……」
「ついでに言うと、美女に武具庫はもっと似合わない……」
基は部屋を見回しながら呟く。
「貴女にその言葉をそのままお返ししますわ」
「おっと、それはどうもありがとう」
基がうやうやしく礼をする。
「……」
「それにしても……こんな夜分に何故ここに?」
「……自然と足が向いたのですわ」
「武具庫に自然に? それは随分と穏やかじゃないねえ……」
基は苦笑する。
「厳密に言うと……」
「うん?」
「ここはあくまでも武具を中心に収蔵した部屋であって、武具庫ではありません」
「細かいねえ」
基は再度苦笑する。
「そういうのはキッチリとしておきませんといけませんから」
「ふむ……以後気をつけるよ」
「お願いします」
「それで繰り返しになるけれども……何故ここに?」
「自然と足が向いたと申したではありませんか」
「そうするに至った理由さ」
「そう言われましても……自然の行動を理由付けするのは難しいですわ」
金は困り顔になる。
「………」
「…………」
「……………」
「………………な、なんですの?」
基にじっと見つめられ、金はさらに困り顔になる。
「ははっ、いやいや、困らせてしまったね」
「あの……」
「当ててみせようか」
「え?」
「ズバリ……デーモンに対抗する策を講じている……!」
「む……」
「当たりだろう?」
基が悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「……まあ、概ねは」
「概ねは?」
基が首を捻る。
「正直に申しますと……策が思いつかないので、ここに来たのだと思いますわ」
「思いつかない?」
「ええ。ですから、今度相対することがあれば、武具で対抗しようかと……」
「物理的に攻撃するということ?」
「結局はそこに帰結しますわ」
「え、ええ……」
基が困惑する。
「気に入りませんか?」
「い、いやいや、気に入らないということはないけれど……」
基が右手を左右に振る。
「可能性が高いと思いません?」
「まあ……効果はありそうだけれどね……」
「そうでしょう?」
「……で?」
「はい?」
「どうするんだい? まさか闇雲に振り回すわけじゃないだろう?」
「まあ、それはそうですわね……」
「策……思いついたんじゃない?」
「……漠然とではありますが」
「聞かせてもらおうじゃないか」
基が大げさに両手を広げる。
「いや、それは……」
「話すことで考えがまとまるだろう?」
「それは確かに……」
「どうぞ」
基が話を促す。
「……まずは弓矢を放って、相手の足を止めますわ」
「足、あったかな?」
基が首を傾げる。
「槍で心の臓を突きます」
「心の臓、あるのかな?」
基が首を捻る。
「……おほん!」
金が咳払いをする。
「ああ、ごめん、続けて」
「刀で以って、首を斬り落とします……!」
「どこからどこまでが首なのかな……」
「もう!」
「わっ!」
大声を上げた金に基が驚く。
「なんなんですの⁉」
「え、ええ?」
「いちいち茶々を入れてきて!」
「いやあ、話し合いのつもりだったのだけれど……」
「まったく……」
金が両腕を組む。
「悪くないとは思うよ。ただ……」
「ただ?」
「実現出来るかな? そこまで武具の扱いに長けているのは栞くらいじゃないかと……」
「……そ、それはそうかもしれませんが……」
「やっぱり、晴明くんの弟子である以上は、術で勝負するべきだと思うよ」
「その術が通用するかどうかが分からないではありませんか!」
「大丈夫、ぼくらなら出来るよ……!」
「な、なにを根拠に?」
「元気さ!」
「げ、元気?」
「そう! 気合や活力って言い換えてもいいかもね?」
基が片目をつむる。
「お、思わぬお答えですわね……ふふっ、でも結局はそうなのかもしれませんわね……策を練り直すとしますわ!」
金が微笑む。その目には活力が戻っていた。