陰陽師安倍晴明の優雅なオフ~五人の愛弟子奮闘記~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(5)活力

                  ♢

 

「はあ……」

 

 ある部屋の中で金がため息をつく。

 

「美女にため息は似合わないよ」

 

「!」

 

 金がビクッとして振り返ると、部屋の出入り口に基が立っていた。基が笑う。

 

「ふふっ……」

 

「も、基さん……」

 

「ついでに言うと、美女に武具庫はもっと似合わない……」

 

 基は部屋を見回しながら呟く。

 

「貴女にその言葉をそのままお返ししますわ」

 

「おっと、それはどうもありがとう」

 

 基がうやうやしく礼をする。

 

「……」

 

「それにしても……こんな夜分に何故ここに?」

 

「……自然と足が向いたのですわ」

 

「武具庫に自然に? それは随分と穏やかじゃないねえ……」

 

 基は苦笑する。

 

「厳密に言うと……」

 

「うん?」

 

「ここはあくまでも武具を中心に収蔵した部屋であって、武具庫ではありません」

 

「細かいねえ」

 

 基は再度苦笑する。

 

「そういうのはキッチリとしておきませんといけませんから」

 

「ふむ……以後気をつけるよ」

 

「お願いします」

 

「それで繰り返しになるけれども……何故ここに?」

 

「自然と足が向いたと申したではありませんか」

 

「そうするに至った理由さ」

 

「そう言われましても……自然の行動を理由付けするのは難しいですわ」

 

 金は困り顔になる。

 

「………」

 

「…………」

 

「……………」

 

「………………な、なんですの?」

 

 基にじっと見つめられ、金はさらに困り顔になる。

 

「ははっ、いやいや、困らせてしまったね」

 

「あの……」

 

「当ててみせようか」

 

「え?」

 

「ズバリ……デーモンに対抗する策を講じている……!」

 

「む……」

 

「当たりだろう?」

 

 基が悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「……まあ、概ねは」

 

「概ねは?」

 

 基が首を捻る。

 

「正直に申しますと……策が思いつかないので、ここに来たのだと思いますわ」

 

「思いつかない?」

 

「ええ。ですから、今度相対することがあれば、武具で対抗しようかと……」

 

「物理的に攻撃するということ?」

 

「結局はそこに帰結しますわ」

 

「え、ええ……」

 

 基が困惑する。

 

「気に入りませんか?」

 

「い、いやいや、気に入らないということはないけれど……」

 

 基が右手を左右に振る。

 

「可能性が高いと思いません?」

 

「まあ……効果はありそうだけれどね……」

 

「そうでしょう?」

 

「……で?」

 

「はい?」

 

「どうするんだい? まさか闇雲に振り回すわけじゃないだろう?」

 

「まあ、それはそうですわね……」

 

「策……思いついたんじゃない?」

 

「……漠然とではありますが」

 

「聞かせてもらおうじゃないか」

 

 基が大げさに両手を広げる。

 

「いや、それは……」

 

「話すことで考えがまとまるだろう?」

 

「それは確かに……」

 

「どうぞ」

 

 基が話を促す。

 

「……まずは弓矢を放って、相手の足を止めますわ」

 

「足、あったかな?」

 

 基が首を傾げる。

 

「槍で心の臓を突きます」

 

「心の臓、あるのかな?」

 

 基が首を捻る。

 

「……おほん!」

 

 金が咳払いをする。

 

「ああ、ごめん、続けて」

 

「刀で以って、首を斬り落とします……!」

 

「どこからどこまでが首なのかな……」

 

「もう!」

 

「わっ!」

 

 大声を上げた金に基が驚く。

 

「なんなんですの⁉」

 

「え、ええ?」

 

「いちいち茶々を入れてきて!」

 

「いやあ、話し合いのつもりだったのだけれど……」

 

「まったく……」

 

 金が両腕を組む。

 

「悪くないとは思うよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「実現出来るかな? そこまで武具の扱いに長けているのは栞くらいじゃないかと……」

 

「……そ、それはそうかもしれませんが……」

 

「やっぱり、晴明くんの弟子である以上は、術で勝負するべきだと思うよ」

 

「その術が通用するかどうかが分からないではありませんか!」

 

「大丈夫、ぼくらなら出来るよ……!」

 

「な、なにを根拠に?」

 

「元気さ!」

 

「げ、元気?」

 

「そう! 気合や活力って言い換えてもいいかもね?」

 

 基が片目をつむる。

 

「お、思わぬお答えですわね……ふふっ、でも結局はそうなのかもしれませんわね……策を練り直すとしますわ!」

 

 金が微笑む。その目には活力が戻っていた。

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